善通寺市の電子投票、画面を読めない人はどう選び、確かめる?
2026年8月30日の県知事選と10月6日までに確認した資料から、点字・代理投票、完了音と候補者確認、体験会の評価範囲について
善通寺市の電子投票を一次資料から読み、残る点字・代理投票、完了音と候補者の確認、体験会の評価と当事者の参加を区別する。自分の意思と秘密を守って一票を確かめる条件を考える。
ざっくり言うと
- 点字投票等は紙の方法を残し、操作補助や代理投票を案内
- 完了の音声と候補者を自分で聞いて選ぶ機能を区別
- 意見聴取と改善を区別し、一般的な体験評価から視覚障害者全体の使いやすさを推定しない
見出し画像はAIで生成した概念画像で、実際の投票所や、使用を認められた投票補助機器を撮影した写真ではない。
本記事は公開資料に基づく一般情報であり、法的アドバイスではない。投票当日の手続きは、選挙管理委員会へ確認する必要がある。
何が起きているのか
8月の電子投票と、残る従来の方法を確認
候補者の名前を画面で選ぶ投票は、文字を書きにくい人の負担を減らせる。では、その画面を読めない人は、自分で候補者を比べ、選び直し、最後に一票を確かめられるだろうか。電子投票を評価するときには、開票の速さとともに、本人がどこまで選べるかを見たい。
2026年8月30日の香川県知事選挙では、善通寺市内の投票区でタブレットによるを導入した。は、候補者を画面で選び、投票内容を記録媒体へ保存する方式を説明する。投票日は県の選挙案内(外部サイト、新しいタブで開きます)と投開票結果の公表(外部サイト、新しいタブで開きます)で確認できる。
では、点字投票、不在者投票、仮投票は電子投票の対象外で、従来の方法を残す。端末の操作が難しい場合にも、補助者の助言や代理投票を利用できる。電子化で支援を全て廃止したという出来事ではない。
それでも、支援の方法が残ることと、本人が希望する方法で投票できることは同じではない。点字を使う人、画面の拡大を必要とする人、音声で内容を知りたい人では、必要な条件が異なる。10月6日までに確認した公開資料から、現在の選択肢と、次に確かめるべき使いやすさを分けて考える。
背景と文脈
完了音・候補者確認と、点字・代理・操作補助を区別
完了の音声と、候補者を確かめる音声
市の操作案内(外部サイト、新しいタブで開きます)では、投票開始、候補者の選択、選択した名前の確認へと進む。間違っていれば選び直せる。投票を終えると、画面のアニメーションと完了を知らせる音声が流れるという説明だ。
この完了音声だけでは、画面を見ることが難しい人も、候補者名を聞いて選び直せるとは分からない。受付の案内、候補者の比較、選択内容の確認、完了の通知は、別々の段階である。ある段階で音が出ることを、全ての段階を音声で進められるという説明に広げないようにしたい。
デジタル庁の7月15日の導入事例(外部サイト、新しいタブで開きます)は、音声読み上げ機能の追加を今後の検討として紹介した。これは当時の説明であり、10月までの追加機能や善通寺市での設定を本稿は確認していない。機能が今もないと断定せず、本人が使える機能を確認した範囲を明らかにして伝える必要がある。
点字、代理投票、操作の手助けを分ける
点字を使える人には、紙によるという方法が残る。字を書けない場合には、投票管理者が指定した補助者が代筆するがある。香川県の選挙Q&A(外部サイト、新しいタブで開きます)は、これらを案内している。家族が本人の代わりに候補者を決めるという制度ではない。
端末を自分で操作するときに助言を受けることと、代理で投票してもらうことも違う。どこまで手助けを頼みたいか、誰に何を伝える必要があるかが変わる。目が見えにくいという一つの説明だけで、本人に合う方法を職員が決めてしまうと、残された選択肢を使いにくくしてしまう。
自分で進めるための確認
候補者を選ぶ過程に注目
- 候補者を知る
- 読める・聞ける情報を選べるか
- 選ぶ・選び直す
- 操作と変更を本人が確かめられるか
- 投票を確定する
- 選択内容と完了を区別できるか
現行の案内で残る方法
本人の意思に沿って利用
- 点字投票
- 従来の紙の方法を残す
- 操作の手助け
- 端末の操作について助言を受ける
- 代理投票
- 指定された補助者が本人の意思を確認
善通寺市の説明と香川県Q&Aに基づく整理。左側は本稿が提案する確認項目で、実際の端末が全てに対応することを示す図ではない。完了音は候補者名の読み上げとは異なる。
投票所の端末と、自宅のネット投票
今回の電子投票は、投票所へ行き、そこに設置された端末を使う方法である。京セラは、ネットワークを経由せず、端末に直接接続した記録媒体へ保存すると説明する。自宅からインターネットで投票できる仕組みを導入したわけではない。
地方選挙で使える電子投票と、国政選挙の投票方法も分ける必要がある。市の5月の説明は市長・市議選についての条例を扱い、県の7月の条例によって県知事選での実施が可能になった。時点や選挙の種類が異なる説明を、全国で同じ方法になったという話にまとめないことが大切だ。
構造を読む
意見聴取、体験会、会場と秘密を守る改善を考える
意見を聞いたことと、改善を決めること
では、総務省が、音声表示の条件を改める前に障害者団体から意見を聞いたと説明した。音声表示のない投票機を使う場合は、代理投票や点字投票を利用できるよう、選挙管理委員会へ要請したとも述べている。
