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一般社団法人 社会構想デザイン機構
論考・インサイト

刑務所に入る人の13.8%が65歳以上。ただし人口10万人あたりで見ると70歳以上は4.7で、20〜64歳の4分の1である

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ヨコタナオヤ
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令和7年版犯罪白書によると、令和6年の高齢入所受刑者は2,049人で、入所受刑者に占める比率は13.8%だった。平成17年の4.8%から9.0ポイント上がっている。ただし白書自身が、上昇の理由を他の年齢層の減少に求めている。人口10万人あたりで見ると70歳以上は4.7で、20〜64歳の18.7の4分の1である。率と実数のどちらを見るかで話が変わる。

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ざっくり言うと

  1. 令和6年の高齢入所受刑者は2,049人、入所受刑者に占める比率は13.8%である
  2. 白書は比率の上昇の理由を、他の年齢層の多くが減少傾向にあることに求めている
  3. 人口10万人あたりでは70歳以上が4.7、20〜64歳が18.7で、4分の1の水準である
入所受刑者に占める65歳以上の比率
平成17年全体 4.8% 女性 6.2%
令和6年全体 13.8% 女性 21.6%
人口10万人あたりの入所受刑者(令和6年)
20〜64歳18.7 (女性 3.6
65〜69歳9.3 (女性 2.3
70歳以上4.7 (女性 1.5

白書は高齢者率の上昇について「他の年齢層の多くが減少傾向にあることから上昇傾向にあり」と書いている。令和6年の高齢入所受刑者は 2,049人、うち70歳以上が 1,370人 で平成17年の約2.3倍である。

高齢者率は20年で 4.8% から 13.8% へ。ただし人口比で見ると、70歳以上の入所率は 20〜64歳 の4分の1である

何が起きているのか

高齢者率13.8%。人口比で見ると70歳以上は20〜64歳の4分の1にとどまる

令和7年版犯罪白書に、高齢の受刑者の数字が載っている。

令和6年の高齢入所受刑者は2,049人で、前年比2.0%増70歳以上は1,370人で、平成17年の597人の約2.3倍である。

入所受刑者に占める65歳以上の比率、白書のいう高齢者率は令和6年で13.8%。前年より0.4ポイント低下したが、平成17年と比べると9.0ポイント上昇している。

この上昇について、白書は理由を書いている。 「他の年齢層の多くが減少傾向にあることから上昇傾向にあり」。 分子ではなく分母の話である。

分母を人口に取り替えると、順序が入れ替わる。人口10万人あたりの入所受刑者は、20〜64歳が18.7、65〜69歳が9.3、70歳以上が4.7である。70歳以上は、20〜64歳の4分の1の水準にとどまる。

高齢者率が3倍近くになった20年間に、70歳以上の入所人員も2.3倍になった。ただし同じ期間に70歳以上の人口も増えている。人口で割った値では、いまも他の年齢層より低い。

背景と文脈

高齢者は窃盗の比率が高く、女性でその傾向が強い。認知症の検査も行われている

女性のほうが比率が高い

女性を見ると、比率がさらに高い。女性の高齢入所受刑者は337人で前年比0.3%減、女性の高齢者率は21.6%。全体の13.8%を大きく上回り、平成17年と比べて15.4ポイント上昇している。

70歳以上の女性の入所受刑者は253人で前年比0.4%増、平成17年の55人の4.6倍になった。男女計の70歳以上が2.3倍だったのに対し、女性は4.6倍である。

ここでも人口比を見ておく必要がある。女性の人口10万人あたりの入所受刑者は、20〜64歳が3.6、65〜69歳が2.3、70歳以上が1.5女性の高齢者率が21.6%と高いのは、女性の受刑者そのものが少ないためである。 分母が小さいので、同じ人数の変化が率を大きく動かす。

罪名の分布は年齢層でまるで違う

白書は高齢者は他の年齢層と比べて窃盗の構成比が高く、65歳以上の女性は65歳以上の男性と比べて窃盗の構成比が顕著に高いと書いている。

他の年齢層の形も出ている。20〜29歳は詐欺の構成比が高く約2割、40〜49歳と50〜59歳は覚醒剤取締法違反の構成比が高く約3割である。

年齢層ごとに罪名の分布が違う。 20代は詐欺、40代50代は薬物、高齢者は窃盗。同じ「入所受刑者」という枠の中で、起きていることが違う。

人員のピークは平成28年で、その後は横ばい

高齢入所受刑者の人員は一本調子に増えてきたわけではない。平成28年に2,498人で平成元年以降の最多となった後、29年以降は2,000人台から2,200人台で推移し、令和6年は2,049人である。

ピークから10年近く、2,000人台前半で横ばいが続いている。 増えているのは70歳以上の内訳で、平成29年以降一貫して70歳以上が65〜69歳を上回っている。人数は動かず、その中で年齢が上がっている。

刑事施設の中で認知症の検査が行われている

刑事施設では、高齢の受刑者に対して認知症の検査が行われている。刑執行開始時の年齢が65歳以上の者等に対して認知症スクリーニング検査を実施し、認知症が疑われると判定された者には医師による診察を実施する取組で、令和6年は2,086人に検査、医師の診察を受けたのが284人、認知症と診断されたのが132人である。

検査を受けた人の6.3%が診断に至った。検査から診察に回ったのが13.6%で、診察を受けた人の46.5%が診断されている。

拘禁刑の導入で高齢福祉課程が新設された

処遇の側も変わっている。刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による拘禁刑の導入に伴い、高齢福祉課程が新設され、対象者には高齢等の自己の特性を理解させるとともに、社会生活に必要となる心身の健康保持を行わせることを目指した矯正処遇を実施している

