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2024年度に国立西洋美術館の所蔵作品展に入った69万人のうち、値上げの対象になる一般と大学生の区分は26%だった

更新: ヨコタナオヤ(横田直也)約10分で読めます

国立美術館は2026年9月、所蔵作品展の料金を上げると発表した。高校生以下や65歳以上などの無料措置は続き、料金が上がるのは一般と大学生である。5館の所蔵作品展には2025年度に112万6,594人が入ったが、法人の業務実績報告書は館ごとの合計の人数しか載せていない。国立西洋美術館の館報は、2024年度の所蔵作品展の入館者69万302人を区分ごとの割合で示しており、一般と大学生の区分は合わせて26%、企画展の観覧券かキャンパスメンバーズで入った人が49%だった。公表されている数字で、値上げの負担がどこにかかるのかを、どこまで確かめられるかを見る。

ざっくり言うと

  1. 国立美術館の5館の所蔵作品展には、2025年度に112万6,594人が入った。法人の業務実績報告書は、有料と無料を分けていない
  2. 国立西洋美術館の館報は、2024年度の所蔵作品展の入館者69万302人を区分ごとの割合で示している。一般23%、大学生3%で、企画展の観覧券かキャンパスメンバーズで入った人が49%だった
  3. 所蔵作品展で負担が増えるのは一般と大学生で、国立映画アーカイブの所蔵作品上映では65歳以上と高校生も料金が上がる

何が起きているのか

料金改定で負担が増える人と、変わらない人

国立美術館は2026年9月、6館の所蔵作品展の料金を上げると発表した。一般の料金は5館で1,000円になる。何が発表され、それが国のとどうつながっているのかは、前の記事(このサイトの記事)で読んだ。

この記事で確かめたいのは、負担が増えるのは誰で、それが何人なのかである。

発表によれば、次の無料措置は続く。「高校生以下及び18歳未満又は65歳以上、障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名の無料措置は継続して実施します」とある。この対象に入らない一般と大学生の料金が上がる。

発表は、キャンパスメンバーズと、各館の会員制度・年間パスポートの特典も続けるとしている。各館の案内によれば、京都国立近代美術館と国立国際美術館は、母子家庭・父子家庭の世帯員も無料にしている。この扱いと、館ごとの無料観覧日が続くかどうかは、発表に書かれていない。

上がり方は館と区分で違う。個人の料金の改定前と改定後から計算すると、国立映画アーカイブの展覧会を含む6館の所蔵作品展で、一般は2.0倍から3.3倍、大学生は1.9倍から3.8倍になる(倍率は発表の料金から計算した値。上映会は含めない)。最も大きいのは、一般では国立工芸館の300円から1,000円、大学生では京都国立近代美術館と国立国際美術館の130円から500円である。

東京新聞は、ISVD代表理事で、この記事の筆者でもある横田直也が中期目標について述べたコメントを載せた。「お金がある人しか行けなくなり、文化形成からは遠いものになっていくのではないか」。この問いに数字で答えるには、いま誰が料金を払って入り、誰が無料で入っているのかを知る必要がある。

背景と文脈

2025年度の入館者数と入場料収入、無料で入れる日と人

2025年度の所蔵作品展の入館者113万人

国立美術館は毎年、業務実績報告書を公表している。2026年6月に出た2025年度の報告書の別表に、館ごとの所蔵作品展の入館者数が載っている。

  • 国立西洋美術館681,030人
  • 東京国立近代美術館255,263人
  • 京都国立近代美術館89,966人
  • 国立国際美術館86,126人
  • 国立工芸館14,209人
所蔵作品展の入館者数(2025年度、人。東京国立近代美術館は本館のみ)

5館の合計は1,126,594人である。国立西洋美術館の68万1,030人は、合計の約6割にあたる(計算値)。国立映画アーカイブは所蔵作品展とは別に数えていて、上映会に7万6,422人、展覧会に2万1,131人が入った。

所蔵作品展の人数に、企画展の観覧券で入った人が含まれるかどうかは、館ごとに確かめられる範囲が違う。国立西洋美術館は館報の区分(企画展観覧券利用・キャンパスメンバーズ)で確かめられ、京都国立近代美術館は活動報告の「コレクション展のみ」の人数から読み取れる。入館者数の数え方の定義は、業務実績報告書にも活動報告にも載っていない。

国立西洋美術館の案内には「企画展の観覧券で常設展もご覧いただけます」とあり、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館の案内にも同じ扱いが書かれている。国立工芸館は確かめていない。