同じ会議で、総務大臣の答弁(外部サイト、新しいタブで開きます)は、投票環境の研究会に障害者が委員として参加したことを紹介する。意見を全く聞かなかったと断定することはできない。一方、この答弁だけで善通寺市の調達に当事者がどう関わったか、どの改善を実現したかが分かるわけでもない。
意見を聞く機会があったなら、次はその意見がどの条件に反映されたかを確かめたい。候補者の名前を確認できるか、選び直しで困る箇所がないか、周囲に投票先を伝える範囲を選べるか。試した結果と、採用した改善・見送った改善の理由をつなぐことが、当事者の参加を意味のあるものにする。
意見を改善へつなぐ場面では、機能の名前だけでなく、本人がどの段階を自分で進めたいかを聞く方法がある。たとえば操作方法の説明を聞きたいことと、選んだ候補者の確認を人に任せたいことは同じではない。手助けを申し出たという事実から、選択まで他者へ任せる同意があるとは考えない。端末でできることを説明する担当と、当日の支援を調整する担当が違うなら、何を引き継ぐかを本人に確かめたい。
体験会の高評価は、誰の使いやすさか
善通寺市は、導入前に体験会とアンケート、意見募集(外部サイト、新しいタブで開きます)を行った。アンケートの公開集計(外部サイト、新しいタブで開きます)では、多くの回答者が導入に肯定的だった。年齢や、デジタル機器の操作に慣れているかによる比較も示している。
この結果は、体験して回答した人の評価を知る資料である。市民全体を無作為に調べた結果ではなく、視覚障害の有無や点字の利用別に、候補者の選択を最後まで進められたかを示した集計でもない。高齢者や機器に不慣れな人からの評価が良くても、それだけで画面を読めない人の確認方法まで分かるとは限らない。
市の意見と回答(外部サイト、新しいタブで開きます)には、書くことが難しい人にも投票しやすくなるという見方がある。そこにある利点を認めながら、文字を書く負担を減らすことと、画面の内容を知るための条件を整えることを、一緒に進めたい。公開された回答に記載がないことを、他の場で意見を聞いていない証拠とすることも避けるべきだ。
公開集計から分かること
回答した人の体験と意見
- 操作の印象
- 分かりやすさ・時間・画面の見やすさ
- 属性の比較
- 年齢やデジタル機器への習熟度
- 範囲の注意
- 全有権者や視覚障害者全体の評価ではない
追加で確かめたいこと
本稿が提案する検証項目
- 本人の方法
- 点字・音声・拡大などを選べるか
- 選択と秘密
- 選び直し・確認と支援の範囲が合うか
- 次の改善
- 困った箇所と変更の理由を残せるか
市のアンケートと公表した意見・回答に基づく整理。左側の結果から、右側を検証済みとは推定しない。当事者が体験会に参加しなかったという意味でもない。
端末の前後にも、本人の選択を残す
は、点字の候補者名簿、音声等の情報、代理投票で秘密に配慮する取組を紹介している。投票所で使える道具だけでなく、投票先を考えるための情報から支えるという視点だ。制度としての案内があることと、全ての会場で希望どおり受けられることは別に確かめる必要がある。
公共サービスのは、入口の情報、移動、受付、操作、確認へと続く。例えば、点字の公報を入手できても、会場へたどり着けない人の困難は端末の改良だけでは解消しない。逆に、係員の案内で会場に入れても、候補者を比較する情報を事前に得られなければ、選択の準備が整わない。
本稿は、端末の試験と会場の準備、職員の説明をつなぐ方法を提案する。本人が希望する手助けを確認し、できることとできないことを事前に伝える。機器の機能変更があるときは、以前の説明との違いも示す。投票先などを残さずに、どの段階で困ったかを把握できれば、秘密を守りながら次の改善へつなげられるのではないか。
会場の準備を検討する際には、機器の操作に成功した人の条件も残したい。明るさ、周囲の声、机や椅子の位置、説明を待つ場所が変わった場合に、同じように使えるかを確かめる方法がある。これは試験を設計するための例であり、実際の善通寺市の投票所に問題があったという報告ではない。必要な条件を本人と確認し、別の会場にも同じ結果を無条件に広げないことが大切になる。
支援の評価を、投票先の記録と分ける
使いやすさを調べるときにも、誰に投票したかを集める必要はない。例えば、模擬投票で候補者を選び直す場面を用意し、どこで音声や説明が必要になったかを本人に確かめる方法が考えられる。これは本稿の提案であり、善通寺市でこの試験を実施したと述べるものではない。
試験では、点字を使うか、画面をどの程度読めるか、希望する手助けは何かを分けたい。同じ障害名でも必要な条件は異なり、操作に慣れた人の成功だけでは、初めて使う人の困難が見えない。少人数の評価を公表する場合は、個人を推測できる組み合わせの情報を出さない配慮も必要だ。
体験会へ来られなかった人の条件を検討する際も、参加を断った理由を一つに決めない方がよい。案内を知らなかったのか、移動や日程が合わなかったのか、試す方法が分からなかったのかを、分かる範囲で分ける。回答がない人を機器に不満がない人へ分類せず、次にどう意見を聞けるかを考えたい。希望する支援の説明を集めるときには、投票先を尋ねる調査へ広げない。
