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2026年3月改正 人材開発支援助成金リスキリング支援コース完全ガイド

ISVD編集部
約13分で読めます

2026年3月2日に大幅拡充された人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の改正内容・助成率・申請フローを中小企業・NPO担当者向けに完全解説。令和8年度末時限のため、今すぐ活用を検討したい制度である。

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ざっくり言うと

  1. 2026年3月2日の改正で「人事・人材育成計画に基づく訓練」が新たに助成対象に加わり、対象範囲が大幅拡充された
  2. 中小企業の経費助成率は最大75%、賃金助成は1,000円/時間で、1事業所あたり年間1億円が上限
  3. 計画届の提出期間は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間。遅すぎても早すぎても受け付けられない
  4. 制度は令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置であり、申請できる機会は限られている

制度の基本

リスキリング支援コースの目的・対象事業主・対象訓練を解説

何のための助成金か

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、が雇用保険を財源として運営する企業向けの助成制度である(厚生労働省 人材開発支援助成金(外部サイト、新しいタブで開きます))。

雇用保険適用事業主が従業員に対して、新たな分野で必要となる専門的知識・技能を習得させるための職業訓練(OFF-JT)を実施した場合に、訓練にかかった経費と訓練期間中の賃金の一部が助成される。

DX・GX・新規事業立ち上げなど、既存の職種・スキルセットを超えた領域への人材育成が求められる企業にとって、資金負担を大幅に軽減できる制度である。

対象となる事業主

以下の要件を満たす事業主が対象である。

  • 雇用保険の適用事業所であること
  • 労働保険料に滞納がないこと
  • 過去に不正受給がないこと
  • 訓練を受ける従業員が雇用保険被保険者であること

個人事業主も雇用保険の適用事業所であれば申請可能であるが、従業員への訓練が対象である(事業主自身のスキルアップには使えない)。


2026年3月改正の3大変更点

人事育成計画ベース訓練追加・分割支給・設備投資助成を整理

2026年3月2日に制度が大幅拡充された。厚生労働省の様式ページは適用期間を「令和8年3月2日~令和8年4月7日」と記している(厚生労働省 申請書類(外部サイト、新しいタブで開きます))。3つの主な変更点を解説する。

変更点1:人事・人材育成計画に基づく訓練が追加された

改正前は「具体的な事業展開(DX化・GX化・新規事業立ち上げ等)に伴う訓練」のみが対象であった。

改正後は、事業展開計画の有無にかかわらず、企業の人事・人材育成戦略に基づき、将来従事する予定の職務に関連する知識・技能を習得させる訓練も対象に加わった(厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コースのご案内」(外部サイト、新しいタブで開きます))。

⚠️ この枠を使う場合は、事前に認定経営革新等支援機関の確認が必要である。 厚生労働省の案内は「ⅲの場合、人事及び人材育成に関する計画については、あらかじめ認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があります」と定めている。訓練開始日から起算して3年以内に従事することが予定される職務であることも要件である。

項目改正前(〜2026年3月1日)改正後(2026年3月2日〜)
対象訓練の範囲事業展開に伴う訓練のみ事業展開訓練+人事育成計画ベース訓練
配置転換の要件具体的な事業展開・異動が前提将来的な異動予定でも可(未確定でも申請可)
人事育成計画の確認不要認定経営革新等支援機関の事前確認が必要

この変更の実務的な意味:従来は「〇〇事業に展開するからDX研修が必要」という具体的な事業計画がなければ申請できなかった。改正後は「将来的にデータ分析業務を担当させる予定だから、今のうちにPython研修を受けさせたい」という人材育成計画があれば申請できるようになった。配置転換が確定していない段階での先行訓練も認められる。

なお、人事育成計画に基づく訓練の適用要件として、おおむね3年以内の人事配置計画が条件となっている。10年先を見据えた長期計画だけでは申請要件を満たさない点に注意が必要である。

変更点2:訓練途中での分割支給申請が可能になった

改正前は訓練終了後の一括申請のみであった。改正後は、長期訓練の途中段階でも支給申請ができる。ただし使える場面はかなり限られる。

厚生労働省の支給要領は、次の4つをすべて満たす場合に限ると定めている(厚生労働省 支給要領(外部サイト、新しいタブで開きます))。

  • 1コースの訓練期間が6か月を超えること
  • 訓練開始日から6か月ごとに区切った「分割訓練期間」であること
  • その分割訓練期間の受講時間数が、実訓練時間数の8割以上であること
  • 通学制または同時双方向型の通信訓練であること(eラーニング・定額制サービスは対象外)

