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一般社団法人 社会構想デザイン機構

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コメの値下がりで、農家の手取りも減ったと言えるか

2026年9月28日~10月4日の店頭価格と8月の玄米取引価格、4月のコスト指標について

更新: ヨコタナオヤ(横田直也)約10分で読めます

9月28日~10月4日のスーパー平均はコメ5kg2,860円。ただし、店頭の値下がりから農家の手取りは分からない。玄米の相対取引価格と4月のコスト指標を、取引段階・年産・費用の範囲から区別する。差額を利益や最低価格と扱わず、家計の負担と営農の継続を考える。

ざっくり言うと

  1. 9月28日~10月4日の店頭平均2,860円は、全国約1,000店の精米5kg税込の価格である
  2. 8月の玄米相対取引価格と4月のコスト指標は、対象・時点・費用の範囲が異なる
  3. コスト指標は利潤を含まない参考値で、農家の手取りや最低価格を保証しない

何が起きているのか

9月28日~10月4日の店頭平均は2,860円。8月の玄米相対取引価格とは、販売・契約の段階、期間、年産を分けて読む。

コメの店頭平均が下がっても、同じ商品を買う家庭の負担や農家の受取額がどう変わったかは、その数字だけでは分からない。精米を買う価格、玄米を取引する価格、生産と流通にかかる費用は、同じ「米価」のニュースの中で並んでいても、測っている対象が異なる。安くなったことと、作り続けられることを考えるには、その違いを先に確かめる必要がある。

9月28日~10月4日の週次平均が測るもの

が10月9日に公表した資料では、平均価格は精米5kg税込2,860円である。前週の2,926円より66円(2.3%)低く、前年同期からは1,345円、32.0%低い。ここでいう平均は、全国約1,000店舗のスーパーのであり、全国の全小売店や全銘柄を一律に調べた値ではない。10月14日現在の公表資料を用いている。

農水省の同じ週次資料は、銘柄米とブレンド米等を分けている。同じ週の銘柄米は販売割合85%を占め、平均価格は2,882円となり、ブレンド米等の販売割合は15%で、その平均価格が2,733円となった。平均の動きには各商品の価格と、どの商品が売れたかの両方が関わり、ある家庭が買っている袋も同じ率で安くなったとは限らない。家計への影響を確かめるなら、容量と銘柄を揃えた購入記録が必要になる。

この週は、銘柄米の平均が前週より66円、ブレンド米等が72円下がった。両区分とも値下がりしたが、全体の66円下落を全商品共通の変化として読むことはできない。値下がりを報じる際にも全体の平均と商品区分の価格、販売割合を併せて読み、同じ家庭が買う商品の価格変化は購入記録で確かめる必要がある。

農水省の同じ週次資料では、販売数量は前年同期比19.5%増となったが、これは同じ人を追跡した調査ではない。コメを買わなくなった人が戻ったのか、買い続けた人が多く買ったのかを、この合計だけで区別することはできない。価格と数量の変化を認めることと、食習慣が元に戻ったと結論付けることは別の判断である。

同じ「米価」でも取引の段階と年産が違う

農水省が公表する8月のは、全銘柄平均31,556円/玄米60kg税込である。これは2025年産米について出荷業者と卸売業者等が数量と価格を決めた主食用の契約を測るもので、2026年産の新米価格でも、9月末から10月初旬の店頭価格でもない。

価格は基本的に1等米の運賃・包装代・消費税を含む。資料には、大口割引や実際の引取りに応じた調整、運賃を含めない産地在姿の取引分も対象にするとの注記がある。したがって「農家が60kg売ると31,556円が振り込まれる」という読み方はできない。契約の相手と費用の含め方が、農家からの販売とは異なる。

60kgを5kgへ割り算すれば価格が同じ条件になったように見えるが、玄米を精米する際には重さが変わり、取引段階ごとの仕事も加わる。年産、期間、等級、配送条件が違う数字を、単位だけ揃えて同じ取引の価格差にしてはいけない。農家の受取額を確認するには、その農家の販売契約と実際の精算内容を調べる必要がある。

