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一般社団法人社会構想デザイン機構
実践ガイド — 設立・法人化

ソーシャルビジネスを始めるなら一般社団法人を作ってからがスタートライン

ISVD編集部
約12分で読めます

社会課題解決と事業性を両立するソーシャルビジネス。法人格なしのまま始めるリスクと、非営利型一般社団法人が社会起業に最適な理由を、Google特典・助成金・税制優遇の全体像とともに解説する。

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ざっくり言うと

  1. ソーシャルビジネスは社会性・事業性・革新性を満たす事業であり、法人形態は問わない
  2. 法人格なしでの活動は契約・口座開設・助成金申請・社会的信用の4点でリスクを抱える
  3. 非営利型一般社団法人は設立が容易(2名・登記のみ)で、Google for Nonprofits・助成金・税制優遇の全てにアクセスできる
  4. 副業・パラレルキャリアとしての社会起業にも一般社団法人は適している

はじめに

なぜ「法人を作る」がソーシャルビジネスの最初の一手になるのか

社会課題の解決に事業として取り組みたい——そう考えたとき、多くの人が最初に悩むのは「何をするか」である。しかし実際にソーシャルビジネスを立ち上げた経験から言えば、それ以上に重要な問いは「どの器で始めるか」だ。

法人格のない任意団体のままでは、契約を結べない、銀行口座が個人名義になる、助成金に申請できない、行政や企業との協働で信用が足りない——こうした壁が、やりたい活動を始める前から行く手を阻む。逆に言えば、を設立するだけで、これらの壁は一度に取り除かれる。

本記事では、による月額$10,000の広告枠、助成金・休眠預金の申請資格、税制優遇といった具体的メリットを示しながら、なぜ「まず法人を作る」ことがソーシャルビジネスのスタートラインになるのかを論じる。


ソーシャルビジネスとは何か

社会性×事業性×革新性の3要件と法人形態の自由度

3つの要件

経済産業省はソーシャルビジネスの要件として、以下の3つを掲げている。

  • 社会性: 解決が求められる社会課題に取り組むことを事業のミッションとすること
  • 事業性: ミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めること
  • 革新性: 新しい社会的商品・サービスやその提供の仕組みを開発・活用すること

重要なのは、この定義に法人形態の指定がない点である。株式会社でもNPO法人でも一般社団法人でも、3つの要件を満たせばソーシャルビジネスと呼べる。つまり、法人形態の選択は「ソーシャルビジネスの定義」の問題ではなく、「どの器が自分の事業に最も有利か」という戦略の問題である。

コミュニティビジネスとの違い

経済産業省は、ソーシャルビジネスと近接する概念としてコミュニティビジネスを位置づけている。コミュニティビジネスは地域課題の解決に焦点を当てた事業であり、ソーシャルビジネスはより広い社会課題(環境・教育・福祉・国際協力など)を射程に含む。本記事ではソーシャルビジネスを広義に捉え、地域課題への取り組みも含めて論じる。


法人格なしで始めるリスク

契約・口座・助成金・信用の4つの壁

「まずは任意団体として活動を始め、軌道に乗ったら法人化すればいい」——こう考える人は少なくない。しかし、法人格のない状態での活動には、以下の4つの構造的リスクがある。

1. 契約の主体になれない

任意団体には法人格がないため、事務所の賃貸契約、業務委託契約、サービス利用契約などの法律行為において、団体名義での契約ができない。代表者個人が契約当事者となるため、個人の財産にリスクが及ぶ。また、行政や企業との協働事業において「法人格がないと契約できない」と門前払いされるケースは珍しくない。

2. 銀行口座が個人名義になる

任意団体名義の銀行口座を開設できる金融機関は限られる。結果として代表者の個人口座で団体の資金を管理することになり、公私の分離が困難になる。寄付者や助成元からの信頼性も低下する。