申請期間は、その分割訓練期間の最終日の翌日から起算して2か月以内である。

⚠️ 訓練全体で支給要件を満たさず不支給になった場合、それ以前に受けた支給決定も取り消される。 途中で受け取った分を返すことになるため、先に受け取れる分だけを見て判断しない。

変更点3:設備投資助成が新設された(中小企業のみ)

訓練終了後、習得した知識・技能を活用して生産性向上を図るための機器・設備を購入した場合に、その費用の一部を追加で助成する制度が新設された(対象は中小企業のみ)。

厚生労働省の案内によれば、助成率は導入費用の50%、限度額は支給対象労働者1人につき15万円、10人以上の場合は人数にかかわらず150万円である(厚生労働省(外部サイト、新しいタブで開きます))。賃金要件または資格等手当要件のいずれかを満たしたうえで、通常分とは別に支給申請する。

申請期間は、対象労働者全員に要件を満たす賃金または資格等手当を3か月間続けて支払った日の翌日から起算して5か月以内である(厚生労働省 支給要領(外部サイト、新しいタブで開きます))。


助成内容の早見表

経費助成率・賃金助成額・訓練時間別上限を表形式で掲載

経費助成率・賃金助成額

区分中小企業大企業
経費助成率75%60%
賃金助成額1,000円/時間500円/時間

賃金助成額は2025年4月1日以降に計画届を提出したものから適用(改正前は中小980円、大企業480円)。

経費助成の上限額(1人1訓練あたり)

実訓練時間中小企業大企業
10時間以上100時間未満30万円20万円
100時間以上200時間未満40万円25万円
200時間以上50万円30万円

その他の上限

計算例

例)中小企業が従業員1名に200時間のPython・データ分析研修(経費40万円・所定労働時間内実施)を受講させた場合:

  • 経費助成:40万円 × 75% = 30万円
  • 賃金助成:200時間 × 1,000円 = 20万円
  • 合計助成額:50万円

実質的な企業負担は経費40万円の25%である10万円程度になる(賃金は別途発生するが、助成で一部回収できる)。


対象となる訓練の具体例

OK例・NG例を対比して解説

対象となる訓練(OK例)

以下はあくまで例示である。実際の審査では個別の訓練内容・目的・訓練実施機関の確認が行われる。

DX系

  • Python・データ分析の実践演習(業務への適用を想定した実習を含むもの)
  • 生成AI活用の実践研修(プロンプトエンジニアリング、業務自動化演習等)
  • クラウドインフラ管理・セキュリティの実務スキル習得
  • 業務システム開発のためのプログラミング習得

GX系

  • カーボンニュートラルに向けた省エネ技術の習得
  • ESG経営・非財務情報開示の実務対応研修

新規事業系

  • 新規参入分野(医療・介護・農業等)の専門知識習得
  • 海外展開に向けた語学・現地法規制の習得

対象外となる訓練(NG例)

以下は助成対象外である(厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コースのご案内」(外部サイト、新しいタブで開きます))。

  • DXの概論・用語解説・事例紹介のみの研修(具体的な手法習得を伴わないもの)
  • OJT(業務遂行を通じた訓練)。OFF-JTのみが対象
  • 会社の福利厚生目的の研修
  • 雇用保険被保険者以外の者を対象とした訓練

申請の流れ(ステップ別)

Step1〜5の手順と期限を説明

Step 1:事前準備(計画届を出す前まで)

以下の2つは、申請の前提条件である。厚生労働省の案内は Step0 に置き、「職業訓練実施計画届の提出までに選任・策定・従業員への周知を行っていることが必要」と定めている(厚生労働省(外部サイト、新しいタブで開きます))。

① 職業能力開発推進者の選任 社内の担当者を「職業能力開発推進者」として選任する。労働組合または従業員代表への通知が必要である。

② 事業内職業能力開発計画の策定 経営方針に基づく人材育成方針・目標を文書化した計画書を作成する。労働組合や従業員代表の意見を聴いて作成する。

Step 2:訓練計画の作成・届出(訓練開始日の6か月前から1か月前までの間)

