メインコンテンツへスキップ
お問い合わせ

一般社団法人 社会構想デザイン機構

〒112-0001 東京都文京区白山2-22-20

交通空白の「実施中」は、解消した数なのか

10月16日施行予定の地域交通法改正、5月15日の地区集計と予約・往復の条件について

更新: ヨコタナオヤ(横田直也)約10分で読めます

5月15日時点の交通空白2,740地区と、前年の2,057地区の追跡を分けて読む。10月14日時点で公表された法改正と調査をもとに、計画・実証・運行と、予約・往復の成立を区別する。地区数だけで自治体を評価せず、残る移動の課題と継続費を考える。

ざっくり言うと

  1. 5月15日時点の2,740地区と、前年対象2,057地区の追跡は別の集計である
  2. 実施中には実証なども含まれるため、その地区数を解消件数とは呼べない
  3. 10月14日時点の発表では主要改正の施行予定日は10月16日。計画・運行と予約・往復の成立を分けて確認する

記事の画像はAI生成のイメージで、実在する自治体・停留所・対策事業の記録写真ではない。

何が起きているのか

10月14日時点の法改正資料を読む。5月15日時点の2,740地区と前年対象2,057地区の追跡を分ける。

本稿は交通政策と法制度に関する一般情報であり、個別案件への法的アドバイスではない。計画の作成や運送の具体的な手続きは、関係行政機関や弁護士等の専門家に確認する必要がある。

本稿は10月14日時点の公表資料を読む。地域交通の法改正を、住民の移動が改善したという報告として読むことはできない。は、6月10日に公布された地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の改正(以下、地域交通法の改正)を10月16日に施行すると発表した。この改正は、10月14日時点ではまだ施行されていなかった。自治体が輸送資源を調整する制度を整えることと、必要な人が病院や学校へ行けることの間には、計画、合意、運行、利用の確認がある。

施行日と調査日を分ける

9月18日には、施行に向けた関係法令とガイドラインの整備も関係法令・ガイドラインの整備として公表された(外部サイト、新しいタブで開きます)。当時の発表によれば施行規則などの施行予定日も10月16日であり、資料が公表された日から新しい手続きが全て利用可能になったという意味ではない。新制度を前提とした運行の実績を論じるなら、施行後に誰が何を実施したのかを別に調べる必要がある。

一方、全国のを数えた調査は、取組方針2026(外部サイト、新しいタブで開きます)に載る2月から5月の調査である。5月15日時点で回答したのは1,705市区町村である。法改正後の効果を測った調査として、この数字を使うこともできない。

同じ「実施中」でも対象が違う

調査が把握した、何らかの対応が必要な地区は2,740地区で、この5月15日時点の集計では実施中1,274地区、準備中1,124地区、検討中342地区となっている。地区は自治体の課題把握の単位であり、自治体数、利用者数、運行便数と置き換えて数えない。

同じ資料には、前年の2,057地区を追跡した集計もある。こちらは実施中1,300地区、準備中588地区、検討中169地区で、実施中には交通空白の解消を含むとの注記がある。1,274と1,300は、同じ対象を二通りに数えた数値として照合するものではない。

「実施中」の地区数を、そのまま交通空白が解消した地区数とは呼べない。 取組方針の目標を説明する段落は、実証運行から本格運行として定着しつつあるものまで、取組の成熟度には幅があると説明する。対策へ着手したことを認めたうえで、どの利用条件まで改善したかを確かめる読み方が必要である。

5月15日集計:2,740地区

実施中
1,274地区
準備中
1,124地区
検討中
342地区

前年対象:2,057地区

実施中
1,300地区
準備中
588地区
検討中
169地区

国土交通省・取組方針2026(印刷頁7~9、5月15日時点)。前年対象の実施中は解消を含む。両方を同じ対象の割合として比べない。

5月15日時点でも集計対象が違う:地区全体と前年対象の追跡

背景と文脈

近い停留所でも使いづらい場合がある。地区数で自治体を順位付けせず、車両・運転者・資金と合意の条件を分ける。

停留所が近くても使いづらい

交通空白は、全国一律の距離だけで決まる名称ではない。取組方針は、移動手段がない場合に加え、利用しづらいなどの困りごとを含め、地域の実情や住民の視点を踏まえて市区町村が判断するとしている。駅から近くても列車が少ない地域や、バス停が近くても坂道が多い団地、前日予約が必要で朝夕に配車されない区域運行が、その例である。

