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Ad Grantsの使い方入門——CTR維持とキーワード設計の基本

Ad GrantsのCTR 5%維持義務を安定的にクリアするためのキーワード設計入門。ロングテールキーワード戦略、ネガティブキーワード、RSA最適化をISVDの実運用データとともに解説する。

ISVD編集部
約11分で読めます
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ざっくり言うと

  1. Ad GrantsのCTR 5%維持はキーワード設計が8割を決める
  2. ロングテールキーワード(3語以上)はCTRが高くCPC$2.00制限下でも表示されやすい
  3. ネガティブキーワードの設定でクリック率を大幅に改善できる
  4. レスポンシブ検索広告(RSA)は最低3つの見出しと2つの説明文を用意すべき

はじめに

なぜキーワード設計がAd Grants運用の命運を分けるのか

は、非営利団体に月$10,000相当の検索広告枠を無償提供する強力なプログラムである。しかし、その恩恵を受け続けるには、アカウント全体で 5%以上を毎月維持しなければならない。2ヵ月連続で未達になると、アカウントは自動停止される。

CTR 5%という数字は、Google検索広告の一般的な平均CTR(約3〜4%)を上回る水準であり、何の戦略もなく達成できるものではない。では、何が勝負を分けるのか。答えはキーワード設計である。

キーワード設計とは、どのような検索語に対して広告を表示するかを決める作業だ。ここを誤ると、無関係な検索でインプレッションだけが積み上がり、CTRは急速に低下する。逆に、適切なキーワード設計ができれば、CTR 5%の維持は難しくない。ISVDの実運用でも、キーワード設計の見直しによりCTRが4.8%から9.1%に改善した実績がある。

本記事では、B-2記事で解説したAd Grantsの基本を前提に、CTR維持のための実践的なキーワード設計手法を解説する。審査落ちの構造(B-5)で触れたCTR未達パターンの「予防策」として位置づけられる内容である。


ロングテールキーワード戦略

短いキーワードの罠と3語以上のキーワードの優位性

短いキーワードの罠

Ad Grantsの運用で最も陥りやすい失敗は、「NPO」「寄付」「ボランティア」といった1〜2語のビッグキーワードに入札することである。これらのキーワードには以下の問題がある。

問題具体例
CPC上限$2では競合に勝てない「寄付」のCPC相場は$5〜$10以上
検索意図が曖昧「ボランティア」→ 募集?定義?給与?
インプレッションだけ増えてCTRが下がる表示回数1,000 / クリック20 = CTR 2%

1語のキーワードはAd Grantsのポリシーで原則禁止されており、「donate」「volunteer」のような汎用的すぎるキーワードも使用できない。これはGoogleがCTR低下のリスクを認識しているからである。

3語以上のキーワードが有効な理由

とは、3語以上で構成される具体的な検索フレーズを指す。ロングテールが有効な理由は明確だ。

検索意図が明確 → 広告との関連性が高い → クリックされやすい → CTRが上がる

具体的なキーワード設計例を示す。

ビッグKW(非推奨)ロングテールKW(推奨)理由
子ども 支援子どもの貧困 食事支援 地域支援内容と地域が特定され、検索意図が一致しやすい
不登校不登校 相談 NPO 東京相談先を探す具体的な行動意図にマッチ
環境問題海洋プラスチック ボランティア 参加方法具体的な活動への参加意思が明確
フードバンクフードバンク 食品寄付 受付場所寄付行動の直前段階にいるユーザーに到達

キーワード候補の見つけ方

ロングテールキーワードを効率的に発見するために、以下の3つのツールが有用である。

  1. Google Ads キーワードプランナー: 月間検索ボリュームと競合度を確認できる。「低」〜「中」競合のキーワードがAd Grantsに適している
  2. Google Search Console: 自団体サイトへの流入キーワードを確認し、既にトラフィックのあるキーワードを広告でも強化する
  3. 検索クエリレポート(Google Ads内): 実際にユーザーが検索した語句を確認し、高CTRのクエリを新キーワードとして追加する

ネガティブキーワードの設定方法

無関係検索の排除でCTRを改善する具体的手順

なぜネガティブキーワードが重要か

(除外キーワード)とは、特定の検索語句で広告が表示されないようにする設定である。CTR改善において、「良いキーワードを追加する」ことと同等以上に「悪いキーワードを除外する」ことが重要だ。

仕組みは単純である。キーワード「子どもの貧困 支援」に入札している場合、「子どもの貧困 支援 レポート 書き方」という検索でも広告が表示される可能性がある。この検索は学生のレポート作成目的であり、NPOの支援を求めているわけではない。こうした非ターゲット検索でのインプレッションが蓄積されると、CTRは確実に下がる。