⚠️ この期限が最重要である。厚生労働省は提出期間を「訓練開始日の6か月前から1か月前までの間」と定めており、1か月前を過ぎた提出はもちろん、6か月前より早い提出も受け付けられない(厚生労働省(外部サイト、新しいタブで開きます))。

提出書類(主なもの):

  • 職業訓練実施計画届(様式第1号)
  • 事業展開等実施計画(または人事・人材育成計画)
  • 事前確認書(様式第11号)
  • 対象者一覧(様式第4-1号)

申請は雇用関係助成金ポータルからの電子申請と、管轄労働局への書面提出のどちらでもできる(厚生労働省 申請書類(外部サイト、新しいタブで開きます))。

Step 3:訓練の実施

  • 計画通りにOFF-JT訓練を実施する
  • 出勤簿・賃金台帳・訓練実績記録を適切に保管する
  • 実訓練時間は最低10時間以上必要である(厚生労働省(外部サイト、新しいタブで開きます))
  • 所定労働時間内の訓練のみが賃金助成の対象である(時間外・休日は対象外)

Step 4:支給申請(訓練終了日の翌日から起算して2か月以内)

訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に支給申請書を管轄労働局へ提出する。厚生労働省はこの期間を「厳守」と記している(厚生労働省(外部サイト、新しいタブで開きます))。訓練終了日そのものからではなく、その翌日から数える。

必要書類(主なもの):

  • 支給申請書
  • 訓練実績記録(出席簿等)
  • 賃金台帳の写し
  • 訓練費用の領収書等の経費証明書類

Step 5:審査・受給

管轄労働局による書類審査を経て、支給決定後に指定口座へ振り込まれる。確認項目が多く審査には一定の時間を要する。申請から受給まで数か月かかることを想定すること。


よくある失敗と対策

8つの典型的な失敗パターンと防止策

失敗1:計画届の提出前に訓練を始めてしまった

最も多い失敗である。計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に提出することが絶対条件である。計画届提出前に実施した研修は助成対象外になる。「先に研修を受けてから申請しよう」という発想は通用しない。思い立ったらすぐに管轄労働局に相談・届出を行うこと。

失敗2:OFF-JT要件を満たさない訓練を申請した

本コースはOFF-JT(業務外訓練)のみが対象である。業務遂行そのものと区別できない形態の研修は対象外である。受講する研修が「業務時間中だが業務とは別に実施される学習プログラム」の形式になっているか確認すること。

失敗3:所定労働時間外の訓練で賃金助成を申請した

賃金助成は所定労働時間内に実施した訓練のみが対象である。休日・時間外に実施した場合は原則対象外である(事前に振替休日対応を行った場合は除く)。

失敗4:DX概論・用語解説のみの研修を申請した

「DXとは何か」「生成AIの仕組みと事例紹介」といった概論・用語解説のみを内容とする研修は対象外である(厚生労働省(外部サイト、新しいタブで開きます))。Pythonによるデータ分析実習、業務自動化ツールの実践演習など、具体的な手法・スキルを習得する内容であることが求められる。

失敗5:申請書類の不備・漏れ

リスキリング支援コース特有の書類(事業展開等実施計画・事前確認書等)の提出が漏れると受け付けてもらえない。事前に管轄労働局の担当窓口に書類一式を確認してもらうことを強く推奨する。

失敗6:人事育成計画ベースの訓練で、事前確認を取らずに申請した

2026年3月2日の改正で加わった「人事及び人材育成に関する計画に基づく訓練」を使う場合、その計画についてあらかじめ認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要がある(厚生労働省(外部サイト、新しいタブで開きます))。確認を取らずに計画届を出しても受け付けられない。認定経営革新等支援機関は中小企業庁のページで検索できる。

失敗7:受給要件(事業主側)を確認していなかった

雇用保険適用・労働保険料滞納なし・過去の不正受給なし等の受給資格要件を満たさない場合は申請できない。事前に受給資格要件を確認すること。

失敗8:教育訓練給付金との二重申請を試みた

同一訓練・同一期間について、人材開発支援助成金(企業向け)と教育訓練給付金(個人向け)を同時に申請することは原則できない。どちらを優先するかを事前に管轄労働局に確認すること。別時期・別訓練であれば、それぞれ申請することは可能である。


