メインコンテンツへスキップ
一般社団法人社会構想デザイン機構
実践ガイド — 設立・法人化

非営利型の要件を満たすための定款設計——税制優遇を受ける条件

ISVD編集部
約12分で読めます

法人税法上の非営利型法人の2類型(非営利が徹底された法人・共益的活動目的の法人)の具体的要件を解説し、定款に何を書くべきか、残余財産の帰属先制限、理事の親族制限、非営利型を失った場合のリスクまでを網羅する。

XFBThreads

ざっくり言うと

  1. 法人税法施行令第3条は非営利型法人を「非営利が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2類型に分類する
  2. 非営利型として認められると収益事業(34業種)のみが課税対象となり、寄付金・会費・助成金等は非課税
  3. 残余財産の帰属先を国・地方公共団体・公益法人等に限定する定款規定が必須
  4. 理事の親族等の割合を理事総数の1/3以下に抑える要件がある
  5. 非営利型要件を満たさなくなった場合、累積所得に対する法人税が一括で課税されるリスクがある

はじめに

非営利型の要件を満たすことがなぜ定款設計の最重要事項であるか

一般社団法人を設立する際、最も注意を要する判断の一つが「非営利型」の要件を満たす定款を設計できるかどうかである。

一般社団法人は、登記のみで設立できる法人格であるが、法人税法上の取扱いは「非営利型」と「非営利型以外(普通法人型)」で大きく異なる。として認められれば、法人税法に定められた34業種の収益事業から生じた所得のみが課税対象となる。一方、非営利型の要件を満たさない場合は、株式会社と同様にすべての所得が課税対象となる。

この違いは、定款に何を書くかで決まる。本記事では、法人税法施行令第3条が定める非営利型法人の2つの類型を詳細に解説し、それぞれの要件を満たすために定款にどのような条文を盛り込む必要があるかを具体的に示す。


非営利型法人の2類型

法人税法施行令第3条が定める2つの類型の概要

法人税法施行令第3条は、一般社団法人・一般財団法人が法人税法上の「公益法人等」として扱われるための要件を2つの類型に分けて規定している。

類型1類型2
名称非営利性が徹底された法人共益的活動を目的とする法人
根拠条文法人税法施行令第3条第1項第1号法人税法施行令第3条第1項第2号
想定される法人像公益的活動を広く行う法人(社会課題解決型)会員の共通利益を図る法人(業界団体・同窓会型)
課税範囲収益事業(34業種)のみ収益事業(34業種)のみ

いずれの類型であっても、要件を満たせば法人税法上の「公益法人等」に該当し、収益事業以外の所得(寄付金収入、会費収入、助成金等)は非課税となる。どちらの類型を選ぶかは、法人の活動目的と会員構成によって決まる。


類型1——非営利が徹底された法人

4つの具体的要件と定款記載例

類型1は、公益的・社会的な活動を広く行う法人を想定した類型である。ISVDのような社会課題解決型の一般社団法人は、通常この類型を目指す。

4つの要件

国税庁の質疑応答事例によれば、以下の4要件すべてを満たす必要がある。

要件①: 剰余金の分配を行わない旨の定款の定め

定款に「剰余金の分配を行わない」旨を明記する必要がある。単に分配しない運用をしているだけでは不十分であり、定款の条文として明示的に定めなければならない。

定款記載例: 「当法人は、剰余金の分配を行わない。」

要件②: 残余財産を国・地方公共団体・公益法人等に帰属させる旨の定款の定め

解散時の残余財産の帰属先を、以下のいずれかに限定する定款規定が必要である。

  • 地方公共団体
  • 公益社団法人または公益財団法人
  • 公益法人認定法第5条第17号イからトまでに掲げる法人

この要件は、法人の財産が最終的に私的利益に流れることを防ぐための規定である。

定款記載例: 「当法人が清算をする場合において有する残余財産は、社員総会の決議を経て、国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人に贈与するものとする。」

要件③: 上記①②の定款の定めに反する行為を行ったことがないこと

定款に書いただけではなく、実際にその定めに従った運営を行っていることが求められる。過去に剰余金の分配を行った実績がある場合、この要件を満たさない。

要件④: 各理事について、理事とその親族等の合計が理事総数の1/3以下であること

特定の親族グループによる支配を防ぐための要件である。詳細は後述の「理事の親族制限」セクションで解説する。


類型2——共益的活動を目的とする法人

6つの具体的要件と定款記載例

類型2は、会員の共通利益を図ることを主目的とする法人を想定している。業界団体、同窓会、特定のコミュニティの相互支援組織などが該当する。

6つの要件

類型2は類型1よりも要件が多い。以下の6要件すべてを満たす必要がある。

要件①: 会員に共通する利益を図る活動を行うことを主たる目的としていること

定款の目的条項に、会員の共通利益を図る活動が主目的であることを明記する必要がある。

要件②: 定款等に会費の定めがあること

会費の額または算定方法を定款または社員総会の決議で定めている必要がある。会費制度が存在することが、「共益的」な性格を裏付ける根拠となる。

要件③: 主たる事業として収益事業を行っていないこと

収益事業を行うこと自体は禁止されていないが、それが「主たる事業」となってはならない。判断基準は、収益事業の規模・比率等を総合的に勘案して行われる。

要件④: 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと

類型1の要件①と同趣旨であるが、表現が若干異なる。「特定の個人又は団体に」分配しない旨の規定である。

要件⑤: 定款に解散時の残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定めていないこと

類型1の要件②が「国・地方公共団体・公益法人等への帰属」を積極的に定めることを要求するのに対し、類型2は「特定の個人・団体に帰属させない」という消極的な定めで足りる。ただし実務上は、類型1と同様に具体的な帰属先を定めておくことが望ましい。

