ざっくり言うと
- Park-PFIには「使用料」(収益施設の設置許可に対する対価)と「占用料」(利便増進施設の占用に対する対価)の2種類の費用負担がある
- 使用料の最低額は条例で定める額を下回ってはならないが、民間事業者の収益性との均衡が設計の核心である
- 収益還元とは、事業者が自治体に対して使用料・占用料以外に一定の収益を還元するスキームであり、公園整備の持続的な財源となる
使用料と占用料の違い
2種類の費用負担の法的定義・根拠・対象施設の違いと混同しやすいポイント
Park-PFIにおける民間事業者の費用負担は、大きく 使用料 と 占用料 の2種類に分かれる。この2つは混同されやすいが、法的根拠・対象施設・算定方法が異なる。
使用料(公募対象公園施設の設置許可に対する対価)
使用料は、民間事業者が 公募対象公園施設(カフェ・レストラン・スポーツ施設等の収益施設)の設置管理許可を受けることに対して支払う対価である。
法的根拠: 都市公園法第5条(公園施設の設置許可)・第5条の2第2項第4号(使用料最低額の指針記載義務)・都市公園条例(各自治体が定める)
特徴:
- 収益施設の 設置区域(土地)の使用 に対する対価
- 公園管理者が条例で定める額を下回ってはならない(法第5条の2第2項第4号)
- 年額または月額で設定されることが多い
- 条例の改正なく事業者からの提案で増額することは可能だが、条例の最低額を下回ることはできない
占用料(利便増進施設の占用に対する対価)
占用料は、民間事業者が 利便増進施設(看板・広告塔・自転車駐車場等)を公園内に設置する際に支払う対価である。
法的根拠: 都市公園法第6条(都市公園の占用許可)・第7条(占用許可の技術的基準)・都市公園施行令第16条の2・占用料条例(各自治体が定める)
特徴:
- 公園の 地下・地上の一定空間の占用 に対する対価
- 看板・広告塔の場合は面積・枚数等で算定されることが多い
- 使用料とは別に設定される(公募設置等指針第6号に記載)
実務上の区別のポイント
| 項目 | 使用料 | 占用料 |
|---|---|---|
| 対象施設 | 収益施設(カフェ等) | 看板・広告塔・駐車場等 |
| 法的根拠 | 都市公園法第5条・第5条の2 | 都市公園法第6条・第7条 |
| 指針での記載号 | 第4号(最低額) | 第6号(利便増進施設の種類・場所等) |
| 条例との関係 | 条例の最低額を下回れない | 条例が定める算定基準に従う |
| 競争要素 | あり(提案による増額可能) | 少ない(条例基準が基本) |
使用料の算定方法
固定額型・売上連動型・複合型の3方式の特徴と自治体の選択実態
使用料の算定方式は主に3種類ある。自治体によって採用している方式が異なるため、条例の規定を確認することが先決である。
方式1: 固定額型(面積単価型)
最も一般的な方式。設置区域の面積に単価(1m²当たりの年額)を乗じて算定する。
算定式: 使用料 = 面積(m²)× 単価(円/m²/年)
メリット:
- 計算がシンプルで透明性が高い
- 事業者が初期段階から確定的なコストを計算できる
デメリット:
- 売上が好調でも低迷でも使用料が変わらないため、自治体の収益還元が限定的
方式2: 売上連動型(歩合型)
年間売上の一定割合(通常は2〜10%)を使用料とする方式。
算定式: 使用料 = 年間売上 × 料率(例: 5%)、または min(固定最低額, 売上×料率)
メリット:
- 事業が好調なほど自治体の収入が増える。収益還元の実質的な機能を果たす
- 事業が苦しい時期は使用料も低くなるため、事業者の経営リスクを緩和する
デメリット:
- 売上の申告・確認にコストがかかる(監査・会計報告書の徴収が必要)
- 事業者が売上を過少申告するリスクへの対策が必要
方式3: 複合型(固定額+売上連動)
固定最低額を設定した上で、売上が一定水準を超えた場合に超過分の一定割合を追加で徴収する方式。
算定式: 使用料 = 固定最低額 + max(0, (年間売上 - 基準売上)× 超過率)
メリット:
- 固定最低額で自治体の最低限の収入を確保しつつ、好調時の収益還元も実現する
- 事業者も「最低額さえ払えば済む」という安心感を持てる
採用事例の傾向: 近年の公募事例では、固定額型または複合型が多く採用されている。売上連動型は収益確認のコストが高いため、大規模案件や指定管理と一体化した案件に向いている。
収益還元の仕組み
使用料・占用料に加えた収益還元の設計方法と郡山市の事例
収益還元とは何か
収益還元とは、民間事業者が使用料・占用料に加えて、 事業から得た収益の一部を公園管理者(自治体)に還元する 仕組みである。公園のリニューアル費用・特定公園施設の維持管理費・新たな整備費の財源として活用される。
収益還元の方法は以下の3種類に分類される。
| 方法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 使用料の上乗せ | 条例の最低額を超える使用料を提案 | 競争要素として機能する |
| 特定公園施設整備費の追加負担 | 市負担割合の最低10%を超える自己負担 | 整備内容を充実させるインセンティブ |
| 管理運営費の削減(指定管理一体型) | 指定管理料の上限額から削減した額を還元 | 指定管理との一体型事業で有効 |
郡山市開成山公園の収益還元設計
郡山市の事例では、収益還元は主に「①特定公園施設整備費の民間負担(10%以上)」と「②指定管理料の削減提案」の2軸で設計された。
①特定公園施設整備費の収益還元:
- 整備費総額(約7億円)の最低10%(約7,015万円)は民間負担が義務
- 提案によってこれを上回る負担も可能(評価項目⑥に反映)
②指定管理料の削減還元:
