スモールコンセッションの進め方5ステップ — 構想から事業者選定まで【2026年版】
自治体担当者向け:スモールコンセッション事業化の5フェーズ(機運醸成→施設選定→事業化検討→事業計画→公募・選定)を、各ステップの期間・タスク・費用とともに解説。
ざっくり言うと
- スモールコンセッションの事業化は5フェーズ。全体で2〜4年が目安
- 最も重要なのはフェーズ3のサウンディング。民間の参入意欲を事前に把握する
- 各フェーズで活用できる国の支援制度(専門家派遣・先導的支援事業)がある
全体像
5フェーズで2〜4年。フェーズごとに明確な成果物がある
スモールコンセッションの事業化は、以下の5つのフェーズで進む。全体で2〜4年が目安であり、各フェーズに明確な成果物が設定されている。
スモールコンセッションの基本的な仕組みについては、スモールコンセッションとは?を参照されたい。
| フェーズ | 期間目安 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| 1. 機運醸成 | 3〜6ヶ月 | 庁内合意・検討体制の構築 |
| 2. 施設選定 | 3〜6ヶ月 | 遊休施設リスト・候補施設の選定 |
| 3. 事業化検討 | 6〜12ヶ月 | サウンディング実施結果・民間ニーズの把握 |
| 4. 事業計画 | 6〜12ヶ月 | 導入可能性調査報告書・収支シミュレーション |
| 5. 公募・選定 | 6〜12ヶ月 | 募集要項・評価基準・事業者決定 |
フェーズ1: 機運醸成(3〜6ヶ月)
やるべきこと
PPP/PFIに対する庁内の理解を深める段階。具体的なタスクは以下の通りである。
- 首長への説明: スモールコンセッションの概要と期待効果を簡潔に説明し、トップダウンの検討指示を得る
- 関係部署との連携: 財政課(予算)、管財課(財産管理)、企画課(総合計画との整合)、対象施設の所管課
- 議会対応: 事前の情報提供。PPP/PFIに対する「民間丸投げ」という誤解を解く
- 先進事例の視察: スモールコンセッション事例7選で紹介した自治体への視察や、スモールコンセッションプラットフォームのセミナー参加
よくある失敗
このフェーズを飛ばして「いきなりサウンディング」に進む自治体が少なくない。結果として、サウンディング結果を庁内に持ち帰っても「聞いていない」「議会が通らない」と頓挫するケースが頻発する。
活用できる支援
プラットフォームの会員登録(無料)でセミナー情報や先進事例が定期配信される。
フェーズ2: 施設選定(3〜6ヶ月)
やるべきこと
遊休施設の棚卸しを行い、スモールコンセッションの候補を絞り込む。
- 遊休施設リストの作成: 廃校、古民家、旧庁舎、旧医院、旧保養所など、庁内の全遊休施設をリストアップ
- エリアビジョンの策定: 施設単体ではなく、周辺エリアの将来像を含めて検討。「この施設をどう使うか」ではなく「このエリアをどうしたいか」から発想する
- 基礎データの収集: 施設の現況(耐震性、アスベスト有無、改修費概算)、周辺の人口動態、交通アクセス、類似施設の有無
選定基準の例
| 評価項目 | 高評価 | 低評価 |
|---|---|---|
| 立地 | 幹線道路沿い・駅近 | 山間部・アクセス困難 |
| 建物状態 | 耐震適合・軽微な改修で利用可 | 大規模改修必要・アスベスト |
| 周辺需要 | 観光客・住民の集積あり | 過疎化が進行中 |
| 法的制約 | 用途変更容易 | 文化財指定・都市計画制限 |
フェーズ3: 事業化検討(6〜12ヶ月)
やるべきこと
このフェーズが5段階の中で最も重要 である。民間事業者の参入意欲を事前に把握し、公募後に「応募ゼロ」という事態を回避する。
- サウンディング型市場調査の実施: 民間事業者に対し、施設の活用アイデアや参入条件についてヒアリングする対話型の調査
- 結果の公表: サウンディング結果の概要を公表し、透明性を確保。これにより追加の事業者を呼び込む効果もある
