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実践ガイド — デジタルツール活用

Ad Grantsで毎月最大$10,000相当の広告枠を活用できる仕組み

更新日
社会構想デザイン機構 編集部
約9分で読めます

Google Ad Grantsは非営利団体に月最大10,000米ドルの検索広告枠を無償提供するプログラムである。上限までの利用は保証されず、現地通貨への換算も変動する。CPC上限・CTR 5%維持義務・Quality Score要件などの制約と運用方法を解説する。

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ざっくり言うと

  • Ad Grantsは非営利団体に月最大$10,000・年間最大$120,000相当のGoogle検索広告枠を無償提供するプログラムである
  • 手動入札等のCPC上限は$2で、Maximize Conversions等の対象スマート入札では実績に応じて$2超の入札が可能になる
  • Smart Campaignsのみを使うアカウントを除き、アカウント全体でCTR 5%以上を毎月維持する義務があり、2ヵ月連続未達でアカウント停止となる
  • ロングテールキーワード戦略と除外キーワード管理が、制約下での広告効果最大化の鍵となる

はじめに

Ad Grantsの位置づけと本記事の対象範囲を説明

暗い背景にぼんやりと見える他のサービスを背景に、明るい光に照らされた「Ad Grants」というロゴのような抽象的な形が浮かび上がっている。
本記事では、Google for Nonprofitsの複数のサービスの中から、特に価値の高いAd Grantsに焦点を当て、その機能と制約を深掘りします。

前回の記事(このサイトの記事)では、 の全体像 — Workspace・Ad Grants・YouTube非営利プログラム・Maps Platformの4サービスを概観した。本記事では、そのなかでも最大の価値を持つ に焦点を絞り、月最大$10,000の広告枠がどのように機能し、どのような制約のもとで運用されるのかを深掘りする。

Ad Grantsは単に「無料の広告費」ではない。CPC上限・CTR維持義務・Quality Score要件など、通常のGoogle広告にはない独自のルールが設けられており、これらを理解しないまま運用を開始すると、アカウント停止や広告表示の激減といった事態に直面する。逆に、制約を正しく理解して運用設計すれば、月最大$10,000、12か月で最大$120,000相当の広告枠を継続的に活用できる強力な集客チャネルとなる。


Ad Grantsの全体像

月最大$10,000予算の仕組み・対象広告タイプ・申請プロセスを整理

多くのデジタル広告のアイコンが並ぶ中、特にGoogle検索広告を象徴するアイコンだけが明るく照らされ、そこへ続く道が開かれている様子。
Ad Grantsの予算はGoogle検索広告のみに利用可能で、ディスプレイ広告や動画広告は対象外ですが、2025年以降は検索広告以外のオプションも利用可能になります。

対象となる広告タイプ

Ad Grantsの予算が使えるのは Google検索広告のみ である。ディスプレイ広告・動画広告(YouTube広告)・ショッピング広告は対象外だ。ただし、2025年以降は Performance Max キャンペーン も利用可能となり、検索に加えてGoogle Mapsへの広告配信が可能になった。なお、通常の有料Performance Maxとは異なり、Ad Grants版ではDisplay・YouTube・Discover等のネットワークは現時点では対象外である。

申請条件と審査プロセス

Ad Grantsを利用するには、まず への登録が必要である。日本で対象となるのは次の4法人類型である。

  • 特定非営利活動法人(NPO法人)
  • 公益社団法人・公益財団法人
  • 社会福祉法人

申請は (旧Percent)経由で資格認証を受けたうえで、Google for Nonprofitsのダッシュボードから Ad Grants を個別に有効化する。審査は2段階で、まずGoogle for Nonprofitsへの申し込みが通常2〜14営業日で審査され、承認後にAd Grantsの有効化へ進む。

Webサイト要件

Ad Grantsの審査では、申請団体のWebサイトも評価対象となる。は、団体が管理するドメイン、活動に関連した十分な独自コンテンツ、明確なミッションと使いやすい構成を求める。最低5ページ・各300語という固定値は示していない。


月最大$10,000の予算がどう機能するか

日次予算配分・CPC上限・スマート入札の活用法を解説

透明なチューブと貯水池で構成された複雑なシステムで、月の始まりから終わりまで明るく光る液体が毎日異なる量で流れていく様子。月末にはシステム全体がリセットされる。
月額上限$10,000の予算は、Googleのアルゴリズムによって検索需要に応じて日次で自動配分され、未消化分は翌月に繰り越されません。