国が挙げたこれらの例からは、停留所からの距離だけで希望する時間に移動できるかを確認できないことがわかるが、全地区で同じ状況が観察されたわけではない。徒歩で届く停留所に、用事の後に乗れる便があるか。時刻表に便があっても、電話やアプリで予約できるか。路線を示す地図と、暮らしに必要な移動の条件を併せて読む必要がある。

地区数で自治体を順位付けしない

地区が多い自治体ほど対策が遅れているとも限らない。国土交通省は、課題を詳しく分析し、高い目標を持つ自治体ほど多くの地区を挙げる場合があると記す。特に中小規模の市区町村では、人手や知識が足りず、地区の把握が十分でない例もあるという。集計は5月15日時点のもので、継続的な把握が欠かせないと注意する。

地区数の減少を目標にするだけでは、調査で新しく発見した困りごとをどう扱うかが曖昧になる。住民が問題を申し出た結果、対象地区が増えた場合には、把握が進んだ面も記録する必要がある。前年からの地区の範囲変更、解消、新規把握がどの記録に対応するのかを確かめず、増減だけから政策の成功や失敗を決めることはできない。

地区の指定範囲と、サービスを利用できる人の範囲も同じとは限らない。例えば登録条件を設ける運行を想定するなら、地区内に住んでいても条件を満たさない人や、通院先まで運行区域が届かない人を別に確かめる必要がある。地区全体が対象になったという説明から、全住民の移動が改善したとは推定できない。

車両と運行の条件を分ける

新制度の一つであるは、全部や一部の休廃止、またはそのおそれのある路線・営業区域で運送を再開・継続するため、自治体が運送主体を選び、地域の輸送資源で支援する枠組みである。10月16日施行版の第26条の3(外部サイト、新しいタブで開きます)では、実施計画に運送の主体、資金額と調達方法などを定め、人員派遣等を行う場合はその主体も記す。計画作成前に、現在運送している者、運送を提供させようとする者、人員派遣等(人員の派遣、車両などの輸送施設の貸与、運送に関する役務の一部の提供)を行おうとする者など、同条第4項の関係者の同意を得る。第2条第12号の「バス路線等」は、乗合バスの路線や営業区域、タクシーの営業区域、自家用有償旅客運送の路線や区域を指す。車両を見つけるだけでは計画は成立しない。

同じ施行版の第26条の6は、施設利用者用運送サービス提供者とその他の地域の関係者に、事業へ協力する努力義務を置く。前者は第2条第5号で、施設の利用に付随して、事業用自動車以外の車で無償の送迎を行う施設の設置者・経営者と定義される。施設の車両が、施行日に一斉に誰でも乗れる交通へ変わるという意味ではない。施設本来の送迎と共用できる時間、運転者、乗降の支援、運行費の負担が合うかを、関係者が具体的に調整する必要がある。

第28条は、再構築実施計画など5種類の実施計画の作成に必要な資料提供等を、地方公共団体が公共交通事業者等へ求められると定める。求められた者は、正当な理由がある場合を除き応じなければならない。この条は一般公開を定めていない。地域の分析で住民の行き先や健康に関する情報を使うなら、必要な記録、共有する相手、公表する範囲を別に決めることを本稿は提案する。

構造を読む

計画と運行の記録に、予約・往路・帰路の確認を対応付ける。使わなかった理由と継続の費用も調べる。

計画と利用の記録をつなぐ

9月改訂の手引き第5版・理念編(外部サイト、新しいタブで開きます)は、現地で利用者の目線から実態を知り、目的、季節、曜日、時間帯、頻度を調べることを勧めている。計画の作成だけで終えず、利用者数、収支、公的負担額などを評価し、その結果を見直しに反映させる考え方である。

