Google for Nonprofitsとは — 非営利団体がGoogleを無料で使い倒す完全ガイド
Google for Nonprofitsは、非営利団体に対しGoogle Workspace・Ad Grants・YouTube非営利プログラム・Google Maps Platformを無料または大幅割引で提供するプログラムです。月150万円相当の広告枠から独自ドメインメールまで、申請資格・手順・活用事例を実務目線で解説します。
ざっくり言うと
- Google for Nonprofitsは非営利団体に4つの主要Googleサービスを無料または大幅割引で提供するプログラムである
- 最大の目玉はGoogle Ad Grantsで月$10,000(約150万円)相当のGoogle検索広告枠が無償付与される
- 日本ではNPO法人・非営利型一般社団法人・公益法人・社会福祉法人が対象(政府機関・病院・学校は対象外)
- 申請はGoodstack経由で行い、審査通過まで通常3〜5営業日かかる
はじめに
Google for Nonprofitsの概要と非営利団体にとっての意義を説明
NPO・一般社団法人・公益法人の多くが直面する課題のひとつが、限られた予算での情報発信である。会員募集・寄付呼びかけ・ボランティア募集に広告費を投じる余裕がなく、活動の認知が広がらないまま優良な取り組みが埋もれてしまうケースは少なくない。
Google for Nonprofitsは、この状況を根本から変える可能性を持つプログラムである。Googleが2003年に開始した同プログラムは、2025年時点で世界67ヵ国・30万以上の非営利団体に活用されており、100ヵ国以上への拡大が予定されている。プログラムは4つの主要サービスを無料または大幅割引で提供する。とりわけGoogle Ad Grantsによる月$10,000(約150万円)相当の検索広告枠の無償提供は、活動規模を問わず利用できる強力な集客ツールとなっている。
本ガイドでは、プログラムの概要から申請資格・申請手順・活用事例・運用上の注意点まで、日本の非営利団体の実務担当者が知っておくべき情報を体系的にまとめる。
Google for Nonprofitsとは何か
Google for Nonprofitsは、Google LLCが運営する非営利団体向け支援プログラムである。対象団体はGoogleの主要サービスを無料またはほぼ無料で利用でき、デジタルツールへのアクセスによって社会的使命の実現を支援する設計となっている。
プログラムの規模は大きく、累計での広告枠提供額は$100億以上に達する。日本では2014年7月10日からプログラムが展開されており、NPO法人・非営利型一般社団法人・公益法人・社会福祉法人が申請可能となっている。
4つの主要サービスと提供価値
Workspace・Ad Grants・YouTube・Mapsの各サービスの内容と活用価値を整理
Gmail独自ドメイン・Drive・Meet・Chat・Docs等の業務ツール一式
Google検索広告の無償枠。寄付・ボランティア・会員募集に活用
動画への募金ボタン(YouTube Giving)、CTAオーバーレイ機能
地図API利用費を毎月補助。支援窓口・活動拠点の地図表示に
1. Google Workspace for Nonprofits
業務の基盤となるメール・ストレージ・グループウェアを一括して提供するクラウドサービスである。非営利団体向けには、Business Starter相当のプランが 完全無料 で利用できる。
主な機能:
- Gmail: 独自ドメイン(例:
info@yourorg.jp)でのメール利用 - Google Drive: 組織全体で100TBの共有ストレージプール
- Google Meet / Chat: オンライン会議とチームチャット
- Google Docs / Sheets / Slides: オフィスツール一式
- Gemini for Workspace: 2025年よりGemini AIアシスタントが非営利団体向けプランにも追加され、文書作成・要約・メール下書きなどの生成AI機能を利用可能
Business Standard(2TB Storage、録画機能付きMeet等)やEnterprise以上のプランは 75%以上の割引 が適用される。複数拠点や多人数の組織では、上位プランへのアップグレードも検討に値する。
