ざっくり言うと
- Park-PFIは都市公園法に基づく公募設置管理制度。収益施設と公園整備を一体的に行う者を公募で選ぶ仕組み
- 3つの特例(20年設置許可・最大12%建ぺい率・占用物件)が民間の長期投資を可能にする
- 令和7年3月時点で全国165公園で活用済み。人口2万人規模の小規模自治体でも成立事例あり
Park-PFIとは何か
都市公園法H29改正で新設。収益施設設置と公園整備を一体公募する制度
Park-PFI(公募設置管理制度)とは、平成29(2017)年の都市公園法改正により新設された制度である(法第5条の2〜第5条の9)。
制度の核心は「 ** 収益と整備の一体化 ** 」にある。カフェ・レストラン・売店などの収益施設(公募対象公園施設)を設置・管理する者を公募で選定し、その収益を周辺の園路・広場・ベンチなど公園設備(特定公園施設)の整備に充てる仕組みだ。民間の事業ノウハウと収益力を活用することで、財政負担を抑えながら公園の質を向上させることができる。
従来、都市公園での収益施設設置は許可制だったが、許可期間は最長10年と短く、民間が長期投資を回収しにくい構造だった。Park-PFIはこの制約を制度設計で解決した。
令和7年3月31日時点で全国165公園で活用済み、136公園が検討中であり、公園行政における最重要の官民連携手法として定着しつつある。
7つの事業手法との比較
指定管理・コンセッション等との位置づけを比較表で整理
都市公園の活用・管理には、Park-PFI以外にも複数の事業手法が存在する。これらを整理した上でPark-PFIの位置づけを理解しておくことが重要である。
| 手法 | 根拠法 | 許可期間 | 民間収益 | 整備義務 |
|---|---|---|---|---|
| 通常の設置許可(法第5条) | 都市公園法 | 最長10年 | なし | なし |
| Park-PFI(公募設置管理制度) | 都市公園法H29改正 | 最長20年 | あり | 特定公園施設 |
| 指定管理者制度 | 地方自治法第244条の2 | 通常3〜5年 | 一部可 | 既存施設の維持管理 |
| コンセッション方式 | PFI法 | 案件次第 | あり | 内容次第 |
| RO方式(改修+運営) | PFI法 | 案件次第 | あり | 改修込み |
| 賃貸借方式 | 民法等 | 案件次第 | あり | なし |
| 占用許可(法第6条) | 都市公園法 | 最長10年 | なし | なし |
Park-PFIが他の手法と異なる最大の特徴は、「 ** 許可期間の長さ ** 」と「 ** 整備義務とセットになっている ** 」点である。20年という長期許可があることで、民間は大規模な初期投資を回収できる事業計画が立てられる。一方、整備義務(特定公園施設の整備)があることで、公共側にも具体的なメリットが保証される。
なお、公園以外の遊休公共施設を活用する場合は、スモールコンセッション(事業費10億円未満の小規模PPP/PFI)が別途存在する。この違いについては後述する。
3つの特例措置
20年許可・12%建ぺい率・占用物件。特定公園施設の整備を含むことが条件
Park-PFIの最大の魅力は、通常の設置許可では得られない3つの特例措置にある。これらは、民間事業者にとって事業参入の可否を左右する重要な制度的インセンティブである。
特例①:設置管理許可の20年延長
通常の設置管理許可(法第5条第1項)の期間は最長10年だが、Park-PFI認定を受けると実質 ** 最長20年 ** への延長が可能になる。
ただし、20年特例を得るためには以下の条件をすべて満たす必要がある。
- 法第5条の2の公募手続きを経て「設置等予定者」として選定されること
- 公募設置等計画を提出し、法第5条の4の認定要件を満たして認定を受けること
- 公募設置等指針において認定有効期間が明示されていること
- ** 特定公園施設の整備を含む計画であること ** (収益施設単独では不可)
4番目の条件が重要だ。カフェや売店だけを設置したいという計画では、20年特例は適用されない。公園設備の整備をセットで計画することが前提である。