所蔵作品展と企画展を分けない入場料収入

お金の面は、財務諸表でわかる。2025年度の損益計算書では、入場料収入が11億5,712万4,898円だった。同じ表の収益(その年度に収益として計上した額)は59億1,699万1,799円、経常収益(臨時のものを除く、その年度の収益)の合計は91億8,053万8,103円である。

附属明細書は、入場料収入を館ごとの6つの列に分けている。国立工芸館は独立の列がなく、国立新美術館の列がある。

国立西洋美術館は3億4,775万5,180円、国立新美術館は4億3,079万6,512円だった。国立新美術館は所蔵作品展を持たないので、11億円余りの合計にはその分も入っている。どの館も所蔵作品展と企画展を分けておらず、国立映画アーカイブの分には上映会も入るため、所蔵作品展の料金でいくら入ったのかは、財務の資料からは出せない。

無料で入れる日と人

報告書には、料金を取らない仕組みもまとめられている。2025年度は、国際博物館の日(5月18日)と文化の日(11月3日)に、所蔵作品展と国立映画アーカイブの展覧会が無料だった(当日が休館日の館を除く)。高校生以下と18歳未満は、所蔵作品展と自主企画展、国立映画アーカイブの展覧会が無料である。

関西文化の日のように、館ごとに無料の日もある。国立西洋美術館は原則毎月第2日曜日を常設展の無料観覧日「Kawasaki Free Sunday」にしていて、国立国際美術館は原則毎月第1土曜日に所蔵作品展を無料にしている。

大学生には「国立美術館キャンパスメンバーズ」という会員制度がある。大学や短期大学、高等専門学校、専修学校などが加盟し、加盟校の学生と教職員は、学校が選んだ区分(全館、関東の館、関西の館、いずれか1館)に入る館で、学生証や教職員証を見せれば所蔵作品展が無料になる。2025年度の加盟校は108校で、利用者は11万131人だった(報告書は利用者の数え方を書いていない)。発表は、この特典も続けるとしている。

構造を読む

国立西洋美術館の館報にある区分の割合と、ほかの館の報告。大学生と上映会の扱い

法人の報告書にある館ごとの合計

業務実績報告書の入館者数は、館ごとの合計である。有料と無料を分けておらず、年齢や区分ごとの人数も載っていない。2025年12月に出た2024年度の法人の年報も、所蔵作品展の表は開催日数、展示替回数、入館者数、満足度の4つである。

法人の報告書だけでは、所蔵作品展の入館者のうち、何人が一般の料金を払い、何人が無料で入ったのかを出せない。

国立西洋美術館の館報にある区分の割合

館ごとの報告に進むと、載せ方がそろっていない。国立西洋美術館の館報は、常設展(所蔵作品展)の入館者を区分ごとの割合で示した円グラフを載せている。最新の第59号(2026年1月発行)は2024年度の分である。

  • 企画展観覧券利用・キャンパスメンバーズ49%
  • 一般23%
  • 減免・無料券等18%
  • 小・中学生5%
  • 大学生3%
  • 高校生3%
国立西洋美術館の所蔵作品展の入館者の区分(2024年度、69万302人)

館報によれば、一般は23%、大学生は3%で、合わせて26%になる。この2つの区分に、所蔵作品展の料金がかかる。69万302人に当てはめると約18万人になる(割合は四捨五入した整数で、6区分の合計は101%になるため、人数は計算した概数)。

館報は、区分の数え方を書いていない。同館は原則毎月第2日曜日を常設展の無料観覧日「Kawasaki Free Sunday」にしていて、2024年度は12日あった。これとは別に、5月18日(国際博物館の日)にも常設展を無料にし、この日だけで9,062人が常設展に入っている。

無料の日に入った人が「一般」と「減免・無料券等」(料金の減額や免除、無料券の人)のどちらに入るのかは、館報からわからない。26%は料金の区分に入る人の割合で、料金を払った人の割合と同じとは限らない。料金の区分は所得を表さないので、お金がある人しか行けなくなるのかという問いには、この割合では答えられず、別の数字が要る。

いちばん大きいのは、「企画展観覧券利用・キャンパスメンバーズ」の区分の49%である。同館では企画展の観覧券で常設展も見られるので、この人たちは所蔵作品展の料金を別には払っていない。高校生、小・中学生、減免・無料券等の区分は、合わせて26%だった。高校生以下は、所蔵作品展の無料の対象である。

前の年も形は近い。2023年度は一般25%、大学生4%、企画展観覧券利用・キャンパスメンバーズ46%だった。2024年度は「モネ 睡蓮のとき」展に80万7,566人が入った年で、法人の年報は、この展覧会が所蔵作品展の入館者の増加にも貢献したと書いている。それでも、一般と大学生が3割に届かない形は、2年とも同じである。

