サウンディングの3種類 — トライアル・プレ・マーケットの使い分け【2026年版】
官民連携で活用されるサウンディングの3類型(マーケットサウンディング・プレサウンディング・トライアルサウンディング)の目的・実施タイミング・手順・成果物を解説。自治体担当者向け入門ガイド。
ざっくり言うと
- サウンディングとは、公共施設の活用・民間参入を検討する際に、行政が民間事業者と非公式に対話する手法。3類型(マーケット・プレ・トライアル)はそれぞれ実施タイミングと目的が異なる
- マーケットサウンディングは公募設計前の市場調査。プレサウンディングは公募要件の最終確認。トライアルサウンディングはPark-PFI特有の実証試験。この3段階を使い分けることで、公募後の「応募ゼロ」「条件不整合」を防げる
- サウンディングの結果は公募要件に反映されるが、参加事業者が公募で有利になることは禁じられている。結果の公表方法・参加者情報の扱いを事前に整理することが重要
サウンディングとは
定義・目的・3類型の概要。なぜ公募前に必要なのか
サウンディングとは、公共施設・公的資産の活用や官民連携事業の検討において、行政が民間事業者と 非公式に対話する手法 の総称だ。正式な公募(プロポーザル・入札)に先立って実施することで、民間側のニーズ・懸念・可能性を把握し、公募要件の精度を高めることができる。
国土交通省や内閣府は、Park-PFIやスモールコンセッションの導入にあたってサウンディングの活用を推奨しており、Park-PFI活用ガイドラインでもサウンディングの実施手順が詳細に記載されている。
なぜサウンディングが必要か
公共施設の活用公募は「設計した公募要件が市場ニーズと合致しない」という問題が頻繁に発生する。典型的な失敗パターンは以下の通りだ。
- 応募ゼロ: 事業採算性が合わない条件設定、または民間にそもそも参入意欲がない
- 条件不整合: 期間・改修費負担・貸付料等が民間の投資判断ラインを下回る
- 業態ミスマッチ: 自治体が想定していた業態と、民間が実際に可能な業態の乖離
サウンディングはこれらのリスクを「公募設計段階」で検出・解消するための手法だ。
3類型の概要
サウンディングは大きく3つの類型に分けられる。
| 類型 | 実施タイミング | 主な目的 | 成果物 |
|---|---|---|---|
| マーケットサウンディング | 公募設計前(最も早い段階) | 市場調査・参入意欲確認 | 市場調査報告書・公表資料 |
| プレサウンディング | 公募要件案作成後 | 要件の最終確認・修正 | 修正済み公募要件案 |
| トライアルサウンディング | 公募前の実証段階(Park-PFI特有) | 実証試験・実現可能性確認 | 試行結果報告書・評価 |
マーケットサウンディング
公募設計前の市場調査。実施手順・質問設計・結果公表のポイント
マーケットサウンディングは、公募要件の設計を始める 前の段階 で実施する。主な目的は「この施設・場所で、どんな事業が成立し得るか」「民間事業者はどの程度参入意欲を持っているか」を把握することだ。
実施手順
Step 1: 実施要領の設計
事前に以下を整理する。
- 対象施設の概要(所在地・規模・老朽化状況・現況)
- 検討している活用方向性(カフェ・スポーツ・福祉等の候補)
- 対話形式(個別対話 or グループ形式)
- 参加資格(業種・規模・実績要件)
- 守秘義務・情報取扱いの方針
Step 2: 告知・参加募集
自治体のウェブサイトや関係団体(商工会議所・業界団体等)を通じて広く告知する。参加意向のある事業者から申込みを受け付ける。
Step 3: 個別対話の実施
参加事業者との個別対話(1社あたり30〜60分程度)を実施する。事業者の意見・提案を記録し、競合他社への漏洩が起きないよう各対話は別室・別時間で実施する。
対話では以下の点を確認するとよい。
- 施設・立地に対する評価と課題認識
- 想定する事業モデルと採算見通し
- 公募参加の条件(期間・改修費負担・貸付料の上限等)
- 懸念点・リスク認識
Step 4: 結果のまとめと公表
対話を踏まえて市場調査結果をまとめ、概要を 公表 する。参加事業者の社名・個別意見は原則として公表しない(匿名・集約した形で公表する)。
