一般社団法人社会構想デザイン機構
公共資産再生 — 廃校活用

フリースクール×廃校 — 教育機会確保の新モデル【2026年版】

ISVD編集部
約8分で読めます

不登校の子どもたちに教育機会を確保するフリースクールと廃校の組み合わせを徹底解説。不登校の現状、制度的位置づけ、廃校活用のメリット、保護者負担+補助金の収益モデル、実践的な課題と事例まで2026年最新データで紹介。

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ざっくり言うと

  1. 令和5年度の不登校児童生徒数は34万6,482人(過去最多)で11年連続増加。廃校の物理的空間はフリースクールの教育環境として理想的な条件を備えている
  2. フリースクールは法的認可が不要でNPO格があれば補助金に有利。保護者負担月3〜8万円と自治体助成・寄付を組み合わせた収益モデルが標準的
  3. 廃校活用により施設費が大幅削減できるため、低い保護者負担額でも事業の継続性を確保しやすく、経済的困難を抱える家庭への支援が実現しやすい

不登校の現状と構造的背景

11年連続増加の背景、学校種別・地域別の分布、フリースクール需要の拡大

34万人を超えた不登校

令和5年度における小・中学校の不登校児童生徒数は346,482人(前年度比15,563人増)で、11年連続増加かつ過去最多を記録した。高等学校を含めると不登校生徒数はさらに多い。

区分令和5年度令和4年度増減
小学校132,777人105,112人+27,665人
中学校213,705人193,936人+19,769人
合計346,482人299,048人+47,434人

この急増の背景には、学校への適応困難の多様化、コロナ禍後の集団生活への不適応、発達特性への対応不足等が複合的に関わっている。

フリースクール需要の構造的増大

不登校の増加に対して公的な学校教育だけでは対応しきれない現状がある。フリースクールは、学校に通えない子どもたちに 学習・生活・社会参加の場 を提供する民間教育支援施設として、近年その需要が急増している。

全国のフリースクールの数は2020年代に入り急増しており、子どもの学習機会確保の担い手として政策的にも注目されている


フリースクールの制度的位置づけ

教育機会確保法の意義、学籍・出席扱いの問題、法的位置づけの現在地

教育機会確保法の意義

2016年に施行された 「教育機会確保法」(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)は、フリースクール等の多様な学習機会を「公的に認める」方向性を示した画期的な法律だ。

主なポイントは以下のとおりだ。

  1. 不登校を「問題行動」と捉えず、休養の必要性を認めること
  2. 学校以外の多様な学習機会(フリースクール等)の確保が国・自治体の責務として位置づけられたこと
  3. 特別な事情がある場合の夜間中学等での就学機会の確保

学籍・出席扱いの問題

フリースクールに通う子どもの多くは、在籍する学校に籍を置いたまま利用する。学校長の判断によりフリースクールへの出席を「出席扱い」とすることが可能となっているが、その適用は自治体・学校によってばらつきが大きい。

この「出席扱い」制度の普及が、フリースクールの社会的認知向上と利用しやすさの改善につながっている。

法的認可は不要

フリースクールの運営は 法的認可が不要 である。学校教育法に基づく「学校」ではないため、文部科学省や都道府県の認可を取得する必要がない。ただし、NPO法人格を取得することで、自治体の補助金申請に有利になるケースが多い。


廃校活用のメリット

施設費削減・空間特性・地域連携の3つの優位性

メリット1:施設費の大幅削減

フリースクールの収益性の最大の課題のひとつが 施設費 である。都市部では教室・スタジオ等の賃借だけで月20〜40万円を要することがある。廃校活用により、この固定費を 月0〜5万円 まで削減できれば、事業の継続性は飛躍的に高まる。

施設費の削減は、保護者負担額を下げる ことにも直接的につながる。経済的に困難な家庭の子どもこそ支援が必要なケースが多い中、廃校活用は「支援が届きにくい家庭への手が届く」構造を作りうる。

メリット2:空間の親和性

廃校のもつ物理的空間は、フリースクールが必要とする環境と驚くほど一致している。

  • 教室: 少人数の学習活動、アートや工作のアトリエに転用可能
  • 体育館: 運動・表現活動・大人数イベントに活用可能
  • 図書室: 読書・調べ学習・居場所として機能
  • 校庭・農園: 野外活動・農業体験・自然学習の場
  • 給食室・家庭科室: 料理・食育プログラムの実施

「かつての学校」という空間は、学校から距離を置いた子どもたちにとっても、馴染みのある安心感のある環境として機能することが多い。

メリット3:地域との連携

廃校を活用することで、地域コミュニティとの連携が自然に生まれやすい。地域の高齢者・農家・職人等と子どもたちをつなぐ 「地域まるごと学校」 的な機能を持てることが廃校フリースクールの大きな強みだ。これは都市部の賃貸施設では実現しにくい。


収益モデル:保護者負担+補助+寄付

3本柱の収益構造と廃校による固定費削減の効果

3本柱の収益構造

フリースクールの収益モデルは、一般的に以下の3本柱で構成される。

第1の柱:保護者負担(月謝) 月3〜8万円の保護者負担が標準的だ。廃校活用で施設費を削減できれば、負担額の下限を抑えることができる。

第2の柱:自治体補助・委託 フリースクールへの補助制度を設けている自治体が増えている。制度の内容は自治体によって異なるが、1人あたり月1〜3万円の助成を行うケースがある。また、不登校支援の委託事業として自治体から運営費補助を受けるケースも増えている。