- 指定管理料の上限(14億4,160万4千円/19年)から、民間が提案する実際の指定管理料を差し引いた差額が実質的な収益還元
- 評価配点表の「5.経費削減」大項目で70点(全体の14%)が割り当てられている
収益還元設計の3つの原則
原則1: 実現可能な水準に設定する: 収益還元の水準が高すぎると、民間事業者が応募しない。「事業者が採算を取れるかどうか」を市場調査・サウンディングで確認した上で設定する。
原則2: 長期的な視点で設計する: 20年間の事業期間を通じて安定した収益還元が実現できるか検討する。初期の投資回収期間(通常5〜8年)は収益還元額が低く、後半に高くなる構造もある。
原則3: 競争要素として活用する: 収益還元の提案内容(整備費負担・使用料の増額)を評価配点に反映させることで、競争を通じて自治体の取り分を最大化できる。
条例との関係
使用料条例・占用料条例との整合確認の手順と改正の必要性の判断基準
使用料条例の確認が最初のステップ
Park-PFIの使用料最低額を設定する前に、まず 当該自治体の都市公園条例または使用料条例 を確認する必要がある。条例には通常、以下の内容が規定されている。
- 使用料の算定方法(固定単価・売上連動等の方式)
- 算定の基礎となる単価(円/m²/年 等)
- 使用料の免除・減額条件
重要な制約: 公募設置等指針に記載する使用料最低額は、条例の算定方式によって計算される額を下回ってはならない(都市公園法第5条の2第2項第4号)。
条例改正が必要なケース
以下のケースでは条例改正が必要になる場合がある。
| ケース | 内容 | 対応 |
|---|---|---|
| 現行条例の算定方式が固定額のみで売上連動に変えたい | 条例の算定方式の追加 | 条例改正 |
| 現行条例の単価が老朽化しており市場実態と乖離している | 単価の改定 | 条例改正 |
| 収益施設に特化した「Park-PFI使用料」の規定を新設したい | 新設 | 条例改正 |
条例改正の手続き: 条例改正には議会の可決が必要である。スケジュール設計時に議会の定例会日程と整合させることが不可欠である(Phase 2で対応すべき事項)。
占用料条例の確認
占用料についても、自治体の占用料条例(または都市公園条例の占用料条項)で算定方式・単価が定められている。利便増進施設の種類(看板・広告塔・駐車場等)ごとの単価を事前に確認する。
近隣自治体の相場
類似公園の使用料水準の調べ方と設定の際の参考情報
使用料相場の調べ方
類似公園の使用料水準を把握するためには、以下の方法が有効である。
情報収集の方法:
- 国交省 Park-PFI事例集の活用: 事例集には採択事業の事業スキーム概要が記載されており、一部に使用料水準が含まれている
- 類似自治体へのヒアリング: 同程度の人口規模・公園規模の自治体に問い合わせ(自治体間の情報共有は比較的容易)
- アドバイザリー業者の活用: 過去に類似案件を担当したコンサルタントは、非公開のベンチマークデータを保有していることが多い
使用料水準の設定に関する考え方
使用料水準は、以下の3つの観点のバランスを取って設定する。
| 観点 | 内容 | 高すぎると | 低すぎると |
|---|---|---|---|
| 事業者の採算性 | 使用料を払っても黒字になるか | 参入者が集まらない | ー |
| 自治体への収益還元 | 公園管理の財源確保 | ー | 収益還元が薄い |
| 市場競争性 | 提案競争が成立するか | 提案が集まらない | 価格競争力の差が出にくい |
面積単価の参考水準(一般論):
使用料の面積単価は、対象公園の立地・来訪者数・商業的ポテンシャルによって大きく異なる。都市部の集客力が高い公園では、郊外の公園の3〜10倍の単価が設定されることもある。国内の事例では年間 数百円/m²〜数千円/m² の幅がある。
具体的な水準は、当該公園の来訪者数・周辺の商業地価・競合する民間施設の賃料水準を調査した上で、サウンディングを通じて民間に妥当性を確認するプロセスが不可欠である。
使用料の評価要素として機能させる
公募設置等指針において、応募者が提案する使用料額を評価配点の一部に加えることで、使用料は 競争要素 として機能する。
郡山市の場合、「5.経費削減」の「収益還元」(40点)の中に使用料・収益還元の提案が含まれており、より高い収益還元を提案した事業者が有利になる設計になっている。
使用料・占用料設定の実務チェックリスト
法的整合の確認:
- 設定する使用料最低額が、条例算定式による額を下回っていないか確認した
- 占用料の対象施設(看板・広告塔等)ごとに条例の単価を確認した
- 使用料・占用料の減免規定(障害者割引等)が条例にある場合、その適用可否を確認した
事業性の確認:
- 設定する使用料最低額で、想定する業態の事業採算が取れるかシミュレーションした
- 売上連動型を採用する場合、売上確認のための監査・報告書提出の仕組みを設計した
- 特定公園施設整備費の民間負担割合(最低10%以上)を事業収支と整合させた
競争設計の確認:
- 使用料額の提案を評価配点に組み込むかどうかを決定した
- 組み込む場合、配点が価格ダンピングを誘発しない水準に抑えられているか確認した
参考文献
都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン(令和7年5月30日改正版) (2025)
開成山公園 公募設置等指針(2022年4月) (2022)
Park-PFI等活用ページ(国土交通省) (2025)
都市公園法(昭和31年法律第79号)第5条の2〜第7条 (最終改正令和4年)
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