懲役と禁錮を一本化した拘禁刑は、作業を義務づける形から、改善更生に必要な処遇を行う形へ変えたものである。その中に高齢者向けの課程が置かれた。 刑務所の中では、高齢化に合わせた仕組みが作られている。

構造を読む

率が上がったのは他が減ったから。出口の再入率だけが下がらずに残っている

率が上がる理由は2つある

分子が増えるか、分母が減るか。白書は後者だと明記している。 高齢者率13.8%を「高齢者の犯罪が増えている」と読むと、書かれていることの逆になる。

人員はピークの平成28年から2,000人台で横ばいで、人口比では20〜64歳の4分の1。それでも率が上がるのは、他の年齢層の入所受刑者が減り続けているためである。

同じ形の読み違いは、量を主題に据えるときに繰り返し起きる。減った側の理由を確かめずに、増えた側だけを取り上げる。生活保護「捕捉率」20%(このサイトの記事)で扱った捕捉率も同じで、率を動かしているのが分子か分母かを分けないと、対策の向き先が変わる。

出口の数字は下げ止まっている

ただし、動いていないものがある。出口である。

出所受刑者の再入率を見ると、総数の2年以内再入率は13.8%で、前年比0.8ポイント上昇平成11年に23.4%を記録した後は低下傾向で、令和元年に15.7%と初めて16%を下回ったという流れの中で、上に転じた年である。

年齢層で動く向きが逆になっている

年齢層別では、30歳未満が一貫して最も低く、50〜64歳と65歳以上は30歳未満および30〜49歳と比べて一貫して高い。令和5年は、30歳未満が0.9ポイント低下したのに対し、30〜49歳が0.6ポイント上昇、50〜64歳と65歳以上はそれぞれ1.3ポイント上昇した。

若い層は下がり、高齢の層は上がった。 全体の0.8ポイント上昇は、この向きの違いを均した数字である。

罪名別では窃盗が最も高い

罪名別では窃盗が19.7%で最近20年間一貫して最も高く、前年比0.3ポイント上昇。平成16年と比べると9.4ポイント低下している。他は傷害・暴行15.6%(前年比4.1ポイント上昇)、覚醒剤取締法違反12.8%(同2.2ポイント上昇)、詐欺8.4%(同1.4ポイント上昇)である。

高齢者の罪名で構成比が高いのが窃盗であることと、窃盗の再入率が最も高いことが重なる。 入ってくる理由と、戻ってくる理由が同じところにある。

満期釈放と仮釈放で倍以上ちがう

出所事由でも差が出る。満期釈放者等が20.8%、仮釈放者が9.6%。倍以上である。

仮釈放には帰る先の調整が伴い、満期釈放は調整のないまま出る。 仮釈放は帰住先が定まらなければ許可されにくいので、この差の一部は選ばれ方の違いでもある。ただし、調整がないまま出る人ほど戻ってくるという事実は動かない。

5年以内で見ても同じ形

期間を延ばしても向きは変わらない。令和2年の出所受刑者の5年以内再入率は、平成13年の出所受刑者と比べて総数で10.4ポイント、満期釈放者等で13.2ポイント、仮釈放者で7.4ポイント低下している。

長期で見れば下がってきた。 令和5年の上昇は、その流れの中の1年である。ただし満期釈放と仮釈放の差は、20年かけて縮まっていない。

入り口と出口を分けて置く

入り口の数は人口比で見れば高くない。出口で戻ってくる率だけが、高いまま残っている。 この2つを1つの「高齢者の犯罪」という主題にまとめると、対策は取り締まりの側に寄る。分けて置けば、必要なのは出たあとの住まいと生活の設計だと分かる。

刑務所の中には高齢福祉課程が置かれた。認知症の検査も行われている。 中の仕組みは高齢化に合わせて変わってきた。 出たあとの側が同じだけ変わったかは、この白書の統計からは分からない。

認知症と診断された132人が出るとき

制度が届かない層の共通構造(このサイトの記事)で見たとおり、用意されている制度と使われている制度は別である。成年後見の申立て動機は93.4%が預貯金の管理・解約(このサイトの記事)で扱ったように、判断能力の支援も入口が限られている。

認知症と診断された132人が刑を終えて出るとき、その先に何が用意されているかは、白書の統計の外側にある。 中で診断がついた人が、外で支援につながったかどうかを追った数字が、公表されている範囲にはない。

この記事で使った統計の出典

  1. 1法務省 令和7年版犯罪白書 4-8-2-2図(令和6年) 出典を開く
  2. 2法務省 令和7年版犯罪白書(令和6年) 出典を開く
  3. 3法務省 令和7年版犯罪白書 4-8-2-2図(令和6年、4-8-2-3図) 出典を開く
  4. 4法務省 令和7年版犯罪白書 5-3-9図(令和5年出所者) 出典を開く
  5. 5法務省 令和7年版犯罪白書 5-3-10図(令和5年出所者) 出典を開く

参考書籍

参考文献

令和7年版犯罪白書 第4編第8章第2節 高齢者による犯罪 矯正法務省 法務総合研究所 (2025). 法務省

令和7年版犯罪白書 第5編第3章 出所受刑者の再入率の推移法務省 法務総合研究所 (2025). 法務省

令和7年版犯罪白書法務省 (2025). 法務省

読んだ後に考えてみよう

  1. 高齢者率の上昇を「高齢者の犯罪が増えた」と読むことは、どこで間違うか
  2. 女性の高齢者率21.6%が全体より高いことは、何を示しているか
  3. 出口の再入率が下がらない層に対して、刑務所の外に何が要るか

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