一般社団法人社会構想デザイン機構

スモールコンセッション事例7選 — 全国の自治体が取り組む遊休施設の再生【2026年版】

ISVD編集部
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自治体担当者向け:2026年度スモールコンセッション形成推進事業で選定された7自治体の事例を構造分析。古民家・廃校・旧庁舎の活用手法と前提条件を解説。

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ざっくり言うと

  1. 2026年度のスモールコンセッション形成推進事業で7自治体が選定。古民家4件・廃校1件・旧庁舎1件・複合1件
  2. 専門家には大手コンサル(PwC・デロイト)から一般社団法人まで多様な主体が選定されている
  3. 人口2万人台から40万人超まで、自治体規模を問わず取組みが始まっている

2026年度 スモールコンセッション形成推進事業の全体像

国交省が7自治体を選定し、専門家を派遣して事業化を支援する制度の概要

形成推進事業は、遊休公的不動産の活用を検討する自治体に対し、国が選定した専門家を派遣して伴走支援を行う制度である。2026年度は7つの自治体が選定され、エリアビジョンの検討から施設現況調査まで、事業化の初期段階を専門家が支援する。

この事業の特徴は、自治体が費用を負担せずに専門家の知見を活用できる点にある。専門家の報酬は国が負担し、自治体は検討に集中できる。スモールコンセッションの基本的な仕組みについては、スモールコンセッションとは?を参照されたい。

7自治体の事例一覧

真鶴町・安城市・姫路市・奈良市・池田町・下田市・長洲町の対象施設と選定専門家

以下が2026年度に選定された7自治体と、それぞれの対象施設・選定専門家の一覧である。

自治体対象施設施設類型選定専門家
真鶴町(神奈川県)旧民俗資料館古民家エンジョイワークス
安城市(愛知県)旧神谷家住宅古民家(史跡公園内)デロイトトーマツ
姫路市(兵庫県)旧濱本家住宅古民家阪急CM
奈良市(奈良県)旧柳生藩家老屋敷古民家(文化財)PwC
池田町(北海道)旧高島小学校+旧医院+旧住宅複合(廃校含む)エリアクラフト北海道+北海道博報堂
��田市(静岡県)旧市役所庁舎旧庁舎建設技術研究所
長洲町(熊本県)旧長洲中学校廃校建設技術研究所

各事例のポイント

真鶴町(神奈川県) — 人口約6,600人の小さな港町。旧民俗資料館(古民家)の活用を、まちづくり会社として実績のあるエンジョイワークスが支援する。同社はクラウドファンディングを活用したリノベーション事業に強みを持つ。

安城市(愛知県) — 人口約19万人の中核市。史跡公園内に位置する古民家の活用であり、文化財保護との両立が論点となる。デロイトトーマツが大手コンサルとしての知見を提供する。

池田町(北海道) — 人口約6,200人。旧高島小学校(廃校)+旧医院+旧住宅の3施設を一体的に活用する複合型案件。一般社団法人エリアクラフト北海道と北海道博報堂のコンソーシアムが選定された点が注目に値する。 一般社団法人でも専門家として採択される ことが実証された事例である。

長洲町(熊本県) — 人口約1.5万人。旧長洲中学校(廃校)の活用を検討する。建設技術研究所が技術的知見を提供する。廃校活用の具体的な手順については廃校活用の全手順も参照されたい。

事例から読み取れる3つの傾向

古民家偏重・大手と社団法人の混在・地方小都市の参入

傾向1: 古民家活用が7件中4件

7自治体のうち4件(真鶴町・安城市・姫路市・奈良市)が古民家を対象としている。これは偶然ではなく、国交省の推進方策が「住民から寄付を受けた古民家等」を主要な対象として位置づけていることの反映である。

古民家は、廃校や旧庁舎と比較して以下の特徴がある。

  • 建物規模が小さく、改修費用が相対的に低い
  • 観光・飲食・宿泊など収益化の選択肢が多い
  • 地域の歴史的文脈を活かした事業設計が可能

一方で、文化財指定を受けている施設(奈良市)では改修の自由度が制限されるため、事業性の確保にはより慎重な設計が求められる。

傾向2: 専門家は大手から社団法人まで

選定された専門家は、PwC・デロイトトーマツといった大手コンサルティングファームから、建設技術研究所(建設コンサル大手)、エンジョイワークス(まちづくり会社)、一般社団法人エリアクラフト北海道まで多様である。

特に池田町の事例は、 一般社団法人+地元広告代理店のコンソーシアム が大手を抑えて選定された点で示唆的である。スモールコンセッションの「スモール」は事業費だけでなく、専門家の規模にも当てはまることを示している。

傾向3: 人口規模を問わない参入

7自治体の人口は約6,200人(池田町)から約52万人(姫路市)まで幅広い。人口2万人未満の自治体が3件(真鶴町・池田町・長洲町)含まれており、小規模自治体でもスモールコンセッションに取り組める環境が整いつつある。

前提条件の比較

7事例の規模・立地・施設状態を比較し、自分の自治体に当てはめるための判断基準

7事例を「自分の自治体に当てはめられるか」判断するための前提条件を整理する。

前提条件真鶴町安城市姫路市奈良市池田町下田市長洲町
人口6,600190,000520,000350,0006,20019,00015,000
施設類型古民家古民家古民家古民家複合旧庁舎廃校
文化財なしありありありなしなしなし
施設数1111311
観光資源港町史跡公園城下町歴史都市農村温泉観光地農漁村

この比較表の読み方: 自分の自治体の条件と最も近い事例を特定し、その事例の専門家の支援内容や事業スキームを参考にする。ただし、前提条件が類似していても、民間事業者の参入意欲や地域住民の合意形成など、表に現れない要素で結果は大きく変わる

事例の表面をコピーするのではなく、構造的な成功要因(なぜその手法を選んだのか、なぜその専門家が選ばれたのか)を理解した上で、自分の自治体に合った事業設計を行うことが重要である。


事例を読んで「うちでもできそうだ」と思った場合も、「うちには当てはまらない」と思った場合も、まず必要なのは自分の自治体の前提条件を正確に把握することである。

ISVDでは、自治体ごとの前提条件を整理し、最適な官民連携手法を選定するための無料相談を実施している。

参考文献

スモールコンセッションに取り組む地方公共団体に派遣する専門家の公募を開始 (2026)

スモールコンセッションの検討を行う地方公共団体に専門家を派遣します (2025)

スモールコンセッション推進方策 (2024)

スモールコンセッションプラットフォーム (2024)

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読んだ後に考えてみよう

  1. あなたの自治体に、7事例のいずれかと類似する遊休施設はあるか?
  2. 専門家派遣制度に応募する場合、コンソーシアムのパートナー候補は誰か?
  3. 7事例の前提条件と自分の自治体の条件、最も大きな違いは何か?

この記事の用語

スモールコンセッション
地方公共団体が所有する空き家・廃校等の遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模(事業費10億円未満程度)なPPP/PFI事業を行う取組み。2024年に国交省がプラットフォームを設立。
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