
概要
MinQ(みんきゅ〜)は、外出に不安や制約を感じている人でも気軽に「おでかけ」や旅行を楽しめる社会を目指すプロジェクトです。障害の有無や年齢に関わらず、誰もが自由に移動し楽しめる“ユニバーサルツーリズム”の実現を目標としています。一般社団法人社会構想デザイン機構は、このMinQプロジェクトの立ち上げから運営に深く関与し、ビジョン策定やクリエイティブ制作、PR支援など多方面でプロジェクトをサポートしています。
本記事では、MinQがもたらす社会的インパクトと、プロジェクトへの関与・協力のメリットについて知っていただき、さらなる支援の輪が広がることを期待して、MinQの取り組み内容と成果、そして社会構想デザイン機構の具体的な役割と今後の展望について、行政関係者や企業の新規事業担当者にも分かりやすい形で紹介します。
MinQのビジョンと現状の課題
MinQの掲げるビジョンは一言で言えば、「障害の有無に関わらず、すべての人が自由に移動し、楽しめる社会をつくる」ことです。外出は単なる移動ではなく、人との出会いや新しい経験を通じて人生を豊かにするものだという考えのもと、MinQは誰もが安心して「おでかけ」を楽しめる環境づくりを目指しています。
しかし、その実現に向けて現在以下のような課題が存在します。
- 移動のバリア(交通・インフラ): 車椅子対応の交通機関やバリアフリーのインフラが十分でない地域が多く、物理的な移動手段の制約があります。例えば段差やエレベーター未整備により、行きたい場所に自由に行けないケースがまだあります。
- 情報のバリア(アクセシブルな観光情報の不足): 車椅子対応トイレの有無や貸出用車椅子のサービスなど、観光施設や交通のバリアフリー情報が十分に共有されていません。アクセシビリティに関する情報不足のために、障害のある方や高齢者が旅行計画を立てづらい状況があります。
- 社会的認識のバリア(意識や制度の遅れ): 「障害者や高齢者の旅行は難しいもの」という固定観念や、制度・サービス面での対応の遅れも課題です。受け入れる側の観光地や社会全体にユニバーサルツーリズムへの理解が十分行き渡っておらず、結果として当事者が遠慮してしまう風潮も残っています。
こうした課題に対し、MinQは「情報を集め、環境を整え、社会全体で支え合う」アプローチで解決を図ろうとしています。具体的には、信頼できる観光情報の発信やコミュニティづくり、行政・企業への働きかけを通じて、物理的・心理的な外出の壁を取り除く活動を展開しています。
社会構想デザイン機構の役割
MinQプロジェクトを推進するにあたり、社会構想デザイン機構は「縁の下の力持ち」として様々な支援を行っています。その役割は多岐にわたり、プロジェクトの企画・運営から広報戦略まで包括的なサポートを任せていただいています。以下に主な支援内容をまとめます。
ビジョン策定への協力
MinQ立ち上げ時に、その理念や方向性を明確化する作業を支援しました。プロジェクトのミッションステートメントや目標設定において、社会構想デザイン機構の知見を活かし、共感性の高いビジョンを一緒に練り上げています。
クリエイティブ支援
プロジェクトの顔となるWebサイトの構築やロゴ・ビジュアルデザイン、発信コンテンツの制作をサポートしています。たとえばMinQ公式サイトでは、誰にとっても見やすく情報が得られるようデザイン面で工夫が凝らされており、機構がそのクリエイティブディレクションを担いました。
PR活動のサポート
社会的な注目を集めるため、メディア対応や広報戦略の立案をバックアップしています。プレスリリースの作成・配信、テレビや新聞への露出機会創出、共感する企業・自治体とのパートナーシップ構築など、機構のネットワークとノウハウを活かしてMinQの認知拡大に貢献しました。実際、2024年10月には長野県庁での記者発表を実現し、NHKや民放ニュースでMinQの取り組みが紹介されています。
スポンサー獲得・資金調達支援
プロジェクト運営に欠かせない資金を確保するため、助成金申請資料や企業スポンサー向け提案書の作成、プレゼンテーション支援も行っています。クラウドファンディングにも専門家の視点で伴走し、戦略的なページ構成やリターン設定をアドバイスしました。その結果、MinQ初のクラウドファンディングは目標額を大きく上回る成功を収めています(※詳細は後述)。
情報発信プラットフォームの企画運営
さらに具体的な貢献事例として、情報発信プラットフォームの企画運営があります。MinQのウェブメディアでは、バリアフリー対応の観光スポット情報やユニバーサル旅行の体験談など、信頼性の高い記事や動画コンテンツを制作・掲載しています。
