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一般社団法人社会構想デザイン機構

2026年3月改正 人材開発支援助成金リスキリング支援コース完全ガイド

ISVD編集部
約11分で読めます

2026年3月2日に大幅拡充された人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の改正内容・助成率・申請フローを中小企業・NPO担当者向けに完全解説。令和8年度末時限のため、今すぐ活用を検討したい制度である。

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ざっくり言うと

  1. 2026年3月2日の改正で「人事・人材育成計画に基づく訓練」が新たに助成対象に加わり、対象範囲が大幅拡充された
  2. 中小企業の経費助成率は最大75%、賃金助成は1,000円/時間で、1事業所あたり年間1億円が上限
  3. 訓練開始の1か月前までに計画届を提出しなければ助成対象外になる点が最大の注意事項
  4. 制度は令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置であり、申請できる機会は限られている

制度の基本

リスキリング支援コースの目的・対象事業主・対象訓練を解説

何のための助成金か

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、厚生労働省が雇用保険を財源として運営する企業向けの助成制度である(厚生労働省 人材開発支援助成金)。

雇用保険適用事業主が従業員に対して、新たな分野で必要となる専門的知識・技能を習得させるための職業訓練(OFF-JT)を実施した場合に、訓練にかかった経費訓練期間中の賃金の一部が助成される。

DX・GX・新規事業立ち上げなど、既存の職種・スキルセットを超えた領域への人材育成が求められる企業にとって、資金負担を大幅に軽減できる制度である。

対象となる事業主

以下の要件を満たす事業主が対象である。

  • 雇用保険の適用事業所であること
  • 労働保険料に滞納がないこと
  • 過去に不正受給がないこと
  • 訓練を受ける従業員が雇用保険被保険者であること

個人事業主も雇用保険の適用事業所であれば申請可能であるが、従業員への訓練が対象である(事業主自身のスキルアップには使えない)。


2026年3月改正の3大変更点

人事育成計画ベース訓練追加・分割支給・設備投資助成を整理

2026年3月2日に制度が大幅拡充された(社会保険労務士事務所リッシュ「2026年2月 大幅拡充」)。3つの主な変更点を解説する。

変更点1:人事・人材育成計画に基づく訓練が追加された

改正前は「具体的な事業展開(DX化・GX化・新規事業立ち上げ等)に伴う訓練」のみが対象であった。

改正後は、事業展開計画の有無にかかわらず、企業の人事・人材育成戦略に基づき、将来従事する予定の職務に関連する知識・技能を習得させる訓練も対象に加わった(リスキリングナビ「2025年版 徹底解説」)。

項目改正前(〜2026年3月1日)改正後(2026年3月2日〜)
対象訓練の範囲事業展開に伴う訓練のみ事業展開訓練+人事育成計画ベース訓練
配置転換の要件具体的な事業展開・異動が前提将来的な異動予定でも可(未確定でも申請可)
電子申請対応対応済み改正分は紙申請のみ(電子申請は準備中)

この変更の実務的な意味:従来は「〇〇事業に展開するからDX研修が必要」という具体的な事業計画がなければ申請できなかった。改正後は「将来的にデータ分析業務を担当させる予定だから、今のうちにPython研修を受けさせたい」という人材育成計画があれば申請できるようになった。配置転換が確定していない段階での先行訓練も認められる。

なお、人事育成計画に基づく訓練の適用要件として、おおむね3年以内の人事配置計画が条件となっている。10年先を見据えた長期計画だけでは申請要件を満たさない点に注意が必要である。

変更点2:訓練途中での分割支給申請が可能になった

改正前は訓練終了後の一括申請のみであった。改正後は、長期訓練の途中段階でも支給申請が可能になった(社会保険労務士事務所リッシュ)。

これにより、企業が先に訓練費用を立て替えて後から受け取るというキャッシュフロー上の負担が軽減される。なお、分割支給の申請タイミングや回数の上限の詳細については、厚生労働省の公式様式集(令和8年3月〜)で確認すること。

変更点3:設備投資助成が新設された(中小企業のみ)

訓練終了後、習得した知識・技能を活用して生産性向上を図るための機器・設備を購入した場合に、その費用の一部を追加で助成する制度が新設された(対象は中小企業のみ)(社会保険労務士事務所リッシュ)。

