一般社団法人社会構想デザイン機構

Park-PFIのサウンディング — 3段階の設計と進め方【2026年版】

ISVD編集部
約12分で読めます

自治体担当者向け:Park-PFI特有の3種類のサウンディング(トライアル・プレ・マーケット)の設計と進め方、開成山公園の加点制度(+8点)の設計方法、質問項目の作り方、結果の公表手順を2026年最新ガイドライン準拠で解説。

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ざっくり言うと

  1. Park-PFIのサウンディングは3種類ある。トライアル(社会実験型)・プレ(意向把握型)・マーケット(本格型)を段階的に実施するのが成功パターン
  2. 開成山公園ではサウンディング参加者に公募時の加点(最大+8点)を設定。早期関与のインセンティブ設計が民間の参加率を高めた
  3. 結果の公表は次の参入者を呼び込む。非公表は機会損失であり、公表を前提とした質問項目設計が重要

Park-PFIにおけるサウンディングの位置づけ

公募前の意思決定材料を整える。国交省ガイドラインが2段階実施を推奨

の事業化において、(以下、サウンディング)は最も重要な準備工程の一つだ。公募条件の設計に先立って民間事業者と対話することで、「誰も応募してこない」という公募失敗の最大リスクを予防できる。

令和7年5月に改訂された国交省ガイドラインは、サウンディングを「 事業発案時 」と「 事業化検討時 」の 2段階実施 することを推奨している。2段階に分けることで、初期は幅広い意見を集め、後期は公募条件の確認に絞るという役割分担が生まれる。

令和7年3月時点で全国165公園でPark-PFIが活用済みだが、成功事例に共通するのは「段階的なサウンディングの実施」である。特に郡山市・開成山公園の事例では、国交省推奨の2段階をさらに発展させた 3段階設計 が採用された。


3種類のサウンディング

トライアル(社会実験)・プレ(導入可能性調査段階)・マーケット(公募指針策定直前)の3つ

Park-PFIの実務では、以下の3種類のサウンディングが登場する。各タイプの定義と目的の違いを正確に理解することが、設計の出発点となる。

タイプ1:トライアル・サウンディング(社会実験型)

定義: 民間事業者が公園施設を一定期間「実際に」試験利用し、収益性・立地条件を実地検証する形式のサウンディング。

目的: 机上の検討では判断できない「実際の集客力」「実際の運営コスト」「実際のリスク」を民間が身をもって検証する。

形式の特徴:

  • 期間は通常1か月〜3か月
  • 使用料は免除または低廉な設定(参加インセンティブを確保するため)
  • 参加資格は「法人のみ」が一般的(個人は不可)
  • 終了後に事業者ヒアリングを実施し、結果を次工程の設計に反映させる

開成山公園では2020年10月1日〜31日の1か月間、実施時間9:00〜21:00でトライアル・サウンディングを実施。使用料は免除され、参加した事業者には後の公募時に 5点のインセンティブ加点 が与えられた。

この形式は「社会実験型サウンディング」とも呼ばれ、Parks as Platforms(公園をプラットフォームとして活用する概念)の考え方とも親和性が高い。民間事業者にとっても、実際に試してみることで参入リスクを事前評価できるという大きなメリットがある。

タイプ2:プレサウンディング(意向把握型)

定義: 導入可能性調査の段階で実施する、民間の参入ニーズと意向を幅広く把握するためのサウンディング。

目的: 「どういう事業者が参入に関心を持つか」「何が参入の障壁になっているか」「どういう業態ならば採算が取れそうか」を把握する。

形式の特徴:

  • 提供資料は「公園概要・図面・コンセプト・現況建ぺい率・既存物件の取扱い方針」程度。詳細な公募条件は未確定の段階
  • 参加者の幅を広く取ることを優先。個別面談またはグループ形式のいずれも可
  • 結果は統合されて導入可能性調査の報告書に組み込まれる

開成山公園では2021年9月にプレサウンディングを実施。アドバイザリー業者(オリエンタルコンサルタンツ)へのメール問い合わせ形式で民間意向を収集した。

タイプ3:マーケット・サウンディング(本格型)

定義: 公募設置等指針の策定直前に実施する、公募条件案を開示した上で民間の参画意向と条件を確認するサウンディング。

目的: 「この公募条件で実際に応募してくれる事業者がいるか」を確認する。条件に問題がある場合は指針策定前に修正できる。

形式の特徴:

  • 提供資料は「実施方針・基本スキーム案・公募条件概略」。かなり具体的な段階
  • 使用料の水準・特定公園施設の整備費水準についても意見を収集する
  • 公募方式(幅広く参加を募る)または任意選定方式(特定の事業者を指定)のいずれかを選択
  • 結果は公募設置等指針に反映される