除外すべきキーワードのカテゴリ

ネガティブキーワードは以下のカテゴリで体系的に管理するとよい。

カテゴリ除外キーワード例理由
学術・調査目的レポート、論文、定義、とは、意味情報収集が目的でアクションにつながらない
就職・求人関連求人、年収、給料、採用、バイト採用目的でない場合は除外
競合団体名(競合固有名詞)他団体への関心でCTRが下がる
無料・価格系無料、タダ、格安、費用コンバージョンにつながりにくい検索
ネガティブ文脈詐欺、やばい、問題点、デメリット批判的な文脈での表示はCTR低下の原因

設定手順と運用サイクル

ネガティブキーワードの設定は以下の手順で行う。

  1. 初期リスト作成: 上記カテゴリから、自団体に該当する除外キーワードを30〜50個リストアップする
  2. アカウントレベルの除外リスト作成: Google Adsの「共有ライブラリ」→「除外キーワードリスト」で共有リストを作成し、全キャンペーンに一括適用する
  3. 検索クエリレポートの週次レビュー: 毎週、検索クエリレポートを確認し、CTRの低いクエリや無関係なクエリを除外リストに追加する

この運用サイクルを4〜6週間継続すると、不要なインプレッションが大幅に減少し、CTRが目に見えて改善する。


広告グループの構成

テーマ別分類と適切なキーワード数の目安

テーマ別に分ける原則

広告グループは「1テーマ = 1グループ」の原則で構成する。異なるテーマのキーワードを1つの広告グループにまとめると、広告文とキーワードの関連性が下がり、Quality Scoreの低下とCTRの悪化を招く。

たとえば、子どもの貧困対策を行うNPOの場合、以下のようなグループ構成が考えられる。

広告グループキーワード例広告文の方向性
食事支援子ども食堂 支援、フードバンク 子ども、子どもの食事 支援 NPO食事支援の具体的内容をCTAに
学習支援無料塾 子ども、学習支援 ボランティア、子どもの学習 NPO学習支援プログラムの案内
相談窓口子どもの貧困 相談、子育て 支援 相談 NPO、ひとり親 相談窓口相談受付の訴求
寄付子どもの貧困 寄付、子ども支援 募金、フードバンク 寄付寄付の呼びかけと使途説明

キーワード数の目安

各広告グループには15〜20個のキーワードが適切な目安である。

  • 5個以下: データが十分に蓄積されず、最適化が困難
  • 15〜20個: 十分なデータ量と管理の容易さを両立
  • 30個以上: テーマが拡散しやすく、広告文との関連性が低下する

キーワードのマッチタイプは、フレーズ一致完全一致を中心に構成する。部分一致は意図しない検索への広告表示を招きやすいため、Ad Grants運用では慎重に使用すべきだ。


RSA最適化の基本

見出し・説明文の書き方と組み合わせの最適化

レスポンシブ検索広告の仕組み

は、最大15本の見出しと4本の説明文を登録すると、Googleの機械学習が検索クエリごとに最適な組み合わせを自動選択して表示する広告フォーマットである。Ad Grantsでは、各広告グループに最低1つのRSAを設定することが求められる。

見出しと説明文の設計原則

RSAの効果を最大化するための設計原則を以下に示す。

見出し(最大15本、表示は最大3本):

ルール理由
最低8本は異なる訴求にする組み合わせの多様性を確保
キーワードを含む見出しを3本以上検索語との一致で太字表示→CTR向上「子どもの貧困を支援する方法」
数値を含む見出しを2本以上具体性がクリックを誘導「年間500人の子どもに食事を提供」
CTAを含む見出しを2本行動喚起でCTR向上「今すぐ相談する」「無料で資料請求」
団体名の見出しを1本固定ブランド認知「〇〇NPO法人 公式」

説明文(最大4本、表示は最大2本):

  • 4本すべてを異なる角度で書く(活動内容・実績・対象者・アクション誘導)
  • 各説明文にCTAを含める(「お問い合わせはこちら」「まずは無料相談から」等)
  • 説明文1本は90文字の上限を活かし、団体のミッションを端的に伝える

広告の有効性を「良好」以上にする

Google Adsの管理画面では、RSAの「広告の有効性」が「未完了」「低い」「平均的」「良好」「優良」の5段階で評価される。「良好」以上を目指すことが推奨されている。

有効性を高めるポイント:

  • 見出し・説明文の数を可能な限り最大(15本・4本)に近づける
  • 各見出しをユニークにする(類似表現の繰り返しを避ける)
  • 主要キーワードを見出しに自然に含める

ISVDの実運用データ

CTR 4.8%→9.1%改善の具体的プロセス

改善前の状況(CTR 4.8%)

ISVDがAd Grantsの運用を開始した当初、CTRは4.8%で推移しており、5%の維持義務をかろうじて下回る危険な状態にあった。問題を分析したところ、以下の3点が原因として特定された。

  1. ビッグキーワードの過剰使用: 「社会課題」「NPO支援」など2語以下のキーワードが全体の40%を占めていた
  2. ネガティブキーワードの未設定: 除外リストがゼロの状態で、「社会課題 レポート」「NPO 就職」等の無関係検索でインプレッションが発生
  3. 広告グループの粒度不足: 3つの広告グループに50以上のキーワードが混在し、広告文との関連性が低下

