ざっくり言うと
- 非営利型一般社団法人の設立は「構想→定款作成→公証人認証→登記→届出」の5ステップで完了する
- 設立には社員2名以上・理事1名以上が必要であり、出資金は不要である
- 定款認証の公証人手数料は一律5万円、登記の登録免許税は6万円が必要となる
- 登記完了後は税務署・都道府県税事務所・年金事務所等への届出が必要である
- 自力設立なら最短2週間・費用約10万円、専門家依頼なら3〜4週間・費用15〜25万円が目安である
はじめに
非営利型一般社団法人の設立手続きの全体像と本ガイドの位置づけ
非営利型一般社団法人は、行政による認証を経ずに登記のみで設立できる法人形態である。NPO法人が設立までに3〜6か月を要するのに対し、一般社団法人は最短2週間で設立が完了する。社員2名以上・理事1名以上で設立可能であり、出資金も不要だ。
しかし「非営利型」として税制優遇を受けるためには、定款の記載内容に細心の注意を払う必要がある。設立後に定款を変更して非営利型の要件を満たそうとすると、手続きと費用の二重負担が発生する。設立時点で正しく設計することが極めて重要である。
本ガイドでは、構想段階から登記完了後の届出まで、非営利型一般社団法人の設立に必要な全ステップを実務レベルで解説する。なお、非営利型一般社団法人とNPO法人の違いについては、シリーズ第1回「非営利型一般社団法人とは何か——NPO法人との違いと選び方」を参照されたい。
設立の全体フロー
構想から届出完了までの5ステップと所要期間の概要
非営利型一般社団法人の設立は、以下の5ステップで構成される。
| ステップ | 内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 構想・基本事項の決定 | 1〜2週間 |
| 2 | 定款の作成 | 3〜7日 |
| 3 | 公証人による定款認証 | 1〜3日 |
| 4 | 法務局での設立登記 | 1〜2週間(補正がなければ7〜10日) |
| 5 | 登記完了後の各種届出 | 登記完了後2週間以内 |
全体の所要期間は、準備期間を含めて最短2週間、標準的には3〜4週間である。ただし、定款の内容検討に時間をかける場合や、公証人との事前相談に日数を要する場合は1か月以上かかることもある。
法務省は一般社団法人の設立手続きに関する情報を公式サイトで公開しており、最新の様式や記載例を確認できる。
必要な人員構成
社員・理事・監事・代表理事の役割と最低人数
社員(最低2名)
一般社団法人の「社員」は、株式会社における株主に相当する存在であり、社員総会で議決権を行使する。従業員を意味するものではない点に注意が必要である。
- 最低人数: 2名以上
- 資格要件: 自然人・法人を問わない(法人も社員になれる)
- 出資義務: なし(出資金0円で設立可能)
社員が1名になった場合、直ちに解散するわけではないが、速やかに社員を補充する必要がある。
理事(最低1名)
理事は法人の業務執行を担う機関である。
- 最低人数: 1名以上
- 任期: 原則2年(定款で短縮可能)
- 社員との兼任: 可能(社員2名+理事1名の場合、理事は社員を兼ねることが多い)
非営利型の注意点: 非営利型一般社団法人の要件として、各理事について、その理事と親族等の合計が理事総数の3分の1以下でなければならない(法人税法施行令第3条第2項第4号)。理事が3名以上の場合にこの制約が実質的に効いてくるため、理事の人選には注意が必要だ。
監事(任意)
監事は理事の職務執行を監査する機関であり、設置は任意である。ただし、理事会設置法人の場合は監事の設置が義務となる。
代表理事
理事が1名の場合、その理事が自動的に代表理事となる。理事が複数名の場合は、定款または社員総会の決議で代表理事を選定する。
最小構成の例
| 役職 | 人数 | 備考 |
|---|---|---|
| 社員 | 2名 | 設立時の最低人数 |
| 理事(代表理事) | 1名 | 社員との兼任可 |
| 合計 | 2名(兼任の場合) | 最小2名で設立可能 |
定款の作成
絶対的記載事項・相対的記載事項・非営利型の必須条項
定款は法人の根本規則を定めた文書であり、一般社団法人の設立において最も重要な書類である。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法)第10条から第14条に定款の記載事項が規定されている。
絶対的記載事項(必ず記載が必要)
以下の事項は定款に必ず記載しなければならない。いずれかが欠けていると定款自体が無効となる。
- 目的
- 名称(「一般社団法人」の文字を含む必要がある)
- 主たる事務所の所在地
- 設立時社員の氏名又は名称及び住所
- 社員の資格の得喪に関する規定
- 公告方法
- 事業年度
相対的記載事項(定款に定めないと効力を生じない)
以下の事項は、定款に記載して初めて効力を持つ。
- 理事会の設置
- 監事の設置
- 基金制度の採用
- 社員の経費負担義務
