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一般社団法人社会構想デザイン機構
実践ガイド — 設立・法人化

設立費用の全内訳——法定費用・専門家報酬・実費を徹底解説

ISVD編集部
約11分で読めます

非営利型一般社団法人の設立にかかる費用を法定費用・専門家報酬・実費の3層に分解し、自力設立と専門家委託の総額を比較する。NPO法人との費用差やランニングコストまで網羅した実務ガイド。

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ざっくり言うと

  1. 一般社団法人の法定費用は登録免許税6万円+定款認証約5.2万円の合計約11.2万円
  2. 印鑑3本セット(実印・銀行印・角印)は5,000〜30,000円が相場
  3. 行政書士・司法書士への報酬は5〜10万円程度、設立全体の委託で15〜20万円
  4. NPO法人は登録免許税非課税だが、認証に3〜6か月の時間コストがかかる
  5. 設立後のランニングコストとして法人住民税均等割(最低年7万円)が発生する

はじめに

設立費用を正確に把握する必要性——想定外の出費を防ぐ

の設立を決めたとき、次に直面するのが「結局いくらかかるのか」という問いである。

インターネット上には「約11万円で設立可能」という情報と「20万円以上かかった」という体験談が混在しており、何が正確なのか判断しにくい。この混乱は、費用の構成要素を分解して理解していないことに起因する。設立費用は大きく「法定費用(国に支払う固定コスト)」「専門家報酬(任意)」「実費(印鑑・交通費等)」の3層に分かれており、それぞれ削減可能な部分とそうでない部分がある。

本記事では、設立費用の全内訳を3層に分解し、自力設立と専門家委託のそれぞれの場合の総額を明示する。あわせて、との費用比較、設立後に発生するランニングコスト、そしてコスト削減のポイントまでを網羅する。

なお、非営利型一般社団法人とNPO法人の制度的な違いについては「非営利型一般社団法人とは何か——NPO法人との違いと選び方」で解説しているので、前提知識として参照されたい。


法定費用の内訳

登録免許税6万円と定款認証約5.2万円の詳細

法定費用とは、設立手続きにおいて国の機関に支払う費用であり、誰が設立手続きを行っても金額は変わらない。一般社団法人の設立に必要な法定費用は以下の2項目である。

登録免許税:6万円

法務局への設立登記申請時に納付する税金である。登録免許税法別表第一により、一般社団法人の設立登記にかかる登録免許税は6万円と定められている。

この金額は法人の規模や事業内容にかかわらず一律であり、値引き交渉や減額申請の余地はない。収入印紙で納付するか、オンライン申請の場合は電子納付が可能である。

定款認証費用:約5.2万円(公証人手数料5万円+謄本代約2,000円)

一般社団法人の定款は、公証人による認証を受ける必要がある。定款認証にかかる費用の内訳は以下のとおりである。

項目金額備考
公証人手数料50,000円一般社団法人は一律5万円(公証人手数料令第35条)
定款の謄本交付手数料約2,000円1ページあたり250円×枚数
収入印紙0円一般社団法人の定款には印紙税が課されない
電子定款の場合上記と同額紙定款と異なり印紙税4万円が不要だが、一般社団法人はもともと非課税

合計:約52,000円

なお、株式会社の定款認証では収入印紙4万円が必要であるが、一般社団法人の定款は印紙税法の課税文書に該当しないため、紙の定款であっても印紙税は不要である。これは株式会社と比較した場合の明確なコストメリットである。

法定費用の合計

項目金額
登録免許税60,000円
定款認証(公証人手数料+謄本代)約52,000円
法定費用合計約112,000円

一般に「約11万円」と言われる設立費用のうち、約11.2万円が法定費用である。これに印鑑作成費等の実費が加わる。


印鑑作成費用

法人実印・銀行印・角印の相場と選び方

法人設立登記の際には法人実印(代表者印)を法務局に届け出る必要がある。加えて、銀行口座開設用の銀行印、日常的な書類作成用の角印を揃えるのが一般的である。

必要な印鑑の種類

印鑑の種類用途必須/任意
法人実印(代表者印)登記申請・重要契約・官公庁への届出必須
銀行印銀行口座開設・取引実質必須
角印請求書・領収書・見積書等任意だが推奨

費用の相場

印鑑の費用は素材と購入先によって大きく異なる。

購入先3本セット(実印・銀行印・角印)の相場
ネット通販(柘植・アカネ等)5,000〜10,000円
ネット通販(黒水牛・チタン等)10,000〜20,000円
街の印鑑店15,000〜30,000円