要件⑥: 各理事について、理事とその親族等の合計が理事総数の1/3以下であること

類型1の要件④と同じである。


残余財産の帰属先制限

国・地方公共団体・公益法人等に限定する理由と定款条文

残余財産の帰属先制限は、非営利型法人の根幹をなす要件である。この規定がなぜ重要かを掘り下げる。

制限の趣旨

一般社団法人は出資(基金を除く)なしで設立できるため、法人格を利用した財産の私的流用リスクがある。たとえば、非課税で蓄積した財産を解散時に特定の個人に分配すれば、実質的に課税を回避した利益移転が成立してしまう。残余財産の帰属先制限は、このような租税回避を防止する規定である。

帰属先として認められる法人

一般法人法第239条第2項および公益法人認定法第5条第17号に基づき、以下が帰属先として認められる。

  1. 地方公共団体
  2. 公益社団法人・公益財団法人
  3. 学校法人
  4. 社会福祉法人
  5. 更生保護法人
  6. 独立行政法人
  7. 国立大学法人・大学共同利用機関法人
  8. 地方独立行政法人

定款条文の書き方

定款には、解散時の残余財産の帰属先を具体的に記載する。「社員総会の決議により定める」とだけ書くと、決議次第で特定個人への帰属が可能になるため、類型1の要件②を満たさないおそれがある。以下のように、帰属先の範囲を定款で明確に限定する必要がある。

定款記載例: 「当法人が清算をする場合において有する残余財産は、社員総会の決議を経て、国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人に贈与するものとする。」


理事の親族制限

1/3ルールの具体的な計算方法と注意点

1/3ルールの内容

非営利型法人の要件として、「各理事について、当該理事及びその親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること」が求められる。これは類型1・類型2に共通の要件である。

「親族等」の範囲

法人税法施行令第3条は「当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者」と規定している。具体的には以下が含まれる(法人税法施行規則第2条の2)。

  • 配偶者
  • 3親等以内の親族
  • 当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
  • 当該理事の使用人
  • 当該理事から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している者
  • 上記の者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は3親等以内の親族

計算例

理事が3名の法人の場合、1/3は1名である。したがって、ある理事とその親族等である理事の合計が1名以下でなければならない。つまり、3名の理事のうち2名が親族関係にあると、この要件を満たさない。

理事総数親族等の上限(1/3以下)実務上の注意
3名各理事につき1名まで(本人含む)親族2名が理事になると要件違反
6名各理事につき2名まで(本人含む)親族3名が理事になると要件違反
9名各理事につき3名まで(本人含む)親族4名が理事になると要件違反

理事の選任・交代時には、常にこの親族制限を意識する必要がある。特に小規模法人では、理事候補が限られるため、設立時点から計画的に理事構成を設計すべきである。


非営利型の税制優遇

収益事業課税と全所得課税の違い

収益事業課税と全所得課税の違い

非営利型法人の税制上の最大のメリットは、「収益事業課税」が適用される点にある。

非営利型法人非営利型以外(普通法人型)
課税範囲収益事業(34業種)のみすべての所得
非課税となる収入例寄付金、会費、助成金、補助金なし(すべて課税対象)
法人税率収益事業所得に対して通常税率すべての所得に対して通常税率

収益事業の34業種には、物品販売業、不動産貸付業、製造業、請負業などが含まれる。これらの事業から生じた所得のみが法人税の課税対象であり、それ以外の収入——たとえば寄付金、会費、助成金、補助金——は非課税となる。

具体例

たとえば、ある非営利型一般社団法人の年間収入が以下のとおりだとする。

  • 寄付金収入: 500万円
  • 会費収入: 200万円
  • 助成金: 300万円
  • セミナー事業(請負業に該当)収入: 400万円

非営利型法人の場合、課税対象はセミナー事業の400万円(から必要経費を差し引いた所得)のみである。普通法人型の場合、1,400万円全額が課税対象の収入となる。


Google for Nonprofitsとの関係

非営利型要件とテクノロジー支援プログラムの適格条件

適格要件における非営利型の位置づけ

は、非営利団体に対してGoogle Workspace、(月額最大$10,000相当の検索広告枠)、YouTube非営利プログラムなどを無償提供するプログラムである。

日本における適格法人類型は以下のとおりである。

  1. NPO法人(特定非営利活動法人)
  2. 非営利型一般社団法人
  3. 公益社団法人・公益財団法人
  4. 社会福祉法人

重要なのは、一般社団法人であれば無条件に対象となるわけではなく、「非営利型」であることが前提条件である点である。Googleの適格要件では、申請時にGoodstack(旧Percent)による非営利性の審査が行われ、非営利型の要件を満たしていない一般社団法人は対象外となる。

