一般社団法人社会構想デザイン機構
公共資産再生 — Park-PFI

Park-PFIの収支計画の作り方 — シミュレーション雛形付き【2026年版】

ISVD編集部
約9分で読めます

Park-PFI事業の収支計画・シミュレーションの作成方法を詳解。整備費・運営費・売上予測・感度分析・資金調達計画の各項目を雛形とともに解説。中規模案件(整備費1億〜3億円)を想定した3シナリオのモデル数値付き。

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ざっくり言うと

  1. Park-PFI収支計画の核心は、整備費・公募設置等料・運営コストの3つの固定要素と、売上・稼働率の変動要素のバランス設計にある
  2. 開業後3年間のキャッシュフローが最も厳しく、この期間を乗り切るための運転資金の確保が事業の生死を分ける
  3. 感度分析(売上±20〜30%)を実施することで、財務的に持続可能な事業規模と公募設置等料の水準が逆算できる

収支計画の全体構造

5つの構成要素と20年間の収支の全体像。計画の「軸」となる公募設置等料の位置づけ

の収支計画は、事業の20年間にわたるキャッシュフローの全体像を示すものだ。提案書審査においては、財務の健全性を証明するための主要証拠書類となる。

収支計画を構成する要素は、大きく以下の5つに整理できる。

構成要素内容性質
初期整備費収益施設・特定公園施設の建設・設備投資一時的なキャッシュアウト
資金調達コスト銀行融資の元利返済・自己資金の機会コスト固定的なキャッシュアウト
運営費人件費・材料費・管理費・公募設置等料等固定費+変動費
売上収入収益施設売上・自主事業収入変動的なキャッシュイン
補助金・支援金整備補助・地域振興補助等一時的なキャッシュイン

公募設置等料の位置づけ

は、事業者が行政に対して毎年支払う使用料だ。この金額は公募要項によって算定方式が異なるが、提案者が自ら提示する競争評価型と、行政が固定額を設定する固定型がある。

競争評価型の場合、公募設置等料の提示額が審査点数に影響する。高額を提示すれば評価が上がる可能性があるが、事業収支上の負担が増す。適切な水準の見極めが重要だ。


整備費の見積もり方

収益施設・特定公園施設・共通設備の費用区分と単価の目安

費用の区分

整備費は、以下の3区分に分けて見積もることで、公募設置等指針との整合性を確認しやすくなる。

①収益施設の整備費

カフェ・レストラン・物販・スポーツ施設等、事業者が収益を上げる施設の建設・設備投資だ。

単価の目安(RC造またはS造、新築の場合):

  • 飲食施設(カフェ・軽食):㎡単価25〜40万円
  • レストラン(厨房設備充実):㎡単価35〜55万円
  • 物販・売店:㎡単価20〜35万円
  • スポーツ施設(コート等):㎡単価10〜20万円

②特定公園施設の整備費

公园機能向上のための公共施設(休憩所・遊具・芝生広場等)だ。収益施設との整備費比率が審査評価に影響する自治体も多い。

単価の目安:

  • 屋根付き休憩所:㎡単価20〜35万円
  • 遊具(1基):50〜300万円
  • 芝生広場(整地・張り芝):㎡単価1〜3万円
  • 散策路(舗装):延長m単価1〜3万円

③共通設備・インフラ費

給排水・電気・空調・外構工事等のインフラコストは、収益施設と特定公園施設を横断する共通費として計上する。

費用の精査と予備費

整備費の見積もりは、早い段階では概算・後段階では精査という形で段階的に精度を上げる。

提案書段階での整備費見積もりに当たり、 総整備費の10〜15%程度の予備費 を計上することが推奨される。想定外の地盤改良費・埋設物撤去費・建築確認審査の指摘事項への対応等、予期しない費用が発生することが多いためだ。