法人実印のみであれば3,000〜5,000円程度で作成可能である。コストを最小限に抑えたい場合は、ネット通販で柘植素材の3本セットを購入するのが最も安価な選択肢となる。


専門家への報酬相場

行政書士・司法書士への委託費用

設立手続きは自力で行うことも可能であるが、定款の作成や登記申請を専門家に依頼する場合は別途報酬が発生する。

行政書士への依頼

行政書士は定款の作成・認証手続きの代理を行うことができる。ただし、登記申請の代理は司法書士の独占業務であるため、行政書士に依頼した場合でも登記申請は自分で行うか、別途司法書士に依頼する必要がある。

依頼内容報酬相場
定款作成+認証代理30,000〜80,000円
設立全般のコンサルティング50,000〜100,000円

司法書士への依頼

司法書士は定款作成から登記申請までの一連の手続きを代理できる。登記申請まで一括して依頼したい場合は司法書士への依頼が合理的である。

依頼内容報酬相場
定款作成+認証+登記申請の一括代理60,000〜120,000円

報酬の注意点

  • 報酬額は事務所によって大きく異なる。複数の事務所から見積もりを取ることを推奨する
  • 「設立パック」として法定費用込みの料金を提示する事務所もあるが、法定費用と報酬を分けて確認すべきである
  • オンライン対応の事務所は対面のみの事務所と比較して報酬が低い傾向にある

自力設立 vs 専門家委託の費用比較

費目自力設立専門家委託(司法書士一括)
登録免許税60,000円60,000円
定款認証費用約52,000円約52,000円
印鑑作成(3本セット)5,000〜15,000円5,000〜15,000円
専門家報酬0円60,000〜120,000円
その他実費(交通費・書類取得費等)2,000〜5,000円2,000〜5,000円
合計約119,000〜132,000円約179,000〜252,000円

自力設立の場合、最低約12〜13万円で設立が可能である。一方、専門家に一括委託する場合は約18〜25万円が目安となる。差額の6〜12万円は、専門家の知見によるリスク低減と時間節約に対する対価である。

どちらを選ぶべきか

自力設立が向いているケース:

  • 法律文書の作成に抵抗がない
  • 法務局や公証役場への平日の訪問が可能
  • コストを最小限に抑えたい

専門家委託が向いているケース:

  • 設立手続きに不安がある
  • 定款の条項設計について専門的な助言が必要
  • 平日に手続きに充てる時間がない

NPO法人との費用比較

金銭コストと時間コストのトレードオフ

NPO法人の設立費用と比較することで、一般社団法人の費用構造の特徴がより明確になる。

費目一般社団法人NPO法人
登録免許税60,000円非課税(0円)
定款認証費用約52,000円不要(0円)※所轄庁認証のため
印鑑作成費用5,000〜15,000円5,000〜15,000円
専門家報酬(依頼する場合)60,000〜120,000円80,000〜150,000円
法定費用合計約112,000円0円
設立期間2〜4週間3〜6か月

NPO法人は登録免許税が非課税であり、定款も所轄庁の認証を受ける形式であるため公証人認証が不要である。法定費用だけを見れば、NPO法人のほうが約11.2万円安い。

しかし、NPO法人の設立には以下の「見えないコスト」が存在する。

  • 時間コスト: 所轄庁の認証に3〜6か月を要する。この間、法人格なしで活動するか、活動開始を遅らせることになる
  • 書類作成コスト: NPO法人は設立認証申請書・事業計画書・収支予算書・社員名簿(10名以上)等、多数の書類作成が必要であり、専門家報酬がやや高くなる傾向がある
  • 人的コスト: 設立時に社員10名以上、理事3名以上、監事1名以上の確保が必要であり、少人数での設立が困難である

金銭的コストだけで判断するのではなく、時間・労力・人員確保を含めた総合的なコストで比較することが重要である。


設立後のランニングコスト

法人住民税均等割・決算公告・その他

法人設立は「ゴール」ではなく「スタート」である。設立後に継続的に発生するコストを事前に把握しておく必要がある。

法人住民税均等割

法人住民税均等割は、法人の所得の有無にかかわらず毎年発生する固定費用である。総務省の定めにより、資本金等がなく従業者50人以下の法人(一般社団法人の多くが該当)の場合、以下の金額が標準税率となる。

区分年額(標準税率)
都道府県民税均等割20,000円
市区町村民税均等割50,000円
合計70,000円

なお、収益事業を行わない非営利型一般社団法人については、自治体によっては法人住民税均等割の減免措置を設けている場合がある。設立予定地の自治体に事前に確認することを推奨する。