Ad Grants 運用メカニズム

月次予算の上限

$10,000

使い切れば年間 $120,000 相当

運用制約

CPC上限

手動入札: $2.00

スマート入札: 上限なし

※ Maximize Conversions / Target CPA / Target ROAS 使用時

広告タイプ

検索広告のみ

ディスプレイ・動画・ショッピング広告は対象外

※ 2025年〜 Performance Max も利用可能

維持要件

CTR維持義務

月平均 5% 以上(Smart Campaignsのみは除外)

2ヵ月連続で未達 → アカウント停止

Quality Score

全KWで 3 以上

1〜2のKWは停止・削除が必要

コンバージョン記録

月1件以上必須

60日間ゼロ → 停止リスク

図: Ad Grantsの月次予算・CPC上限・CTR要件の関係

日次予算への自動配分

月最大$10,000の予算は、Googleの広告システムにより日次予算として自動配分される。単純計算で1日あたり約 $329 だが、実際にはGoogleのアルゴリズムが検索需要に応じて日ごとの消化額を変動させる。需要の多い日には日次予算を最大2倍まで使い、需要の少ない日には抑制するといった調整が自動で行われる。

重要なのは、未消化の予算は翌月に繰り越されないという点である。月$10,000の上限を使い切れなかった場合、その残額は消滅する。とはいえ、無理に予算を消化しようとして低品質なキーワードに入札すると、CTR低下やQuality Score悪化を招くため、品質を維持しながら消化率を高める運用設計が求められる。

CPC上限の仕組み

手動入札(Manual CPC)を使用する場合、1クリックあたりの入札上限は $2.00 に制限される。この制約は、「NPO 寄付」「ボランティア 募集」といった競合の激しいキーワードで上位表示を難しくする大きな要因となる。

ただし、次のスマート入札戦略を使う場合は$2の上限が外れる。

  • Maximize Conversions(コンバージョン数の最大化)
  • Target CPA(目標コンバージョン単価)
  • Target ROAS(目標広告費用対効果)

スマート入札を利用するには、コンバージョントラッキングの設定が必須となる。Google Analyticsの目標設定またはGoogle Adsのコンバージョンタグを正しく実装しておく必要がある。


CTR 5%維持義務とQuality Score要件

継続条件の詳細と停止リスクへの対処法を明示

CTR(クリック率)5%ルール

Smart Campaignsのみを使うアカウントを除き、Ad Grantsアカウントは、 アカウント全体 で月平均CTR 5%以上を維持しなければならない。これは個別キーワードやキャンペーン単位ではなく、アカウント全体の集計値が対象となる。

1ヵ月間CTR 5%に届かない場合、即座の停止はないが改善が求められる。2ヵ月連続で未達だとアカウントが一時停止される。

停止されたアカウントは、問題のあるキーワードの停止・削除と改善計画の提出により再開できるが、その間の広告表示は止まったままになる。

CTR 5%はGoogle検索広告の一般的な平均CTR(約3〜4%)よりも高い水準であり、達成には意図的な運用設計が不可欠だ。

Quality Score 3以上の義務

すべてのキーワードで Quality Score 3以上 を維持する必要がある。Quality Score が1または2のキーワードは 停止または削除しなければならない。

Quality Scoreを決めるのは次の3要素である。

要素内容
予想クリック率広告が表示された際にクリックされる可能性
広告の関連性キーワードと広告文の一致度
ランディングページの品質LP(遷移先ページ)のコンテンツ品質・読み込み速度・モバイル対応

コンバージョン記録義務

は、稼働中のアカウントで意味のある行動を正確に計測し、月1件以上のコンバージョンを記録することを求める。固定の「2025年開始」「60日で停止」という条件はこの案内にない。

コンバージョンとして設定できるアクションの例:

  • お問い合わせフォームの送信
  • 資料ダウンロード
  • ボランティア登録
  • 寄付完了
  • ニュースレター登録

キーワード設計の基本戦略

ロングテール戦略・除外キーワード・検索クエリ分析の実践法を解説

ロングテールキーワードの優先

手動入札等でCPC上限$2が適用される場合は、「NPO」「寄付」「ボランティア」といった ビッグキーワードでの上位表示は極めて困難 である。有料広告主が$5〜$10以上で入札しているキーワードでは、$2の上限では太刀打ちできない。

そこで有効なのが ロングテールキーワード戦略 である。

  • 「子どもの貧困 支援 方法」(3語以上の組み合わせ)
  • 「フードバンク 寄付 東京」(地域名を含む)
  • 「不登校 支援 NPO 相談」(課題 + 解決策 + 主体)