手引きでは、整備費の試算にあたって類似施設の事例参照と、地盤・インフラの現地確認が推奨されている


売上予測の組み立て

商圏・客単価・回転率・稼働日数からの積み上げ法と類似施設データの活用

積み上げ法によるアプローチ

売上予測の最も信頼性が高い方法は 積み上げ法 だ。以下の手順で組み立てる。

Step 1:商圏人口の確認

対象公園の徒歩圏(500m〜1km)、自転車圏(3km)、車・交通機関利用圏(5〜10km)の人口を把握する。国勢調査・e-Statの人口データを活用する。

Step 2:利用者数の予測

公園の既存の年間利用者数(管理者に確認できる場合)から、収益施設の想定利用者数を試算する。一般的に、公園の年間利用者の 5〜20% が収益施設を利用するとされる(施設の立地・魅力度による)。

Step 3:客単価の設定

類似施設の実績または市場調査を基に客単価を設定する。

施設タイプ客単価の目安
カフェ(軽食・ドリンク)800〜1,500円
ランチ提供レストラン1,200〜2,500円
ディナー提供レストラン2,500〜5,000円
物販(お土産・農産物等)500〜2,000円/回

Step 4:座席回転率・稼働日数の設定

カフェ・レストランの場合、座席回転率は業態によって大きく異なる。

  • カジュアルカフェ:1日2〜4回転
  • ランチ専門:1日1.5〜3回転
  • ディナー主体:1日1〜2回転

稼働日数は年間 300〜350日 を基本として、季節変動を加味する(花見・夏期・紅葉シーズンは高稼働、冬期・雨季は低稼働)。

Step 5:年間売上の試算

年間売上=利用者数(日)× 客単価 × 稼働日数

例:

  • 1日来客100名 × 客単価1,200円 × 320日=3,840万円/年

この数値を基本シナリオとし、±20〜30%の変動を楽観・悲観シナリオとして設定する。


運営費の構造と管理

固定費・変動費の分類と、造園業者・飲食業者ごとのコスト特性

固定費と変動費の分類

運営費は固定費と変動費に分類して管理する。

固定費(売上に関わらず発生)

費目月額目安(中規模案件)
人件費(正社員・パート)100〜250万円
公募設置等料5〜30万円
施設管理費(植栽・清掃等)30〜80万円
修繕積立金10〜30万円
保険料3〜10万円
融資返済額20〜80万円

変動費(売上に連動して変動)

費目売上に対する比率の目安
食材・材料費(飲食)30〜40%
消耗品・包材2〜5%
光熱費(使用量連動部分)3〜8%

造園業者としての内製化メリット

造園会社がPark-PFI事業に参入する場合、植栽管理・清掃・修繕の一部を内製化できるため、外注コストを削減できる。ただし、内製化の際は以下の点に注意する。

  • 内製コスト(人件費・機材費)を適切に計上する
  • 施工繁忙期の人員確保との競合を事前に計画する
  • 管理品質のバラつきを防ぐためのチェックリスト・手順書を整備する

3シナリオシミュレーション

楽観・基本・悲観の3シナリオでの損益試算と損益分岐点の分析

モデル案件の設定

以下のシミュレーションは、 中規模Park-PFI案件(カフェ+テラス+公園施設) を想定したモデルだ。

  • 収益施設面積:300㎡(カフェ+テラス)
  • 特定公園施設面積:1,000㎡(芝生広場+休憩所+遊具)
  • 総整備費:1億5,000万円(収益施設8,000万円+公園施設5,000万円+インフラ2,000万円)
  • 資金調達:自己資金3,000万円(20%)+銀行融資1億2,000万円(80%)、金利1.5%、15年返済

年間損益シミュレーション(安定期・第5〜10年)

項目楽観シナリオ基本シナリオ悲観シナリオ
年間売上6,000万円4,500万円3,000万円
材料費(30%)1,800万円1,350万円900万円
人件費1,500万円1,500万円1,200万円
施設管理費600万円600万円600万円
公募設置等料120万円120万円120万円
融資返済(元利)960万円960万円960万円
その他固定費300万円300万円300万円
営業損益+720万円▲330万円▲1,080万円

悲観シナリオでは赤字となる 。このため、開業初年度〜3年目の集客基盤確立期をどう乗り切るかの資金計画が重要だ。基本シナリオでも損益分岐点ギリギリとなるため、売上4,500万円を達成するための集客施策が事業の核心となる。

損益分岐点の計算

損益分岐点売上高は以下の式で計算する。

損益分岐点売上高=固定費 ÷(1 − 変動費率)