全国の区分は、取り組むべき地区を把握し、支援の段階を確認するために使える。そのうえで住民の移動を評価するには、誰が、何の用事で、どの条件なら利用できるかを加える必要がある。ここでは、行政の進捗記録と、希望した移動が成立したかの記録を対応付ける方法を提案する。全自治体がすでに実施している評価方法として述べるものではない。

国の表の同じ欄にある地区でも、提供する便や利用の条件は異なりうる。地域で評価するときは、運行区域、対象者、曜日、予約方法を同じ資料にまとめ、開始時点の条件と変更後の条件を残しておくと、後から何が改善したのかを確認できる。調査時点の区分が変わったことと、住民に提供したサービスが変わったことを、その記録で照合するのである。

例えば通院を対象にする場合、運行開始日と乗車人数に加え、診療の受付時間に間に合う便、予約方法と締切、用事が長引いた場合の帰路を確認する。これは想定する確認場面であり、特定の地区の通院実績ではない。片道の乗車が増えても、帰りに家族の送迎が必要なら、往復が確保されたかは別に記録する必要がある。

計画・運行の記録

実施計画
主体と資金
運行開始
期間と便
乗車実績
利用した人数

住民の利用条件

予約
取れたか
往路
用事に間に合うか
帰路
帰宅できるか

筆者による確認方法の提案。全国で測定済みの成果や、新しい法律が保証するサービス水準を示す図ではない。

行政の進捗と、暮らしに必要な移動の確認を対応付ける

乗らなかった人の理由も調べる

乗車の記録には、実際に移動できた人が載る。予約が取れなかった人や、利用方法がわからず申し込まなかった人は、乗車人数からは把握できない。利用が少なければ、需要が少ないのか、希望する時間や行き先に合わないのかを分けて調べる必要がある。

予約の不成立を調べる場合も、満車、対象区域外、受付時間外などの理由を分け、同じ人の申し込みを重複して人数に数えないようにする。受付記録で確認できる範囲を明示し、申し込み自体を諦めた人については、聞き取りなどの別の調査が必要になる。参加者だけの回答から、地区全員の利用可能性を推定することも避けるべきである。

聞き取りでは、使わなかったことを不便と決めつけず、別の交通を選べた場合と、行きたかったが断念した場合を分ける。同じ「利用なし」でも、判断すべき課題は違う。記録の集計や共有では、個人の通院先や生活の予定を特定されない範囲にまとめ、情報を提供しないことで利用上不利にならない調査方法を検討する必要がある。

往復の条件と継続費を併せる

移動が成立したかを調べる際には、目的と曜日をそろえて導入前後を比べ、病院や学校の配置、家族の送迎など他の条件の変化も記録する。同時期に施設の統合があれば、行き先や移動距離も変わるため、外出回数の増減だけを新しい交通の効果とは言い切れない。

サービスが使えることと、続けられることも併せて見る必要がある。手引きの印刷頁14~15は、関係者が共通認識を持てる目標と数値指標を設定するため、利用者数、収支、公的負担額を挙げる。本稿は、それらを継続の見通しを話し合う材料にもしたい。補助の終了後の運行費や担当者が未定なら、実証中の利用を確保できても、そのまま恒久的な交通空白の解消と判定することはできない。

費用を比べる際にも、車両の運行費だけでなく、電話予約を受ける人員や乗降を支援する仕事を、どの主体が負担するか確認する。施設の車両を共用しても、受付や調整の仕事まで自動的に共有されるわけではない。追加の便で実現した移動と、その便を続けるために必要な費用を対応付けることが、継続や変更を話し合う材料になる。

どの時間帯のどの移動を優先するかは、地域の住民と運行する事業者が具体的に話し合う内容である。住民参加型政策形成プロセス設計(このサイトの記事)で整理した、参加者の範囲と判断の記録の問題もここに関わる。調査で困りごとを挙げることが不利な評価につながらず、使えなかった理由を計画の見直しへ戻せる運営が必要である。