関連制度との使い分け

教育訓練給付金・他コースとの比較

人材開発支援助成金の各コースとの比較

制度名対象者支給先助成率(中小)特徴
事業展開等リスキリング支援コース(本記事)雇用保険適用事業主企業最大75%事業展開・人事計画訓練を幅広くカバー。令和8年度末時限
人への投資促進コース雇用保険適用事業主企業最大70%高度デジタル人材育成特化。サブスク型研修(月2万円上限)も対象
人材育成支援コース雇用保険適用事業主企業最大75%汎用的な職業訓練全般をカバー。コース数が多い

教育訓練給付金との違い

比較軸人材開発支援助成金(本記事)教育訓練給付金
申請者企業(事業主)個人(労働者)
給付先企業の口座個人の口座
給付率最大75%(中小)最大80%(専門実践教育訓練)
訓練の選択企業が決める個人が選ぶ
同一訓練での併用原則不可原則不可

企業が費用を負担して従業員を研修に送り出す場合は「人材開発支援助成金」、従業員が自己啓発で受講する場合は「教育訓練給付金」が対象になる。


申請は今すぐ始める

本コースは令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置である。厚生労働省の案内は「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました」と記している(厚生労働省(詳細版)(外部サイト、新しいタブで開きます))。令和4年度(2022年)から始まった制度で、現時点では延長・後継制度の情報は公表されていない。

「いつか申請しよう」と考えているうちに、訓練開始前の届出期限(1か月前)を逃してしまうケースが非常に多い。逆に早すぎても受け付けられない(6か月前から)。検討している訓練がある場合は、今すぐ以下のアクションを取ること。

  1. 管轄都道府県労働局への相談:制度の詳細・書類の確認は管轄労働局の「人材開発支援助成金」担当窓口に問い合わせること
  2. 社会保険労務士への相談:書類作成・届出の実務は社会保険労務士に依頼することで、ミスを防ぎやすくなる
  3. 最新様式の確認:厚生労働省の申請書類ページ(令和8年3月〜)(外部サイト、新しいタブで開きます)から最新様式をダウンロードすること

この記事で使った統計の出典

  1. 1厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」(2026年4月) 出典を開く
  2. 2厚生労働省 人材開発支援助成金パンフレット(2026年3月) 出典を開く

参考文献

人材開発支援助成金 — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省

人材開発支援助成金 申請書類(令和8年3月〜) — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省

詳細版パンフレット(令和8年3月2日版) — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省

人材開発支援助成金 支給要領(事業展開等リスキリング支援コース) — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省

訂正履歴

  1. — 計画届の提出期間・支給申請の起算日・電子申請の可否を、厚生労働省の一次資料に合わせて直しました。分割支給と設備投資助成の条件も追記しています。

    訂正前
    計画届を「訓練開始の1か月前まで」、支給申請を「訓練終了日から2か月以内」と書いていました。また「2026年3月2日以降の改正対応訓練・分割支給希望の場合は紙申請のみである(電子申請システムは準備中)」としていました。分割支給は「長期訓練の途中段階でも支給申請が可能になった」とだけ記載。人事・人材育成計画に基づく訓練については、事前確認の要件に触れていませんでした。出典の多くが社会保険労務士事務所などの民間サイトでした。
    訂正後
    計画届の提出期間は「訓練開始日の6か月前から1か月前までの間」。早すぎる提出も受け付けられません。支給申請は「訓練終了日の翌日から起算して2か月以内(厳守)」。申請は雇用関係助成金ポータルからの電子申請と書面提出のどちらでもできます。分割支給は、訓練期間が6か月を超え、受講時間数が実訓練時間数の8割以上で、通学制または同時双方向型の通信訓練である場合に限られ、訓練全体が不支給になれば以前の支給決定も取り消されます。人事・人材育成計画に基づく訓練には、認定経営革新等支援機関の事前確認が必要です。設備投資助成の助成率50%・限度額・申請期間5か月以内も追記しました。出典は厚生労働省の案内・支給要領・申請書類ページに置き換えています。

    誤った理由 読者がこの記事を見て動くと助成金の受給可否が変わります。提出期間の下限(6か月前)を書いていなかったため、早く出せば確実だと読める状態でした。支給申請の起算日は「翌日から」が正しく、厚生労働省は「厳守」と記しています。電子申請については、記事が出典としていた厚生労働省のページに「紙」という語が1度も出ておらず、逆に「雇用関係助成金ポータルにより、電子申請を行う場合は」と書かれていました。出典を開かずに書いた記述です。

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