- 理事・監事の報酬に関する事項
非営利型の必須条項(最重要)
非営利型一般社団法人として税制優遇を受けるためには、法人税法施行令第3条の要件を定款に明記する必要がある。以下の条項を必ず盛り込むこと。
1. 剰余金の分配禁止条項
定款に「剰余金の分配を行わない」旨を明記する必要がある。
2. 残余財産の帰属条項
解散時の残余財産を以下のいずれかに帰属させる旨を定款に定める必要がある。
- 国又は地方公共団体
- 公益社団法人又は公益財団法人
- 学校法人
- 社会福祉法人
- 更生保護法人
- その他これらに類する公益目的事業を行う法人(一般社団法人・一般財団法人を含む)
3. 親族等制限条項
各理事について、理事とその配偶者・3親等内の親族等の合計が、理事総数の3分の1を超えないことを担保する条項を設ける。
実務上のポイント: 定款のひな形は法務省のウェブサイトに掲載されているが、非営利型の要件に対応した条項は自分で追加する必要がある。既存の非営利型一般社団法人の定款を参考にするか、専門家に確認を依頼することを強く推奨する。
公証人による定款認証
認証手順・必要書類・費用の詳細
一般社団法人の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じない(一般法人法第13条)。株式会社の定款認証と同じ手続きである。
認証の手順
- 公証人との事前相談: 定款案を事前にメール等で送付し、内容の確認を受ける。多くの公証人は事前確認に対応しており、修正が必要な場合はこの段階で指摘を受けることができる
- 認証の予約: 公証役場に認証日時を予約する
- 公証役場での認証手続き: 設立時社員全員(又は代理人)が公証役場に出向き、公証人の面前で定款に署名・押印する
- 認証済み定款の受領: 認証済みの定款謄本を受け取る
必要書類
| 書類 | 部数 | 備考 |
|---|---|---|
| 定款 | 3通 | 公証人保存用・法人保存用・登記申請用 |
| 設立時社員の印鑑証明書 | 各1通 | 発行後3か月以内 |
| 設立時社員の身分証明書 | — | 運転免許証等(本人確認用) |
| 代理人の委任状 | — | 代理人による場合のみ |
| 実質的支配者の申告書 | 1通 | 2018年11月以降必須 |
費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 公証人手数料 | 5万円(一般社団法人は一律。公証人手数料令第35条) |
| 定款謄本交付手数料 | 約2,000円(1ページ250円×ページ数) |
| 収入印紙 | 不要(紙・電子ともに非課税) |
株式会社との違い: 株式会社の紙の定款には4万円の収入印紙が必要だが、一般社団法人の定款は印紙税法上の課税文書に該当しないため、紙の定款であっても収入印紙は不要である。
法務局での設立登記
登記申請の手順・必要書類・登録免許税
定款認証が完了したら、主たる事務所の所在地を管轄する法務局に設立登記を申請する。登記申請日が法人の設立日となるため、設立日にこだわりがある場合は申請日を計画的に選ぶ必要がある。
登記申請に必要な書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 設立登記申請書 | 法務局の様式に従う |
| 定款(認証済み謄本) | 公証役場で取得したもの |
| 設立時理事の就任承諾書 | 理事全員分 |
| 設立時代表理事の就任承諾書 | 代表理事を選定した場合 |
| 設立時理事の印鑑証明書 | 代表理事のもの(発行後3か月以内) |
| 設立時社員の決議書 | 理事・代表理事の選任決議 |
| 印鑑届書 | 法人の代表印を届出 |
| 登記すべき事項を記録したCD-R等 | オンライン申請の場合は不要 |
登録免許税
一般社団法人の設立登記に必要な登録免許税は 6万円 である。収入印紙で納付する。
登記完了までの期間
申請から完了まで通常 7〜10営業日 を要する。書類に不備(補正事由)がある場合は、法務局から補正の連絡があり、補正完了後に改めて審査が行われるため、さらに日数がかかる。
オンライン申請
法務省の登記・供託オンライン申請システムを利用すれば、法務局に出向かずに申請することも可能である。ただし、電子証明書(マイナンバーカード等)が必要となる。
登記完了後の届出
税務署・都道府県・年金事務所等への届出一覧
設立登記が完了したら、以下の届出を行う必要がある。届出先ごとに期限が異なるため、漏れなく対応すること。
必須の届出
| 届出先 | 届出内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立日から2か月以内 |
| 税務署 | 青色申告承認申請書 | 設立日から3か月以内(推奨) |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 給与支払開始から1か月以内 |
