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一般社団法人 社会構想デザイン機構

PPP公民連携デスクの設置格差 — 自治体内部能力の構造問題と案件形成への影響

ヨコタナオヤ
約5分で読めます

内閣府はPPP/PFI推進に向けて自治体へのPPPデスク設置・アドバイザー派遣を整備した。しかし案件が生まれている自治体と生まれていない自治体の間には、担当者の専門性・首長の本気度・デスク機能の継続性に明確な構造差がある。内部能力の格差が案件形成格差に直結する構造を分析する。

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本ノートは公共資産活用研究室(ISVD-LAB-005)の構造分析シリーズ第14稿である。PPP/PFI推進における自治体の内部能力(担当者専門性・組織体制・首長関与)が案件形成に与える影響を構造的に分析する。

何が起きているのか

の案件形成を阻む最大の要因は、資金でも制度でもなく「人」だ。PFS普及率9%の構造分析(本研究室第3稿)でも指摘したとおり、案件形成の現場では「意欲のある職員がいるかどうか」が他のどの変数よりも重要だと繰り返し指摘されている。

内閣府は、自治体のPPP/PFI推進体制整備を支援するため、PPPデスクの設置・専門家アドバイザー派遣・研修プログラムを整備してきた。制度インフラは充実している。

にもかかわらず、PPP/PFI優先的検討規程の策定率は令和7年3月末時点で82%と高いが、実際に案件を形成している自治体は一部に偏っている。策定率と案件形成率の乖離が、「制度はあるが案件は生まれない」という構造の実態だ。

背景と文脈

自治体のPPP推進体制はどう設計されているのか

内閣府は2021年以降、PPP/PFI推進に向けた「PFI事業導入の手引き」を整備し、地方公共団体のPPPデスク設置を推奨してきた。PPPデスクとは、庁内横断のPPP案件相談窓口として機能する体制のことで、財政・法務・都市計画・施設管理など複数部署のノウハウを一元化して民間事業者との対話に対応する機能が期待されている。

また、優先的検討規程の策定は、一定規模以上の公共施設整備にPPP/PFIを優先的に検討する義務付けを意味する。82%という策定率は、制度的には大多数の自治体がPPP/PFIを検討する義務を負っている状態だ。

しかし「検討する義務」と「案件を形成する能力」の間には大きな溝がある。この溝が、案件形成格差の根本にある。

案件形成を分けるのは何か

総務省の公共施設等総合管理計画フォローアップ(策定自治体のうち民間活用を検討している割合)や内閣府の年次調査から、案件形成自治体と非形成自治体の間に繰り返し観察される構造差が3つある。

第一の差:担当者の専門性と継続性

PPP/PFI案件は形成に数年を要する。担当者がいたとしても人事異動で交代すれば、引き継ぎが困難で案件が消滅するリスクが高い。案件を形成している自治体では、担当者が3〜5年以上同じポストに在籍しているか、専任の係または課として組織化されているケースが多い。

逆に案件が生まれない自治体では、PPP推進担当が他業務と兼務で、知識が個人に留まっており、人事異動とともに知識が失われる構造になっている。

第二の差:首長の本気度

案件形成の庁内承認プロセスでは、財政課・法務担当・議会対応の各部署が「なぜ前例のない手法を採用するのか」と問い返す。この壁を突破するには、首長が「PPP/PFIを積極的に推進する」という方針を明示し、各部署への指示を出す必要がある。

首長の発言一つで庁内の空気が変わる事例が複数の自治体で報告されており、「首長の本気度が最大の推進変数」という指摘は内閣府の実務者向け資料でも繰り返し登場する。

第三の差:民間との対話履歴の蓄積

サウンディング(官民対話)を定期的に実施している自治体は、民間事業者との対話で「どの施設が民間にとって魅力的か」「どの条件設定なら参入が起きるか」という情報を蓄積している。

一方、サウンディングを実施したことがない自治体では、公募条件を設定する段階で「民間が何を求めているか」を把握していないため、不調(応募者なし)が繰り返される。

構造を読む

3層の能力格差

自治体の内部能力を「担当者個人の能力」「組織体制」「首長の本気度」の3層に分けると、案件形成の可能性は3層の掛け算になる。

能力が高い状態能力が低い状態
担当者個人専任・3年以上継続・PPP知識保有兼務・毎年交代・知識は外部依存
組織体制専任係または課・庁内横断調整機能あり担当者1人・他部署調整は個人努力
首長の本気度PPP推進を方針明示・庁内指示あり他の政策課題に優先度が集中

3層全てが「能力が高い状態」の自治体は案件形成率が高い。3層のうち1層でも欠ければ、案件は途中で止まるか、生まれる前に消える。

PPPデスク設置の実態

PPPデスクを「設置している」と申告している自治体でも、実態は様々だ。専任職員が2名以上在籍し、民間との対話機能を持つデスクもあれば、名前だけが存在し実質的な機能がない場合もある。

民間事業者が「PPPデスクに相談できる」と感じられるかどうかは、デスクの実態によって大きく異なる。対話を重ねる中で民間の知識が庁内に蓄積されていくサイクルが機能しているかどうかが、デスクの実質的な評価基準だ。

伴走型支援の可能性と限界

内閣府・国土交通省は専門家派遣・PPPアドバイザー制度を整備し、自治体の外部から能力を補完しようとしている。しかし外部専門家の派遣は期間限定であり、派遣が終了した後に庁内に何が残るかが問われる。

外部専門家が「代わりに案件を作る」モデルでは、派遣終了後に庁内能力が残らない。有効なのは「庁内の担当者が自分で説明できるようになるまで伴走する」モデルだ。事業者選定の評価基準を担当者自身が財政課に説明できるかどうかを、伴走支援の完了条件として設定することが必要になる。

制度・資金・専門家派遣が揃っても案件が生まれない自治体では、3層の内部能力のどこかが欠けている。外部支援の設計が「穴を代替する」ではなく「穴を埋める」ことを目的にしない限り、案件形成格差は縮まらない。


参考文献

PPP/PFI推進アクションプラン(令和7年改定版)内閣府. 内閣府

PPP/PFI優先的検討規程策定状況(令和7年3月末時点)内閣府民間資金等活用事業推進室. 内閣府

公共施設等総合管理計画策定状況等の調査結果総務省. 総務省

PFI事業導入の手引き内閣府民間資金等活用事業推進室. 内閣府

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