ざっくり言うと
- 導入可能性調査は6工程で構成される。現況分析→サウンディング→スキーム設計→指針ドラフト→評価基準設計→報告書作成の流れが標準
- 成果物の核心は公募設置等指針と配点表。この2点が公募の質を決定する
- 委託費の相場は500万〜2,000万円。国の「都市公園における官民連携の検討調査支援」で費用の一部が補填される
導入可能性調査とは何か
公募前の意思決定材料を整えるためのアドバイザリー業務。通常6〜12か月
Park-PFI(公募設置管理制度)の導入を検討し始めた自治体が最初に直面するのは、「どこから手をつければよいか」という問いである。制度の仕組みは理解できても、自分たちの公園でPark-PFIが成立するのか、どんな条件を設定すべきか、民間が本当に参入してくれるのか——こうした意思決定材料がなければ、公募に進むことはできない。
この意思決定材料を整えるための業務が、 「Park-PFI導入可能性調査」 (以下、可能性調査)である。
可能性調査は、自治体が外部のPPP専門コンサルタントや設計事務所に委託する調査・コンサルティング業務の総称だ。調査の範囲と深度は案件ごとに異なるが、標準的な成果物として「調査報告書」「公募設置等指針のドラフト」「評価基準の配点表」「リスク分担表」の4点セットが求められることが多い。
調査期間は通常 6か月から12か月 程度。この期間中に、公園の現況分析、マーケット サウンディング(サウンディング型市場調査)、事業スキームの設計、公募書類の草案作成が行われる。
令和7年3月31日時点で全国165公園がPark-PFIを活用済みだが、この数字の背後には、各自治体が実施した導入可能性調査がある。公募の質は調査の質に直結する。
6つの業務工程
現況分析・サウンディング・スキーム設計・指針ドラフト・評価基準・報告書の6段階
可能性調査の業務は、標準的に以下の6工程で構成される。各工程は前工程の成果物を前提とするため、順序と期間の設計が重要だ。
工程1:現況分析・事業化条件整理
最初の工程では、対象公園の現況を多角的に分析する。
分析の主な項目 は以下の通りだ。
- 公園の立地特性(集客圏人口、交通アクセス、周辺施設との関係)
- 公園施設の現況(既存建ぺい率、老朽化施設、インフラの位置)
- 利用者データ(年間来園者数、利用者属性、季節変動)
- 土地利用上の制約(用途地域、建築基準法上の制限、景観規制)
- 財政状況(維持管理費の現状、整備計画との整合性)
この工程の成果物は「現況分析シート」と「事業化に向けた課題整理表」である。これらは後工程のサウンディング資料・指針ドラフトの基礎資料となる。
所要期間の目安は 1〜2か月 程度。この段階で「そもそもPark-PFIに向かない公園だった」と判明するケースもある。早期に判断できることも可能性調査の重要な役割だ。
工程2:マーケットサウンディングの設計・実施
サウンディングは、可能性調査の核心的工程である。公募条件の設計に先立って民間事業者の参入意欲と条件を把握することで、「応募ゼロ」という公募失敗のリスクを大幅に低減できる。
国土交通省のガイドラインは、令和7年改訂のガイドラインにおいて「事業発案時」と「事業化検討時」の 2段階実施を推奨 している。
- 第1回サウンディング(事業発案時): 市場性の確認とアイデア収集が目的。公園概要・図面・現況建ぺい率・既存施設の取扱い方針を民間に提示し、意見を聴取する
- 第2回サウンディング(事業化検討時): 公募条件案を開示した上で、参画意向と条件の確認を行う。使用料水準・特定公園施設の整備費負担についても意見を収集する
郡山市・開成山公園の事例では、これをさらに発展させて「トライアル・サウンディング(社会実験型)」→「プレサウンディング」→「マーケットサウンディング」の 3段階設計 が採用された。段階的な官民対話により、民間事業者のニーズを精緻に把握した上で公募条件が設計された。
調査業者が実施するサウンディングの主な業務は以下の通りである。
- サウンディング実施要領の作成
- 参加事業者の募集・案内(公募方式または任意選定方式)
- 個別面談または説明会の運営
- 結果整理(参加社数・主な意見・課題・公募条件への示唆)
- 結果概要の公表資料作成
