令和7年12月に示された新しいガイドラインで、部活動改革は令和8年度から改革実行期間に入る。休日については、期間内に原則すべての学校部活動で地域展開の実現を目指すと書かれている。一方、平日については各種課題を解決しつつ更なる改革を推進とあるだけで、対象も期限もない。責任主体は市区町村に置かれている。言い換えと書き分けが何を残したのかを読む。
ざっくり言うと
- 部活動改革は令和8年度から10年度が改革実行期間の前期、令和11年度から13年度が後期にあたる
- 休日については、改革実行期間内に原則すべての学校部活動で地域展開の実現を目指すとされている
- 平日については取組方針が示されるのみで、対象となる学校の範囲も期限も書かれていない
改革の責任主体は市区町村等と位置づけられている。国は考え方の提示と支援、都道府県はリーダーシップという役割分担になっている。中山間地域や離島等で地域展開が困難な場合には、当面、部活動指導員の配置等を推進するとされる。
何が起きているのか
休日には期限と対象が置かれ、平日には置かれていない
スポーツ庁と文化庁が令和7年12月22日に、部活動改革の新しいガイドラインを示した。主な対象は公立中学校等である。
改革の期間は3つに分かれている。令和5年度から7年度が改革推進期間、令和8年度から10年度が改革実行期間の前期、令和11年度から13年度が後期にあたる。
休日については、目標がはっきり書かれている。
改革実行期間内に、原則、全ての学校部活動において地域展開の実現を目指す
対象は全ての学校部活動、期限は令和13年度末である。着手していない自治体についても、前期の間に確実に休日の地域展開等に着手するとされている。
平日は、こうなっている。
各種課題を解決しつつ、更なる改革を推進(まずは、国において実現可能な活動の在り方等を検証)
対象となる学校の範囲も、期限も書かれていない。国がまず実現可能な形を検証する、という段階に置かれている。
背景と文脈
名前が地域移行から地域展開へ変わり、責任主体は市区町村に置かれた
「移行」から「展開」に呼び方が変わった
呼び方も変わっている。従来使われていた地域移行が、このガイドラインでは地域展開になった。
移行は、担い手が入れ替わることを指す。学校がやっていたものを地域がやる、という置き換えである。展開は、広げることを指す。学校の部活動を残したまま、地域にも活動の場をつくる形を含みうる。
実際、ガイドラインの取組の類型には地域展開と地域連携が並んでいる。学校部活動をベースとした地域との連携など、地域の実情等に応じた多様な改革を進めていくことが重要という注が付いている。
困難な地域には、別の道が用意されている
休日の取組方針には、但し書きがある。中山間地域や離島等で地域展開が困難な場合には、当面、部活動指導員の配置等を推進する。
全ての学校部活動が対象だが、できない地域には別の道がある。 部活動指導員は学校に置かれる外部人材で、地域クラブへの展開とは別の仕組みである。
責任主体は市区町村である
責任の所在も明記された。市区町村等が改革の責任主体であり、国は取組方針の提示と地方公共団体への支援・周知広報、都道府県はリーダーシップを担う。
市区町村には専門部署の設置とコーディネーターの配置が求められる。運営団体や指導者を確保し、活動場所と移動手段を用意するのも市区町村の側になる。
課題は6項目に整理されている
何が難しいかも、ガイドラインが自分で並べている。各種課題への対応として、運営団体・実施主体の体制整備等、指導者の確保・育成、活動場所の確保(学校施設の有効活用等)、移動手段の確保、生徒の安全確保、障害のある生徒の活動機会の確保の6項目について、具体的な取組内容等を整理している。
指導者、場所、移動手段。 どれも学校の中では既にあったものである。外に出すと、あらためて用意する必要が出る。
認定制度の要件は7項目ある
新しく認定制度も設けられた。国が示す認定要件等に基づき、市区町村等が地域クラブ活動の認定を行う仕組みで、地域クラブ側からの申請を受けて市区町村等が審査のうえ認定する。認定後も市区町村等が指導助言等を実施する。認定されたものは認定地域クラブ活動と呼ばれる。
要件は7つある。①活動の目的・理念(学校部活動が担ってきた教育的意義の継承・発展、選抜等を行わず参加を希望する生徒を幅広く受け入れること)、②活動時間・休養日(平日1日2時間程度以内、休日1日3時間程度以内、週2日以上の休養日)、③参加費等、④指導体制、⑤安全確保、⑥運営体制、⑦学校等との連携である。
細かい条件も入っている。④指導体制には日本版DBSの活用を含めた不適切行為の防止徹底と、市区町村等が定める研修を受講し登録された指導者等による指導が入り、「認定地域クラブ活動指導者」登録制度を構築する。⑤安全確保には、怪我等を補償する保険および個人賠償責任保険への加入(参加者および指導者等)が入る。⑥運営体制には、規約等の作成・公表、公正かつ適切な会計処理、営利を主目的としない運営が入る。
認定されると4つの効果がある
認定の効果も列挙されている。①生徒・保護者等に対する市区町村等による情報提供、②地域クラブ活動の運営等への公的支援(財政支援、学校施設等の優先利用・使用料減免、学校備品等の活用等)、③地域クラブ活動への従事を希望する教師等の兼職兼業、④生徒の大会・コンクールへの円滑な参加である。
認定されなければ、この4つが付かない。 施設の優先利用も、使用料の減免も、大会への参加も、認定が前提になる。
なお市区町村等が自ら運営する地域クラブ活動については、国が示す認定要件に沿っていれば認定したものとみなす。認定の有効期間は最長3年間の範囲内で、地域の実情に応じて市区町村等において設定する。円滑な実施の観点から、原則として令和8年度末までの経過措置を設ける。
構造を読む
公費で賄われていた部分が会費に乗るが、その水準は低廉としか書かれていない