上記モデルの場合:

  • 固定費合計:3,480万円(人件費+管理費+設置等料+融資返済+その他)
  • 変動費率:材料費30%+消耗品・光熱費5%=35%
  • 損益分岐点売上高:3,480万円 ÷ 0.65 ≒ 5,354万円

基本シナリオの売上(4,500万円)は損益分岐点を下回っている。したがって、このモデルでは規模の調整(整備費削減・融資額圧縮・設置等料の交渉)か、収益構造の見直し(高単価メニューへの転換・自主事業収入の追加等)が必要だ。


資金調達計画

自己資金・銀行融資・補助金・クラウドファンディングの組み合わせと留意点

基本的な資金構成

Park-PFI事業の標準的な資金調達の構成は以下のとおりだ。

調達方法比率の目安特徴
自己資金20〜30%金融機関への信用補完。最低ラインが求められる
銀行融資(事業性融資)50〜70%地域金融機関(地方銀行・信用金庫)との交渉が主
補助金0〜30%国・都道府県・市区町村の補助制度
政府系金融機関0〜30%日本政策金融公庫・地域活性化系融資等

PPP/PFI推進アクションプランでは、地域金融機関によるPPP事業支援の拡充が方向性として示されており、地方銀行・信用金庫の活用が促進されている

地域金融機関への打診

地域の地方銀行・信用金庫は、地域貢献事業としてのPark-PFIへの融資に前向きなケースが増えている。初回相談時には以下の資料を準備する。

  • 事業概要書(A4で2〜3枚程度)
  • 公園の概要と公募設置等指針の案(入手できている場合)
  • 初期の収支シミュレーション(概算でよい)
  • 代表者の経歴・関連事業の実績

融資審査では、「担保・保証」に加えて「事業の収益性・継続性」が重要視される。単独の財務では審査が難しい場合、地域商工会・産業振興センターの専門家相談を活用することも有効だ。


中長期修繕積立と期間終了設計

10〜15年後の大規模修繕に向けた積立計画と事業終了後の処理方針

修繕積立計画の考え方

建物・設備は経年劣化により、定期的な大規模修繕が必要になる。認定期間20年の間に発生する主な修繕の時期と費用の目安は以下のとおりだ。

修繕時期主な修繕内容費用目安(総整備費比)
5〜7年外壁塗装・防水改修3〜5%
10〜12年設備更新(空調・厨房機器等)8〜15%
15〜18年屋根改修・大規模リニューアル10〜20%

総整備費1億5,000万円のケースでは、20年間の修繕費総額として 2,000万〜5,000万円 を見込む必要がある。年間100万〜250万円の積立を開業当初から計画する。

事業終了後の設計

認定期間終了後(20年後)は、自治体との協議により以下の選択肢がある。

  • 期間延長・更新:実績良好であれば更新される可能性が高い
  • 原状回復・撤去:収益施設を撤去し、特定公園施設は行政に引き渡す
  • 施設の行政への帰属:施設を行政に寄贈・無償譲渡する

どの選択肢が適用されるかは、公募設置等指針・設置管理協定書に規定されている。財務計画の終盤(17〜20年目)は修繕積立の活用・撤去費用の計上を含めた計画が必要だ。


参考文献

公募設置管理制度(Park-PFI)の手引き (2024)

PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版) (2024)

Park-PFI等の活用状況(令和7年3月31日現在) (2025)

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読んだ後に考えてみよう

  1. 売上予測の根拠となる類似施設の実績データまたは消費者調査を手元に準備できているか?
  2. 悲観シナリオ(売上▲30%)でも20年間キャッシュフローがプラスを維持できるか試算しているか?
  3. 整備費の自己資金比率は最低20〜30%を確保できているか?金融機関への融資打診の見通しはあるか?

この記事の用語

Park-PFI(公募設置管理制度)
都市公園法に基づき、飲食店等の収益施設と公園施設の整備・管理を一体的に行う民間事業者を公募する制度。2017年の法改正で創設。収益施設の設置許可期間は最長20年。
コンセッション方式
公共施設の所有権を行政が保持したまま、運営権を民間事業者に委託するPFI手法。水道事業では2022年に宮城県が全国初の導入事例となった。
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