所要期間の目安は 2〜3か月 程度(設計から結果取りまとめまで)。
工程3:事業スキームの設計
サウンディングの結果を踏まえて、事業の骨格となるスキームを設計する工程だ。
スキームとは、誰が何をどのように負担するかを整理した「事業の設計図」である。主な検討事項は以下の通りだ。
- 公募対象公園施設と特定公園施設の範囲設定
- 費用負担の構造(特定公園施設の整備費における公共負担比率と民間負担比率)
- 設置管理許可期間の設定(最長20年の範囲内で、事業規模・投資回収期間を考慮)
- 指定管理者制度との組み合わせ(複合型モデルにするか否か)
- 使用料の水準設定(条例で定める最低額との整合性)
- リスク分担の基本方針(事業破綻時・施設損傷時・自然災害時等)
開成山公園の事例では、特定公園施設整備費について 市90%以下・民間10%以上 という費用負担構造が設定された。この比率は民間参入の障壁を下げる設計であり、スキーム設計の中で最も重要な検討事項の一つだ。
所要期間の目安は 1〜2か月 程度。
工程4:公募設置等指針のドラフト作成
可能性調査の成果物として最も実務的価値が高いのが、公募設置等指針のドラフトだ。
公募設置等指針は、都市公園法第5条の2第2項に基づく 法定文書 であり、第1号〜第10号の記載事項が法律で定められている。調査業者は現況分析・サウンディング・スキーム設計の成果を踏まえて、この法定書類の草案を作成する。
主な記載事項は以下の通りだ。
| 号 | 記載事項 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1号 | 公募対象公園施設の種類 | カフェ・レストラン等(幅を持たせた表記も可) |
| 第2号 | 公募対象公園施設の場所 | 設置区域・面積・現況・規制の有無。位置図添付 |
| 第3号 | 設置・管理開始時期 | 設計・工事・法的手続きの期間を見込んで設定 |
| 第4号 | 使用料の額の最低額 | 条例で定める額を下回ってはならない |
| 第5号 | 特定公園施設の建設に関する事項 | 整備施設の種類・仕様・数量、費用負担上限額 |
| 第8号 | 認定の有効期間 | 最長20年の範囲内で設定 |
| 第9号 | 評価基準 | 6つの評価項目と配点 |
| 第10号 | 公募の実施に関する事項 | 参加資格・提出書類・審査基準・協定事項等 |
指針のドラフトが出来上がることで、自治体は「このまま公募できる状態」の書類を手にすることになる。これが可能性調査で最も時間とコストがかかる工程でもある。
所要期間の目安は 2〜3か月 程度。
工程5:評価基準・配点表の設計
工程4と並行して、または工程4完了後に、評価基準(配点表)を設計する。
評価基準は公募の実質的な競争条件を決定するものであり、設計の良し悪しが応募の質を左右する。国交省ガイドラインは6つの評価項目を示しているが、各項目の配点比率と小項目の設定は自治体が決定する。
開成山公園の配点表は以下の通りであった。
| 大項目 | 配点 | 比率 |
|---|---|---|
| 事業総括(全体計画) | 120点 | 24% |
| 課題解決のための再整備(特定公園施設) | 100点 | 20% |
| 公募対象公園施設・利便増進施設 | 80点 | 16% |
| 管理運営(指定管理業務) | 100点 | 20% |
| 経費削減 | 70点 | 14% |
| 付加価値提案 | 30点 | 6% |
| 合計 | 500点 | 100% |
| インセンティブ(サウンディング参加) | +8点 | — |
開成山公園では合計500点+サウンディング参加インセンティブ8点の評価体系が採用された。最低制限基準として「全委員合計が配点合計の60%以上、かつ各主要項目がすべて60%以上」という条件も設定されており、一定の質を確保する設計となっている。
サウンディング参加に対してインセンティブ(加点)を設ける設計は、民間の早期関与を促す重要な仕掛けである。トライアル・サウンディング参加で5点、マーケットサウンディング参加で3点という設定は、公募前の対話への参加動機付けとして機能した。
所要期間の目安は 1〜2か月 程度(工程4と並行実施も可能)。