開成山公園では2022年1月にマーケット・サウンディングを実施。参加した事業者には公募時に 3点のインセンティブ加点 が与えられた。


開成山公園の3段階設計:実例と学び

郡山市が実施した3段階のサウンディングは、国交省ガイドラインが推奨する2段階をさらに精緻化した好事例として全国的に参照されている。

タイムラインと各段階の役割

段階時期目的形式加点
トライアル2020年10月実地検証・集客力確認社会実験(1か月間の試験利用)+5点
プレ2021年9月民間ニーズ・参入意向把握個別面談(メール問い合わせ形式)なし
マーケット2022年1月公募条件確認・参画意向確認個別面談(条件案開示)+3点

この設計の特徴は、各段階に明確な役割を持たせながら、前段階の成果を次段階の設計に活用している点だ。トライアル・サウンディングで得られた「実地の知見」がプレサウンディングの質問設計に活かされ、プレサウンディングで収集した「参入意向」がマーケット・サウンディングの条件案設計に反映されている。

加点制度の効果

加点制度(トライアル+5点・マーケット+3点)は、民間の早期関与を促すインセンティブとして機能した。開成山公園の最終的な応募者は2者(2共同事業体)であり、そのうち大和リースグループを代表とするコンソーシアムが選定された。

加点制度があることで、民間事業者にとって「サウンディングに参加しないと公募で不利になる」というメカニズムが生まれる。この設計は「公募に向けた早期関与の習慣化」を促す効果がある。


加点制度の設計方法

加点制度を設けたい自治体のために、設計上の主要な論点を整理する。

法的根拠

加点は公募設置等指針の「評価基準(第9号)」に明記することで法的根拠を持つ。国交省ガイドラインは「参加者(サウンディングに参加した事業者)に対して、評価基準において加点措置を講ずることも考えられる」と明示している。

配点の設定方法

加点の配点は、「インセンティブとして機能する水準」と「過度に優遇しない水準」のバランスで設定する。開成山公園の場合、合計500点満点に対してトライアル+5点・マーケット+3点(合計+8点)という設定は約1.6%の加点率だ。

一般的な目安として、以下の範囲が実務的とされる。

合計配点加点の目安
100点満点+2〜5点(2〜5%)
300点満点+5〜10点(1.7〜3.3%)
500点満点+5〜15点(1〜3%)

加点が大きすぎると、サウンディング参加者が実質的に内定している状況に近くなり、公募の公正性が問われる可能性がある。逆に小さすぎると参加インセンティブとして機能しない。

加点対象の明確化

加点の対象となるサウンディングの種類・実施時期・参加条件を指針に明記することが重要だ。「いつのサウンディングに参加した者を対象とするか」が不明確だと、後に応募者との間でトラブルになるリスクがある。


質問項目の設計

8つの質問カテゴリと、各段階で重視すべき質問の違い

サウンディングの質は質問項目の設計で決まる。段階ごとに重視すべき質問の軸が異なることを理解した上で設計する。

第1回(事業発案時)の質問項目

この段階では幅広い視点を得ることを優先する。参加者の負担を最小化し、多くの事業者の意見を集める設計が望ましい。

#質問項目把握したい内容
Q1事業への関心・参入意向「関心がある/ない」の理由を把握
Q2想定する業態・サービス民間視点での業態アイデアの収集
Q3事業化の前提条件参入に必要な条件(使用料水準、整備費負担等)
Q4公園の現況への評価立地・アクセス・集客力についての民間評価
Q5懸念・障壁参入を阻む要因の把握

第2回(事業化検討時)の質問項目

この段階では具体的な公募条件の確認を目的とする。公募条件案を開示した上で、修正すべき点を洗い出す。

#質問項目把握したい内容
Q1公募条件案に対する参画意向この条件で参加するか否か
Q2使用料の水準に対する評価許容できる水準か、下げる必要があるか
Q3特定公園施設の整備費負担に対する評価市の負担比率は妥当か
Q4許可期間に対する評価設定された期間で投資回収が可能か
Q5参加資格(実績要件)への評価満たせる要件か、障壁になっていないか
Q6評価基準の納得感提案の評価軸として適切か
Q7地元企業との連携意向コンソーシアム組成に関する意向
Q8その他の懸念・要望指針策定前に修正すべき点の洗い出し

質問項目設計の留意点

個別面談形式の優位性: グループ形式では、参加者が競合他社の存在を意識して本音を話さない傾向がある。特に事業化検討時の第2回は、個別面談形式が推奨される。

事業者側の情報保護: 参加事業者が「競合他社に情報が漏れる」と懸念する場合、参加意欲が下がる。「個別面談の内容は他の参加者には開示しない」「特定の事業者の情報は公表しない」という旨を明記した上でサウンディングを実施することが、参加率の向上につながる。


結果の公表

公表の目的・公表範囲・個人情報と競争情報の取り扱い

サウンディングの結果は、一定の範囲で公表することが推奨される。公表には以下の効果がある。

  1. 追加参入者の呼び込み: 「こういうサウンディングが行われた」という情報が広まることで、当初参加していなかった事業者がアンテナを張るようになる
  2. 公募の公正性の担保: プロセスの透明性を示すことで、公募の公正性への信頼を高める
  3. 次回のサウンディングへの誘導: 「参加すると有益な情報を得られる」という認識を醸成する