具体的な助成率・上限額・対象設備の要件については、厚生労働省の公式パンフレット(令和8年3月2日版)で確認すること。


助成内容の早見表

経費助成率・賃金助成額・訓練時間別上限を表形式で掲載

経費助成率・賃金助成額

区分中小企業大企業
経費助成率75%60%
賃金助成額1,000円/時間500円/時間

賃金助成額は2025年4月1日以降に計画届を提出したものから適用(改正前は中小980円、大企業480円)。(補助金ポータル

経費助成の上限額(1人1訓練あたり)

実訓練時間中小企業大企業
10時間以上100時間未満30万円20万円
100時間以上200時間未満40万円25万円
200時間以上50万円30万円

カスタメディア「リスキリング助成金の概要」

その他の上限

計算例

例)中小企業が従業員1名に200時間のPython・データ分析研修(経費40万円・所定労働時間内実施)を受講させた場合:

  • 経費助成:40万円 × 75% = 30万円
  • 賃金助成:200時間 × 1,000円 = 20万円
  • 合計助成額:50万円

実質的な企業負担は経費40万円の25%である10万円程度になる(賃金は別途発生するが、助成で一部回収できる)。


対象となる訓練の具体例

OK例・NG例を対比して解説

対象となる訓練(OK例)

以下はあくまで例示である。実際の審査では個別の訓練内容・目的・訓練実施機関の確認が行われる。

DX系

  • Python・データ分析の実践演習(業務への適用を想定した実習を含むもの)
  • 生成AI活用の実践研修(プロンプトエンジニアリング、業務自動化演習等)
  • クラウドインフラ管理・セキュリティの実務スキル習得
  • 業務システム開発のためのプログラミング習得

GX系

  • カーボンニュートラルに向けた省エネ技術の習得
  • ESG経営・非財務情報開示の実務対応研修

新規事業系

  • 新規参入分野(医療・介護・農業等)の専門知識習得
  • 海外展開に向けた語学・現地法規制の習得

対象外となる訓練(NG例)

以下は助成対象外である(助成金サポート.JP)。

  • DXの概論・用語解説・事例紹介のみの研修(具体的な手法習得を伴わないもの)
  • OJT(業務遂行を通じた訓練)。OFF-JTのみが対象
  • 会社の福利厚生目的の研修
  • 雇用保険被保険者以外の者を対象とした訓練

申請の流れ(ステップ別)

Step1〜5の手順と期限を説明

Step 1:事前準備(訓練開始の2〜3か月前)

以下の2つは、申請の前提条件である(icloud.co.jp「申請の流れ」)。

① 職業能力開発推進者の選任 社内の担当者を「職業能力開発推進者」として選任する。労働組合または従業員代表への通知が必要である。

② 事業内職業能力開発計画の策定 経営方針に基づく人材育成方針・目標を文書化した計画書を作成する。労働組合や従業員代表の意見を聴いて作成する。

Step 2:訓練計画の作成・届出(訓練開始の1か月前まで)

⚠️ この期限が最重要である。訓練開始の1か月前までに管轄労働局へ提出しなければ、その訓練は助成対象外になるキューズフル「令和6年度版 Q&A」)。

提出書類(主なもの):

  • 職業訓練実施計画届(様式第1号)
  • 事業展開等実施計画(または人事・人材育成計画)
  • 事前確認書(様式第11号)
  • 対象者一覧(様式第4-1号)

2026年3月2日以降の改正対応訓練・分割支給希望の場合は紙申請のみである(電子申請システムは準備中。2026年4月時点で電子申請に対応していない)(厚生労働省)。

Step 3:訓練の実施

  • 計画通りにOFF-JT訓練を実施する
  • 出勤簿・賃金台帳・訓練実績記録を適切に保管する
  • 実訓練時間は最低10時間以上必要である(助成金サポート.JP
  • 所定労働時間内の訓練のみが賃金助成の対象である(時間外・休日は対象外)

Step 4:支給申請(訓練終了日から2か月以内)

訓練終了日から2か月以内に支給申請書を管轄労働局へ提出する(icloud.co.jp)。

必要書類(主なもの):

  • 支給申請書
  • 訓練実績記録(出席簿等)
  • 賃金台帳の写し
  • 訓練費用の領収書等の経費証明書類

Step 5:審査・受給

管轄労働局による書類審査を経て、支給決定後に指定口座へ振り込まれる。確認項目が多く審査には一定の時間を要する。申請から受給まで数か月かかることを想定すること。


よくある失敗と対策

8つの典型的な失敗パターンと防止策

失敗1:計画届の提出前に訓練を始めてしまった

最も多い失敗である。訓練開始日の1か月前までに計画届を提出することが絶対条件である。計画届提出前に実施した研修は助成対象外になる。「先に研修を受けてから申請しよう」という発想は通用しない。思い立ったらすぐに管轄労働局に相談・届出を行うこと。