相対取引の表にも、8月単月と、出回りから8月までの年産平均が並ぶ。2025年産米の年産平均は35,330円で、単月の31,556円と異なる。同じ資料内でも、どの期間を集計したかで値が変わる。店頭の1週間、生産年ごとの契約、費用指標の公表月を並べる際には、まずそれぞれの期間を残すことが、価格の動きを取り違えないための確認になる。

背景と文脈

4月のコスト指標は利潤を含まない。採用した生産規模と家族労働費を確かめ、全農家の実際の支出と区別する。

2,816円は利潤を含まない参考値

4月7日には、がを公表した。農水省の説明(外部サイト、新しいタブで開きます)によれば、生産、加工、流通、販売などに必要な費用を示し、取引当事者の誠実な協議を促すための指標である。国がコメの店頭価格を決めたという発表ではない。

生産段階は20,535円/玄米60kg、4段階合計は精米5kg換算で2,816円と示された。後者は玄米から精米への歩留まりを0.9と仮定した換算である。公表資料は、費用の積み上げには利潤を含まず、実際の取引価格を約束するものではないと説明している。

POS平均

全国約1,000店のスーパー

対象期間
9月28日~10月4日
精米5kg税込
2,860円
測るもの
販売価格

コスト指標

生産・集荷・卸・小売の参考費用

公表時点
4月7日
精米5kg換算
2,816円
利潤
含まない

対象と時点が違うため、差額44円を特定の事業者の利益と扱えない。出典:農水省10月9日公表資料、米穀機構4月公表資料。

店頭の平均価格と、費用の参考値を分ける

費用の中には、家族の働いた時間もある

生産段階の指標は、全農家の単純平均ではない。作成方法(外部サイト、新しいタブで開きます)は、作付規模1.0ha以上3.0ha未満を代表的な規模として採用した。規模や地理的条件で費用には違いがあり、この層の参考値を、全ての農家が実際に支出した金額へ置き換えることはできない。作成の議論でも、どの規模を代表とするかについて意見が分かれていた。

作成資料は、この階層を選ぶ理由として、2025年の農林業センサスによる平均作付面積2.27haが含まれることなどを挙げる。一方、流通業者からは全平均の生産費を使うべきだとの意見も記録されており、指標の前提には選択がある。その選択を隠して、数値だけを全国共通の営農費用と示せば、比較したい経営の条件が違っていることを見落とす。

指標に使う生産費には、肥料や農機具だけでなく、家族労働費、自己資本利子、自作地地代なども含まれる。家族労働費は、働いた時間に別の産業の統計から得た時間単価を当てた評価であり、家族へ現金で給与を払った額そのものではない。自分の土地や資本も、現金の支払いがないから費用がゼロとは数えない作りである。

この違いは、営農の継続を考える際に大きい。現金収入から現金支出を引いて残額があっても、家族が使った時間や設備の更新まで賄えるかは別に調べなければならない。一方、指標より安く売ったというだけで、個別農家の現金収支が直ちに赤字だとも断定できない。費用を何として数えるかを明らかにしたうえで、比較する必要がある。

  • 生産342.3円/玄米1kg
  • 集荷42.3円/玄米1kg
  • 卸売39.1円/玄米1kg
  • 小売83.2円/玄米1kg
コスト指標の4段階:参考費用の内訳(2026年4月)

図は各段階の参考費用で、利潤や販売価格の配分ではない。合計は506.9円/玄米1kg税込で、精米5kgへの換算には歩留まり0.9を用いる。生産と流通には異なる年の統計・調査を使い、物価などで補正している。4月の指標を、9月末から10月初旬の各事業者の帳簿を足した実績と扱うこともできない。

