本文へ移動する
お問い合わせ

一般社団法人 社会構想デザイン機構

〒112-0001 東京都文京区白山2-22-20

廃校活用率74.4%は、何を数えているのか

文科省の2024年5月時点の調査と、校数・用途別件数・個別施設の費用や利用条件について

更新: ヨコタナオヤ(横田直也)約10分で読めます

廃校活用率74.4%は何を数えているのか。文科省の原表で校数、施設別の複数回答、募集時点を区別し、全国の統計から個別施設の費用・需要・生活の成果を考える。

ざっくり言うと

  • 活用率74.4%は、2024年5月1日時点で施設が現存する校数に対する割合。
  • 用途別の複数回答件数と校数を混ぜて、民間市場の規模を計算しない。
  • 全国の統計から、現在の募集、個別の費用と利用条件、生活の成果へ確認を移す。

見出し画像はAI生成の概念画像である。調査対象の廃校や、実際の活用事例を撮影したものではない。

本稿は公開統計を読むための解説であり、個別の法律相談や不動産投資への助言ではない。具体的な法的判断は弁護士などの有資格者に相談する必要がある。

何が起きているのか

活用率74.4%は、2024年5月1日時点で施設が現存する校数に対する割合。

活用率の数字を、使われ方へ戻す

廃校の74.4%が活用されている。この数字を、地域に残された学校を考える出発点にするときには、何を数えたかを確かめたい。数える対象が分からなければ、建物の利用を、事業の黒字や住民の暮らしの改善まで含む成果として読んでしまう。

文部科学省は2025年3月31日に、廃校施設の活用状況を公表した。調査の基準日は2024年5月1日であり、2026年の状態を測った数字ではない。対象は全国の公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校である。

2004年度から2023年度までに発生した廃校は8,850校で、そのうち施設が現存するものは7,612校だった。現存する7,612校のうち5,661校、74.4%が活用されている。この割合の計算に用いるのは、廃校が発生した延べ校数ではなく、施設が現存する校数である。

使われていない1,951校にも違いがある。用途が決まっているものが235校、用途が決まっていないものが1,503校、取壊しを予定するものが213校となる。すべてを、使い道のない建物や事業者を待つ物件と説明することはできない。

資料の19.7%という用途未定の割合も、現存する7,612校に対する1,503校の割合である。未活用の1,951校のうち19.7%という意味ではない。説明の中で対象を省くと、同じ数字を使いながら、異なる校数を想像することになる。割合を伝えるときにも、何校に対して何校なのかを残しておきたい。

用途が決まったことと、利用が始まったことは異なる。使われている建物でも、どの棟をどれだけ利用し、誰が費用を負担しているかは校数から分からない。全国の活用率は施設の状態を捉える情報であり、地域の事業計画を代わりに評価する数字ではない。

調査と募集を、別の時点で読む

文科省のでは、廃校と余裕教室の資料が並ぶ。最近公開された資料であっても、対象と基準日が同じとは限らない。読む日、公表した日、調べた日を分けることから始めたい。

一方、活用用途を募集する廃校の一覧は、2026年11月1日時点の情報として掲載されている。こちらは、全国調査の数値より後の募集情報である。それでも1,951校がすべて募集されているとは読めず、掲載された施設の現状も自治体へ直接確認する必要がある。

背景と文脈

用途別の複数回答件数と校数を混ぜて、民間市場の規模を計算しない。

校数と用途別件数を混ぜない

調査は、主な活用用途として学校や社会体育施設、企業等の施設などを示すが、用途別の表が数えるのは校数とは異なる。校舎と屋内運動場を分け、複数の用途を回答できる形で集計している。

例えば「学校(大学を除く)」の4,191件は、校舎2,110件と屋内運動場2,081件を合わせた数である。同じ表の「企業等の施設、起業支援施設」の1,207件も、校舎789件と屋内運動場418件を合わせている。学校の数と用途の件数を、同じ棒の長さで比べることはできない。

現存する廃校の活用状況

集計する単位
校
施設が現存するもの
7,612校
活用されているもの
5,661校

用途別の活用件数

集計する単位
複数回答の件
学校(大学を除く)
4,191件
企業等・起業支援
1,207件

文科省2025年3月31日公表資料の活用状況と用途別表を参考に筆者作成。右の項目は校舎と屋内運動場の複数回答件数。左右の数値を差し引いて民間活用校数や市場規模を求める図ではない。

図1 活用状況と用途別の表では、数える対象が違う

同じ廃校の校舎を学習の場として使い、屋内運動場を体育の場として使う場合を想定すると、用途が複数あることと、学校が複数あることの違いが見える。これは数え方を説明する仮の例である。元の表に学校ごとの組合せが示されなければ、用途別の件数だけから、何校が一つの用途を持つかを復元することもできない。

用途別の構成比から学校利用を引き、残りを民間事業の市場規模とする計算には、この違いが抜け落ちる。用途の名称だけで、所有者や運営主体が公的か民間かも判定できない。活動を行う人を考えるには、個別の契約や実際の運営範囲が必要になる。