失敗2:OFF-JT要件を満たさない訓練を申請した

本コースはOFF-JT(業務外訓練)のみが対象である。業務遂行そのものと区別できない形態の研修は対象外である。受講する研修が「業務時間中だが業務とは別に実施される学習プログラム」の形式になっているか確認すること。

失敗3:所定労働時間外の訓練で賃金助成を申請した

賃金助成は所定労働時間内に実施した訓練のみが対象である。休日・時間外に実施した場合は原則対象外である(事前に振替休日対応を行った場合は除く)。

失敗4:DX概論・用語解説のみの研修を申請した

「DXとは何か」「生成AIの仕組みと事例紹介」といった概論・用語解説のみを内容とする研修は対象外である(助成金サポート.JP)。Pythonによるデータ分析実習、業務自動化ツールの実践演習など、具体的な手法・スキルを習得する内容であることが求められる。

失敗5:申請書類の不備・漏れ

リスキリング支援コース特有の書類(事業展開等実施計画・事前確認書等)の提出が漏れると受け付けてもらえない。事前に管轄労働局の担当窓口に書類一式を確認してもらうことを強く推奨する。

失敗6:電子申請で改正後の内容を申請しようとした

2026年3月2日の改正に対応した電子申請はまだ準備中である(2026年4月時点)。改正拡充された訓練(人事育成計画ベース訓練・分割支給申請)の計画届は紙申請のみ対応可能である(厚生労働省)。

失敗7:受給要件(事業主側)を確認していなかった

雇用保険適用・労働保険料滞納なし・過去の不正受給なし等の受給資格要件を満たさない場合は申請できない。事前に受給資格要件を確認すること。

失敗8:教育訓練給付金との二重申請を試みた

同一訓練・同一期間について、人材開発支援助成金(企業向け)と教育訓練給付金(個人向け)を同時に申請することは原則できない(補助金ポータル)。どちらを優先するかを事前に検討すること。別時期・別訓練であれば、それぞれ申請することは可能である。


関連制度との使い分け

教育訓練給付金・他コースとの比較

人材開発支援助成金の各コースとの比較

制度名対象者支給先助成率(中小)特徴
事業展開等リスキリング支援コース(本記事)雇用保険適用事業主企業最大75%事業展開・人事計画訓練を幅広くカバー。令和8年度末時限
人への投資促進コース雇用保険適用事業主企業最大70%高度デジタル人材育成特化。サブスク型研修(月2万円上限)も対象
人材育成支援コース雇用保険適用事業主企業最大75%汎用的な職業訓練全般をカバー。コース数が多い

教育訓練給付金との違い

比較軸人材開発支援助成金(本記事)教育訓練給付金
申請者企業(事業主)個人(労働者)
給付先企業の口座個人の口座
給付率最大75%(中小)最大80%(専門実践教育訓練)
訓練の選択企業が決める個人が選ぶ
同一訓練での併用原則不可原則不可

企業が費用を負担して従業員を研修に送り出す場合は「人材開発支援助成金」、従業員が自己啓発で受講する場合は「教育訓練給付金」が対象になる。


申請は今すぐ始める

本コースは令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置である(カスタメディア)。令和4年度(2022年)から始まった制度で、現時点では延長・後継制度の情報は公表されていない。

「いつか申請しよう」と考えているうちに、訓練開始前の届出期限(1か月前)を逃してしまうケースが非常に多い。検討している訓練がある場合は、今すぐ以下のアクションを取ること。

  1. 管轄都道府県労働局への相談:制度の詳細・書類の確認は管轄労働局の「人材開発支援助成金」担当窓口に問い合わせること
  2. 社会保険労務士への相談:書類作成・届出の実務は社会保険労務士に依頼することで、ミスを防ぎやすくなる
  3. 最新様式の確認厚生労働省の申請書類ページ(令和8年3月〜)から最新様式をダウンロードすること

参考文献

人材開発支援助成金厚生労働省. 厚生労働省

人材開発支援助成金 申請書類(令和8年3月〜)厚生労働省. 厚生労働省

詳細版パンフレット(令和8年3月2日版)厚生労働省. 厚生労働省

事業展開等リスキリング支援コース 解説補助金ポータル編集部. 補助金ポータル

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