社会構想デザイン機構は編集方針の策定やコンテンツ企画にも関与し、ユーザーに役立つ情報が届くよう支えています。
コミュニティ形成のサポート
また、コミュニティ形成のサポートも重要な役割です。MinQが展開するオンラインコミュニティ「ドアをあけたランド」の運営を支援し、当事者や応援者同士が交流・共創できる場づくりを手伝っています。
これにより、プロジェクトは単なる情報発信に留まらずムーブメント(社会運動)へと発展しつつあります。(参加者の中には、専門家や技術開発企業、メディア関係者、行政関係者、大手企業幹部、医療福祉従事者など、多様な属性のメンバーが在籍しています。)
イベント・ワークショップの企画運営
さらに、イベント・ワークショップの企画運営では、機構が培ったプロジェクト運営ノウハウを活かし、実証実験やセミナーの設計から当日の進行まで寄与しました。企業・自治体と連携したユニークな企画(後述のライドシェア実証実験など)も、こうした支援体制のもとで実現しています。
データ活用の推進
加えて、データ活用の推進にも取り組んでいます。移動サービスとのMaaS連携や、障害当事者の移動データの利活用に向けたリサーチなど、テクノロジー面での検討も機構がバックアップし、将来的なサービス改善のための基盤づくりを支えています。
プロジェクトの実績と成果
MinQは2024年の本格始動以来、着実に成果を上げてきています。ここでは主な実績と社会的な反響を紹介します。
イベント開催による啓発と連携強化

MinQはユニバーサルツーリズム推進のため、関係者が直接顔を合わせて議論・交流するイベントを企画しています。例えば、ユニバーサルツーリズムシンポジウム「旅は道づれ 余話のたね」を2024年11月に東京・千駄ヶ谷で開催し、当事者や専門家、企業・行政担当者など多数の参加者が集いました。
このシンポジウムでは、ユニバーサルツーリズムの現状や展望について多角的なパネルディスカッションが行われ、参加者からは「具体的な課題解決のヒントが得られた」「ネットワークが広がった」と好評を博しました。実際にシンポジウムを契機として、新たに連携を申し出る自治体職員や企業担当者も現れ、プロジェクトのネットワークは拡大しています。

データで見るインパクト(参加者数・反響など)
MinQの活動には、多くの人々や組織が共感し参加しています。その熱量は数値にも表れており、プロジェクトの勢いを示しています。まず、2024年秋に実施したクラウドファンディングでは、開始初日で100万円以上の支援が集まり、最終的に目標額200万円に対して289%となる約578万円もの資金を調達することができました。支援者数も200名近くにのぼり、社会からの高い関心と期待がうかがえます。

また、SNSでの発信にも大きな反響がありました。MinQ公式のTikTokでは視覚障害者の体験を紹介した動画が25万回以上再生されるなど、バズを生み出しています。他の投稿も軒並み数万回の再生や多数の「いいね」を獲得しており、「#MinQ」「#みんきゅー」のハッシュタグを通じた情報拡散も進みました。プロジェクトのコミュニティにも多様な人々が参加しています。
MinQのLINEオープンチャットには現在120名以上、コミュニティ「ドアをあけたランド」には150名以上のメンバーが参加しており、日々情報交換や意見提案が活発に行われています。イベントの参加者規模も着実に拡大しており、シンポジウムには数十名規模の来場がありました。
さらに、協力企業の数も増えてきており、2024年時点で交通、IT、旅行業界などから10社以上の企業がMinQの趣旨に賛同し何らかの形で協力を申し出ています。
これら数値はまだプロジェクトの途上経過とはいえ、社会的インパクトの大きさと今後の更なる拡大の可能性を示すものと考えられます。
スポンサー・パートナー企業との連携
MinQの理念に共感し、ともに活動を推進するスポンサー企業やパートナー団体も着実に増えつつあります。
ホテルやテーマパーク、キャンプ場といった観光現場の事業者ともパートナーシップを結んでおr、長野県の信州大芝高原キャンプ場や京都府の宿泊施設などでは、MinQプロジェクトに共感してバリアフリー設備の充実や障害者割引プランの提供を開始しました。
自治体との関係構築も良好で、長野県や長野市をはじめとする地方自治体がMinQの取り組みに公式に賛同し、観光部署や福祉部署との情報交換・協働が始まっています。
これら企業・行政との連携を通じ、MinQは実践的なソリューションを社会に実装しつつあります。協業によって企業側も新たな市場機会を得たりCSR(企業の社会的責任)を果たせるというメリットがあり、Win-Winの関係でユニバーサルツーリズム推進の輪が広がっています。