決算公告費用

一般社団法人は、毎事業年度の終了後に法律に基づき貸借対照表の公告(決算公告)を行う義務がある。公告方法によって費用が異なる。

公告方法費用
官報掲載約60,000円/回
電子公告(自社ウェブサイト)実質無料(サーバー費用のみ)
日刊新聞紙数十万円/回

定款で公告方法を「電子公告」と定めておけば、自社ウェブサイトへの掲載で足りるため、実質的に追加費用は発生しない。コスト面では電子公告が最も合理的である。

その他のランニングコスト

項目年額目安備考
税理士顧問料120,000〜360,000円小規模法人の場合。自力で行えば不要
決算申告費用(税理士依頼)50,000〜150,000円年1回の決算申告
法人口座維持費0〜数千円金融機関による
登記事項変更費用10,000〜30,000円役員変更登記等。発生時のみ

小規模な非営利型一般社団法人の場合、最低でも年間7万円(法人住民税均等割)、税理士に依頼する場合は年間20〜50万円程度のランニングコストを見込む必要がある。


コスト削減のポイント

実費を抑える具体的な方法

設立費用とランニングコストを抑えるための具体的な方法を整理する。

設立時のコスト削減

  1. 印鑑はネット通販で購入する: 街の印鑑店と比較して半額以下で購入可能な場合が多い。品質面でも実用上の問題はない
  2. 定款は自力で作成する: 法務省のウェブサイトや書籍を参考に自力で作成すれば、専門家報酬を節約できる。ただし、非営利型の要件を満たす条項の設計には注意が必要である
  3. 複数の専門家から見積もりを取る: 依頼する場合でも、2〜3社から見積もりを取ることで相場を把握し、適正価格で依頼できる
  4. 電子定款を活用する: 一般社団法人の場合は紙定款でも印紙税は不要であるが、公証役場への物理的な持参が不要になるメリットがある

ランニングコストの削減

  1. 電子公告を選択する: 定款で電子公告を定めておけば、官報掲載費用(約6万円/年)を節約できる
  2. 法人住民税均等割の減免を確認する: 収益事業を行わない非営利法人に対して減免措置を設けている自治体がある。設立前に確認すべきである
  3. 会計ソフトを活用する: freee、マネーフォワード等のクラウド会計ソフトを活用し、税理士依頼の範囲を縮小することで顧問料を抑えられる
  4. 役員変更登記のタイミングを計画する: 理事の任期を定款で最長2年に設定し、不必要な登記事項変更を避ける

まとめ

費用全体の見通しと次のステップ

非営利型一般社団法人の設立費用は、以下の3層で構成される。

費用の層内容金額目安
法定費用(固定)登録免許税+定款認証約112,000円
実費(変動)印鑑・交通費・書類取得費約7,000〜20,000円
専門家報酬(任意)行政書士・司法書士0〜120,000円
合計約119,000〜252,000円

法定費用の約11.2万円は誰が設立しても必ず発生する固定コストであり、ここを削減する方法はない。コスト差が生まれるのは「自力で行うか、専門家に依頼するか」という判断と「実費(特に印鑑)をどこまで抑えるか」の2点である。

設立後は、法人住民税均等割(年間最低7万円)を中心としたランニングコストが継続的に発生する。設立費用だけでなく、少なくとも3年分のランニングコストまで見込んだ資金計画を立てることを推奨する。

法人格の選択がまだの場合は「非営利型一般社団法人とは何か——NPO法人との違いと選び方」を参照されたい。


参考文献

登録免許税法(昭和42年法律第35号)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)

日本公証人連合会 手数料

国税庁 タックスアンサー No.5105 公益法人等の範囲

総務省 地方税制度 法人住民税

無料資料

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読んだ後に考えてみよう

  1. 自分は設立手続きに時間をかけられるか、それとも専門家に委託すべきか?
  2. 設立後のランニングコスト(年間最低7万円〜)を継続的に負担できる見通しはあるか?

この記事の用語

NPO法人(特定非営利活動法人)
特定非営利活動促進法に基づき設立される法人。20の活動分野のいずれかに該当する公益活動を行い、所轄庁(都道府県・政令指定都市)の認証を受けて設立される。設立には10名以上の社員が必要。
非営利型一般社団法人
一般社団法人のうち、定款で非営利性が確保された法人。法人税法施行令第3条の要件を満たすことで、収益事業以外の所得が非課税となる。設立は2名以上の社員で可能で、NPO法人と異なり活動分野の制限がない。

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