地方・地域
20件のコンテンツ
クマの人身被害が過去最多216件 — 里山という境界を管理する担い手が、過疎で消えた
環境省の速報値で、令和7年度のクマ類による人身被害が216件・死亡13人と統計開始以来の過去最多になった。出没は50,801件で令和5年度の2.1倍。だが木の実の凶作は引き金にすぎない。過疎で里山の手入れをする人が消え、荒廃農地が質的に山林へ戻り、人と野生の緩衝地帯が内側から溶けている。駆除か共生かではなく、境界を誰が管理するかという担い手の空白を読む。
熊本の車社会は、道路では解けない — 公共交通の負のスパイラルと、立地から逆算する交通
半導体産業が集まる熊本都市圏で、渋滞が深刻になっている。熊本都市圏パーソントリップ調査によれば、車の分担率は64.4%から67.3%へ上がり、公共交通は5.9%から5.2%へ下がった。道路を増やしても渋滞は解けず、高速道路の無料化実験では交通量が約79%増えた。運転手不足から減便・利用減・不採算・撤退が循環する負のスパイラルを読み、道路の拡張ではなく居住立地と公共交通を逆算で結び直す論点を示す。
古民家を買った後に、修繕が次々と現れる — 相続と高齢化が生む情報の非対称
奈良県山間部で古民家を買った移住者は、住んで初めて井戸の2か月枯れやカビ、排水の不具合に直面した。全国の空き家は900万2千戸・空き家率13.8%、一戸建の空き家の80.9%が放置型である。買った後に修繕が現れるのは、法律の告知が施設の存在で止まること、売主も相続と高齢化のなかで実態を知らないこと、空き家を解消できた世帯でも空き家バンク経由がわずか3.3%であること、という三層の情報非対称の帰結だ。
相続した山林は境界がわからない — 負の資産化と所有者不明土地の予備軍
佐賀県伊万里市の家族が相続した約4,300平方メートルの山林は、境界が口伝でしか残らず、木材の価値が測量費用を下回っても土砂災害の責任は所有者に残る。所有者不明土地は2016年に約410万ヘクタール(九州本島を上回る)、2040年に約720万ヘクタールと推計され、地籍調査は全国で約53%どまり。所有・境界・受益・責任という四つの側面がばらばらに分かれ、相続登記義務化・地籍調査・森林経営管理・森林環境税・国庫帰属といった制度が個別に追う構造を読み、所有の再設計という論点を示す。
学校のプールが減っていく — 老朽化対応の自治体格差が、泳力習得の格差に変わる
全国の学校が持つ屋外の水泳プールは23,411箇所(スポーツ庁 令和6年度)で、1校あたりの数は小学校で0.87→0.83、中学校で0.65→0.63へと調査のたびに減っている。老朽化と猛暑への対応は更新・民間委託・座学化に分かれ、その分岐は自治体の財政力に強く左右される。公教育が担ってきた泳力習得の共通基盤が、家庭の負担能力へと移る構造を読み、何を公教育に残すかを問う。
農機具は年に数日しか動かない — 個別保有が解けない構造と共同利用の壁
熊本県高森町の新規就農者が直面する「数百万円の農機具が年に数日しか動かない」構造は、特殊な不運ではない。農水省統計が示す1経営体3.8haの零細規模、有償農業支援サービス利用24.3%、機械設備供給型28.5%というデータから、共同利用が広がらない情報・価格・タイミングの壁を読み、農機具を準公共財として再設計する論点を示す。
ふるさと納税ポイント付与廃止 6 ヶ月レビュー — 制度趣旨と返礼品競争の構造
2025 年 10 月施行のふるさと納税ポイント付与禁止から半年。寄付動向 / 自治体収入 / プラットフォーム競争 / 制度趣旨の整合性を構造的に分析する。
移住推進の『稼げない』問題 — 地方創生のキャリア設計空白
地方創生1.0は移住者数を追ったが、移住後のキャリアと所得の制度設計が抜け落ちた。FHL「ますい」事例から、月数万円の地域案件と都市部給与の構造的ギャップ、地域おこし協力隊定住率55.7%の奥にある所得追跡不在、二地域居住促進法と関係人口2,263万人の制度間隙を読む。
鎌倉オーバーツーリズム — 観光地マネジメントの公共財化
鎌倉市の観光客集中と住民生活の摩擦を「観光地は公共財か商品か」という構造論で読み直す。江ノ電・幹線道路・寺社境内・住宅地の容量問題に対して、価格・量・時空間・協働の 4 レバーがどこまで効くかを国際比較で検証する。
「ふるさと住民1,000万人」の危うさ : 数値目標はEBPMたりうるか