| 都道府県税事務所 | 法人設立届出書 | 設立日から15日以内(自治体による) |
| 市区町村 | 法人設立届出書 | 設立日から15日以内(自治体による) |
国税庁のウェブサイトから法人設立届出書の様式をダウンロードできる。
従業員を雇用する場合の届出
| 届出先 | 届出内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 事実発生から5日以内 |
| 労働基準監督署 | 労働保険関係成立届 | 保険関係成立日から10日以内 |
| 公共職業安定所(ハローワーク) | 雇用保険適用事業所設置届 | 設置日から10日以内 |
法人代表者1名のみの場合: 従業員を雇用しない場合でも、法人代表者が役員報酬を受ける場合は健康保険・厚生年金保険の適用対象となる可能性がある。日本年金機構に確認することを推奨する。
銀行口座の開設
登記完了後、法人名義の銀行口座を開設する。必要書類は金融機関によって異なるが、一般的に以下が求められる。
- 登記事項証明書(発行後6か月以内)
- 定款の写し
- 代表理事の身分証明書
- 法人の印鑑証明書
- 法人の実印
近年は法人口座開設の審査が厳格化しており、事業内容の説明資料やウェブサイトの提示を求められることがある。事前に複数の金融機関に必要書類を確認しておくことを推奨する。
所要期間と費用の目安
自力設立と専門家依頼の比較
自力で設立する場合
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 公証人手数料 | 5万円 |
| 定款謄本交付手数料 | 約2,000円 |
| 登録免許税 | 6万円 |
| 登記事項証明書(届出用) | 約1,500円(3通) |
| 印鑑証明書 | 約900円(3通) |
| 合計 | 約10万円 |
所要期間: 準備期間を含め 2〜4週間
専門家に依頼する場合
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 法定費用(上記合計) | 約10万円 |
| 専門家報酬(行政書士・司法書士) | 5万〜15万円 |
| 合計 | 約15〜25万円 |
所要期間: 3〜4週間(専門家との打ち合わせ含む)
自力 vs 専門家の比較
| 項目 | 自力設立 | 専門家依頼 |
|---|---|---|
| 費用 | 約10万円 | 約15〜25万円 |
| 所要期間 | 2〜4週間 | 3〜4週間 |
| 定款の品質 | 自己責任(ひな形の修正) | 専門家による確認済み |
| 非営利型の要件確認 | 自力で法令確認が必要 | 専門家がチェック |
| 登記の補正リスク | やや高い(初回は特に) | 低い |
| 電子定款の対応 | 環境構築が必要 | 標準対応(印紙代4万円節約) |
判断基準: 法律文書の作成経験がない場合、特に非営利型の要件を確実に充足させたい場合は、専門家(行政書士または司法書士)への依頼を推奨する。定款の不備により非営利型として認められなかった場合の手戻りコスト(定款変更手続き+再度の公証人認証)を考えると、初回で正確に設立することの経済的合理性は高い。
まとめ
設立の最初のステップと関連記事への案内
非営利型一般社団法人の設立は、「構想→定款作成→公証人認証→登記→届出」の5ステップで完了する。NPO法人と比較して、行政による認証が不要な分、手続きは大幅に簡略化されている。最低2名で設立でき、出資金も不要である。
ただし、設立手続きの簡便さと引き換えに、非営利型の税制優遇を受けるための定款設計には高い注意力が求められる。剰余金の分配禁止条項、残余財産の帰属条項、親族等制限条項——これらを設立時の定款に正しく盛り込むことが、後の運営を左右する。
最初のステップは、社員2名と理事1名の候補者を確定し、法人の目的と名称を決定することである。そこから定款のドラフト作成に取りかかり、必要に応じて専門家の助力を得ながら、確実に設立手続きを進めていただきたい。
設立後の非営利型法人としての運営、ガバナンス設計、Google for Nonprofitsの活用については、本シリーズの他の記事も参照されたい。
参考文献
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号) — 法務省 (2006). e-Gov法令検索
法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第3条——非営利型法人の要件 — 財務省 (1965). e-Gov法令検索
一般社団法人及び一般財団法人の設立手続き — 法務省 (2025). 法務省 民事局
商業・法人登記の手続き案内 — 法務局 (2025). 法務局ウェブサイト
法人設立届出書の手続き案内 — 国税庁 (2025). 国税庁ウェブサイト
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