2024年度の区分で見ると、この館の所蔵作品展で料金の区分に入る人は、入館者の4人に1人ほどである。半分近くは企画展の観覧券かキャンパスメンバーズで入っていて、企画展の料金は今回の改定の対象ではなく、キャンパスメンバーズの特典も続く。国立西洋美術館の新しい料金は、発表によれば2027年3月20日から始まる。

京都国立近代美術館の「コレクション展のみ」

京都国立近代美術館の2024年度の活動報告は、コレクション展(所蔵作品展)の入館者12万1,249人のうち、コレクション展のみの入館者数を3万147人と載せている。4人に1人にあたる(計算値)。この「コレクション展のみ」は、無料で入った人も含む数で、国立西洋美術館の26%とは数え方が違う。

残りは、コレクション展だけに入った人ではない。料金の区分ごとの人数は載っていない。

合計の人数だけの館

東京国立近代美術館(国立工芸館を含む)の2024年度の活動報告は、所蔵作品展と企画展の入館者を館ごとの合計で載せている。国立国際美術館の2024年度の活動報告(2026年2月発行)も、コレクション展(所蔵作品展)の入館者を展示ごとの人数と合計で載せていて、合計は111日間で4万5,446人である。区分ごとの人数はない。

5館のうち、区分ごとの割合を確認できた館は国立西洋美術館だけである。この館は所蔵作品展の入館者の6割前後を占めるが、料金の区分ごとの人数は、残る4館の年報や活動報告には載っていない。

加盟校かどうかで分かれる大学生の負担

大学生の料金は、多くの館で500円になる。ただしキャンパスメンバーズの加盟校の学生は、学校の区分に入っている館なら、学生証を見せれば無料のままである。

同じ大学生でも、在籍する学校が加盟しているか、その館が学校の区分に入っているかで、所蔵作品展の負担が0円と500円に分かれる。国立西洋美術館の館報は、キャンパスメンバーズを企画展観覧券利用と同じ区分に数えていて、大学生の区分とは分けている。加盟していない学校の学生が年に何人来ているのかは、ほかの館の報告からはわからない。

65歳以上と高校生も払う上映会

国立映画アーカイブの上映は、所蔵作品展と扱いが違う。料金が上がるのは所蔵作品上映で、一般は520円から1,000円に、大学生・高校生・65歳以上は310円から500円になる。小・中学生の100円は据え置きである。同館のご利用案内によれば、所蔵作品上映の無料は、障がい者手帳を持つ人と付添者1名、キャンパスメンバーズのうち国立映画アーカイブを利用の対象にする学校の学生と教職員で(当日券のみ)、発表はどちらも続くとしている。

2025年度の上映会には7万6,422人が入った。業務実績報告書の別表3は、上映会ごとの人数と共催者を載せているが、どれが所蔵作品上映の料金かは書いていない。65歳以上や高校生が何人いたのかも載っていない。所蔵作品展では無料の人が、上映会では料金を払っている。

確かめるのに要る数字

2026年2月に文部科学省が定めた中期目標には、「入館者数、入場料収入、その他収入等について詳細な開示を進めるものとする」とある。

値上げの影響を確かめるには、国立西洋美術館の円グラフと同じ区分の数字が、5館すべてで、改定の前と後の両方に要る。負担が増えた人の数と、その人たちが来館を続けたかどうかは、次の数字があれば確かめられる。

  • 所蔵作品展の入場料収入を、企画展と分けた数字
  • キャンパスメンバーズの利用者数を、館ごとに分けた数字
  • 国立映画アーカイブの上映会の入場者を、料金の区分ごとに分けた数字

制度が届いているかを数えるときの考え方は、「政策が届かない層」の共通構造(このサイトの記事)でも整理している。

残る問い

国立西洋美術館は、所蔵作品展の入館者を区分ごとの割合で公表している。法人の報告書と、ほかの館の活動報告は、合計の人数が中心である。

値上げのあとで一般の来館者が減ったとしても、合計の人数だけでは、それが料金のせいなのか、展示のせいなのかを見分けられない。区分ごとの数字は、改定の前と後で、5館そろって出てくるのだろうか。

