総務省行政評価局の調査で、里親登録をしている世帯のうち子どもが委託されていない世帯は15,607、割合にして69.0%だった。同じ時点で3歳未満の里親等委託率は25.3%、国の目標75%の3分の1にとどまる。登録を増やす政策と委託を増やす政策は別のものであり、数えやすいほうだけが動いている構造を読む。
ざっくり言うと
- 里親登録をしている世帯のうち子どもが委託されていない世帯は15,607、割合にして69.0%だった
- 3歳未満の里親等委託率は25.3%で、国の目標75%に対して3分の1にとどまる
- 3歳以上就学前は30.9%、学童期以降は21.7%で、いずれも目標の半分以下である
同じ令和3年度時点で、里親登録をしている世帯のうち子どもが委託されていない世帯は15,607、割合にして69.0%だった。登録数の増加にともなって未委託の世帯も増える傾向にある。施設と里親等に措置されている児童は全体で約3万3,000人で、うち里親委託が18.3%、ファミリーホーム委託が5.2%である。
何が起きているのか
登録は増えているが、その7割近くに子どもが委託されていない
総務省行政評価局が令和6年6月にまとめた調査結果に、里親制度の数字が並んでいる。
まず全体の規模である。令和3年度末時点で、児童養護施設、乳児院、里親およびファミリーホームに措置されている児童は約3万3,000人。そのうち里親委託が18.3%、ファミリーホーム委託が5.2%で、合わせた里親等委託率は約2割になる。
国はこれを引き上げる目標を立てている。3歳未満は令和6年度末までに75%以上、3歳以上就学前は令和8年度末までに75%以上、学童期以降は令和11年度末までに50%以上である。
実績は離れている。令和3年度末で、3歳未満が25.3%、3歳以上就学前が30.9%、学童期以降が21.7%。いずれも目標の半分以下で、3歳未満は3分の1にとどまる。
そして、もうひとつの数字がある。里親登録をしているが児童が委託されていない世帯は15,607、登録里親数に占める割合は69.0%である。
背景と文脈
委託率は伸びているものの、目標との差は3倍近く残っている
伸びているのは世帯数で、率ではない
止まっているわけではない。ただし何が伸びているかは、正確に見る必要がある。
登録里親数は平成24年度末の9,392世帯から令和3年度末の15,607世帯へ、約1.7倍になった。一方で委託里親数は3,487世帯から4,844世帯へ、約1.4倍である。
1.7倍は登録した世帯、1.4倍は実際に子どもを預かっている世帯。 里親等委託率のほうは平成24年度に比べて10ポイント近く上昇という書き方になっている。
未委託の世帯が、最も速く増えている
3つの数字を並べると、どこが伸びているかが分かる。
未委託里親は平成24年度末の5,905世帯から令和3年度末の10,763世帯へ増えた。未委託率は62.9%から69.0%になっている。
倍率にすると、登録1.66倍、委託1.39倍、未委託1.82倍。 最も速く増えているのは、登録したまま子どもが来ていない世帯である。
種別によって、委託される割合がまるで違う
里親には4つの種別がある。登録と委託を種別ごとに並べると、差が出る。
令和3年度末の登録里親は、養育里親12,934世帯、養子縁組里親6,291世帯、専門里親728世帯、親族里親631世帯(総数は重複登録分を除いて15,607世帯)。対して委託里親は、養育里親3,888世帯、親族里親569世帯、養子縁組里親314世帯、専門里親168世帯(総数4,844世帯)である。
種別ごとに委託されている割合を出すと、養育里親が30.1%、親族里親が90.2%、専門里親が23.1%、 養子縁組里親が5.0% になる。
養子縁組里親は、養子縁組によって養親となることを希望する里親である。 登録6,291世帯のうち、子どもが来ているのは314世帯。 未委託の大きな塊がここにある。
児童相談所は234か所で、業務は16項目ある
体制の側も見ておく。児童相談所は令和6年4月時点で全国に234か所設置されている。
里親に関する業務は多い。里親委託ガイドラインが挙げているのは、登録前後の研修、里親候補者の週末里親等の調整、未委託里親の状況や意向の把握、子どもに適合する里親を選定するための事前調整、子どもの発達や特性・保護者との関係等に係るアセスメント、委託する里親の選定、自立支援計画の作成、実親との関係調整、里親家庭への訪問相談、レスパイト・ケアの調整、里親サロンの運営、委託解除に当たっての対応、アフターケアとしての相談など16項目である。
国は人を増やしてきた。児童相談所強化プランと児童虐待防止対策体制総合強化プランにより、令和4年度までに平成27年度に比して児童福祉司を2,330人程度増員することとされた。ただしこれは児童虐待対応件数の増加を踏まえた増員である。
構造を読む
登録数は数えやすく増やしやすいが、委託は別の条件で決まる
登録は募集で増え、委託は判断でしか増えない
登録と委託は、同じ「里親制度を進める」という言葉の下に置かれているが、動く条件が違う。
登録は入口の話で、必要なのは意思のある世帯である。制度の側は募集と研修を用意すればよい。広報を打ち、説明会を開けば、数字は動く。自治体にとっては取り組みやすく、成果も見えやすい。
委託は組み合わせの話で、必要なのは判断と支援である。児童相談所が子ども一人ひとりについて、どこで育つのが最もよいかを決める。決めた後も関わり続ける。人手がなければ、慎重な判断は先送りになる。