期間終了後の選択肢は2つある。再公募(Park-PFI継続)であれば再度20年特例が適用されるが、通常許可(法第5条第1項)に移行すると最長10年となり、 ** 建ぺい率特例は消滅 ** する。
特例②:建ぺい率の12%上乗せ
都市公園法における建築物の建ぺい率の参酌基準は通常 2% だが、Park-PFI認定を受けた公募対象公園施設については、10%の上乗せ特例により ** 最大12%** まで利用できる。
| 区分 | 通常上限 | 特例 | 計 |
|---|---|---|---|
| 通常建築物 | 2% | — | 2% |
| 休養施設・運動施設等 | 2% | +10% | 12% |
| 公募対象公園施設 | 2% | +10% | 12% |
重要な留意点として、上記はあくまで ** 法令上の参酌基準 ** である。実際に適用される数値は各自治体が ** 条例 ** で定めたものとなる。また、休養施設等との上乗せ分は ** 合計10%まで共有枠 ** となるため、両者が混在する場合は注意が必要だ。
特例③:占用物件の拡大
通常の都市公園では設置が認められない自転車駐車場・看板・広告塔等の「利便増進施設」について、Park-PFI計画に含まれる場合は占用物件として設置が可能になる。これにより、民間事業者の収益源を多角化できる。
事業化の全フェーズ
検討開始から開業まで。郡山市事例では約4年のタイムライン
Park-PFIの事業化は、検討開始から開業まで複数のフェーズにわたる。各フェーズの役割と留意点を整理する。
フェーズ0:機運醸成と庁内体制構築
首長・議会・関係部署へのPark-PFI制度の説明から始まる。PPP/PFI全般への理解が庁内で薄い場合、この段階に最も時間がかかることが多い。先進自治体の視察や国の説明会への参加が効果的だ。
国は「都市公園における官民連携の検討調査に係る支援」として、マーケットサウンディング・検討調査への費用支援を用意している。
フェーズ1:マーケットサウンディング
国交省ガイドラインは、マーケットサウンディング(サウンディング型市場調査)を「 ** 事業発案時 ** 」と「 ** 事業化検討時 ** 」の **2段階実施 ** することを推奨している。
- **Step 1(事業発案時) **: 市場性の確認・民間活用アイデアの聴取。公園概要・図面・現況建ぺい率・既存物件の取扱い方針などを提供する
- **Step 2(事業化検討時) **: 公募条件案を開示した上で、事業参画意向と条件の確認を行う。使用料水準・特定公園施設の整備費水準についても意見を収集する
郡山市の開成山公園事業では、このサウンディングをさらに発展させた3段階設計(トライアル・サウンディング→プレサウンディング→マーケットサウンディング)が実施された。サウンディング参加者には公募時の加点(トライアル参加で5点、マーケット参加で3点)が設けられており、民間事業者の早期関与を促すインセンティブ設計として機能した。
フェーズ2:公募設置等指針の策定と公示
公募設置等指針には法定記載事項(法第5条の2第2項第1号〜10号)がある。主な記載事項は以下の通りだ。
| 号 | 項目 |
|---|---|
| 第1号 | 公募対象公園施設の種類(カフェ・レストラン等。幅を持たせた表記も可) |
| 第2号 | 公募対象公園施設の場所(設置区域・面積・現況・規制の有無) |
| 第5号 | 特定公園施設の建設に関する事項(整備施設の種類・仕様・数量・費用負担上限額) |
| 第8号 | 認定の有効期間(最長20年の範囲内) |
| 第9号 | 評価基準(6項目) |
指針の公示から計画提出期限までは **1か月以上 ** の期間を設けることが法律上の義務となっている。
フェーズ3:公募・審査・選定
選定は2段階構造で行われる。
** 第1段階(審査) **: 指針との適合性確認、建設・運営の確実性(客観的資料)、技術力審査(実績)、資金調達能力(直近決算で債務超過でないこと)
** 第2段階(評価) **: 審査を通過した案件のみ、6つの評価項目で定量的に採点する。法律上、 ** 学識経験者2名以上 ** で構成する評価・選定委員会の設置が義務付けられている。
6つの評価項目は以下の通りである。