施設の一部を使うことが、地域にとって不足していた機能を補う場合も想定できる。反対に、広い面積を使っていても、利用時間や料金の条件から参加しにくい人がいるかもしれない。利用の範囲と、その場所に求める役割を合わせて確かめることが重要になる。

使わない理由は、一つに決まらない

用途が決まっていない理由について、調査は校舎と屋内運動場を別に尋ねている。校舎では、地域等からの要望がないという回答が41.5%、建物が老朽化しているという回答が41.4%だった。近い割合でも、別々の学校を二つに分けた数字ではない。

では、校舎2,177を対象に複数回答を集計する。同じ建物について要望と老朽化を両方回答した可能性がある。二つを足して学校全体の割合にしたり、修理すれば要望も生まれると推定したりすることはできない。

老朽化と費用についても、理由の順位だけで対策の順番を決めない。建物の修理に必要な費用を見積もり、その条件でも使いたい人がいるかを調べる過程が考えられる。反対に、希望する活動が先に分かれば、その活動に必要な部分を対象に修理を検討することもできる。全国の回答は、どちらの進め方がその施設に適するかまでは示していない。

「要望がない」という回答は、住民一人ひとりに使いたい用途がないと確かめた結果と同じではない。どのような方法で意見を聞いたか、検討できる条件を伝えたかは、個別に調べる必要がある。全国の理由別表だけで、対話の不足を未活用の原因と断定することも避けたい。

似た割合にも、異なる調査がある

過去の活用率と比べる場合にも注意が要る。前回の2021年調査は2002年度から2020年度までの廃校を対象とし、今回と対象期間が異なる。率の変化を、同じ学校がどう変わったかという追跡結果や、特定の取組の効果として説明することはできない。

地域別に活用率を比べる場合でも、閉校してからの期間や、残っている建物の範囲が異なるかを確認したい。高い割合だけで運営の力が強いと判断すれば、施設の条件を説明から落としてしまう。個別の学校が、用途未定から決定、利用開始へどう進んだかを見るには、同じ対象の状態を追える記録が別に必要になる。

また、2025年5月1日時点の余裕教室調査では、7万4,138室のうち7万2,902室、約98.3%が活用されている。対象は公立小中学校と義務教育学校の教室である。廃校の校数と余裕教室の室数、基準日の違いを無視して、どちらが優れていると評価する数字ではない。

余裕教室の活用には、その学校の学習や児童・生徒の生活のための利用も含まれる。建物を地域の事業へ開くことだけが、活用という言葉の意味ではない。異なる調査の数字を並べるときには、具体的な使い方まで読み戻したい。

構造を読む

全国の統計から、現在の募集、個別の費用と利用条件、生活の成果へ確認を移す。

全国の表から、現地の条件へ

全国統計が示すのは、調査対象全体の状態と回答の傾向である。そこからある学校を検討する段階では、現在も募集されているか、利用できる場所と期間がどこまで認められるかを確かめる。掲載情報を見た時点と、契約する時点の条件が同じとは限らない。

文科省のも、掲載内容が変わったり、すでに募集が終了したりする可能性を案内している。全国の率と募集情報は、施設へたどり着く入口として使う。その後の判断は、現地と現在の資料に移す必要がある。

全国の調査で読む対象

どの時点・範囲か
基準日と対象
校数か施設の回答か
集計の単位
用途や未活用の理由
回答の傾向

個別施設で確かめる対象

利用できる棟と時間
利用条件
維持・修繕と終了時
費用と担当
利用する人の変化
生活の成果

文科省の調査と募集一覧を参考に、判断に必要な確認を筆者が整理。右の項目は評価の提案で、全国調査が測定した成果や、個別事業が達成した状態ではない。

図2 全国の活用状況から、個別の利用条件へ移る

例えば、校舎の一室を使う提案なら、その部屋を開ける費用と、校舎全体を維持する費用を分けて考える。改修の負担だけを確認しても、利用中の修理や終了時の片付けを誰が行うかは残る。全国の活用率から、その負担を利用者か自治体かに割り振ることはできない。

建築や財産処分に関わる手続の適用も、用途の名称だけで決めない。現在の原本と所管の確認を経て、使える条件を整理する必要がある。学校という出発点が同じでも、何に転用するか、どの施設を含むかが違えば、確かめる範囲も変わる。

要望を、利用できる条件へつなぐ

意見を聞くときには、欲しい施設の名前に加えて、そこで行いたい活動と利用できる条件を尋ねる方法が考えられる。仕事や家事の後に使いたい人なら、開館時間が関わる。送迎を必要とする人なら、移動の方法と負担を含めて検討する。

これらは、全国調査が確認した住民の困り事ではなく、個別の検討で確かめたい問いである。例えば「交流の場所」という要望があっても、集まる頻度や費用の条件は人によって異なる。建物を用意する前に、その違いを把握することが、使い方の選択につながる。

すべての要望を一つの校舎で満たせると約束する必要はない。既存の場所を使う方法と、新たに校舎を維持する方法を比べることもできる。要望を受けた担当が、何を検討し、どの条件で実現が難しいと判断したかを返す方法を考えたい。