工程6:調査報告書の作成
すべての工程の成果を統合した最終報告書を作成する。
標準的な報告書の構成は以下の通りだ。
- 調査の概要: 調査目的・対象・手法・期間
- 現況分析: 公園の立地特性・利用者データ・課題整理
- 事業化の可能性判断: 市場性・事業採算性の見立て
- マーケットサウンディング結果: 参加社数・主な意見・公募条件への示唆
- 事業スキーム: 費用負担構造・許可期間・指定管理との連携方針
- 特定公園施設の整備計画(案): 整備対象・概算費用・優先順位
- 公募スケジュール(案): 指針公示から選定・開業までのタイムライン
- 今後の課題と推奨事項
郡山市の開成山公園では、導入可能性調査の成果として上記7つの構成要素を含む調査報告書が作成された。この報告書が、その後の3段階サウンディングと公募設置等指針策定の基盤となった。
成果物の全体像
報告書・公募設置等指針・配点表・リスク分担表の4点セットが標準
可能性調査から得られる成果物は、単なる「報告書」ではない。公募を成功させるための実用的な書類群である。標準的な成果物セットを整理する。
成果物1:調査報告書
工程6で作成される最終成果物。公園の現況・市場性・スキームの基本方針をまとめた意思決定資料。庁内での予算要求や首長・議会への説明資料として機能する。
成果物2:公募設置等指針(ドラフト)
工程4で作成する法定書類の草案。法第5条の2第2項第1号〜第10号の記載事項をすべてカバーしたものが求められる。このドラフトの質が公募の応募数と応募の質を直接左右する。
精度の高いドラフトには、現況分析とサウンディングの知見が十分に反映されている必要がある。指針の公示から計画提出期限まで 法律上1か月以上の期間 を設けなければならないため、スケジュール設計も指針に明記される。
成果物3:評価基準・配点表
工程5で設計する配点表。学識経験者 2名以上 による選定委員会が実際に使用する評価シートの原案となる。配点のバランスが不適切だと、想定外の応募者が高得点を得るリスクがある。
配点設計の際には「どういう事業者に選定されたいか」という自治体の意図を反映させる必要がある。地域性を重視するなら評価項目②(事業実施体制・地元企業の参画状況)の配点を高め、整備の質を重視するなら評価項目③(施設の設置計画)の配点を厚くする、といった設計が可能だ。
成果物4:リスク分担表
事業期間中に想定されるリスクを列挙し、公共・民間・双方のいずれが負担するかを整理した表。事業破綻時の措置・自然災害時の損害処理・施設損傷時の修繕責任など、後の協定書の基礎資料となる。
国交省ガイドラインには、リスク分担の標準的な考え方が示されている。調査業者はこれをベースに、対象公園・対象事業の特性を踏まえた独自のリスク分担表を作成する。
委託費の相場
500万〜2,000万円。公園規模・サウンディング回数・指針ドラフト込みか否かで変動
規模別の目安
可能性調査の委託費は、案件の規模・複雑さ・成果物の範囲によって大きく異なる。実務上の相場感を示す。
| 案件規模・条件 | 委託費の目安 |
|---|---|
| 小規模公園(1ha未満)、サウンディング1回、指針ドラフトあり | 500万〜800万円 |
| 中規模公園(1〜5ha)、サウンディング2回、指針ドラフトあり | 800万〜1,200万円 |
| 大規模公園(5ha超)、サウンディング3段階、指指定管理との複合型 | 1,200万〜2,000万円 |
開成山公園(約12.89ha、指定管理と複合型)では、2020年に公募型プロポーザルで委託先を公募し、アドバイザリー業者としてオリエンタルコンサルタンツが選定された。大規模・複合型案件の調査費用は、上記の範囲上限に近い水準になることが多い。
委託費に影響する主な要因
以下の条件が委託費の上下に影響する。
- サウンディングの回数: 1回と3回では業務量が大きく異なる。1回あたり100万〜200万円程度の追加コストを見込む
- 指針ドラフトの込み・別: 指針のドラフト作成を含むか否かで200万〜500万円の差が生じる
- 指定管理との複合型: 指定管理の仕様書作成も含む場合、追加で200万〜400万円
- 調査業者の規模: 大手コンサルは高コストだが品質保証・ブランド信頼性がある。中堅・専門特化型は費用対効果が高い