残る問い

施行後、誰のどの移動が確保されたか。予約できなかった人の情報と、実証後の負担を見直しへ戻せるか。

地域交通法の改正で、誰のどの移動を確保できるか。計画の認定日と運行開始日に加え、通院や通学に間に合い、用事の後に帰宅できる条件を住民が確かめられるだろうか。便を増やす方法も、予約の締切や運行時間を変える方法もあるが、必要な運転者と費用は異なる。自治体と事業者が目的・曜日別の利用条件を比較し、改善が届かなかった人の記録から次に変える条件を選ぶことを提案する。

予約できなかった人と、申し込みを諦めた人は、どう把握するか。受付記録なら不成立の理由を数えられるが、申し込まなかった事情は残らない。聞き取りで補う場合も、回答した人だけの声を地区全体へ広げられない。自治体が調べた対象と期間、参加しなかった人について分からない点を示し、住民の申し出を次の調査や予約方法の見直しにつなげられるかが問われる。

実証後の運行費と調整の仕事を誰が負担するのか。自治体が継続費を負担する案も、施設の送迎と共用する案もあるが、予算や勤務、利用条件が変われば維持できなくなる場合がある。住民・自治体・事業者が、受付と乗降支援を含む費用、費用を負担する主体、合意を更新する時期を確認し、継続・変更を判断できる資料を残せるか。地区数と利用条件を別々に確かめる記録を、その判断に使いたい。

この記事で使った統計の出典

  1. 1国土交通省 交通空白解消に向けた取組方針2026(2026年5月15日時点) 出典を開く
  2. 2国土交通省 交通空白解消に向けた取組方針2026・前年対象の進捗(2026年5月15日時点) 出典を開く

参考文献

「交通空白」解消に向けた取組方針2026 — 国土交通省「交通空白」解消本部 (2026). 国土交通省

「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」を閣議決定 — 国土交通省 (2026). 国土交通省

改正地域交通法の施行に向け関係法令・ガイドラインを整備します~「交通空白」解消は成長投資~ — 国土交通省 (2026). 国土交通省

地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(10月16日施行版) (2007). e-Gov法令検索

地域公共交通計画等の作成と運用の手引き 第5版 理念編 — 国土交通省 (2026). 国土交通省

参考書籍

『持続可能な交通まちづくり ――欧州の実践に学ぶ (ちくま新書 1824)』(外部サイト、新しいタブで開きます)(宇都宮浄人・柴山多佳児、筑摩書房、2024年)を、交通政策と暮らしの関係を考える関連読書として挙げる。公開書誌と出版社紹介・目次に基づく選定で、書籍本体は未読である。2026年の調査や法改正の根拠は上記の一次資料による。

書誌と目次は出版社のページ(外部サイト、新しいタブで開きます)にある。

読んだ後に考えてみよう

  1. 5月15日時点の地区集計と前年対象の追跡を、どの資料で区別できるか
  2. 予約できなかった人と帰りの移動は、運行実績のどこに残るか
  3. 実証終了後の運行費と調整の仕事を、誰が負担するか

この記事の用語

交通空白
国土交通省の2026年リストアップ調査で、利用できる移動手段がない、または使いづらいなどの困りごとを抱える地域。距離だけで全国一律に区分せず、地域の実情や住民・利用者の視点を踏まえて市区町村が判断する。
自動車地域旅客運送サービス再構築事業
2026年10月16日施行版の地域公共交通活性化再生法第2条第12号に定める事業。全部や一部の休廃止、またはそのおそれのあるバス路線等の運送を再開・継続するため、自治体が運送主体を選び、地域の関係者による人員派遣、車両貸与などの支援を調整する。

新着コラムをメールで受け取る

週1-2本の社会構造分析コラムを配信します。登録は無料です。

ISVDの活動に参加しませんか?

会員登録で最新の研究・活動レポートをお届けします。協業やプロジェクト参加のご相談もお気軽にどうぞ。

活動を支える賛助会員

年会費5,000円で、ISVDの調査研究と情報発信を支えられます。自動更新はありません。

検索

⌘K で検索を開く・閉じる