2. Google Ad Grants
非営利団体向けに月$10,000(約150万円)相当のGoogle検索広告枠を 毎月無償 で提供するプログラムである。年間$120,000相当の広告予算を持続的に確保できる点で、資金力の限られた非営利団体にとって特に重要なサービスとなっている。
活用用途の例:
- ボランティア・スタッフの募集
- 寄付者・会員の獲得
- 社会課題の啓発・当事者支援
- 助成金・相談窓口の周知
なお、広告枠の維持にはCTR(クリック率)・Quality Scoreなどの継続条件がある(詳細は後述)。
3. YouTube 非営利プログラム
動画チャンネルに対し、一般ユーザーには提供されない非営利団体専用の機能を付与するプログラムである。
主な特典:
- YouTube Giving: 動画上に募金ボタンを表示し、視聴者が直接寄付できる機能。ただし、2025年時点で日本の団体は受益者として登録できない(米国・英国等の一部地域に限定)。日本の非営利団体が募金機能を利用する場合は、対象地域の財政スポンサーとの連携が必要となる
- CTAオーバーレイ: 「ボランティア登録はこちら」「詳しくはこちら」等の行動喚起ボタン
- Creator Academy非営利向けコンテンツ: 動画制作・チャンネル運営のノウハウ提供
- 専門サポート: メールサポートへの優先アクセス
動画コンテンツを活用した啓発・支援訴求を行う団体にとって、寄付や参加へのコンバージョン率向上に直結する機能群である。
4. Google Maps Platform クレジット
地図API(Maps API)の利用費として、毎月$250のクレジットが提供される。フードバンク・支援窓口・活動拠点の地図表示、地域ごとの課題可視化、フィールドワークのルート設計などに活用できる。
申請資格と対象団体
日本における対象法人類型と除外される団体を明確化
Google for Nonprofitsに申請できる日本の法人は、以下の4類型に限定される。
| 法人類型 | 説明 |
|---|---|
| 特定非営利活動法人(NPO法人) | 都道府県または市区町村による認証を受けた法人 |
| 非営利型一般社団法人 | 法人税法施行令第3条の要件を満たす非営利型の一般社団法人 |
| 公益社団法人・公益財団法人 | 公益認定等委員会による認定を受けた法人 |
| 社会福祉法人 | 厚生労働省または都道府県・市区町村による認可を受けた法人 |
対象外となる団体
以下に該当する場合は申請できない:
- 政府機関・公的機関: 国・都道府県・市区町村の行政組織
- 病院・医療機関: 医療法人・診療所等
- 学校・教育機関: 私立学校・大学法人等
- 営利目的の団体: 株式会社・合同会社等の営利法人
- 宗教団体: 宗教法人
「非営利型」以外の 一般社団法人はGoogle for Nonprofitsの対象外 である点に注意が必要だ。一般社団法人の場合、法人税法上の「非営利型」要件(剰余金の分配を定款で禁止している等)を満たしているかを事前に確認する必要がある。申請前に定款および議事録で確認しておくことを推奨する。
申請から利用開始までの手順
Goodstackを経由した5ステップの申請フローを解説
Google for Nonprofitsの申請は5つのステップで完結する。全体の流れを以下の図に示す。
法人類型・定款・活動内容の適格性を確認
アカウント作成・法人情報入力・書類アップロード
法的地位・活動実態・公益性の確認
認証コードでGoogle for Nonprofitsアカウントを作成
Workspace・Ad Grants・YouTube等を個別に申し込み
ステップ1: プログラムの要件確認
Google for Nonprofitsの公式ページにアクセスし、対象要件と各サービスの最新情報を確認する。
ステップ2: Goodstackで資格認証を取得
Goodstack(旧Percent)はGoogleが指定する資格認証パートナーである。Goodstackのサイトでアカウントを作成し、団体の種別・設立証明書類・活動内容等を提出する。審査期間は通常 3〜5営業日。承認後に認証コードが発行される。
提出が求められる書類の例:
- 法人登記事項証明書(法務局発行)
- 定款の写し