数えやすいほうだけが伸びると、数字は良くなるのに現場は動かない。 69.0%という未委託率は、その状態を示している。
分子と分母のどちらが速いか
未委託率が上がっていること自体にも意味がある。もし委託が登録と同じ速さで増えていれば、未委託率は一定に保たれる。上がっているということは、登録の増加が委託の増加を上回っているということである。
分子と分母のどちらが速く動いているかで、政策のどこが詰まっているかが読める。
共働きであることで、22.7%が受託を断念している
詰まっている場所のひとつが、具体的に出ている。
総務省が令和5年8月に、調査対象とした29児童相談所に里親登録している2,735世帯にアンケート調査を実施している。
その結果、共働きを理由に児童の受託を断念した経験がある里親は22.7%(共働き世帯の里親911世帯のうち有効回答898世帯に占める割合)だった。
登録里親の半数以上が共働き世帯である。 その2割強が、共働きであることを理由に受託をあきらめている。
保育所に入れないという、具体的な詰まり
なぜ断念するのか。就学前の子どもを共働きの里親が預かる場合、保育所等への入所が要る。ところがそこで止まる。
29児童相談所のうち7児童相談所から、就学前児童について共働き世帯の里親に委託する場合は保育所等への入所が必須となるが、里子であることを理由に入所を優先させる制度・措置がないため、優先的に入所できるようになればよいという意見要望が聴かれた。
国の側は通知を出している。にもかかわらず現場で効いていない。国の取組の認知状況を確認したところ、4児童相談所は保育所等の優先利用に関する通知の内容が児童相談所または市町村担当部署に浸透していなかった(知らなかった)としており、3児童相談所は通知を認識していたものの、市町村の保育担当課において里親委託された児童が優先対象であるという認識が浸透しておらず、通知を用いて説明しても理解を得ることが難しいことがあるとしている。
通知は出ている。届いていない。 里親等委託率という全国の数字の下に、市町村の保育担当窓口での押し問答がある。
幼稚園には出て、保育所には出ない費用がある
もうひとつ、制度の作りに段差がある。幼稚園通園の場合と異なり、保育所等入所の場合の措置費(事業費)が支給されない。
総務省はこれについて、幼稚園と保育所等は利用目的が異なるものの、いずれも施設に児童を預けているという点に差異はなく、保育所等にも教育的機能が求められていること、既に幼保連携型の認定こども園がありその垣根が低くなっていることから、検討の余地はあるものと思われると書いている。
共働きの里親が保育所を使うと、費用が出ない。 登録里親の半数以上が共働きであることを考えると、この段差は委託の伸びに直接かかる。
目標を揃えても、判断と支援が変わらなければ動かない
目標値の扱いにも同じ性質が出る。国は次期の社会的養育推進計画で、原則として国の目標と同等の水準の数値目標を定めるよう都道府県に求めている。
ただし、目標を設定することと達成することの間には、委託の判断と支援の体制がある。 目標だけを揃えても、そこが変わらなければ実績は動かない。
総務省は令和6年6月にこの調査結果にもとづく勧告を行い、令和8年1月に1回目のフォローアップを公表している。
指標の選び方が結果を左右する構図は、アウトカム指標の設計(このサイトの記事)で扱った問題と同じである。測れるものを測っているうちに、測りたかったものが視野から外れる。 里親の登録数は、委託数の代わりにはならない。
何を数えれば、次の判断ができるか
いま分かっているのは、登録と委託の世帯数、委託率、そして現場から聴き取った課題である。判断のために足りないものが2つある。
1つは、 未委託の期間 である。登録してから何年待っているかは公表されていない。10,763世帯が一様に待っているのか、一部が長く滞留しているのかで、意味が違う。
もう1つは、 断念した理由の全体像 である。共働きを理由とする断念が22.7%と分かったが、それ以外の理由での断念は数えられていない。 委託に至らなかった組み合わせを数える仕組みがない限り、詰まりの位置は聴き取りでしか分からない。
子どもの側から見れば、令和3年度末で措置されている児童33,157人のうち、児童養護施設が23,008人(69.4%)、乳児院が2,351人(7.1%)、里親が6,080人(18.3%)、ファミリーホームが1,718人(5.2%)である。家庭に近い環境で育っているのは2割強にとどまる。
虐待で亡くなった子どもの68.8%が0歳(このサイトの記事)で見たとおり、この年齢の子どもにとって環境の選択は取り返しがつきにくい。
この記事で使った統計の出典
- 1総務省行政評価局 社会的養護に関する調査-里親委託を中心として- 結果報告書(令和6年6月) 出典を開く
参考書籍
- 『子どもの貧困 — 日本の不公平を考える』(外部サイト、新しいタブで開きます)(阿部彩、岩波書店)。子どもをめぐる不利がどこで生じ、どう積み重なるのかをデータから整理した一冊。育つ環境の選択が後にどう効くかを考えるのに使える。
参考文献
社会的養護に関する調査-里親委託を中心として- 結果報告書 — 総務省行政評価局 (2024). 総務省
社会的養護に関する調査-里親委託を中心として- <結果に基づく勧告> — 総務省 (2024). 総務省
「社会的養護に関する調査-里親委託を中心として-」の結果に基づく勧告に対する改善措置状況(1回目のフォローアップ)の概要 — 総務省 (2026). 総務省