プレサウンディング
公募要件の最終確認。プレ開示資料・個別対話・フィードバック反映
プレサウンディングは、公募要件(案)を作成した後、公募前の最終確認段階 で実施する。マーケットサウンディングで把握したニーズを踏まえて要件案を設計したものの、「この条件設定で本当に応募が来るか」を検証するための手法だ。
マーケットとの違い
| 比較軸 | マーケットサウンディング | プレサウンディング |
|---|---|---|
| 実施タイミング | 要件設計前 | 要件案作成後 |
| 対話内容 | 自由な意見・提案 | 要件案への意見・改善提案 |
| 成果物 | 市場調査報告書 | 修正済み要件案 |
| 参加者 | 広く募集 | マーケット参加者を中心に再募集も可 |
プレサウンディングのポイント
プレサウンディングでは、公募要件案を事前開示(プレ開示)して意見を求める。開示する資料には以下を含めるのが一般的だ。
- 施設の詳細情報(図面・構造・設備状況)
- 想定する事業の方向性
- 期間・賃料・費用負担の案
- 評価基準の概要
民間から寄せられた意見を踏まえて要件案を修正し、修正内容を公表することで透明性を確保する。「意見を聞いたが何も変えなかった」という対応は、行政への不信感につながるため避けるべきだ。
トライアルサウンディング
Park-PFI特有の実証試験。期間・費用・評価の仕組み
トライアルサウンディングは、主に Park-PFI特有の手法 として国土交通省が推奨するものだ。公募前に、事業者が実際に公園で試験的な事業(マルシェ・カフェ・イベント等)を一定期間実施し、実現可能性・集客性・運営上の課題を実際のデータで検証する。
トライアルサウンディングの特徴
実施期間: 数日〜数週間(シーズンごとの試行も可能)
費用負担: 試行期間中の売上は事業者が得る。会場設営費・清掃費・保険等は事業者負担が基本だが、自治体が一部支援するケースもある。
評価内容:
- 来客数・売上規模の実態
- 公園内の動線・設置場所の適切性
- 近隣住民・公園利用者の反応
- 運営上の課題(駐車・騒音・廃棄物等)
結果の活用: トライアルの結果は公募要件の設計に反映する。また、試行に参加した事業者が公募で有利にならないよう、結果は 公表(応募希望者全員が閲覧可能な形)することが原則だ。
トライアルサウンディング導入事例
都市公園でのカフェ出店やマルシェ運営を事前に試行し、「週末は来客見込みがあるが平日は集客が難しい」「雨天対応のテント設置が必要」などの課題を事前に把握して公募条件に反映させるケースが増えている。
公平性と情報管理
参加者情報の保護・競合他社への漏洩防止・公表範囲の設計
サウンディングを実施する際に、行政が最も注意すべき点が 公平性の確保 だ。サウンディング参加事業者が公募で有利になることは許されない。
具体的な管理ルール
情報の統一的な開示: サウンディングで開示した情報(施設詳細・条件案等)は、後の公募において 全応募者に同一条件で 開示する。
個別情報の保護: 参加事業者の社名・提案内容・参加の事実は原則として非公表。「A社がこういう条件なら参加するといった」という具体的な情報が外部に漏れると、他の事業者が戦略的に有利/不利になる可能性がある。
同一事業者の公募参加制限なし: サウンディングに参加したこと自体は公募参加の制限理由にならない。ただし、特定事業者から提供されたアイデアを公募要件に組み込んだ場合、そのアイデアの提供者が公募で不当に有利になる可能性がある。この場合は要件の汎化(特定業者のみが対応可能な仕様にしない)が必要だ。
→ サウンディングの設計テンプレートについては サウンディング実施テンプレート を参照。
→ Park-PFIのサウンディング実践については Park-PFIのサウンディング実施ガイド で詳しく解説している。
参考文献
都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン(令和7年5月30日改正版) (2025)
Park-PFI等の活用状況(令和7年3月31日時点) (2025)
PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版) (2024)