今後の展望
MinQプロジェクトは、今後さらに活動の幅を広げ、社会への定着を図っていきます。社会構想デザイン機構も引き続きその成長を後押ししていく予定です。以下に今後の主な展望を挙げます。
- プロジェクトのさらなる成長と機構の継続支援: 今後もMinQは国内各地でイベント開催や実証事業を展開し、参加者や協力団体を増やしていきます。それに伴い、社会構想デザイン機構は戦略策定やデザイン面での支援を強化し、プロジェクトが次のフェーズへスムーズに移行できるよう伴走します。例えば、新規エリア進出時の調査や地域ネットワーク作りなど、機構の知見を活かしてバックアップしていきます。
- ユニバーサルツーリズムの拡大に向けた次のステップ: 単発イベントや啓発から一歩進み、政策提言や制度づくりにも関与していく展望があります。MinQで蓄積した知見をもとに、観光庁や自治体へユニバーサルツーリズム推進の提案を行ったり、業界団体と協力してガイドライン策定に携わる計画も視野に入れています。こうした次のステップにより、日本全体の観光のあり方にインクルーシブな視点を根付かせることを目指します。
- アクセシブルな観光情報のプラットフォーム化: 現在はMinQの公式サイトやSNSで情報発信をしていますが、将来的にはユーザー参加型の総合プラットフォーム構築を検討しています。具体的には、誰もがバリアフリー情報や旅行記録を投稿・検索できるWebアプリを開発し、国内外のアクセシブルな旅行情報を一元管理・共有する仕組みを作ります。これにより、旅行前の情報収集から現地サポートまでシームレスに提供できるようになり、ユニバーサルツーリズムの実践がより容易になります。
- 自治体・企業とのさらなる提携強化: 既に連携のある自治体・企業に加え、新たなパートナーを積極的に開拓していきます。地方自治体とは地域ごとの課題に即したモデル事業(例:観光地のバリアフリーマップ作成やユニバーサルツアー商品造成など)を共同で進め、企業とは新サービス開発やキャンペーン展開で協業します。特に交通、宿泊、IT分野の企業との提携は重視しており、MaaS事業者や旅行予約サイトとの連携によって、バリアフリー対応の経路検索や予約システムの実装など具体的サービス創出を狙います。
- 国際展開の可能性: 将来的には、日本国内に留まらず海外の都市や団体とも連携しグローバルな知見交換を行う展望もあります。例えば、ユニバーサルツーリズム先進国の事例を学ぶための海外調査や、アジア近隣国のアクセシブルツーリズム団体とのオンライン交流、国際会議への参加などを計画しています。将来はMinQのモデルを海外都市に展開したり、逆に海外の優良事例を日本に取り入れることで、世界水準で見ても魅力的で誰もが楽しめる観光地づくりに貢献したいと考えています。
これらの展望を実現するためには、多くのステークホルダーとの協力が不可欠です。幸いにもMinQの趣旨に賛同する声は増えており、今後も行政・企業・市民が垣根を越えて協働することでプロジェクトの可能性は無限に広がるでしょう。社会構想デザイン機構もその橋渡し役として、柔軟な発想とデザイン思考を持ってMinQの未来図を共に描いていきます。
おわりに
MinQが目指すのは、「誰もが当たり前にワクワクする外出を楽しめる社会」という、新しい当たり前の創出です。それは障害のある人だけでなく、高齢の方や子育て中の親御さん、そして私たち誰もが恩恵を受けられる優しい社会でもあります。ユニバーサルツーリズムが広がることで、多様な人々が交わり支え合う豊かなコミュニティが生まれるはずです。
一般社団法人社会構想デザイン機構は、デザインの力で社会課題を解決することをミッションに掲げています。MinQプロジェクトへの関与はまさにその理念の体現であり、今後もプロジェクトと二人三脚で歩みながら持続可能な仕組みづくりに挑戦していきます。
本記事をご覧いただいた行政の皆様、企業の新規事業担当の皆様におかれましては、ぜひMinQの取り組みに関心を寄せていただき、一緒にユニバーサルツーリズムの未来を切り拓いていただければ幸いです。
また、MinQでは現在、支援・協力してくださるパートナーを広く募集しています。具体的には、プロジェクトを財政面で支える寄付・スポンサーシップ、イベントやキャンペーンを共催する協業パートナー、現場で活動を支えるボランティアスタッフなど、様々な形でご参加いただけます。皆様のご協力が、バリアを取り払い「おでかけの自由」を分かち合う社会への原動力となります。
どうかMinQへの温かいご支援・ご参画をよろしくお願い申し上げます。一緒に、誰もが笑顔で旅を楽しめる未来をデザインしていきましょう。