この記事で使った統計の出典

  1. 1独立行政法人国立美術館「独立行政法人国立美術館の所蔵作品展における観覧料金の改定について」(2026年9月) 出典を開く
  2. 2独立行政法人国立美術館「令和7年度業務実績報告書」別表1(2026年6月) 出典を開く
  3. 3独立行政法人国立美術館「令和7年度業務実績報告書」別表3・別表4(2026年6月) 出典を開く
  4. 4独立行政法人国立美術館「第25期事業年度(令和7年度)財務諸表」(2026年) 出典を開く
  5. 5独立行政法人国立美術館「第25期事業年度(令和7年度)附属明細書」セグメント情報の補足事項(2026年) 出典を開く
  6. 6独立行政法人国立美術館「令和7年度業務実績報告書」(2026年6月) 出典を開く
  7. 7国立西洋美術館『国立西洋美術館報』No.59(2024年4月〜2025年3月)(2026年1月) 出典を開く
  8. 8国立西洋美術館『国立西洋美術館報』No.58(2023年4月〜2024年3月)(2025年1月) 出典を開く
  9. 9独立行政法人国立美術館「令和6年度 独立行政法人国立美術館 年報」(2025年12月) 出典を開く
  10. 10京都国立近代美術館「京都国立近代美術館 活動報告 令和6年度」(2026年2月) 出典を開く
  11. 11国立国際美術館「国立国際美術館 活動報告【令和6年度】」(2026年2月) 出典を開く

参考書籍

参考文献

国立西洋美術館報 No.59(2024年4月〜2025年3月) — 国立西洋美術館 (2026). 国立西洋美術館

国立西洋美術館報 No.58(2023年4月〜2024年3月) — 国立西洋美術館 (2025). 国立西洋美術館

令和7年度業務実績報告書 — 独立行政法人国立美術館 (2026). 独立行政法人国立美術館

第25期事業年度(令和7年度)財務諸表 — 独立行政法人国立美術館 (2026). 独立行政法人国立美術館

第25期事業年度(令和7年度)附属明細書(セグメント情報の補足事項) — 独立行政法人国立美術館 (2026). 独立行政法人国立美術館

令和6年度 独立行政法人国立美術館 年報 — 独立行政法人国立美術館 (2025). 独立行政法人国立美術館

京都国立近代美術館 活動報告 令和6年度 — 京都国立近代美術館 (2026). 京都国立近代美術館

令和6年度 独立行政法人国立美術館 東京国立近代美術館活動報告 — 東京国立近代美術館 (2026). 東京国立近代美術館

国立国際美術館 活動報告【令和6年度】 — 国立国際美術館 (2026). 国立国際美術館

独立行政法人国立美術館の所蔵作品展における観覧料金の改定について — 独立行政法人国立美術館 (2026). 独立行政法人国立美術館

ご利用案内 — 国立映画アーカイブ (2026). 国立映画アーカイブ

ご利用案内 — 国立西洋美術館 (2026). 国立西洋美術館

ご利用案内 — 京都国立近代美術館 (2026). 京都国立近代美術館

アクセス・開館時間・観覧料 — 国立国際美術館 (2026). 国立国際美術館

チケット — 東京国立近代美術館 (2026). 東京国立近代美術館

学校担当者の方へ(国立美術館キャンパスメンバーズ) — 独立行政法人国立美術館 (2026). 独立行政法人国立美術館

独立行政法人国立美術館が達成すべき業務運営に関する目標(中期目標)(令和8年2月27日) — 文部科学省 (2026). 文化庁

国立美術館が入館料を大幅値上げ…「稼げる展示」求める国の姿勢に「文化軽視の国は先進国じゃない」の声 — 東京新聞 (2026). 東京新聞(2026年9月25日)

読んだ後に考えてみよう

  1. 所蔵作品展の入館者の半分近くが企画展の観覧券かキャンパスメンバーズで入っている館では、所蔵作品展の料金の引き上げは誰にかかるのか
  2. キャンパスメンバーズの加盟校かどうかで、同じ大学生の負担が分かれることをどう考えるか
  3. 区分ごとの割合を5館がそろえて公表すると、何が確かめられるようになるか

この記事の用語

運営費交付金
国が独立行政法人に、業務の財源として交付する資金。根拠は独立行政法人通則法第46条で、政府は予算の範囲内で、業務の財源に充てるために必要な金額の全部または一部を交付できる。法人は、税金などで賄われる資金であることに留意し、適切かつ効率的に使うよう努めなければならない(同条第2項)。
中期目標
独立行政法人通則法第29条に基づき、主務大臣が3年以上5年以下の期間で定め、中期目標管理法人に指示して公表する業務運営の目標。期間、国民に提供するサービスその他の業務の質の向上、業務運営の効率化、財務内容の改善などを定める。法人はこの目標に基づいて中期計画を作成し、主務大臣の認可を受ける(同法第30条)。

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