- 最新の事業報告書または活動計算書
ステップ3: Google for Nonprofitsアカウントの作成
Goodstackから発行された認証コードを使い、Google for Nonprofitsの管理ページでアカウントを登録する。
ステップ4: 各サービスを個別に有効化
アカウント作成後、ダッシュボードから必要なサービスを個別に申し込む。Google Workspaceは既存のGoogle Workspaceアカウントへの適用が可能。Ad GrantsはGoogle Adsアカウントとの連携が必要となる。
ステップ5: Google Workspaceのドメイン所有権証明(該当する場合)
Google Workspaceを利用する場合、独自ドメインのDNS設定またはHTMLファイルのアップロードによるドメイン所有権の証明が必要となる。ドメイン管理会社(お名前.com、ムームードメイン等)の設定画面でTXTレコードを追加するのが最も一般的な方法だ。
活用事例
日本のNPO・社団法人による具体的な活用実績を紹介
フローレンス — 会員募集・スタッフ採用への活用
認定NPO法人フローレンスは、Google Ad Grantsを会員募集および保育士採用のキャンペーンに活用している。「病児保育 預け先」「保育士 求人 社会貢献」等のキーワードで検索ユーザーにアプローチし、支援者コミュニティの拡大に役立てている。
ガールスカウト日本連盟 — Google Workspaceでデータ管理を刷新
公益社団法人ガールスカウト日本連盟は、Google Workspaceの無償提供を活用し、全国組織の情報共有基盤を整備した。分散していたメール・ドキュメント管理を統合し、セキュリティの向上と事務コストの削減を実現している。
日本財団 — Workspace導入で運用コストを3分の1に削減
公益財団法人日本財団は、Google Workspace for Nonprofitsを200アカウント規模で導入した。ペーパーレス会議の実現と外部パートナー団体とのカレンダー共有による連携強化を進め、5年間で運用コストを従来の3分の1以下に削減している。メール容量も50MBから25GBへと拡大し、大容量の資料共有が可能になった。
ADRA Japan — 災害時の寄付募集にAd Grantsを活用
認定NPO法人ADRA Japanは、Ad Grantsを災害時の寄付募集やメールニュースレター登録促進に活用している。2016年の熊本地震の際には「熊本震災 寄付」等のキーワードで広告を出稿し、ウェブ経由で寄付獲得につなげた。Ad Grants Pro認定(コンバージョントラッキング設定済みアカウントに付与される上位認定)の取得後は、ウェブサイト訪問者数が導入前の7〜8倍に増加している。
OVA — 自殺予防のアウトリーチにAd Grantsを活用
NPO法人OVAは、「インターネット・ゲートキーパー」活動にAd Grantsを活用している。自殺関連キーワードを検索するハイリスク者に対して相談窓口の広告を表示し、メール・LINE相談につなげるアウトリーチを実施。認定NPO法人ピッコラーレとの共同プロジェクトでは、6ヵ月間で広告表示68,000回・相談サイトへの誘導5,210回・相談アクション141件の実績を上げている。
Ad Grants利用の継続条件と注意点
月$10,000枠を維持するための運用要件を解説
月$10,000の広告枠を維持するためには、いくつかの条件を継続的に満たす必要がある。以下に各条件の重要度と違反時のリスクを整理する。
月平均 5% 以上
⚠️ 2ヵ月連続未達でアカウント停止の可能性
全キーワード 3 以上
⚠️ 2以下のキーワードは自動停止対象
キャンペーンに地域設定必須
⚠️ 全世界配信はポリシー違反
各グループに広告 2 本以上
⚠️ 広告1本のグループは最適化が不十分
GA4連携 + 目標設定
⚠️ 未設定だとスマート入札が利用不可
手動入札時は $2.00 上限
⚠️ スマート入札で上限解除可(要コンバージョン設定)
CTRが月平均5%を下回った月が2ヵ月続くと、アカウントが一時停止される場合がある。停止後は改善計画の提出により再開できるが、運用の空白期間が生まれるため注意が必要だ。