書き分けが、確定と先送りを分けている
書き分けを並べると、この改革が何を確定させ、何を先送りしたかが見える。
確定したのは休日である。対象は全ての学校部活動、期限は改革実行期間内。数えられる形になっている。
先送りされたのは平日である。実現可能な活動の在り方を国が検証する、という段階に置かれた。検証がいつ終わり、その後どうするかは書かれていない。
難しいほうが後ろに置かれた
この差には理由がある。休日は教員の勤務時間の外にあり、地域の団体が担いやすい。平日は放課後で、学校の施設と時間割の内側にある。生徒は授業が終わってそのまま活動に入る。移動の手段も要る。地域の団体が平日の夕方に指導者を確保するのは、休日よりはるかに難しい。
つまり、 難しいほうが後ろに置かれた。 改革としては現実的な順序だが、教員の負担という観点で見ると、平日の部活動は当面そのまま残ることになる。 休日が地域に移っても、平日が学校に残るなら、顧問の役割は消えない。
中間評価が置かれている
期間の区切りにも仕掛けがある。改革実行期間の前期(令和8年度から10年度)と後期(令和11年度から13年度)の間に、中間評価が置かれている。
前期で休日の地域展開に着手し、中間評価を経て後期に入る形である。 平日の「検証」がここでどう扱われるかは、まだ決まっていない。
費用には数字がないが、目安は国が示すとされている
もうひとつ、費用の問題がある。学校の部活動でも部費や用具代は徴収されてきたが、指導者にあたる教員の人件費と、活動場所である学校施設の費用は公費で賄われていた。地域クラブになると、運営団体が指導者に謝金を払い、場所を借り、保険に入る。その原資は会費である。
参加費の要件はこう書かれている。活動の維持・運営に必要な範囲で可能な限り低廉な参加費等を設定(国が示す目安を踏まえる)。
この概要に金額は載っていないが、国が目安を示すことになっている。 活動時間には2時間、3時間、週2日という数字があり、参加費には数字がない。ただし数字を出さないと決めたわけではなく、これから示す形である。
その目安が何円になるかで、次に見る地域差の幅が決まる。
責任主体を市区町村に置いた設計が、地域差に効く
ここで効いてくるのが、責任主体を市区町村に置いた設計である。財政に余裕のある自治体は補助を出せる。出せない自治体では、会費がそのまま家庭の負担になる。 同じ制度の下で、住む場所によって参加費が変わる。
認定の効果に財政支援と使用料減免が入っていることも、同じ方向に働く。 認定するのも市区町村、支援を出すのも市区町村である。
公費で賄われていた部分に価格がつく
これまで公費で賄われていた部分に価格がつくとき、その価格を払えない層が最初に外れる。未受給の構造がここでも起こりうる。
ガイドラインは理念として障害のある生徒や運動・文化芸術活動が苦手な生徒等を含め、全ての生徒が希望に応じて多種多様な活動に参加できる環境を整備することを掲げ、認定要件の①にも選抜等を行わず、参加を希望する生徒を幅広く受け入れることを入れている。
入口で選抜しないことは要件になった。費用で外れることは要件になっていない。
高校入試の扱いまで書かれている
関連する制度にも手が入る。従事を希望する教師等の兼職兼業の円滑化(中学校教師だけでなく小学校教師(体育専科等)や高校・特別支援学校の教師等を含む)、教師の人事・採用での部活動指導力の評価における留意、高校入試における取扱いである。
高校入試における取扱いが入っているのは、地域クラブでの活動が調査書でどう扱われるかという問題があるためである。 学校の部活動と地域クラブで扱いが違えば、生徒はどちらを選ぶかを入試から逆算することになる。
何を数えれば、次の判断ができるか
指標の置き方が結果を左右する構図はアウトカム指標の設計(このサイトの記事)で扱ったが、ここでは期限を置いた領域と置かなかった領域の差が、そのまま進捗の差になる可能性が高い。
判断のために足りないものが2つある。
1つは、 平日の検証がいつ終わるか である。「まずは国において実現可能な活動の在り方等を検証」とだけ書かれており、期限がない。中間評価で扱われるのかも決まっていない。
もう1つは、 参加費の実額と、それによる不参加の数 である。国が目安を示すことになっているが、実際にいくらになり、その金額で参加をやめた生徒が何人出たかを数える仕組みは、いまのところ設計に入っていない。
教員の働き方については教員の精神疾患による離職が過去最多1,319人(このサイトの記事)でも見たとおり、 負担の総量が減らなければ結果は動かない。 休日だけが移った状態で総量がどれだけ減るかは、令和10年度の中間評価まで分からない。
この記事で使った統計の出典
- 1スポーツ庁・文化庁 部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン(令和7年12月22日) 出典を開く
- 2スポーツ庁・文化庁 部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン 概要(令和7年12月) 出典を開く
参考書籍
- 『教育格差 — 階層・地域・学歴』(外部サイト、新しいタブで開きます)(松岡亮二、筑摩書房)。生まれた家庭と地域によって教育の機会がどう分かれるかをデータから検証した一冊。参加費や地域差が生徒にどう効くかを考えるのに使える。
参考文献
部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン — スポーツ庁・文化庁 (2025). スポーツ庁
「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」の概要 — スポーツ庁・文化庁 (2025). スポーツ庁
部活動改革ポータルサイト — スポーツ庁 (2026). スポーツ庁