作成方法では生産段階は2024年産の生産費を基にし、調査の年は集荷が2023年、卸・小売が2024年である。原則年1回3月に改定するほか、費用の急変など特段の事情が生じ、作成委員会が必要と判断した場合に随時改定する。毎週更新される店頭価格と同じ速さで動く指標ではない。現在の費用を議論するなら、基準となる年と補正後の時点を併せて示す必要がある。

構造を読む

二つの平均の差は利益ではない。最低価格の保証と費用の協議を区別し、自分の契約条件と費用を確かめる。

二つの平均の差は利益ではない

2,860円から2,816円を引くと44円になるが、片方は9月末から10月初旬のスーパーで売れた商品の価格を平均し、もう片方は4月公表の費用の参考値を示す。同じ米が同じ経路を通った記録ではなく、採用した農家の規模や流通条件も揃わない。単に引き算できることと、誰かの利益を計算できることは違う。

同じ理由で、相対取引価格が下がった割合を、そのまま農家の手取りの減少率にしてはいけない。契約を結んだ時期、販売数量、精算の仕方、負担する費用が必要になる。農家から消費者への直販であれば、どの流通の仕事を自分で受け持つかも変わり、全国の平均から動向を知ることはできても、一つの経営の収支を確定する資料にはならない。

たとえば、単価の低下が分かっても、販売量を確認せずには売上の変化を計算できない。売上が分かっても、肥料や機械、家族の働いた時間をどの範囲で差し引くかが残る。これは実際に農家の売上が増えた、あるいは減ったという推計ではなく、収支を確かめるために必要な情報の整理である。価格の統計が答える問いと、経営の資料に求める問いを分けておきたい。

食料自給率も同じ注意が要る。2025年度の概算(外部サイト、新しいタブで開きます)では、カロリーベースは37%、生産額ベースは66%となり、前者は低下し、後者は上昇した。農水省は、米や畜産物の国内価格上昇が生産額増加に関わったと説明する。金額で測った割合が上がっても、農家の利益率が上がったという意味にはならない。経営の余裕を確かめるには、この指標とは別に費用を引く計算が要る。

指標を協議の材料にする

ここでは公表資料の一般的な説明を扱い、個別の取引の適法性を判断するものではない。具体的な条件は弁護士などの専門家に確認する必要がある。

コスト指標が価格を保証しないことは、費用を無視してよいということでもない。米穀機構(外部サイト、新しいタブで開きます)は、各産地で指標を参考に個別のコストを整理して提示し、利潤やブランド力も加味する交渉を想定している。どの費用が増え、どの仕事を受け持っているかを、取引相手が検討できる資料へすることが、参考値の使い道になる。

その際は、まず年産・数量・等級・配送・税の条件を揃える。次に、相手へ示す費用が現金支出なのか、家族労働などを含む評価なのかを明らかにする。基準となる統計の年と、自分の取引時点の違いも確認する項目である。規模が違えばどの費目が変わるかを説明し、指標に近いかどうかだけで交渉を終えない。

農水省の注意資料(外部サイト、新しいタブで開きます)は、コスト指標を国が認めた最低取引価格とはしていない。下回っただけで直ちに措置の対象となるものではなく、指標を理由とする一方的な価格の押し付けや、同業者間の価格・利潤の合意も問題となるおそれがある。各取引で協議することと、皆で同じ価格へ揃えることを区別する必要がある。

家計の負担と生産の継続を調べる際は、消費者の購入価格と量に加えて、農家の精算済みの収入と費用の範囲を確認する必要がある。その記録を分けて持つことが、安さだけを成果とせず、費用の参考値だけで高値を正当化しないための出発点になる。

残る問い

家計負担の軽減と営農の継続を何で確かめるか。個別の支払額、契約時点、費用、翌年の作付けを対応付けて調べる。

家計がコメを買いやすくなったことと、農家が次の年も作り続けられることを、どう同時に確かめるか。店頭平均が下がったという報告だけでは、同じ家庭の購入量や支出、同じ農家の受取額は分からない。家計の購入容量・銘柄・購入頻度と、農家の契約時期・販売量・精算を対応付けて調べる必要がある。全国の平均の動きを、個別の負担が軽くなったという結論へ急いでつなげたくない。