| # | 評価項目 | 主な評価内容 |
|---|---|---|
| ① | 事業の実施方針 | 運営目的・基本方針、地域経済活性化、地域連携 |
| ② | 事業実施体制 | コンソーシアム役割分担、人員配置、各社実績、財務健全性、地元企業の参画状況 |
| ③ | 施設の設置計画 | 利便向上施設整備、植栽・建築デザイン、バリアフリー、施工計画 |
| ④ | 施設の管理運営計画 | 管理計画、安全・災害対応、地域連携 |
| ⑤ | 事業計画 | 資金・収支計画、持続的経営、撤退リスク対応 |
| ⑥ | 価額提案 | 特定公園施設費の公園管理者負担額、使用料の額 |
評価項目②に「地元企業の参画状況」が含まれている点は注目に値する。大手事業者が代表企業を担いつつ、地元の造園会社・建設会社・コンテンツ企業をコンソーシアムに組み込む「混成型」の座組が高評価を得やすい設計となっている。
フェーズ4:認定・協定・許可
設置等予定者として選定された後は、公募設置等計画の認定申請→基本協定の締結→設置管理許可の取得という手続きが続く。建築基準法第48条の許可(用途地域の制限)や、指定管理者制度を併用する場合は議会議決も必要となる。
フェーズ5:整備・開業
特定公園施設の整備工事と収益施設の建設を進め、開業を迎える。郡山市・開成山公園の事例では、検討開始(2020年3月)から開業(2024年4月)まで ** 約4年 ** のタイムラインを要した。
全国165公園の実績:大規模事例から小規模事例まで
郡山市・開成山公園(代表事例)
開成山公園事業は、Park-PFIと指定管理者制度を組み合わせた複合型モデルとして、全国的に注目度が高い。
- ** 規模 **: 事業対象面積 約12.89ha(西側エリア119,900m²+隣接3街区公園 計9,000m²)
- ** 事業者 **: 大和リースグループ(開成山フロンティアパートナーズ)
- ** 設置許可期間 **: 認定計画開始から20年間
- ** 指定管理料上限(19年間合計) **: 14億4,160万4,000円(年間換算 約7,587万円)
コンソーシアムは大和リース(大和ハウスグループ)を代表に、地元の造園・建設・情報発信企業4社を加えた混成型。地元企業の組み込みが評価項目②で高い評価を得る設計となっていた。
小規模自治体での成立事例
2024年7月、日本公園緑地協会が「小規模公園におけるPark-PFI事例編」講習会を初開催した。そこで紹介された事例は、Park-PFIが大都市・大規模公園に限らないことを示している。
| 事例 | 自治体 | 業態 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| PARK DAIKANYAMA | むつ市(青森・人口約5.6万人) | グランピング・飲食・ドッグラン | 地元企業が代表。「本州最北端のグランピング」でブランディング |
| カダルテラス金田一 | 二戸市(岩手・人口約2.3万人) | 温泉・サウナ・宿泊・レストラン | 地元出資のまちづくり会社が代表。土木学会デザイン賞2023年優秀賞 |
| 春木川パーク | 別府市(大分) | 1F:スーパー、2F:人工芝グラウンド+カフェ | 面積0.92haの狭小地を立体化で解決。市の年間収入 約1,400万円 |
| 柳町児童公園 | むつ市 | 認可保育所 | 飲食ではなく「社会インフラ」を収益施設に |
| 高倉公園他5公園 | 八王子市 | ボール遊びができるあそび場 | 0.25ha街区公園を5公園まとめてパッケージ化 |
特に注目すべきは二戸市の事例だ。人口 ** 約2.3万人 ** という小規模自治体でも、地元の温泉資源を組み合わせることで収益の柱を確立した。また、保育所を収益施設として位置づけた柳町児童公園の事例は、「飲食以外の業態」による Park-PFI活用の先行モデルとなっている。