開始後に、確かめ直す仕事を残す

使い始めた後の評価には、来場者数だけでなく、目的とした活動を続けられるかという問いがある。同じ人の繰り返し利用と、新しく参加した人を分けて見る方法も考えられる。ただし、人数が増えたことだけで、孤立の軽減や就業の改善を達成したとは言えない。

評価する活動と期間を先に決めておくことも考えられる。後から参加者が増えた活動だけを取り上げると、当初支えたかった人や、続かなかった活動を見失う。確認できなかった状態を成功や失敗に振り分けず、未確認として残す。企画した目的が変わった場合にも、変更した理由を記録することで、次の判断へつなげたい。

費用についても、修繕を延期していないか、活動を支える人の負担が増えていないかを確認したい。利用者の都合が変わったときには、使い方を見直す機会を設ける。活用の開始を終点にせず、その後の経過を確認する人と、判断を更新する時期を決めておく提案である。

この記事で使った統計の出典

  1. 1文部科学省 令和6年度廃校施設活用状況実態調査(2024年5月1日時点) 出典を開く
  2. 2文部科学省 令和6年度廃校施設活用状況実態調査 用途別表(2024年5月1日時点) 出典を開く
  3. 3文部科学省 令和6年度廃校施設活用状況実態調査 理由別表(2024年5月1日時点) 出典を開く
  4. 4文部科学省 令和7年度公立小中学校等における余裕教室の活用状況(2025年5月1日時点) 出典を開く

参考書籍

『廃校再生ストーリーズ(外部サイト、新しいタブで開きます)』は、菊地敦己が企画構成・デザイン、伊藤総研が編集を担当した2018年の書籍である。出版社の紹介(外部サイト、新しいタブで開きます)が案内する20事例は、使い方を考えるための読書の入口となる。書籍本文は今回未読で、掲載施設の現在の運営や効果を確認した資料として引用していない。書籍へのリンクはAmazonアソシエイトの広告リンクである。

関連ガイド

残る問い

全国の活用率は、廃校が使われる状態を考える出発点になる。地域で次に問いたいのは、どの部分を、誰が、何のために使うかである。校舎全体を残すことと、必要な機能を残すことは同じだろうか。面積の広さを目標にする前に、住民が行いたい活動と、利用できる時間や移動の条件を確かめたい。その違いを、募集や対話の段階から共有できるだろうか。活動の希望と移動や時間の制約が合わない場合、聞取りをした担当は別の場所で支える選択も返せるだろうか。建物の保存に賛成したことを、その場所へ通えるという回答へ読み替えずに確かめたい。

使わないという判断にも、説明とその後の仕事が残る。別の場所で活動を支える方法や、建物を維持しない選択を検討するとき、何を比較し、どの費用を含めたかを示す必要がある。活用率を上げるために始めた事業が、将来の修理や終了時の負担を見えなくしていないだろうか。誰がその負担を確認し、利用を続ける条件を見直すのかも問いたい。使わない理由を一つにまとめず、費用を負担する相手と、活動を続けたい人の条件を並べられるだろうか。説明を終えた後も、条件が変われば誰が比較を更新するかを決めたい。

そして、活用が始まった後に、生活の変化をどう確かめるのか。参加した人数と、必要としていた人が参加できたことを分けて見る方法が考えられる。使わなくなった理由や、利用をためらう条件にも耳を傾けたい。全国の表では分からない声と費用を、個別の施設で記録し直す。その確認を重ねることが、建物の利用を地域の暮らしへつなぐ次の課題になる。確認した結果を運営者だけが持つのでなく、利用者と使えなかった人にも、何を変えられたかを伝えられるだろうか。調べて分からなかったことを残し、次に聞く範囲を選ぶ仕事も必要になる。

参考文献

令和6年度 公立小中学校等における廃校施設の活用状況に関する調査 — 文部科学省 (2025). 文部科学省

廃校施設活用状況実態調査、余裕教室活用状況実態調査について — 文部科学省 (2026年11月4日確認). 文部科学省

令和7年度 公立小中学校等における余裕教室の活用状況について — 文部科学省 (2026). 文部科学省

現在活用用途を募集している廃校施設の一覧 — 文部科学省 (2026年11月1日時点). 文部科学省

読んだ後に考えてみよう

  1. 校数と用途別の複数回答件数を、同じ数字として計算していないだろうか。
  2. 活用を始めた後の費用と参加しやすさを、誰が確かめるだろうか。
  3. 募集一覧の日付と自治体が示す現在の条件を、確認しただろうか。

新着コラムをメールで受け取る

週1-2本の社会構造分析コラムを配信します。登録は無料です。

社会構想デザイン機構の活動に参加しませんか?

会員登録で最新の研究・活動レポートをお届けします。協業やプロジェクト参加のご相談もお気軽にどうぞ。

活動を支える賛助会員

年会費5,000円で、社会構想デザイン機構の調査研究と情報発信を支えられます。自動更新はありません。

検索

⌘K で検索を開く・閉じる