2025年6月閣議決定の「地方創生2.0基本構想」は、ふるさと住民登録制度を通じて10年間で関係人口1,000万人・延べ1億人を目指すと数値目標を掲げた。だが1,000万人の根拠は基本構想本文・概要・施策集のいずれにも明示されておらず、地方創生1.0(2014-2024)の包括的効果検証も行われていない。本稿はこの数値目標自体の妥当性をEBPM(証拠に基づく政策立案)の枠組みで批評し、「関係人口インフレ」と「成功事例集依存」を1.0から踏襲するリスクを構造的に分析する。
1.3兆円のふるさと納税はどこに消えたか。「地方のため」が届かない再分配の構造
2024年度のふるさと納税は1兆2,728億円と5年連続で過去最高を更新したが、経費率は46.4%に達し、仲介サイトだけで1,656億円が流出している。横浜市▲314億円、東京23区約930億円の税収流出の実態と、「地方のため」という建前の裏にあるゼロサム構造を分析する。
ふるさと納税4大改正: 再配分装置は誰のためか
2025年10月のポイント禁止から2027年の高所得者控除上限まで、ふるさと納税は3年がかりで4つの改正を迎える。経費率46.4%・仲介サイト手数料1,656億円・都市部からの税収流出2,161億円(東京都)という構造問題に対し、改正は何を変え、何を変えないのか。制度の「信頼性回復」と「再配分機能の修復」は同じではない。
9.5兆円の観光収益は誰のものか — 住民不在の「観光立国」を問い直す
2025年のインバウンド消費額は9.5兆円に達したが、その恩恵は地域住民にほとんど届いていない。OTA手数料の海外流出、都市集中、宿泊業の低賃金構造を分析し、バルセロナやアムステルダムの住民還元モデルと比較しながら、日本に欠けている「観光が増えるほど住民が豊かになる」循環設計を提示する。
地方創生2.0「関係人口1,000万人」の構造分析:目標と手段は逆転していないか
2025年6月に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」は、ふるさと住民登録制度による関係人口1,000万人を10年間の数値目標に掲げた。1.0の「反省」は構造的に活かされているのか。定義のあいまいさ、数値目標化のリスク、国際比較から、政策の論理構造を読み解く。
地方自治体の担い手消失:公務員試験倍率半減と若手退職が映す構造的衰退
地方公務員試験の競争倍率は10年で7.9倍から4.1倍に半減し、30歳未満の退職者は2.7倍に急増した。教員採用試験は過去最低の2.9倍を記録している。「若者の公務員離れ」と語られがちなこの現象の構造は、送り出す若者すらいない人口減少と、OECD最低水準の公務員比率で増え続ける業務を支える無理な体制にある。
企業版ふるさと納税631億円の構造分析 — 人材派遣型が変える公共資産再生の資金と人材
企業版ふるさと納税の寄附額は令和6年度に631億円・18,457件に達し、人材派遣型は157名・119団体に拡大した。最大約9割の税軽減、人件費の寄附対象算入、R9年度までの3年延長。この制度は公共資産再生の資金と人材の両方を解決する可能性を持つが、不正事案による制度改善が転機をもたらしている。
地方自治体「消滅」の構造分析 — 744自治体が直面する人口減少と財政の臨界点
人口戦略会議が2024年に公表したレポートで744の自治体が消滅可能性ありと分類された。増田レポートの発表から10年が経過し、日本の人口減少は予測通りに進行、自治体財政は構造的な転換点を迎えている。消滅可能性都市論の現在地と展望を読み解く。
再生可能エネルギーと地域経済 — エネルギー転換が生む新たな格差
再生可能エネルギーの導入拡大は脱炭素の切り札とされるが、その恩恵は都市部の投資家に偏り、設備を受け入れる地方には景観毀損や固定資産税の限界など構造的な負担が集中する。利益と負担の非対称がもたらす新たな地域間格差の力学を、データと事例から分析する。
DX推進は地方格差を解消するか、それとも深刻化させるか
架空の討論者によるシミュレーション・ディベート形式で、デジタル庁のDX政策がもたらす恩恵と格差拡大リスクを分析。自治体間のデジタルデバイド、高齢者のIT活用格差、東京一極集中との関係を地方創生の文脈で構造的に検証する。
人口減少と東京一極集中 — 構造から読み解く地方消滅の力学
地方から東京圏への人口流出は年間十数万人規模で続き、2040年までに自治体の半数が消滅可能性に直面するとの推計もある。しかし「消滅可能性都市」という概念だけでは問題の本質は捉えられない。社人研データを用い、集中と縮小の構造的力学を多角的に分析する。