ロングテールキーワードは競合が少なく、CPC$2以内で上位表示が可能な場合が多い。加えて、検索意図が明確なためCTRが高くなりやすく、5%維持義務の達成にも寄与する。

除外キーワードの管理

CTR 5%を維持するうえで、除外キーワード(ネガティブキーワード)の管理は極めて重要である。団体の活動と無関係な検索語で広告が表示されると、クリックされずにインプレッションだけが積み上がり、CTRが低下する。

共通的に除外すべきキーワードの例:

  • 「定義」「意味」「とは」(情報収集目的の検索)
  • 「給料」「年収」「求人」(採用目的でない場合)
  • 競合団体名
  • 「無料」「タダ」(コンバージョンに繋がりにくい)

アカウントレベルの 共有除外キーワードリスト を作成し、全キャンペーンに一括適用するのが効率的だ。

検索クエリレポートの活用

Google Adsの検索クエリレポートを定期的に確認し、クエリの種類に応じて手を打つ。

クエリの種類打つ手
高CTR・高CVR新しいキーワードとして追加
高インプレッション・低CTR除外キーワードに追加
意図しないもの除外キーワードに追加

最低でも週1回の検索クエリレビューを習慣化することを推奨する。


運用で使える具体的なテクニック

広告文最適化・ランディングページ改善・レポーティングの実務ノウハウ

広告文の最適化

CTR向上のために、広告文には次の要素を含めるとよい。

要素内容
キーワードとの一致検索語が広告見出しに含まれていると、太字表示されてCTRが上がる
行動喚起(CTA)「今すぐ相談」「無料で資料請求」等の具体的なアクション
数値の活用「年間500人の支援実績」「設立20年の信頼」等
広告表示オプションサイトリンク・コールアウト・構造化スニペットを必ず設定する

各広告グループには 最低2本の広告 を設定することがAd Grantsのポリシーで求められている。A/Bテストを常時実施し、パフォーマンスの低い広告を入れ替えていく運用が望ましい。

ランディングページの改善

Quality Scoreの3要素のうち「ランディングページの品質」は、広告運用だけでは改善できない要素である。次の点を確認し、目安を外れていればサイトを直す。

確認する点目安
ページ読み込み速度モバイルで3秒以内
モバイル対応レスポンシブデザインの実装
コンテンツの関連性広告のキーワードとLPの内容が一致しているか
明確なCTAユーザーが次に何をすべきか迷わないUI設計

定期レポーティングと改善サイクル

Ad Grantsの運用は「設定して放置」では成立しない。最低限、次のサイクルで回すことを勧める。

頻度アクション
毎日予算消化率の確認
週1回検索クエリレビュー・除外KW追加
月1回CTR・Quality Score・CV数の全体レビュー
四半期キーワード構造の見直し・新キャンペーン設計

まとめ

運用開始に向けた最初のアクションステップを整理

Ad Grantsは、月最大$10,000・年間最大$120,000相当の検索広告枠を非営利団体に無償提供するプログラムである。ただし、その恩恵を受け続けるためには、入札戦略に応じたCPC制限、対象アカウントのCTR要件、キーワード品質、有効なコンバージョン計測を公式ポリシーに沿って確認する必要がある。

運用開始に向けた最初のアクションステップ:

  1. 自団体のWebサイトでミッション・活動・連絡先を十分な独自コンテンツで説明しているか確認する
  2. Google Analyticsのコンバージョン設定(お問い合わせ・資料DL・寄付等)を完了させる
  3. ミッションに直結するロングテールキーワードを30〜50個リストアップする
  4. 除外キーワードの初期リストを作成する

ISVDでは、Ad Grantsの申請支援から運用最適化まで一貫したサポートを提供している。詳細はサービス紹介を参照されたい。


関連記事


この記事で使った統計の出典

  1. 1Google Ad Grants公式サイト(2025) 出典を開く
  2. 2Whole Whale — Google Ad Grant Policy Updates(2025) 出典を開く
  3. 3Google for Nonprofits ヘルプ「利用を開始する 5 つのステップ」(2026) 出典を開く
  4. 4Google Ad Grants ヘルプ — 予算と入札(2025) 出典を開く
  5. 5Google Ad Grants Policy Compliance Guide(2025) 出典を開く
  6. 6Google Ad Grants — Account management policy(2025) 出典を開く

参考文献

Google Ad Grants — Frequently Asked Questions — Google LLC (2025). Google Ad Grants公式サイト

Ad Grants Policy Compliance Guide — Google LLC (2025). Google for Nonprofits ヘルプ

Understanding Budgets and Bidding — Ad Grants Help — Google LLC (2025). Google Ad Grants ヘルプ