3. 助成金・補助金の申請資格がない

多くの助成金・補助金プログラムは、申請要件として法人格を求めている。JANPIAが運営する休眠預金等活用制度は、資金分配団体を通じた間接申請であっても、実行団体に法人格を求める場合がほとんどである。民間財団の助成金も同様で、法人格がないために応募すらできないプログラムは多い。

4. 社会的信用の不足

行政、企業、他の非営利団体との協働において、法人格は組織の「実在証明」として機能する。法人登記は公開情報であり、代表者、所在地、設立日が誰でも確認できる。この透明性が、パートナーシップの基盤になる。任意団体にはこの仕組みがない。

これら4つのリスクは、事業の規模が大きくなるほど深刻化する。「軌道に乗ってから法人化する」では遅い場合が多く、むしろ法人格を持つことで初めてアクセスできるリソースを活用して事業を軌道に乗せる——という順序が現実的である。


一般社団法人が社会起業に最適な理由

設立の容易さ・Google特典・助成金適格性

社会課題に事業として取り組む法人格の選択肢は複数あるが、特にゼロからソーシャルビジネスを始める場合、非営利型一般社団法人には以下の優位性がある。

設立の容易さ

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づき、一般社団法人は2名以上の社員(出資不要)で設立できる。行政の認証や許可は不要で、公証人による定款認証と法務局への登記のみで完了する。所要期間は2〜4週間程度であり、NPO法人の設立(行政認証に3〜6か月)と比べて圧倒的に速い。

活動分野の制限なし

NPO法人は特定非営利活動促進法が定める20の活動分野に限定されるが、一般社団法人にはそのような制約がない。教育、環境、テクノロジー、国際協力など、あらゆる社会課題に対応でき、事業の方向転換も定款変更のみで可能である。

Google for Nonprofitsの適格性

は、非営利型一般社団法人を日本での適格法人として認めている。このプログラムに承認されると、(月額最大$10,000相当の検索広告枠)、Google Workspace for Nonprofits(メール・ドライブ・ビデオ会議の無償化)、YouTube Nonprofit Programなどの特典が得られる。年間換算で$120,000以上のリソースに無償でアクセスできる可能性がある。

助成金・休眠預金への申請適格性

非営利型一般社団法人は、民間財団の助成金、行政の補助金、そして休眠預金等活用制度(JANPIAが運営)の実行団体として申請する資格を持つ。特に休眠預金は、子ども・若者支援、生活困窮者支援、地域活性化の3分野で年間数十億円規模の資金が分配されており、ソーシャルビジネスの立ち上げ・拡大に活用できる制度設計になっている。


株式会社・合同会社との比較

ソーシャルビジネス文脈での法人形態選択

ソーシャルビジネスの文脈で法人形態を選ぶ際、営利法人(株式会社・合同会社)と非営利型一般社団法人の違いを正確に理解しておく必要がある。

比較軸非営利型一般社団法人株式会社合同会社
設立費用約11万円(定款認証+登記)約25万円(定款認証+登記+登録免許税)約10万円(定款認証不要+登記)
設立人数社員2名以上発起人1名以上社員1名以上
出資不要1円以上1円以上
利益分配不可(定款で禁止)株主配当社員配当
税制収益事業のみ課税全所得課税全所得課税
Google for Nonprofits対象対象外対象外
助成金適格性多くのプログラムで対象一部のみ一部のみ
社会的イメージ公益性が高い印象ビジネス志向の印象新しい法人形態の印象

合同会社は設立費用が最も安く、1名で設立できるため、フリーランスや個人事業の法人化には適している。しかし、Google for Nonprofitsの対象にならず、助成金の申請資格も限定的であるため、ソーシャルビジネスの器としての選択肢にはなりにくい。

株式会社は外部からの資金調達(出資)が容易であり、大規模なスケールを目指すソーシャルビジネスには適している面がある。一方で、株主への利益還元が前提となるため、社会的ミッションと利益最大化のバランスに緊張が生じやすい。