改善施策(3段階)

改善は以下の3段階で実施した。

第1段階: キーワードの棚卸し(1週目)

  • 全キーワードのCTR・Quality Scoreを一覧化
  • CTR 3%未満かつQuality Score 3以下のキーワードを一時停止(全体の35%を停止)
  • 1〜2語のビッグキーワードをすべて停止

第2段階: ロングテールキーワードへの移行(2〜3週目)

  • Google Search ConsoleとキーワードプランナーからロングテールKWを120個抽出
  • テーマ別に8つの広告グループを新設し、各グループ15〜18個のキーワードを配置
  • 各グループにテーマ特化型のRSAを新規作成(見出し10本以上、説明文4本)

第3段階: ネガティブキーワードと継続最適化(4週目以降)

  • 共有ネガティブキーワードリストを作成し、初期60語を登録
  • 週次で検索クエリレポートをレビューし、毎週5〜10語を追加
  • 月次でRSAの見出し・説明文のパフォーマンスを確認し、低クリック率のアセットを差し替え

改善結果(CTR 9.1%)

3段階の施策を実施した結果、改善開始から6週間後にCTRは9.1%に到達した。

指標改善前改善後変化
CTR4.8%9.1%+4.3pt
アクティブKW数85132+55%
ビッグKW比率40%0%全廃
広告グループ数38テーマ別再構成
ネガティブKW数095新規整備
平均Quality Score4.26.8+2.6pt

CTR改善の要因を分解すると、ネガティブキーワードの設定(不要インプレッションの排除)が最も大きく、次いでロングテールキーワードへの移行(検索意図との一致度向上)、RSAの最適化(広告文の関連性向上)の順であった。


まとめ

キーワード設計チェックリスト

Ad GrantsのCTR 5%維持は、キーワード設計の質で8割が決まる。本記事で解説した手法を実行するためのチェックリストを以下にまとめる。

キーワード設計チェックリスト:

  • 1〜2語のビッグキーワードをすべて停止したか
  • ロングテールキーワード(3語以上)を各広告グループに15〜20個配置したか
  • ネガティブキーワードの共有リストを作成し、初期30〜50語を登録したか
  • 広告グループを「1テーマ = 1グループ」で再構成したか
  • 各広告グループにRSA(見出し8本以上、説明文3本以上)を設定したか
  • 検索クエリレポートの週次レビューを運用サイクルに組み込んだか
  • RSAの広告有効性が「良好」以上になっているか

キーワード設計は一度やれば終わりではなく、検索クエリの変化やGoogleのアルゴリズム更新に合わせた継続的な調整が求められる。最低でも週1回の検索クエリレビューと、月1回のキーワード構造見直しを習慣化することを推奨する。


関連記事


参考文献

Ad Grants Policy Compliance GuideGoogle LLC (2025). Google for Nonprofits ヘルプ

Account management policy — Google for Nonprofits HelpGoogle LLC (2025). Google for Nonprofits ヘルプ

Tips for success with Google Ad GrantsGoogle LLC (2025). Google for Nonprofits ヘルプ

About responsive search adsGoogle LLC (2025). Google Ads ヘルプ

About negative keywordsGoogle LLC (2025). Google Ads ヘルプ

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読んだ後に考えてみよう

  1. 自組織のAd Grantsアカウントで、CTRが最も低い広告グループはどれか?原因は何か?
  2. 現在のキーワードリストに1-2語の一般的すぎるキーワードはないか?

この記事の用語

CTR(クリック率)
広告のインプレッション(表示回数)に対するクリック数の割合。CTR = クリック数 ÷ インプレッション数 × 100で算出。Ad Grantsではアカウント全体でCTR 5%以上の維持が義務付けられている。
Google Ad Grants
Google for Nonprofitsの一部として提供される検索広告プログラム。対象非営利団体に月額最大$10,000(年間$120,000)相当のGoogle検索広告枠を無償で付与する。CPC上限$2.00、CTR 5%以上の維持が条件。
ネガティブキーワード(除外キーワード)
特定の検索語句で広告が表示されないようにするために設定するキーワード。無関係な検索での広告表示を防ぎ、CTRの低下を抑制する。Ad Grants運用ではCTR 5%維持のために不可欠な設定項目。
レスポンシブ検索広告(RSA)
Google広告の検索広告フォーマットの一つ。最大15本の見出しと4本の説明文を登録すると、Googleの機械学習が検索クエリに最適な組み合わせを自動選択して表示する。Ad Grantsでは各広告グループに最低1つのRSAが必要。
ロングテールキーワード
3語以上で構成される具体的な検索フレーズ。検索ボリュームは小さいが、検索意図が明確なためCTRやコンバージョン率が高い傾向がある。Ad GrantsのCPC上限$2制約下では、競合の少ないロングテールキーワードが有効。
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