一般社団法人社会構想デザイン機構

神奈川県のPark-PFI — 横浜・横須賀・真鶴の事例【2026年版】

ISVD編集部
約8分で読めます

神奈川県内のPark-PFI事例を解説。横浜市の大規模都市公園での展開、横須賀市の取り組み、真鶴町のスモールコンセッションを組み合わせた小規模事例を比較分析。人口規模・立地・業態の多様性から学ぶ。

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ざっくり言うと

  1. 神奈川県は横浜市(374万人)から真鶴町(6,500人)まで人口規模が多様で、都市型・郊外型・小規模型のPark-PFI事例が揃う希少な県
  2. 横浜市は市内複数公園でのPark-PFI展開を進めており、大都市型の複合施設・スポーツ施設型の事例を形成している
  3. 真鶴町は人口6,500人の小規模町でスモールコンセッションと公園活用を組み合わせた先進的な取り組みを展開

神奈川県の公園概況

公園数・面積・管理体制の特徴。県営公園・政令市・中小自治体の3層構造

神奈川県は、全国屈指の都市公園整備水準を誇る都道府県の一つであり、政令市2市(横浜市・川崎市)、中核市1市(相模原市)、各市区町村の公園が重層的に存在する。人口規模でも横浜市(374万人)から真鶴町(約6,500人)まで多様な自治体が混在しており、都市型・郊外型・地方型のPark-PFI事例が一つの県内に揃う希少な地域といえる。

3層の公園管理体制

神奈川県の公園管理は大きく3層で構成される。

第1層: 県営公園

神奈川県公園協会が指定管理を担う県営公園群がある。丹沢・大山・湘南など広域の自然公園・広域公園が含まれ、規模が大きいためPark-PFIの対象として注目されているものもある。

第2層: 政令市・中核市の都市公園

横浜市・川崎市・相模原市は、それぞれ独自の公園管理体制を持ち、Park-PFI等の積極的な展開が進んでいる(または検討されている)。横浜市は市内の主要公園でPark-PFIを展開しており、県内をリードしている。

第3層: 市区町村の公園

一般市・中都市から真鶴町のような小規模自治体まで幅広い。小規模自治体での公園活用は、予算制約・担当職員の少なさという課題がある一方、スモールコンセッション等の支援制度を活用した先進事例も生まれている。


横浜市の事例

374万人政令市でのPark-PFI展開。複数公園での実施と業態の多様化

横浜市は約2,700か所の都市公園・緑地を管理する国内最大の政令市の一つだ。公園管理の課題として老朽施設の更新・維持管理費の増大が顕在化しており、Park-PFIを活用した民間活力の導入が重要な政策手段になっている。

横浜市のPark-PFI方針

横浜市は、都市公園における民間活力の活用として、収益施設の設置管理許可(Park-PFI)の積極的な活用方針を掲げている。大規模公園・区立公園の双方で検討が進んでいる。

横浜市のPark-PFI展開の特徴:

  • 大規模公園での複合化: 港の見える丘公園・山下公園・三ツ沢公園など集客力の高い公園でカフェ・飲食・スポーツ施設の組み合わせが検討されている
  • 区立公園での小規模展開: 市内各区の区立公園でも Park-PFI の小規模展開が検討されており、住民ニーズに合わせた業態(子育て支援・スポーツ)が中心
  • 既存民間施設との共存設計: 横浜市内には元々民間の飲食・サービス業が充実しているため、公園内の収益施設と周辺商業施設が競合しないよう業態・立地を設計することが重要視されている

横浜市での成立条件と留意点

横浜市規模の大都市では、Park-PFIの民間参入意欲は高い一方、いくつかの特有の課題がある。

課題1: 周辺民間施設との競合

横浜市内の主要公園周辺には、既存の民間カフェ・レストラン・フィットネスが充実している。公募条件の設計において、「民業圧迫」の批判を避けるための業態の差別化・立地の工夫が求められる。

課題2: 景観・都市デザインとの整合

横浜市は都市景観への意識が高く、山下公園・港の見える丘公園等の歴史的景観エリアでの建築物設置には、 横浜市景観計画 との整合が求められる。建物の高さ・デザイン・素材に関して通常より高い水準の設計が必要だ。

課題3: 地域住民との合意形成

横浜市の公園は地域住民の日常的な利用が多く、収益施設の設置に対して「静かな公園を守ってほしい」という意見が出やすい。サウンディング前の住民説明・公園の利用実態調査が不可欠だ。


横須賀市の取り組み

40万人都市での公園活用課題と検討状況

横須賀市は人口約40万人(2024年時点)の中核市で、三浦半島南端に位置し、海・丘・自然資源に恵まれた地形を持つ。公園については、市内に多数の公園を管理しており、観光・地域振興との連携を視野に入れた活用が課題となっている。

横須賀市の公園活用の課題と可能性

立地の優位性: 三浦半島の海岸・丘陵という自然資源は、グランピング・海辺のカフェ・アウトドアスポーツ施設など観光需要と結びついた収益施設との親和性が高い。首都圏からのアクセス(横須賀線・京急線)も良好で、日帰り観光客の集客が期待できる。

課題: 人口減少への対応

横須賀市は首都圏の中でも人口減少が顕著な都市の一つだ。地域住民の利便性向上と、域外からの観光集客の両立を公園活用のコンセプトとして設定することが求められる。

課題: 軍港・基地との隣接

横須賀基地周辺エリアでは用途制限・建築規制があり、公園整備に関わる制度的な制約の確認が必要だ。

今後の可能性: 三笠公園(戦艦三笠・横須賀軍港の象徴的公園)、観音崎公園(自然豊かな県営公園)等でのPark-PFI展開は、観光・ブランディングの観点から注目されている。横須賀市のPark-PFI推進は、都市部の財政問題への対応と観光再生を同時に実現できる政策として期待が高まっている。