非営利型一般社団法人は、利益分配の禁止により社会的ミッションへの純粋な集中が可能であり、かつ収益事業を行うことも認められている(収益は事業の再投資に充当する)。ソーシャルビジネスの「社会性と事業性の両立」を制度的に担保する法人形態といえる。


非営利型一般社団法人で得られるメリットの全体像

広告・助成金・税制の三本柱

Google for Nonprofits

Google for Nonprofitsに承認されると、以下の特典が無償で提供される。

  • Google Ad Grants: 月額最大$10,000(年間$120,000)相当のGoogle検索広告枠。自団体のウェブサイトへのトラフィックを増やし、認知度向上・支援者獲得に活用できる
  • Google Workspace for Nonprofits: Gmail(独自ドメイン)、Google Drive(100TB)、Google Meet、カレンダーなどのクラウドツールが無料。スタートアップ段階でのITコストを大幅に削減できる
  • YouTube Nonprofit Program: 動画へのリンクカード追加、寄付ボタンの設置など、動画を通じた支援者獲得の機能が利用可能

ISVDの実績として、Ad Grantsを運用することで月間数千のウェブサイト訪問を獲得し、通常であれば広告費として支出すべき金額をゼロに抑えている。

助成金・休眠預金の申請資格

非営利型一般社団法人は、以下の資金調達チャネルにアクセスできる。

  • 休眠預金等活用制度: JANPIAを通じて、資金分配団体への申請、または実行団体として活動資金を得ることが可能
  • 民間財団助成金: 日本財団、トヨタ財団、三菱財団など、多くの民間財団が非営利法人を対象とした助成プログラムを運営している
  • 行政補助金: 自治体の地域課題解決型補助金、内閣府の社会的インパクト関連事業などへの申請が可能

営利法人では原則としてアクセスできないこれらの資金源は、ソーシャルビジネスの立ち上げ期において極めて重要な役割を果たす。

税制優遇

非営利型一般社団法人の税制上のメリットは、法人税法施行令第3条に基づく「収益事業課税」である。法人税法が定める34業種の収益事業から生じた所得のみが課税対象となり、それ以外の事業(寄付金収入、会費収入、助成金収入など)は非課税である。

たとえば、講演会の参加費収入は「技芸教授業」として課税対象になりうるが、同じ講演会であっても助成金を原資として無料で開催した場合の助成金収入は非課税となる。このように事業設計の工夫により、税負担を最適化できる余地がある。


副業・パラレルキャリアとしての社会起業

本業を辞めずに始められる仕組み

ソーシャルビジネスの始め方として、いきなり本業を辞めてフルコミットする必要はない。非営利型一般社団法人の柔軟な設計を活かし、副業・パラレルキャリアとして社会起業を始めるアプローチがある。

兼業が可能な理由

一般社団法人の理事には、兼業禁止の法的制約がない。本業で会社員として働きながら、一般社団法人の理事として社会活動を行うことが制度上可能である。ただし、本業の就業規則における副業・兼業の規定を確認する必要がある。

小さく始めて検証する

非営利型一般社団法人は設立時に資本金が不要であり、2名で始められる。Google Workspace for Nonprofitsを活用すればオフィスツールのコストもゼロにできる。この低コスト構造により、まずは週末や平日夜の時間を使って活動を開始し、社会的インパクトと事業性を検証してから、徐々にリソースを投入するという段階的なアプローチが取れる。

営利法人との二層構造

ISVDが実践しているのは、営利法人(合同会社コラレイトデザイン)と非営利法人(一般社団法人社会構想デザイン機構)の二層構造である。営利事業で得た収益基盤の上に非営利活動を展開することで、ソーシャルビジネスの持続可能性を確保している。この二層構造は法的に何ら問題がなく、むしろ営利と非営利の役割を明確に分離できるメリットがある。


