介護支援専門員実務研修受講試験の受験者は、2017年度の131,560人から2018年度の49,332人へ1年で落ちた。受験要件から介護等業務のルートがなくなった年である。7年たっても戻らず、直近3回は56,494人、53,699人、50,601人とふたたび減っている。一方で現職の平均年齢は55.1歳と介護の全職種で最も高い。入口を狭めた制度で、出口だけが進む構造を読む。
ざっくり言うと
- 介護支援専門員実務研修受講試験の受験者は2017年度131,560人から2018年度49,332人へ、1年で62.5%減った
- 直近3回も56,494人、53,699人、50,601人と減り続けている
- 令和7年度の介護労働実態調査で、介護支援専門員の平均年齢は55.1歳と介護の全職種で最も高い
現職の側は逆に高齢化している。令和7年度の介護労働実態調査で、介護支援専門員の平均年齢は55.1歳。介護の全職種で最も高く、最も低い理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等の39.1歳とは16歳の開きがある。回答者全体の平均は49.5歳。
何が起きているのか
受験者は1年で6割減り、7年たっても戻らないまま、直近3回はまた減った
介護支援専門員になるには、実務研修受講試験に通る必要がある。その受験者数を年で並べると、途中に段差がある。
2017年度(第20回)は131,560人。翌年の2018年度(第21回)は49,332人。1年で62.5%減っている。
落ちたこと自体は、要件が変わったのだから起きて当然である。目を引くのはその後だ。直近では2023年度が56,494人、2024年度が53,699人、2025年度が50,601人。7年たっても10万人台には戻らず、それどころか3回続けて減っている。
一方、いま現場にいる人の年齢は上がっている。介護労働安定センターの令和7年度調査によると、介護支援専門員の平均年齢は55.1歳で、介護の全職種で最も高い。回答者全体の平均は49.5歳、最も低い理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等は39.1歳である。同じ業界の中で、16歳の開きがある。
背景と文脈
2018年度から介護等業務のルートが受験要件から外れた
2018年度に何が変わったのか。
受験要件の見直しである。それまでは、国家資格を持たなくても、介護等の業務に一定期間従事していれば受験できた。厚生労働省の各回の集計表には、いまも次の注記が付いている。第20回試験までは受験要件であった介護等業務従事者の人数が、相談援助業務等従事者の数値に含まれている、という趣旨の断り書きである。第21回からこのルートがなくなった。
見直しの根拠は平成27年2月12日の通知にある。改正はこのときに決まり、経過措置により第20回までは従前の要件でも受験できた。段差が2018年度に現れたのは、その経過措置が切れたためである。
意図は分かる。介護保険の計画をつくる職種に、相談援助の専門性を求めた。実際、直後の第21回の合格率は10.1%まで下がり、合格者は4,990人だった。前年の28,233人から8割以上減っている。
ただし合格率は、その後も回によって大きく振れる。2024年度は32.1%で合格者17,228人、2025年度は25.6%で12,961人。受験者が減っても合格率を上げれば合格者は増える。逆も起きる。数の調整は、入口の要件よりも試験の側で行われている。
構造を読む
入口を絞った制度で、現職の高齢化だけが進んでいる
資格制度の入口を絞る判断には、必ず対になる問いがある。絞ったぶんを、どこで埋めるのか。
この職種では、埋まっていない。受験者は7年戻らず、直近3回はまた減っている。そして現職の平均年齢は55.1歳で、介護の全職種で最も高い。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等との16歳差は、単に「ベテランが多い」という話ではない。入ってくる人が減った期間の長さが、そのまま年齢の分布に出ている。
年齢が高いこと自体は、経験の厚みでもある。問題は、その厚みが引退で一度に抜けることだ。平均が55.1歳ということは、10年のうちにかなりの部分が定年の年齢帯に入る。そのとき、下から埋める層が同じ規模でいるかどうかが問われる。いまの受験者数は、その規模を用意していない。
もうひとつ、要件の変更が持つ性質がある。国家資格を持つ人と相談援助の経験がある人に限る、という要件は、すでに別の資格制度を通った人だけを受け皿にする という意味を持つ。介護福祉士、社会福祉士、看護師、准看護師といった資格の側で人が足りていれば問題は起きないが、そちらも供給に余裕があるわけではない。上流が細ければ、下流はそれ以上太くならない。
介護報酬の側から見ると、この職種には別の制約もある。居宅介護支援は、一人のケアマネジャーが担当できる件数に上限が置かれている。人数が増えなければ、支援できる利用者の総数もそこで止まる。事業所が減る動きは訪問介護の倒産91件に対し、通所は45件で2割減った(このサイトの記事)でも見たとおりで、計画をつくる側と実際に訪問する側の両方で、担い手が細っている。
資格の質を上げる設計と、必要な人数を確保する設計は、別のものである。前者だけを動かして後者を放置すると、質の高い人が足りない状態に着地する。制度が用意されていても届かないという構造は制度からの排除と未受給(このサイトの記事)で扱ったが、ここでは届ける側の人がいない。
この記事で使った統計の出典
- 1厚生労働省 第20回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について(平成29年度) 出典を開く
- 2厚生労働省 第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について(平成30年度) 出典を開く
- 3厚生労働省 第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について(令和7年度) 出典を開く
- 4介護労働安定センター 令和7年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査(令和7年度) 出典を開く
参考書籍
- 『介護格差』(外部サイト、新しいタブで開きます)(結城康博、岩波書店)。介護サービスを受けられる人と受けられない人の間に何が起きているのかを、現場の実態から整理した一冊。担い手の減少が利用者側にどう跳ね返るかを考えるのに使える。
参考文献
第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省
第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について — 厚生労働省 (2018). 厚生労働省
第20回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について — 厚生労働省 (2017). 厚生労働省
令和7年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書 — 介護労働安定センター (2026). 公益財団法人介護労働安定センター
介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等 — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省