の進め方については、Park-PFIのサウンディングを参照されたい。


真鶴町のスモコン事例

人口6,500人の小規模町での先進的な公共施設活用の試み

真鶴町(まなづるまち)は神奈川県小田原市の南に位置する人口約6,500人の小規模町だ。面積は約7.05km²と非常にコンパクトな自治体だが、真鶴半島の豊かな自然・景観・漁業文化を活かした独自のまちづくりで知られる。

真鶴町のスモールコンセッション採択の背景

国交省のスモールコンセッション形成推進事業において、真鶴町は選定7自治体の一つとして採択された。神奈川県内では真鶴町が唯一の採択自治体であり、人口規模・立地・課題の特殊性から全国的に注目を集める事例となっている。

真鶴町の対象施設と課題

真鶴町では、 旧真鶴町立中学校跡地・関連施設 をはじめとする旧公共施設の活用が課題となっている。廃校後の施設は老朽化が進んでいるが、真鶴半島という希少な自然環境に立地し、観光・宿泊・体験施設としての可能性がある。

公園との組み合わせとしては、真鶴港に隣接する 真鶴臨海公園(海水浴場・磯遊び・キャンプ場)エリアと旧公共施設の一体的な活用が検討されている。これが実現すれば、公園の自然資源(海・磯・砂浜)と旧施設(宿泊・飲食機能)の相互補完が生まれ、真鶴半島全体の観光拠点化が加速する可能性がある。

真鶴町モデルの特徴と課題

特徴1: 小規模自治体の先進モデル

人口6,500人規模の自治体でのスモールコンセッション×公園活用の取り組みは、同規模の自治体に対して「自分たちにもできる」というモデルを示す意義がある。スモコン専門家の派遣支援を活用しながら、職員体制が手薄な小規模自治体でも事業化が可能であることを示す先例となる。

特徴2: 自然環境ブランドの活用

真鶴半島は「お林」(特別の保護林)・景観形成地区として保護されており、環境規制が厳しい地域だ。しかしこの制約は同時に、「守られた自然の中での体験」というブランド価値にもなる。グランピング・自然体験・環境教育との組み合わせが有効だ。

課題: 担い手不足と事業性の確保

人口6,500人という小さな地域市場では、単独での収益施設経営は難しい。神奈川県内の中核都市(横浜・川崎・横須賀・小田原等)や首都圏からの来訪者を取り込むことが事業成立の前提となる。そのためには、交通アクセスの改善・観光誘客プロモーションとの連携が不可欠だ。

→ スモールコンセッションの専門家派遣制度の詳細については、スモールコンセッション専門家派遣ガイドを参照されたい。


県内の今後の動き

神奈川県全体のPark-PFI・スモコン推進の方向性と期待される展開

神奈川県全体のPark-PFI・スモコン推進方針

神奈川県は首都圏に位置し、民間事業者のPark-PFI参入意欲が全国的に見ても高い地域だ。以下の3つの方向性が今後の展開を規定すると考えられる。

方向性1: 横浜市・川崎市のリード

政令市2市が積極的なPark-PFI推進を進めることで、県内の中小自治体への波及効果が生まれる。大都市での成功事例・運営ノウハウが県内に蓄積され、中小自治体の参照事例になる。

方向性2: 観光資源との連携(湘南・三浦・箱根・足柄)

神奈川県は湘南・江の島・三浦半島・箱根・足柄など多彩な観光資源を持つ。公園活用をこれらの観光資源と連携させることで、公園単体では得られない集客力が実現する。

方向性3: 小規模自治体のスモコン活用拡大

真鶴町の事例が先行事例となって、小田原市・逗子市・葉山町・南足柄市等の小規模〜中規模自治体でのスモールコンセッション・Park-PFI活用が広がることが期待される。

神奈川県内の担当者が今取るべきアクション

  • 情報収集: 横浜市の事例をモデルとして研究する。市内の類似公園とのベンチマークを行う
  • サウンディング実施の検討: 民間需要の把握から着手。地域の観光業者・飲食業者へのアプローチ
  • スモコンPFへの登録: 国交省が設立したプラットフォームへの自治体登録を検討する
  • 広域連携の模索: 神奈川県内の自治体間での情報共有・広域連携による事業化の可能性を探る

→ 全国の最新統計と制度動向については、Park-PFI最新事例・統計【2026年版】を参照されたい。


参考文献

Park-PFI等の活用 (2025)

スモールコンセッションに取り組む地方公共団体に派遣する専門家の公募を開始 (2026)

みどり・公園(横浜市) (2025)

神奈川県公園協会 花と緑の情報サイト (2025)

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読んだ後に考えてみよう

  1. 横浜市・横須賀市・真鶴町の3事例のうち、自分の自治体と最も近い条件はどれか?
  2. 県内で先行する事例の成功要因を、自分の担当公園に応用するとすれば何か?
  3. スモールコンセッションとPark-PFIを組み合わせる設計は、自分の自治体でも可能か?

この記事の用語

サウンディング型市場調査
公有資産の活用にあたり、公募前に民間事業者の意見・アイデアを聞く対話型の市場調査。事業の実現可能性や条件設定の妥当性を事前に検証する目的で実施される。
スモールコンセッション
地方公共団体が所有する空き家・廃校等の遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模(事業費10億円未満程度)なPPP/PFI事業を行う取組み。2024年に国交省がプラットフォームを設立。
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