CPC(クリック単価)の上限はデフォルトで$2.00に設定されている。ただし「コンバージョン数の最大化」等のスマート入札を使用する場合はこの上限は適用されない(コンバージョントラッキングの設定が必須)。競合が多い検索キーワード(「NPO 寄付」「ボランティア 参加」等)では、この制限により通常入札での上位表示が難しくなるケースがある。ロングテールキーワードを中心とした戦略が有効だ。
2025年の主要アップデート
Ad Grantsの機能は2025年に大きく拡充されている。
- Performance Max(PMax)for Ad Grants: 2025年1月より全Ad Grantsアカウントで利用可能になった。AIによるオーディエンスシグナル最適化とコンバージョン最適化を自動で行う統合キャンペーン形式である。ただし、Ad Grants版PMaxの配信面はGoogle検索とGoogleマップに限定されており、通常の有料PMaxキャンペーンで利用可能なYouTube・ディスプレイ・Discover等のネットワークには配信されない(将来的な拡大の可能性はある)
- AI Max for Search: 2025年5月よりAd Grantsアカウントにも展開が開始された。AIが検索クエリの意図を解析し、キーワードマッチの精度を自動で最適化する機能である。手動でのキーワード調整の負荷が軽減される
いずれもAd Grantsの月$10,000枠の範囲内で利用でき、追加コストは発生しない。
Ad Grantsの運用管理には一定の工数が必要なため、ISVDでは広告設定・最適化の支援も提供している。詳細はお問い合わせから。
まとめ
申請を始めるための最初のステップを整理
Google for Nonprofitsは、非営利団体がデジタルツールへのアクセスを確保し、社会的使命の実現に注力できる環境を整えるための基盤となるプログラムである。特にGoogle Ad Grantsの月$10,000相当の検索広告枠は、資金力の限られた団体にとって会員・寄付・ボランティア募集を加速させる実質的な助成金として機能する。
申請の最初のステップは、自団体が4つの対象法人類型(NPO法人・非営利型一般社団法人・公益法人・社会福祉法人)に該当するかを確認することである。非営利型一般社団法人については定款要件の確認が特に重要だ。要件を満たしていることが確認できたら、Goodstackへの登録に進むとよい。
関連ガイド
Google for Nonprofitsの各サービスについて、より詳しく解説した記事を用意している。
- Google for Nonprofits申請ガイド — Goodstack経由の手続きを詳細解説 — 申請書類の準備から承認までの具体的な手順
- Ad Grantsの月$10,000枠はどう使われるのか — 仕組みと配分の基本 — 月$10,000の予算配分と運用の考え方
- Ad GrantsのCTR・キーワード運用の基本 — CTR 5%維持のための実践的な運用手法
- Ad Grantsが不承認になるパターンと対策 — 審査落ちを防ぐためのチェックポイント
- Google Workspace for Nonprofits 無料プランの活用ガイド — Workspaceの無料プランで使える機能と設定
- 非営利団体のファンドレイジング設計 — Ad Grantsを含む資金調達戦略の全体設計
参考文献
Google for Nonprofits — 非営利団体の皆様へ — Google LLC (2025). Google for Nonprofits公式サイト
Google Ad Grants — 非営利団体向けGoogle広告プログラム — Google LLC (2025). Google for Nonprofits サポートページ
Google for Nonprofits — Goodstackによる資格認証 — Google LLC (2025). Google for Nonprofits ヘルプセンター
日本財団: Google Workspace 導入事例 — Google LLC (2025). Google Workspace 導入事例
Google検索広告の無償広告枠Ad Grantsを用いた相談窓口への誘導の取り組み — NPO法人OVA (2022). OVA公式ブログ
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