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一般社団法人 社会構想デザイン機構
論考・インサイト

成年後見の申立て動機は93.4%が預貯金の管理・解約 — 判断能力を支える制度の入口が、銀行の窓口に置かれている

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ヨコタナオヤ
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最高裁判所がまとめた令和7年の成年後見関係事件で、主な申立ての動機の1位は預貯金等の管理・解約で93.4%だった。ほぼ全件がここを通る。利用者は259,901人だが、本人が元気なうちに自分で選ぶ任意後見は2,833人で全体の1.1%にとどまる。申立人の1位は本人24.8%、2位は市区町村長23.7%。家族が申し立てる前提でつくられた制度が、いま誰によってどこから動いているのかを読む。

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ざっくり言うと

  1. 令和7年の主な申立ての動機は預貯金等の管理・解約が93.4%で1位、身上保護が74.2%で2位
  2. 成年後見制度の利用者は259,901人で前年比2.3%増、うち任意後見は2,833人で全体の1.1%
  3. 申立人は本人が24.8%で最も多く、次いで市区町村長が23.7%、本人の子が18.5%
預貯金等の管理・解約93.4%39,871
身上保護74.2%31,655
介護保険契約45.7%19,502
不動産の処分36.3%15,502
相続手続25.6%10,909
保険金受取17.8%7,578
訴訟手続等6.1%2,613

1件につき複数の動機が挙がるため、合計は終局事件総数の42,674件と一致しない。割合は終局事件総数を母体としたもの。令和7年1月から12月までの集計。

申立ての動機はほぼ全件が預貯金の管理・解約を通る。判断能力を支える制度の入口が、金融機関の手続きに置かれている

何が起きているのか

申立ての動機はほぼ全件が預貯金の管理・解約を通っている

最高裁判所事務総局家庭局が毎年まとめている集計に、成年後見の申立てが何をきっかけに起きているかを示した表がある。手続そのものの流れは裁判所の後見ポータルサイトにまとまっている。

令和7年の1位は預貯金等の管理・解約で39,871件、93.4%である。2位が身上保護で74.2%、3位が介護保険契約で45.7%と続く。複数回答なので合計は100%を超えるが、9割超という数字は、ほぼ全件がここを通っているという意味になる。

は、判断能力が十分でない人の財産管理や契約を法的に支える仕組みである。ところが実際に人を家庭裁判所へ向かわせているのは、本人の判断能力が落ちたという事実そのものではない。銀行で預金が下ろせなくなった、口座が解約できなくなった、という手続き上の詰まりである。

規模はこうなっている。令和7年12月末時点の利用者は259,901人で、前年の253,941人から2.3%の増。申立件数は43,159件で前年比3.2%増である。

背景と文脈

家族が申し立てる前提だったが、いま動かしているのは本人と自治体である

申し立てているのは本人と市区町村長である

誰が申し立てているかを見ると、制度の想定と現実の距離が出てくる。

1位は本人で10,620件、24.8%。2位が市区町村長で10,139件、23.7%。3位が本人の子で7,929件、18.5%。配偶者は1,711件、4.0%にとどまる。

市区町村長による申立ては、身寄りがないか、親族がいても関わりが薄い場合に自治体が動くものである。それが4件に1件近くを占める。しかも前年の9,979件から1.6%増えている

市区町村長の割合は、地域で4倍ちがう

同じ制度でも、誰が申し立てるかは土地によってまるで違う。

家庭裁判所の管内別に見ると、市区町村長申立ての割合は青森が45.0%、徳島が43.4%、釧路が38.8%、高知が38.5%、山形が38.1%。一方で京都が11.4%、神戸が11.9%、旭川が14.2%、福岡が15.9%、大阪が16.0%である。

上と下で4倍近い開きがある。 判断能力が落ちる人の割合が地域で4倍違うとは考えにくい。 違っているのは、家族が動くか行政が動くかのほうである。

選ばれるのは、8割以上が親族以外である

選ばれる側も、家族ではなくなっている。成年後見人等に選任されたのは親族以外が35,718件で83.6%、親族が7,014件で16.4%

親族以外の内訳はこうである。司法書士11,966件(33.5%)、弁護士8,903件(24.9%)、社会福祉士7,280件(20.4%)、その他法人2,933件(8.2%)、行政書士2,235件(6.3%)、社会福祉協議会1,615件(4.5%)