- 事業スキームの方向性決定: サウンディング結果を踏まえ、どの手法(コンセッション・PFI・賃貸借・指定管理)を採用するかの方向性を定める
手法の選択については官民連携7手法を徹底比較を参照されたい。
サウンディングの設計ポイント
- 質問項目: 施設への関心度、希望する事業内容、必要な条件整備、参入時の課題を最低限聞く
- 参加のインセンティブ: 公募時の加点(開成山公園の事例では参加者に5点加点)を設けると参加率が上がる
- 段階的実施: 可能であればトライアル(社会実験)→マーケットサウンディングの2段階が理想
活用できる支援
スモールコンセッション形成推進事業による専門家派遣制度。自治体の費用負担なしで、サウンディング設計の助言を受けられる。
フェーズ4: 事業計画(6〜12ヶ月)
やるべきこと
サウンディング結果を踏まえ、事業としての成立性を具体的に検証する。
- 導入可能性調査: 施設の現況調査、市場分析、事業スキームの設計、収支シミュレーションを一体的に実施
- 収支シミュレーション: 初期投資(改修費)、運営コスト、収益見込みを年次で試算。NPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)で事業性を定量評価
- リスク分担の設計: 需要変動リスク、施設劣化リスク、不可抗力リスクなどを官民間でどう分担するかを定める
費用の目安
導入可能性調査の委託費は、施設の規模や調査範囲によって異なるが、一般的に500万〜2,000万円程度である。国の「先導的官民連携支援事業」(上限2,000万円)を活用すれば、自治体の実質負担を大幅に軽減できる。
フェーズ5: 公募・選定(6〜12ヶ月)
やるべきこと
- 募集要項の策定: 事業範囲、費用負担、事業期間、選定基準を明示。国交省のWord雛形が参考になる
- 評価基準の設計: 価格だけでなく、事業計画の質(40〜60%)、地域貢献(10〜20%)、運営体制(10〜20%)、経費削減(10〜20%)を総合評価する配点設計が推奨される
- プロポーザル審査: 書類審査+プレゼンテーション。外部有識者を含む選定委員会を設置
- 事業者決定・協定締結: 基本協定→詳細設計→各種許認可→工事→開業
評価基準設計のポイント
「価格が安い業者が勝つ」評価基準は避けるべきである。価格偏重の評価では、運営段階でサービス品質が低下するリスクが高い。Park-PFI成功事例5選で紹介した開成山公園の事例では、500点中「経費削減」の配点は70点(14%)に留め、事業計画の質と地域貢献に重みを置いている。
よくある失敗パターン
フェーズ飛ばし、サウンディング未実施、価格偏重評価の3つ
失敗1: フェーズ飛ばし
庁内合意(フェーズ1)を経ずにサウンディング(フェーズ3)に進み、結果を持ち帰っても議会が反対。全てが白紙に戻る。
失敗2: サウンディング未実施
「公募すれば事業者は集まるだろう」という楽観的前提で公募を実施し、応募ゼロ。特に人口数万人の地方では、サウンディングなしの公募は極めてリスクが高い。
失敗3: 価格偏重評価
最低価格の事業者を選定した結果、運営段階でサービス品質が低下し、住民の不満が噴出。最終的に事業撤退に至るケースもある。
5つのフェーズのどこから始めるかは、自治体の現状によって異なる。庁内の理解が進んでいるなら施設選定(フェーズ2)から、候補施設が決まっているならサウンディング(フェーズ3)から着手できる。
重要なのは、フェーズを飛ばさないこと。各フェーズの成果物が次のフェーズの入力となる構造であり、途中を省略すると後工程で必ず問題が生じる。
ISVDでは、あなたの自治体が今いるフェーズを確認し、次のステップに進むための具体的なアクションプランを無料で一緒に設計する相談を受け付けている。
参考文献
スモールコンセッション推進方策 (2024)
スモールコンセッション形成推進事業 専門家公募 (2026)
スモールコンセッションプラットフォーム (2024)