本番の投票所でも、本人が候補者を選ぶことと、職員が支援の方法を調整することは役割が違う。投票先を記録せずに、案内した方法や会場の準備、改善が必要な箇所を確認する。その結果を次の機器選定や職員の研修へ返せれば、相談した人の負担だけに頼らず、選べる方法を増やしていける。
関連ガイド・コラム
支援の件数と本人へ届いた結果を分けて評価する考え方は、アウトカム指標設計ガイド(このサイトの記事)に整理している。
参考書籍
小林昌之編の2024年刊『アジアの障害者の政治的権利――選挙権と被選挙権の実質的平等を求めて――』(外部サイト、新しいタブで開きます)を関連読書として挙げる。アジア経済研究所の紹介(外部サイト、新しいタブで開きます)は、アジアの障害者の政治参加と、政治的権利を実現する法制度を分析した書籍として説明している。公開紹介と書誌の確認にとどまり、書籍本文は未読である。善通寺市の端末機能や投票所の実績を証明する資料には用いない。
残る問い
電子投票の効率化を、誰もが同じ速さで操作できることと考える必要はない。時間がかかっても、自分に合う方法を選び、意図した一票を確かめられるなら、それは大切な成果だ。開票時間や必要な職員数とともに、候補者を知るところから確認まで、どこに手助けが必要だったかを見ていきたい。本人の希望と秘密を守りながら、その違いを次の選挙の準備へ返す方法を考えられるだろうか。同じ方法を選ばなかった人の理由も、支援の不足と本人の希望の違いを分けて受け止めたい。
機器を改善するまでの間も、現在使える点字や代理投票の案内は欠かせない。候補者の選択を音声で進めたい人に、端末の機能と支援の範囲を誰が説明するのか。事前に相談した内容が当日の職員へ伝わり、希望と異なる場合に確かめ直せることも重要である。支援を申し出た人に、毎回同じ説明を最初から繰り返す負担を集中させない仕組みを考えたい。事前の相談から変わった条件があれば、何が変わり、当日どこへ確かめるかまで案内できるだろうか。
意見を聞く機会を設けた後には、何を変え、何をまだ変えられないのかを示したい。公開する体験結果に、参加しやすかった人だけの評価が並んでいないか。声を寄せにくい人も、自分に合う方法を試し、改善の理由を知ることができるか。次の選挙までに選挙管理委員会と事業者、当事者が一緒に確かめる条件を、明らかにしたい。対応を見送った項目にも理由と次の確認を残し、本人がその説明に疑問を返せるかを確かめたい。
参考文献
善通寺市、香川県知事選挙で京セラの「デジ選®」を採用 — 京セラ (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
今回の選挙について — 香川県選挙管理委員会 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
香川県知事選挙及び香川県議会議員補欠選挙・投開票結果 — 香川県選挙管理委員会 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
電子投票とは? — 善通寺市 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
電子投票のしかた — 善通寺市 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
電子投票、どう導入する?条例制定から開票まで、宮崎県新富町の実践に学ぶ — デジタル庁 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
国会会議録検索システム — 参議院予算委員会・長谷川孝政府参考人 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
国会会議録検索システム — 参議院予算委員会・林芳正総務大臣 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
選挙Q&A — 香川県選挙管理委員会 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
第5章 住みよい環境の基盤づくり 第2節 3 — 内閣府 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
電子投票の導入についてパブリックコメント及びアンケートを実施しました — 善通寺市 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
電子投票に関するアンケート結果(令和7年12月20日〜令和8年1月23日実施) — 善通寺市 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
条例案に対する意見と市の考え方 — 善通寺市 (2026). 一次資料(2026年10月6日参照)
読んだ後に考えてみよう
- 本人はどの方法で候補者を選び直し、確かめたいか。
- 体験会へ参加しにくい人の条件も調べられているか。
- 支援の改善を、投票先の記録と分けて進められるか。
この記事の用語
新着コラムをメールで受け取る
週1-2本の社会構造分析コラムを配信します。登録は無料です。
活動を支える賛助会員
年会費5,000円で、ISVDの調査研究と情報発信を支えられます。自動更新はありません。