親族が選ばれた7,014件の中身も偏っている。子が3,647件で52.0%、その他親族が1,329件で18.9%、兄弟姉妹が1,053件で15.0%、配偶者が523件で7.5%、親が462件で6.6%

配偶者が後見人になるのは、全体の1.2%である。 高齢の夫婦では、片方が支える側に回れないことが多い。

申立書に親族を候補者として書いている事件は19.7%しかない。 8割は、最初から家族が担うつもりで申し立てていない。

開始の原因は、6割が認知症である

なぜ制度が必要になったかも公表されている。開始原因は認知症が61.3%で最も多く、次いで知的障害9.6%、統合失調症9.3%、高次脳機能障害4.4%、遷延性意識障害0.5%、その他14.9%である。

その他には発達障害、うつ病、双極性障害、アルコール依存症・てんかんによる障害等が含まれる

認知症以外が38.7%を占める。 高齢期の話だけではない。

本人の年齢は、男女でまるで違う

年齢の分布にそれが出る。本人は男性が44.5%、女性が55.5%

男性は80歳以上が34.5%、70歳代が28.1%で、65歳以上は71.3%。対して女性は80歳以上が63.1%、70歳代が18.8%で、65歳以上は85.8%である。

男性は60歳未満が21.7%を占める。 女性のほうが高齢に集まり、男性には現役世代の層がある。 知的障害や統合失調症を原因とする利用が、この層に重なっていると読める。

構造を読む

入口が手続きの必要で決まるため、始まる時期が本人の状態と一致しない

動機の全部を並べると、財産の話が上に来る

申立ての動機は複数回答で集計されている。全部並べるとこうなる。

預貯金等の管理・解約39,871件(93.4%)、身上保護31,655件(74.2%)、介護保険契約19,502件(45.7%)、不動産の処分15,502件(36.3%)、相続手続10,909件(25.6%)、保険金受取7,578件(17.8%)、その他3,147件(7.4%)、訴訟手続等2,613件(6.1%)

上位に並ぶのは、預貯金、不動産、相続、保険金。 お金が動かせないという場面である。 身上保護は74.2%と高いが、単独で申立ての理由になっているわけではなく、預貯金の話と一緒に付いてくる形が多い。

軽い類型ほど伸びているが、任意後見は動かない

4つの類型の伸び方に、制度の使われ方が出ている。

最も重い成年後見の利用者は180,828人で前年比0.8%増、保佐は58,162人で5.9%増、補助は18,078人で7.2%増。軽い類型ほど伸びている。判断能力の低下が軽い段階から使う方向へ動いているように見える。

ところが、自分で決めておく仕組みは動いていない。本人が元気なうちに後見人を選んでおく任意後見の利用者は2,833人で、全体259,901人の1.1%にすぎない。

申立ての側でも同じである。任意後見監督人選任の申立ては881件で前年比0.8%増、後見開始は29,233件で1.6%増、保佐開始は9,743件で6.4%増、補助開始は3,302件で9.1%増任意後見だけ伸び方が鈍い。

入口を決めているのは、本人の状態ではない

ここに入口の設計が効いている。申立ての9割超が預貯金の管理・解約から入るということは、 制度が始まる時期を決めているのが本人の状態ではなく、手続きの必要だ ということである。銀行の窓口で止まって初めて動く。止まるまでは、判断能力が落ちていても制度は起動しない。

順番が逆になると、困ることが起きる。ひとつは、詰まってから申し立てるので急ぐことになる。それでも審理には時間がかかり、1月以内に終わるのは37.9%、2月以内が71.1%、4月以内が93.8%である。

