メインコンテンツへスキップ
一般社団法人 社会構想デザイン機構

日本語指導が必要な児童生徒84,759人のうち、指導を受けていないのは9,699人 — 人数も割合も前回調査より増えている

|更新
ヨコタナオヤ
約7分で読めます

文部科学省の令和7年度調査で、公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒は84,759人と過去最高になった。増加率も過去最大である。一方、特別な配慮に基づく指導を受けていない児童生徒は9,699人、11.4%で、前回の7,069人、10.2%から人数も割合も増えている。対象が増えるほど届かない層が広がる構造と、高校段階で開く進路の差を読む。

XFBThreads

ざっくり言うと

  1. 公立学校で日本語指導が必要な児童生徒は84,759人と過去最高、増加率も過去最大となった
  2. 特別な配慮に基づく指導を受けていない児童生徒は9,699人、11.4%で前回より増えている
  3. 高校生の大学等進学率は41.2%で、全体の75.0%と33.8ポイントの差がある
中学生の高校等進学率差 7.4ポイント
日本語指導が必要な児童生徒91.5%
全体98.9%
高校生の大学等進学率差 33.8ポイント
日本語指導が必要な児童生徒41.2%
全体75%

指導体制の側も段階で差がある。「特別の教育課程」による指導を受けているのは、義務教育段階では76.4%だが、高等学校段階では15.6%にとどまる。高等学校段階でこの制度が使えるようになったのは令和5年度からである。高校生の中退率は6.4%で、前回調査の7.7%からは下がっている。

高校への進学では7.4ポイントの差だが、大学等への進学では33.8ポイントに開く

何が起きているのか

対象は過去最高だが、指導を受けていない人数と割合はどちらも増えた

文部科学省が令和8年5月に公表した調査結果で、公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒は84,759人となった。過去最高で、増加率も過去最大である。内訳は外国籍が73,313人、日本国籍が11,446人。国立が62人、私立が3,224人ある。

推移を並べると増え方が分かる。平成24年度が33,184人、平成30年度が51,126人、令和5年度が69,123人。9年間でおよそ2倍になった。

目を引くのは、その内側の数字である。特別な配慮に基づく指導を受けている児童生徒は75,060人で88.6%、受けていない児童生徒は9,699人で11.4%。前回の令和5年度調査では、受けていない児童生徒が7,069人、10.2%だった。人数で2,630人、割合で1.2ポイント増えている。

背景と文脈

在籍校は全公立学校の39%に広がり、1校あたりの人数は少ないところが多い

在籍校は全公立学校の39%まで広がった

在籍している学校の分布に、体制づくりの難しさが出ている。

1人以上在籍する公立学校は12,668校で、全公立学校32,122校の39%にあたる。前回は11,123校、全32,573校の34%だった。

5年で5ポイント広がっている。 しかも全公立学校の数自体は32,573校から32,122校へ451校減っており、分母が縮むなかで在籍校が増えた。

ただし、1校あたりは数人である

広がり方の中身を見ると、体制の作りにくさが分かる。5人以上在籍する学校は4,329校、100人以上在籍する学校は28校にとどまる。前回は5人以上が3,438校、100人以上が17校だった。

12,668校のうち、5人以上いるのは4,329校。 残る8,339校は4人以下である。

1校に1人か2人のために専任の指導者を置くことは、財政的にも人員的にも難しい。かといって放っておけば、その子は日本語のわからない授業に座り続けることになる。

高校段階の「特別の教育課程」は5.6%から15.6%へ

指導の形にも段階がある。日本語指導を正規の授業として位置づけるによる指導を受けているのは、義務教育段階で52,725人・76.4%、高等学校段階で947人・15.6%である。

前回との比較で見ると、動きが分かる。義務教育段階は44,309人・76.9%から52,725人・76.4%へ、高等学校段階は245人・5.6%から947人・15.6%へ

高等学校段階が3.9倍に増え、割合は10ポイント上がっている。 この制度が高等学校で使えるようになったのは令和5年度からで、そこから急速に広がった。

実施校も増えている。「特別の教育課程」による指導を行っている学校数は、義務教育段階が8,243校・67.9%から9,439校・68.7%へ、高等学校段階が46校・6.6%から103校・13.1%へ

支援員も増えている

人も置かれている。日本語指導補助者が8,706人、母語支援員が7,301人で、前回は日本語指導補助者7,837人、母語支援員6,266人だった。それぞれ11.1%増、16.5%増である。