第3の柱:寄付・助成金 NPO法人であれば、休眠預金活用事業・民間財団・共同募金等の助成金申請が可能だ。初期費用・改修費・プログラム費の充当に活用できる。

廃校活用による収支シミュレーション

前提条件

  • 在籍者: 20名
  • 月謝: 5万円/名
  • 自治体助成: 1万円/名
  • 寄付・助成金: 年間100万円
収入項目月間金額
月謝収入100万円
自治体助成20万円
寄付・助成金(月換算)約8万円
収入合計約128万円
支出項目廃校活用通常賃借
施設費0〜5万円25〜40万円
人件費(スタッフ3名)約75万円約75万円
プログラム費・消耗品約15万円約15万円
その他約10万円約10万円
支出合計約100〜105万円約125〜140万円
月間収支差約23〜28万円約▲12〜+3万円

廃校活用の場合は月間収支が黒字(約23〜28万円)となるのに対し、通常賃借では収支がギリギリか赤字になりうる。廃校活用が事業継続性の鍵を握ることがよくわかる。


課題と克服策

収益の不安定性・人材確保・NIMBY・認知度向上への対処法

課題1:収益の不安定性

フリースクールの収益の中心は保護者負担(月謝)であり、在籍者数の変動が収益に直結する。不登校の子どもはしばしば状況が変化し、突然通わなくなることもある。

克服策: 最低稼働ラインを設定し、それを下回る場合の対応(定員変更・スタッフ体制の調整)を事前に計画する。自治体の委託事業化により固定的な収入を確保することが、収益安定化の最も有効な方法だ。

課題2:人材確保

フリースクールで求められる人材は、学習支援・カウンセリング・生活支援等の複合的なスキルを持つ人材であり、資格要件はないが 実質的な専門性 が求められる。廃校が所在する過疎地では、そうした人材の確保がさらに難しい。

克服策: 「住み込みスタッフ」「地域おこし協力隊との連携」「遠隔での学習支援(オンライン授業)の組み合わせ」といった創意工夫が有効だ。

課題3:NIMBY問題と認知度

廃校に「学校に通えない子どもたち」が集まる施設を開設することへの地域住民の不安が生じるケースがある。

克服策: 地域向けの開放イベント・農業体験・ワークショップ等を定期的に開催し、地域住民と子どもたちが交流できる機会を設けることで、相互理解が深まる。「地域コミュニティの場」として機能させることが、NIMBY問題の最も根本的な解決策だ。


成功事例

廃校フリースクールの先行事例から学ぶ共通要因

廃校フリースクールの先行事例に共通する要因

全国各地に広がりつつある廃校フリースクールの先行事例を分析すると、以下の共通要因が浮かび上がる。

  1. 自治体との共同開発: 自治体が「不登校支援の充実」という政策目標として廃校フリースクールを位置づけ、低額賃借・補助金・広報支援を提供している
  2. 複合機能の設計: フリースクールのみならず、放課後等デイサービスや学童保育等を複合させることで収益の多元化と利用者の多様化を実現している
  3. 「探求的学習」のカリキュラム: 教科書通りの学習ではなく、農業・ものづくり・地域探求・アート等の体験型学習を中心に据えることで、学校になじめなかった子どもたちが生き生きと学べる環境をつくっている
  4. 卒業後の進路支援: フリースクール卒業後の進路(高校進学・就労等)を見据えた支援を組み込むことで、保護者の安心感が増す

始め方:今日からできる3ステップ

法人設立・廃校申請・自治体連携の具体的手順

ステップ1:地域の不登校実態と既存資源を調べる

まず、対象地域の不登校児童生徒数・既存フリースクールの定員・待機者数・自治体のフリースクール支援制度の有無を調査する。自治体の教育委員会に問い合わせることで、概況を把握できることが多い。

ステップ2:自治体教育委員会に意向打診する

フリースクールへの廃校転用に関心があることを自治体の教育委員会に打診する。特に不登校支援の充実に積極的な自治体では、廃校活用との組み合わせに前向きな反応が得られやすい。

ステップ3:NPO法人格を取得して設立準備を進める

フリースクール運営は法的認可不要だが、NPO法人格を取得することで自治体補助金・民間助成金の申請が容易になる。設立には3〜5ヶ月程度を要する。

廃校活用の具体的な手続きについては「廃校活用の全手順 — 施設選定からプロポーザルまでを完全解説」を参照されたい。廃校活用で使える補助金については「廃校活用で使える補助金6省庁分まとめ」で詳しく解説している。


参考文献

令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について (2024年10月)

廃校施設活用状況実態調査(令和6年度) (2025年3月)

法令(不登校関連)について — 教育機会確保法 (2016年)

みんなの廃校プロジェクト(文部科学省) (2026年)

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読んだ後に考えてみよう

  1. 対象地域の不登校児童生徒数と既存フリースクールの定員・利用待機者数を調査したか?
  2. 自治体のフリースクール支援制度(民間フリースクール等への補助金・認定制度)の有無と内容を確認したか?
  3. 廃校の所在する自治体の教育委員会にフリースクールへの転用意向を打診したか?自治体の反応はどうだったか?
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