設立から事業開始までのロードマップ

6つのステップで整理

非営利型一般社団法人を設立してソーシャルビジネスを開始するまでの流れを、6つのステップで整理する。

ステップ1: ミッションと事業計画の策定(1〜2週間)

取り組む社会課題、解決のアプローチ、収益モデルを明確にする。この段階でを作成しておくと、助成金申請時にも活用できる。

ステップ2: 定款の作成(1週間)

非営利型の要件(剰余金の分配禁止、残余財産の帰属先の指定、理事の親族制限)を満たす定款を作成する。法務局のテンプレートを参考にしつつ、自団体の事業目的に合わせてカスタマイズする。

ステップ3: 公証人による定款認証(1日)

公証役場で定款の認証を受ける。手数料は約5万円である。

ステップ4: 法務局への設立登記(1〜2週間)

登記申請書、定款、理事の就任承諾書等を法務局に提出する。登録免許税は6万円である。登記完了後、法人番号が付与される。

ステップ5: Google for Nonprofitsへの申請(2〜4週間)

法人設立後、Goodstackを通じてGoogle for Nonprofitsに申請する。承認後、Ad GrantsやWorkspaceの利用が可能になる。

ステップ6: 助成金・補助金の調査と申請

設立した法人格を活用し、事業計画に合致する助成金・補助金プログラムを調査・申請する。多くの助成プログラムは年1〜2回の募集サイクルであるため、早期に情報収集を始めることが重要である。


まとめ——まず法人を作ることで広がる選択肢

行動への移行を促す結論

ソーシャルビジネスを始めるにあたって、最初のハードルは「何をするか」ではなく「どの器で始めるか」である。そして多くの場合、非営利型一般社団法人がその最適解となる。

  • 設立は2名・11万円・2〜4週間で完了する
  • Google for Nonprofitsにより年間$120,000相当のリソースが無償で得られる
  • 助成金・休眠預金という営利法人にはないファンディングチャネルが開かれる
  • 税制優遇により収益事業以外の所得が非課税になる
  • 副業・パラレルキャリアとして小さく始め、段階的に拡大できる

法人格を持たないまま「いつかやろう」と先延ばしにすることは、これらすべてのリソースへのアクセスを自ら遮断していることに等しい。ソーシャルビジネスは、法人を作ってからがスタートラインである。


関連記事


参考文献

ソーシャルビジネス・コミュニティビジネスについて経済産業省 (2024)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律e-Gov法令検索 (2006)

一般社団法人・一般財団法人と法人税国税庁 (2024)

Google for Nonprofits 適格要件Google (2024)

休眠預金等活用事業JANPIA(一般財団法人日本民間公益活動連携機構) (2024)

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読んだ後に考えてみよう

  1. 自分が取り組みたい社会課題は、どのような事業モデルで持続可能になるか?
  2. 法人格を持つことで、現在できていないことのうち何が可能になるか?
  3. 非営利型一般社団法人と株式会社、自分の活動にはどちらが適しているか?

この記事の用語

Google Ad Grants
Google for Nonprofitsの一部として提供される検索広告プログラム。対象非営利団体に月額最大$10,000(年間$120,000)相当のGoogle検索広告枠を無償で付与する。CPC上限$2.00、CTR 5%以上の維持が条件。
Google for Nonprofits
Googleが非営利団体に提供するプログラム。Google Ad Grants(月額最大$10,000相当の検索広告枠)、Google Workspace無償化、YouTube Nonprofit Programなどの特典を含む。日本ではNPO法人・非営利型一般社団法人・公益法人・社会福祉法人などが対象。
ロジックモデル
事業の投入(インプット)から活動、産出(アウトプット)、成果(アウトカム)までの因果関係を図式化したフレームワーク。
非営利型一般社団法人
一般社団法人のうち、定款で非営利性が確保された法人。法人税法施行令第3条の要件を満たすことで、収益事業以外の所得が非課税となる。設立は2名以上の社員で可能で、NPO法人と異なり活動分野の制限がない。

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