費用を説明する際には、誰の働いた時間を数えているかが残る。家族労働や土地をゼロとして計算すれば、現金の残額は見えやすくても、営農に使う時間の対価や設備を更新する余地が隠れる。反対に、代表規模の指標だけで全農家の損益を決めれば、条件の違いを消してしまう。実際の費用と、その評価の仕方を並べて、価格協議へ持ち込める資料があるかを確かめたい。

指標が公表された後、取引相手が費用の説明を受け止め、条件を見直したかも別の検証になる。協議をした記録だけで十分とせず、支払額や負担する仕事、次の作付けまで見ていく必要がある。値下がりの翌週の平均を追うことに加え、誰のどの負担が変わったかを残せるか。家計と農家を対立させる前に、その両方を測る記録が揃っているかが問われる。

サムネイルはAI生成の概念写真であり、実在する農家・流通事業者・今回の政策の記録写真ではない。

この記事で使った統計の出典

  1. 1農林水産省「スーパーでの販売数量・価格の推移(全国・週次)」(2026年9月28日~10月4日) 出典を開く
  2. 2農林水産省「令和7年産米の相対取引価格・数量(令和8年8月)(速報)」(2026年8月) 出典を開く
  3. 3農林水産省「令和7年産米の相対取引価格・数量(令和8年8月)(速報)」(2025年産米の出回りから2026年8月まで) 出典を開く
  4. 4米穀安定供給確保支援機構「米のコスト指標(令和8年4月)」(2026年4月7日公表) 出典を開く
  5. 5米穀安定供給確保支援機構「米のコスト指標(令和8年4月)」(2026年4月) 出典を開く
  6. 6米穀安定供給確保支援機構「米のコスト指標(令和8年4月)」(2025年農林業センサスを用いた2026年4月資料) 出典を開く
  7. 7農林水産省「令和7年度食料自給率を公表します」(2025年度概算) 出典を開く

参考文献

スーパーでの販売数量・価格の推移(全国・週次)、令和8年10月9日公表 — 農林水産省 (2026). 農林水産省

令和7年産米の相対取引価格・数量(令和8年8月)(速報) — 農林水産省 (2026). 農林水産省

米のコスト指標(令和8年4月) — 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構 (2026). 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構

米のコスト指標 — 農林水産省 (2026). 農林水産省

ちょっと待って!そのコスト指標の使い方・・・法律違反かも!? — 農林水産省 (公表日記載なし・2026年10月14日確認). 農林水産省

令和7年度食料自給率を公表します — 農林水産省 (2026). 農林水産省

関連ガイドとして、を扱う入門ガイド(このサイトの記事)は指標と確かめたい結果の関係を考える入口になる。

参考書籍

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読んだ後に考えてみよう

  1. 価格の対象と期間、玄米と精米の区分は揃っているか
  2. 農家の手取りと家族労働の負担は何で確認できるか
  3. 価格交渉で、自分の費用を説明できる資料があるか

この記事の用語

EBPM
客観的なエビデンス(統計データ、研究結果等)に基づいて政策を立案・評価する手法。
POS価格
販売時点の記録に基づく米の価格。農林水産省の全国週次公表では、約1,000店舗のスーパーの販売データを使い、精米5kg税込の平均を示す。全小売店・全銘柄を一律に調べた価格ではない。
相対取引価格
農林水産省が公表する、出荷業者と卸売業者等の主食用米の相対取引契約を基にした価格。基本的に1等米の運賃・包装代・消費税を含む玄米60kgの価格を示し、農家の受取額や店頭の販売価格とは異なる。
米のコスト指標
認定団体である米穀安定供給確保支援機構が、米の生産・集荷・卸売・小売にかかる費用を示す参考指標。利潤を含まず、実際の取引価格や最低価格を保証するものではない。

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