定款設計との関係

Google for Nonprofitsの審査では、法人の定款や登記情報が確認される。非営利型の要件を満たす定款を設計しておくことは、税制優遇だけでなく、テクノロジー支援プログラムへのアクセスにも直結する。詳しくは「Google for Nonprofitsとは——非営利団体がGoogleを無料で使い倒す完全ガイド」を参照されたい。


非営利型要件を失った場合のリスク

累積所得課税と実務上の対応

累積所得への一括課税

非営利型法人の要件を満たさなくなった場合、その法人は法人税法上の「普通法人」として扱われることになる。このとき最も深刻なリスクは、設立時からの累積所得に対して法人税が一括で課されることである。

法人税法第64条の4は、非営利型法人が普通法人に該当することとなった場合、その時点で「累積所得金額」に相当する金額を益金に算入する旨を定めている。つまり、非営利型として非課税であった期間の所得が遡及的に課税対象となる。

要件喪失の典型パターン

以下は、非営利型要件を意図せず喪失してしまう典型的なパターンである。

  1. 理事の親族制限違反: 理事の交代時に親族関係の確認を怠り、1/3ルールに抵触する
  2. 剰余金分配の実施: 社員への経済的利益の供与が実質的な剰余金分配と認定される
  3. 残余財産条項の不備: 定款変更時に残余財産の帰属先条項を誤って削除・変更する
  4. 収益事業の主体化(類型2の場合): 収益事業の規模が拡大し、「主たる事業」と判断される

防止策

  • 理事の選任時に親族関係を書面で確認する手続きを定款または内部規程に定める
  • 社員への経済的利益供与の有無を定期的に点検する
  • 定款変更時に非営利型要件への影響を必ず確認する
  • 税理士による年次レビューを実施する

まとめ

定款設計チェックリスト

非営利型一般社団法人の税制優遇を受けるためには、定款設計の段階で法人税法施行令第3条の要件を正確に反映させる必要がある。以下に定款設計チェックリストを示す。

類型1(非営利が徹底された法人)チェックリスト:

  • 剰余金の分配を行わない旨の条文があるか
  • 残余財産の帰属先が国・地方公共団体・公益法人等に限定されているか
  • 過去に剰余金分配・残余財産条項違反の実績がないか
  • 理事構成が親族制限(1/3以下)を満たしているか

類型2(共益的活動を目的とする法人)チェックリスト:

  • 会員の共通利益を図る活動が主目的であることが定款に明記されているか
  • 会費の定めがあるか
  • 主たる事業として収益事業を行っていないか
  • 特定個人・団体への剰余金分配を行わない旨の条文があるか
  • 残余財産を特定個人・団体に帰属させない旨の条文があるか
  • 理事構成が親族制限(1/3以下)を満たしているか

定款は設立後も変更可能であるが、非営利型の要件に関わる条項の変更は、税制上の地位を失うリスクに直結する。設立前に税理士や行政書士と協議し、要件を確実に満たす定款を作成することが、組織の持続可能な運営の基盤となる。

非営利型一般社団法人とNPO法人の比較については「非営利型一般社団法人とは何か——NPO法人との違いと選び方」を、Google for Nonprofitsの申請手続きについては「Google for Nonprofits申請完全ガイド」を参照されたい。


参考文献

無料資料

Google for Nonprofits 活用ガイド

非営利法人が受けられるGoogleの特典(Ad Grants・Workspace無償化など)の全体像と、申請から活用までのステップを解説した資料を無料でお送りします。

サービス詳細を見る

読んだ後に考えてみよう

  1. 自分の法人は類型1と類型2のどちらを目指すべきか?
  2. 定款の残余財産条項は法人税法施行令の要件を正確に反映しているか?
  3. 理事構成において親族制限を維持できる体制になっているか?

この記事の用語

Google Ad Grants
Google for Nonprofitsの一部として提供される検索広告プログラム。対象非営利団体に月額最大$10,000(年間$120,000)相当のGoogle検索広告枠を無償で付与する。CPC上限$2.00、CTR 5%以上の維持が条件。
Google for Nonprofits
Googleが非営利団体に提供するプログラム。Google Ad Grants(月額最大$10,000相当の検索広告枠)、Google Workspace無償化、YouTube Nonprofit Programなどの特典を含む。日本ではNPO法人・非営利型一般社団法人・公益法人・社会福祉法人などが対象。
非営利型一般社団法人
一般社団法人のうち、定款で非営利性が確保された法人。法人税法施行令第3条の要件を満たすことで、収益事業以外の所得が非課税となる。設立は2名以上の社員で可能で、NPO法人と異なり活動分野の制限がない。

関連コンテンツ

XFBThreads

新着コラムをメールで受け取る

週1-2本の社会構造分析コラムを配信します。登録は無料です。

ISVDの活動に参加しませんか?

会員登録で最新の研究・活動レポートをお届けします。協業やプロジェクト参加のご相談もお気軽にどうぞ。