スモールコンセッションとの違い
対象施設・根拠法・事業費規模が異なる。相互補完的な関係
Park-PFIを検討する際、スモールコンセッションとの違いを正確に理解しておくことが重要である。混同されることが多いが、両者は別制度である。
| 比較軸 | Park-PFI | スモールコンセッション |
|---|---|---|
| 根拠法 | 都市公園法(H29改正) | 特定の根拠法なし(各種手法の総称) |
| 対象 | 都市公園(公園法適用) | 廃校・古民家・遊休公共施設等 |
| 所管 | 国土交通省 都市局 | 国土交通省 総合政策局 |
| 事業費 | 規模の定義なし | 10億円未満程度 |
| 許可期間 | 特例で最長20年 | 手法による |
| 整備義務 | 特定公園施設の整備が必要 | なし |
最大の違いは ** 対象施設 ** にある。Park-PFIは都市公園法の適用を受ける「都市公園」のみを対象とし、公園施設の設置・管理に特化した制度である。一方、スモールコンセッションは廃校・古民家・旧庁舎など「都市公園以外の遊休公的不動産」を対象とした幅広い概念だ。
両者は競合するものではなく、 ** 対象施設の種類によって使い分ける ** 補完的な関係にある。自治体が「公園」を活用したい場合はPark-PFI、「廃校や古民家」を活用したい場合はスモールコンセッションが適した手法となる。
スモールコンセッションの詳細については、スモールコンセッションとは?自治体担当者のための完全ガイドを参照されたい。
国の支援制度
Park-PFIの事業化に活用できる国の支援制度として、以下の3つが用意されている。
- ** 社会資本整備総合交付金 **: 特定公園施設の整備費に対する国からの補助
- ** 都市開発資金(賑わい増進事業資金) **: 地方公共団体が事業者に貸し付ける際、国が1/2を有利子貸付する仕組み
- ** 検討調査支援 **: マーケットサウンディングや導入可能性調査への国の費用支援
これらの支援制度を活用することで、特定公園施設の整備に係る自治体の財政負担を大幅に軽減できる。郡山市・開成山公園の事例では、特定公園施設整備費約7億円のうち市負担上限は90%以内(約6.3億円)、民間負担は最低10%以上(約7,015万円)という費用分担が設定された。
Park-PFIの始め方
Park-PFIの事業化に向けた実務的なファーストステップを示す。
**1. 対象公園の洗い出し **:自治体が管理する都市公園の中から、収益施設の設置が見込めるエリアを候補化する。立地条件(集客力)、既存施設の状況、建ぺい率の現況を把握する。
**2. 国交省ガイドラインの精読 **:国交省ガイドラインには、指針の記載事項・評価基準・サウンディングの実施方法が具体的に示されている。
**3. サウンディングの実施 **:公募前のマーケットサウンディングで、民間事業者の参入意欲を確認する。「そもそも誰も手を挙げない」という事態を防ぐことが最優先課題だ。
**4. アドバイザリー業者の選定 **:特に初回のPark-PFI導入では、公募設置等指針のドラフト作成や評価基準の設計にPPP専門のアドバイザリーを活用することが現実的だ。
事例から学べることは多いが、自分の公園で同じ結果が出るとは限らない。立地条件・周辺人口・既存施設の状態・民間事業者のニーズ——これらの前提条件の整理なしに公募に進むと、応募ゼロという結果になりかねない。
ISVDでは、公園活用の前提条件を整理した上で、最適な官民連携の事業設計を一緒に検討する無料相談を受け付けている。
参考文献
都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン(令和7年5月30日改正) (2025)
Park-PFI等の活用状況(令和7年3月31日時点) (2025)
郡山市 開成山公園Park-PFI事業 公募設置等指針 (2022)
郡山市 開成山公園Park-PFI事業(公式ページ) (2022)
PPP/PFI推進アクションプラン(令和7年改定版) (2025)