ふたつめは、本人が自分で後見人を選ぶ機会が失われる。任意後見が1.1%にとどまるのは、選ぶ余地のある時期に制度が視野に入っていないからだと読める。

判断能力の鑑定は、96.6%で行われていない

もうひとつ、入口の作りが分かる数字がある。

終局した事件のうち鑑定を実施したものは全体の3.4%(前年は3.8%)である。96.6%は医師の診断書だけで判断されている。

鑑定をしたものは短く安く済んでいる。鑑定期間は1か月以内が52.6%、2か月以内までで89.4%。費用は5万円以下が43.7%、10万円以下が85.8%である。

時間も費用も大きくないのに、実施率は3.4%である。 判断能力の有無を医学的に確かめる工程が、実務ではほぼ省かれている。

監督する人が付くのは3.4%である

後見人が付いたあとの監視も、薄い。

認容で終局した39,860件のうち、成年後見監督人等が選任されたのは1,375件で3.4%である。内訳は弁護士726件(52.8%)、司法書士474件(34.5%)、社会福祉協議会121件(8.8%)、社会福祉士8件(0.6%)

96.6%の事件では、後見人を監督する人が付かない。 家庭裁判所が報告書で確認する形になる。専門職が担うから安全だという前提が、この数字の上に乗っている。

受け皿を広げる仕組みは、規模になっていない

地域の住民が研修を受けて担う市民後見人は390件で、親族以外35,718件の1.1%である。前年の330件からは増えているが、絶対数が小さい。

市民後見人とは、弁護士・司法書士・社会福祉士等以外の自然人で、本人と親族関係および交友関係がなく、社会貢献のために地方自治体等が行う養成講座で知識や技術を身に付けた者を指す。育てる仕組みは各地にあるが、選任まで届いているのが年390件である。

専門職に頼る構造は、報酬という形で本人の財産に跳ね返る。 報酬は本人の財産から支払われ、原則として本人が亡くなるまで続く。

窓口に来る前の人は、数に現れない

制度を必要とする人の数と、制度を使っている人の数は違う。用意されていることと届いていることを分けて数える必要があるのは制度からの排除と未受給(このサイトの記事)で扱った。

ここでは、届かせる経路が金融機関の窓口に一本化されている。 窓口に来る前の人は、数にすら現れない。

同じ「身寄りがない」ことから発する問題は、身寄りのない高齢者を施設が受け入れるとき(このサイトの記事)にも現れる。判断能力の支援と、日常の保証人の役割は制度上は別のものだが、当事者にとっては同じ場面で同時に必要になる。

高齢受刑者と再犯(このサイトの記事)で扱った、刑事施設で認知症と診断された132人も同じ位置にいる。診断はついても、外の制度につながったかを追った数字は公表されていない。

何を数えれば、次の判断ができるか

いま公表されているのは、申立ての件数と動機と、選ばれた人の属性である。判断のために足りないものが2つある。

1つは、 申立てに至らなかった件数 である。銀行の窓口で断られた人が何人いて、そのうち何人が申立てまで進んだか。窓口が入口である以上、ここが分からないと制度の届き方が測れない。

もう1つは、 市区町村長申立ての割合が地域で4倍違う理由 である。家族の構成なのか、自治体の体制なのか、金融機関の運用なのか。 同じ制度の使われ方が土地で4倍違うことは、どこかに差を作る要因があることを意味する。 その要因が特定されない限り、低い地域が良いのか悪いのかも決まらない。

この記事で使った統計の出典

  1. 1最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 ―令和7年1月〜12月―(令和7年) 出典を開く

参考書籍

参考文献

成年後見関係事件の概況 ―令和7年1月〜12月―最高裁判所事務総局家庭局 (2026). 最高裁判所

成年後見関係事件の概況 ―令和6年1月〜12月―最高裁判所事務総局家庭局 (2025). 最高裁判所

成年後見制度利用促進厚生労働省 (2026). 厚生労働省

読んだ後に考えてみよう

  1. 手続きが止まったことを入口にする設計は、支援の始まる時期をどこに置くか
  2. 親族以外が8割を超える状態は、制度にとって想定どおりか
  3. 自分で後見人を選ぶ仕組みが1.1%にとどまるのは、誰の判断の結果か

この記事の用語

成年後見制度
認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が十分でない人について、家庭裁判所が選任した後見人等が財産管理や契約を代わりに行い、または同意を与える仕組み。判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3類型があり、本人が元気なうちに自分で後見人を決めておく任意後見も別に用意されている。一度開始すると原則として本人が亡くなるまで続き、専門職が担う場合は本人の財産から報酬が支払われる。

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