公表する内容と公表しない内容の判断

公表する内容公表しない内容
サウンディングの実施概要(日時・方式・参加者数)参加企業名・個社の意見(個社の識別につながる情報)
収集された主な意見(事業者識別情報を除く集約)事業者の未公開の事業戦略・コスト情報
公募条件の修正点と修正の理由複数事業者に共通するが競争上優位な情報
次回サウンディング・公募のスケジュール

開成山公園では、各段階のサウンディングの結果概要が郡山市の公式ページで公開されており、事業概要PDFにも反映されている。このような透明性の確保が、事業全体への信頼性向上に寄与した。


サウンディング参加者がゼロだった場合の対処

最も避けたい結果の一つが「参加者ゼロ」だ。ゼロが出た場合の対処法を示す。

ゼロを防ぐための事前策

  1. 任意選定方式の活用: 公募方式ではなく、ノウハウを持つ特定事業者を個別に招待する方式に切り替える。「誰も知らない」という状況を防げる
  2. 早期の情報提供: 公式ホームページへの掲載だけでなく、業界団体・商工会議所・地元金融機関を通じた情報発信を行う
  3. 参加のハードルを下げる: 第1回サウンディングの参加条件をできるだけ簡素に設定し、「参加しやすい雰囲気」を作る
  4. 加点制度の事前周知: サウンディング参加に対して公募時の加点が予定されていることを、サウンディング開始前に周知する

ゼロが出た後の修正方法

参加ゼロの原因を診断し、適切な修正を行う。

原因1:認知度が低い → 対策:情報発信の強化 公園やサウンディングの存在が知られていない場合、地元メディア・SNS・業界紙への情報提供を強化する。

原因2:公募条件が厳しすぎる → 対策:条件の緩和 使用料が高い・整備費の民間負担が重い・参加資格の実績要件が高すぎる場合は、条件を見直す。

原因3:公園の立地・集客力に問題 → 対策:業態の見直しまたは段階的整備 そもそも民間事業として採算が取れない立地の場合は、課題解決型(保育・福祉)の業態への転換や、公園の環境改善を先行させる段階的アプローチを検討する。

原因4:タイミングが悪い → 対策:時期の変更 業界のトレンドや景気動向が参入意欲に影響することもある。時期を変えて再度サウンディングを実施する選択肢も持っておく。


Park-PFI特有のサウンディング設計の要点

一般的なサウンディング(公共施設全般)とPark-PFI特有のサウンディングの違いを最後に整理する。

Park-PFIでは「特定公園施設の整備義務」が参入障壁になり得る: 収益施設だけでなく公園設備の整備も義務付けられるため、民間にとって初期投資が重くなる。サウンディングでこの点への懸念を早期に把握し、費用負担比率(公共90%:民間10%等)を適切に設定することが重要だ。

「20年特例」がサウンディングで議論される: 許可期間が長ければ長いほど民間の参入意欲が高まる傾向がある。サウンディングで「何年であれば参入可能か」を聞くことで、指針に設定する期間の参考にできる。

評価基準への意見収集も有効: マーケット・サウンディングの段階では「この評価基準設計で、自社の強みが正当に評価されるか」という視点での意見収集も有益だ。評価基準に偏りがあると、多様な参入者が排除される可能性がある。

サウンディング型市場調査の設計と進め方(汎用版)との組み合わせで参照することで、Park-PFI特有の設計要素をより深く理解できる。


サウンディングの設計は「やれば終わり」ではなく、次の工程(指針策定・評価基準設計)の質を決定する投資だ。段階ごとの目的を明確に持ち、加点制度・質問項目・公表方法を一貫した戦略の下に設計することが、公募成功への近道となる。

Park-PFI特有のサウンディング設計と実施支援については、ISVDに相談されたい。

参考文献

都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン(令和7年5月30日改正) (2025)

Park-PFI等の活用状況(令和7年3月31日時点) (2025)

郡山市 開成山公園Park-PFI事業 公募設置等指針 (2022)

郡山市 開成山公園Park-PFI事業 トライアル・サウンディング募集要項 (2020)

郡山市 開成山公園Park-PFI事業(公式ページ) (2022)

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読んだ後に考えてみよう

  1. 3段階のうち、今の段階でどのサウンディングから実施すべきか?その判断の根拠は何か?
  2. 加点制度を設けた場合、何点を設定すれば民間の早期関与のインセンティブとして機能するか?
  3. サウンディングの結果を公表する際、競争上の問題が生じる情報とはどんな情報か?

この記事の用語

Park-PFI(公募設置管理制度)
都市公園法に基づき、飲食店等の収益施設と公園施設の整備・管理を一体的に行う民間事業者を公募する制度。2017年の法改正で創設。収益施設の設置許可期間は最長20年。
サウンディング型市場調査
公有資産の活用にあたり、公募前に民間事業者の意見・アイデアを聞く対話型の市場調査。事業の実現可能性や条件設定の妥当性を事前に検証する目的で実施される。
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