Account management policy — Google for Nonprofits Help — Google LLC (2025). Google for Nonprofits ヘルプ

Tips for success with Google Ad Grants — Google LLC (2025). Google for Nonprofits ヘルプ

Google Ad Grant Policy Updates — Whole Whale (2025). Whole Whale

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訂正履歴

  1. — CPCとCTRの要件が適用される条件を明記しました。

    訂正前
    まとめでCPC上限とCTR要件を一律の条件として案内。
    訂正後
    入札戦略によるCPC制限の違いと、Smart Campaignsのみのアカウントに対するCTR要件の例外を明記。

    誤った理由 Googleの運用案内とアカウント管理ポリシーに合わせました。https://support.google.com/nonprofits/answer/98870 https://support.google.com/nonprofits/answer/117827

  2. — 広告枠の固定円換算と、Webサイト・計測要件の出典不明な固定値を訂正しました。

    訂正前
    月最大10,000米ドルを約150万円と併記。最低5ページ・各300語、2025年以降の月1件と60日停止を案内。
    訂正後
    米ドル建ての月額上限、質的なサイト要件、意味のある行動の月1件以上の計測を説明。

    誤った理由 Googleの予算案内は現地通貨換算額が変動し、上限までの消化も保証されないとしている。サイトポリシーは固定のページ数・文字数を定めず、計測案内に2025年開始や一律60日停止とは書かれていない。https://support.google.com/nonprofits/answer/1332166?hl=en https://support.google.com/nonprofits/answer/1657899?hl=en https://support.google.com/nonprofits/answer/9841491?hl=en

  3. — 「他に類を見ないプログラム」という書き方をやめました。

    訂正前
    月$10,000・年間$120,000相当の検索広告枠を非営利団体に無償提供する、他に類を見ないプログラムである
    訂正後
    月$10,000・年間$120,000相当の検索広告枠を非営利団体に無償提供するプログラムである

    誤った理由 他に同種のプログラムが無いことを確かめた出典がありませんでした。金額と維持条件は、本文で出典を示している内容です。

  4. — Ad Grants の広告枠の額を、上限だと分かる書き方に直しました。

    訂正前
    「月$10,000の広告枠」のように、額を上限と書いていない表記
    訂正後
    「月最大$10,000の広告枠」のように、上限だと分かる表記

    誤った理由 Google の公式ページは「up to $10,000 per month」と書いています。月10,000米ドルは上限であって、毎月その額が配られるわけではありません。「月$10,000の広告枠」と書くと、受け取れる額として読めます。年間$120,000は、上限を12か月使い切ったときの計算値です。

  5. — 申請から利用開始までの期間を、出典が確認できる2段階の記述に改めました。

    訂正前
    申請から利用開始まで通常7〜10営業日を要する。(出典 = Groas.ai の解説記事)
    訂正後
    Google for Nonprofits への申し込みが通常2〜14営業日で審査され、承認後にAd Grantsを個別に有効化する。(出典 = Google for Nonprofits 公式ヘルプ)

    誤った理由 「7〜10営業日」という数値の出典が第三者の解説記事で、Googleの公式情報では裏付けが取れませんでした。実際の手続きはGoogle for Nonprofitsの申し込み審査とAd Grantsの有効化の2段階で、公式に日数が示されているのは前者の2〜14営業日のみ。確認できない合算値を書くのをやめ、公式に記載のある範囲に改めました。

読んだ後に考えてみよう

  1. 自団体のミッションに直接関連するロングテールキーワードを10個以上挙げられるだろうか?
  2. 現在のWebサイトはミッションや活動を十分な独自コンテンツで説明し、使いやすい構成になっているだろうか?
  3. CTR 5%を達成するために、どのような除外キーワードが必要になるだろうか?

この記事の用語

Google Ad Grants
Google for Nonprofitsの一部として、対象団体に月最大10,000米ドルの検索広告枠を提供する制度。現金の助成ではなく、実際に利用できる額は検索需要や広告の設定などによる。継続利用には、広告の品質や成果計測などの要件を満たす必要がある。
Google for Nonprofits
Googleが非営利団体向けに提供するプログラム。検索広告枠を提供するAd Grants、業務ツールのWorkspace、YouTubeの非営利団体向け機能などを含む。利用には団体の参加資格の確認と、各サービスの有効化が必要。
非営利型一般社団法人
一般社団法人のうち、定款で非営利性が確保された法人。法人税法施行令第3条の要件を満たすことで、収益事業以外の所得が非課税となる。設立は2名以上の社員で可能で、NPO法人と異なり活動分野の制限がない。

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