- 地域性: 現地調査の交通費・出張費は規模に比例する
国の検討調査支援制度
可能性調査の費用の一部は、国の支援制度によって補填される可能性がある。
国土交通省は「都市公園における官民連携の検討調査に係る国の支援」として、マーケットサウンディング・導入可能性調査に対する費用支援を用意している。仕組みは「 社会資本整備総合交付金 」の活用による補助だ。
加えて「 都市開発資金(賑わい増進事業資金) 」として、地方公共団体が事業者に貸し付ける際に、国が1/2を有利子貸付する制度も存在する。
国の支援制度の詳細・最新の申請要件については、国土交通省都市局のPark-PFI関連情報ページを参照されたい。
プロポーザル方式による発注
可能性調査の委託先選定では、一般競争入札ではなく 公募型プロポーザル方式 が標準的に使われる。これは、業務の性質上「価格だけで判断できない」から——専門知識・業務経験・提案内容が委託業者の選定に直接影響するためだ。
プロポーザルの標準的な評価項目
| 評価軸 | 評価内容 | 配点の目安 |
|---|---|---|
| 業務実績 | Park-PFI・PPP/PFI関連の実績件数と内容 | 30〜40点 |
| 技術提案 | 本件の課題認識・調査方法の具体性 | 30〜40点 |
| 実施体制 | 担当者の資格・経験・専任性 | 20〜30点 |
| 費用 | プロポーザル参加者中の相対評価 | 10〜20点 |
業者選定のポイント
Park-PFI実績の確認: 「PPP/PFI全般の実績」と「Park-PFI特化の実績」は別物だ。Park-PFI特有の法定書類(公募設置等指針)の作成経験を持つ業者は限られる。特に指針の第9号(評価基準)と第10号(公募の実施に関する事項)の記載実績を確認することが重要だ。
担当者の属人性: コンサルティング業務は会社ではなく人が動く。実際の担当者の経験・実績を契約書面に明記(専任担当者の変更には事前承認を必要とする旨)することで、リスクを低減できる。
小規模自治体の場合: 大手コンサルは小規模案件を経験の浅いスタッフに割り当てるリスクがある。地域密着型の中堅コンサルや、Park-PFIに特化した専門事務所の起用も選択肢として検討したい。
調査後の次ステップ
報告書を受け取った後にやるべき庁内合意形成と公募準備
可能性調査の報告書を受け取った後、自治体が取るべき行動を整理する。
庁内合意形成: 調査結果を首長・議会・関係部署(財政・法務・都市計画等)に説明し、公募に進む庁内判断を得る。報告書はこの説明資料として直接活用できる。
国費補助の申請準備: 特定公園施設の整備費に対する社会資本整備総合交付金の申請は、予算サイクルに合わせた早期準備が必要だ。調査報告書の整備計画(案)をベースに事業費の概算を固める。
公募設置等指針の最終化: 調査業者が作成したドラフトをベースに、法務部門・議会・地域住民との調整を経て最終化する。法律上、指針の公示から計画提出期限まで1か月以上の期間が必要であるため、スケジュールは余裕を持って設定する。
選定委員会の設立準備: 法律上、 学識経験者2名以上 による評価・選定委員会の設置が義務付けられている。PPP・公園・法律・財務の各分野の有識者を確保するための準備を早期に始める。
可能性調査は「やれば終わり」ではなく、公募を成功させるための投資である。調査の質が低ければ、指針の質が低くなり、応募の質が低くなる——この連鎖を断ち切るためにも、発注仕様書の段階から成果物の品質基準を明記することが重要だ。
Park-PFIの事業化に向けた前提条件の整理と、可能性調査の発注仕様書の設計については、ISVDに相談されたい。
参考文献
都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン(令和7年5月30日改正) (2025)
Park-PFI等の活用状況(令和7年3月31日時点) (2025)
郡山市 開成山公園Park-PFI事業 導入可能性調査概要 (2020)
郡山市 開成山公園Park-PFI事業 公募設置等指針 (2022)
PPP/PFI推進アクションプラン(令和7年改定版) (2025)