対象は22.6%増えている。 支援員の増え方は、それに追いついていない。

構造を読む

高校段階で指導体制が薄く、進路の差もそこで大きく開く

文部科学省の見出しに入らなかった数字がある

この調査の「主な調査結果」に、こう書かれている。

前回調査に比べ、日本語指導が必要な中学生の進学率は上昇し、高校生の中退率は減少。

どちらも事実である。中学生の高校等進学率は90.3%から91.5%へ上昇、高校生の中退率は7.7%から6.4%へ減少している。

同じ表に、見出しに入らなかった数字がある。

高校生の大学等進学率は46.6%から41.2%へ低下している。5.4ポイントの低下である。

差は縮んでいない。広がっている

全体との比較でも同じことが起きる。

全高校生等の大学等進学率は75.0%で、前回の75.0%から変わっていない。日本語指導が必要な高校生の側だけが下がった。

差は28.4ポイントから33.8ポイントへ広がった計算になる。

一方で中学生の高校等進学率の差は、全中学生等99.0%に対する90.3%の8.7ポイントから、98.9%に対する91.5%の7.4ポイントへ縮まっている

入口の差は縮み、出口の差は広がった。

支援が広がった段階で、結果が下がっている

ここが読みにくいところである。

高等学校段階の「特別の教育課程」は5.6%から15.6%へ、実施校は46校から103校へ増えた。支援は明らかに広がっている。 それでも大学等進学率は下がった。

これをどう読むかは、この資料だけでは決まらない。

考えられる読み方は複数ある。対象が2年で69,123人から84,759人へ増えたことで、母集団の構成が変わった可能性がある。高校に入る生徒が増えれば、その中の進路の分布も動く。中学生の進学率が上がったこと自体が、大学等進学率の分母を押し下げる方向に働くこともありうる。

支援が効いていないと断ずる材料も、母集団の変化で説明できると断ずる材料も、この資料にはない。 ただし、見出しが良い方向の2つだけを取り上げていることは事実である。

指導を受けていない人は、人数でも割合でも増えた

もうひとつ、指導を受けていない9,699人という数字の読み方がある。

特別な配慮に基づく指導を受けている児童生徒は75,060人で88.6%、受けていない児童生徒は9,699人で11.4%。前回は受けている62,054人・89.8%、受けていない7,069人・10.2%だった。

人数で2,630人、割合で1.2ポイント増えている。 分母が増えるスピードに体制が追いつかないと、届かない層は絶対数でも割合でも広がる。

ここで言う特別な配慮に基づく指導とは、在籍学級や放課後を含む学校で何らかの日本語指導が行われていることを指す「特別の教育課程」より広い、最も緩い定義である。 その緩い定義でも、9,699人には何も行われていない。

申請しないから届かないのではない

この構図は、制度が用意されていることと届いていることを分けて数える制度からの排除と未受給(このサイトの記事)と同じ形をしている。

ただしここでは、本人が申請しないから届かないのではない。 学校に在籍していて、対象として数えられていて、それでも指導が用意されていない。

少人数が全国に散る形

在籍校が全公立学校の39%まで広がったことは、この問題がもう一部の地域の話ではないことを示している。

1校あたりの人数が少ないまま全国に散る形は、学校のプールが減っていく(このサイトの記事)で見た、少人数のために設備や人を維持できなくなる構図と重なる。

同じ形は制度の側でも起きている。育成就労の転籍(このサイトの記事)で扱ったとおり、外国人が日本で働き続けるには日本語の試験が段階ごとに置かれている。 学齢期に日本語の指導が届かなかった層が、そのまま在留資格の要件に突き当たる。

何を数えれば、次の判断ができるか

いま分かっているのは、在籍者数と指導の実施状況と、進路の割合である。判断のために足りないものが2つある。

1つは、 大学等進学率が下がった理由 である。母集団の構成が変わったのか、高校での支援が結果に結びついていないのか。この資料では分けられない。 見出しに載らなかった数字ほど、理由の説明が要る。

もう1つは、 指導を受けていない9,699人がどこにいるか である。4人以下の学校に散っているのか、特定の自治体に集まっているのかで、打つ手が変わる。都道府県別の内訳は、この概要には載っていない。

この記事で使った統計の出典

  1. 1文部科学省 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査 令和7年度調査結果(令和7年5月1日時点) 出典を開く
  2. 2文部科学省 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査 令和7年度調査結果(令和5年度) 出典を開く
  3. 3文部科学省 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査 令和7年度調査結果(令和5年度と令和7年度) 出典を開く

参考書籍

参考文献

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和7年度)」の結果について文部科学省 総合教育政策局国際教育課 (2026). 文部科学省

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」令和7年度調査結果文部科学省 総合教育政策局国際教育課 (2026). 文部科学省

日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査 調査の概要文部科学省 (2026). 文部科学省

読んだ後に考えてみよう

  1. 対象が増えるとき、届かない層はどう変化するか
  2. 在籍校が広く薄く分布していることは、指導体制に何をもたらすか
  3. 高校段階で進路の差が大きく開くのは、どの時点の何が効いているか

この記事の用語

特別の教育課程
日本語指導が必要な児童生徒に対し、在籍する学級の教育課程の一部に代えて日本語の指導を行い、それを正規の授業として単位や指導要録に位置づける仕組み。平成26年度に小中学校で始まり、令和5年度から高等学校でも使えるようになった。指導を受けているかどうかは学校ごとの体制に左右され、義務教育段階と高等学校段階で実施率に大きな差がある。

関連コンテンツ

XFBThreads

新着コラムをメールで受け取る

週1-2本の社会構造分析コラムを配信します。登録は無料です。

ISVDの活動に参加しませんか?

会員登録で最新の研究・活動レポートをお届けします。協業やプロジェクト参加のご相談もお気軽にどうぞ。