厚生労働省の令和7年集計で、民間企業の実雇用率は2.41%と14年連続で過去最高になった。それでも法定雇用率2.5%には届かず、達成企業の割合は46.0%で前年と同じ。未達成の65,033社のうち57.3%は障害者を1人も雇用しておらず、64.0%はあと1人で届く。令和8年7月には法定雇用率が2.7%へ上がる。数字が伸びているのに達成割合が動かない構造を読む。
ざっくり言うと
- 民間企業の実雇用率は2.41%で14年連続の過去最高、雇用障害者数は704,610.0人で22年連続の過去最高
- 法定雇用率2.5%を達成した企業の割合は46.0%で、前年と同じだった
- 未達成の65,033社のうち37,262社、57.3%は障害者を1人も雇用していない
- 令和7年4月に除外率が10ポイント引き下げられ、実雇用率の低下にその影響が含まれると資料自身が注記している
全体の実雇用率は2.41%で、法定雇用率2.5%に届いていない。達成企業の割合は46.0%で前年と同じ。未達成企業65,033社のうち、障害者を1人も雇用していない企業が37,262社で57.3%を占め、不足数が0.5人または1人の企業が64.0%を占める。令和8年7月からは法定雇用率が2.7%、対象事業主が従業員37.5人以上になる。
何が起きているのか
雇用者数も実雇用率も過去最高だが、達成企業の割合は動かない
厚生労働省が令和7年12月に公表した集計で、民間企業に雇用されている障害者は704,610.0人となった。前年より27,148.5人、4.0%増えて、22年連続で過去最高を更新している。
障害の種別では身体障害者が373,914.5人で1.3%増、知的障害者が162,153.5人で2.8%増、精神障害者が168,542.0人で11.8%増。精神障害者の伸びが最も大きい。
実雇用率も上がっている。2.41%で14年連続の過去最高である。表示上は前年と同じ2.41%だが、小数点以下第3位で比べると令和6年が2.405、令和7年が2.412で上昇している。
ところが、達成した企業の割合は動かない。法定雇用率2.5%を達成した企業の割合は46.0%で、前年と同じだった。半数を割ったままである。
背景と文脈
規模が小さいほど実雇用率が低く、上がったのは1,000人以上だけである
実雇用率が下がった規模がある。理由は資料に書いてある
規模別に分けると、伸びがどこで起きているかが見える。
実雇用率は40.0〜100人未満で1.94%、100〜300人未満で2.18%、300〜500人未満で2.27%、500〜1,000人未満で2.41%、1,000人以上で2.69%。前年と比べると、上がったのは1,000人以上規模だけで、それ以外の規模はすべて下がっている。法定雇用率2.5%を上回っているのも1,000人以上の規模だけである。
この低下には、集計資料自身が注釈を付けている。
昨年比で除外率が10ポイント下がっていることの影響による低下を含む。
除外率とは、分母から人数を引く仕組みである
除外率は、雇うべき障害者の数を計算するときに、常用雇用労働者数から一定の割合を差し引く仕組みである。差し引いた後の数に法定雇用率を掛けたものが、その会社の義務になる。
この制度は平成14年の法改正で平成16年4月に廃止された。経過措置として業種ごとに率を設定し、段階的に引き下げることになっている。
引き下げは3回行われた。平成16年4月、平成22年7月、令和7年4月に、それぞれ一律10ポイントである。令和7年6月1日現在の集計は、3回目の引き下げが入った最初の年にあたる。
業種ごとの率も資料に載っている。幼稚園・幼保連携型認定こども園は60%から50%、小学校と道路旅客運送業は55%から45%、特別支援学校は45%から35%、建設業・鉄鋼業・道路貨物運送業・郵便業は20%から10%。もともと5%と10%だった業種は、適用が無くなった。
5,069.5人の会社で、義務が101人から114人になる
資料には計算例が載っている。
常用労働者数5,069.5人の会社の場合、除外率20%なら1,013人を差し引いて基礎労働者数は4,056.5人、法定雇用率2.5%を掛けて義務は101人。同じ会社で除外率が10%になると差し引くのは506人、基礎労働者数は4,563.5人、義務は114人になる。
人を1人も増やしていないのに、義務が13人増える。 端数は切り捨てられる。
分母が1年で104万人増えた
全体の分母も動いている。法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数は29,210,526.0人で、前年の28,162,399.0人から1,048,127人増えた。3.7%の増加である。
障害者の数の伸びは4.0%だった。分子が分母をわずかに上回ったので、実雇用率は2.405%から2.412%へ動いた。 表示上は2.41%のまま変わらない。
規模の小さいほうでは逆になっている。40.0〜100人未満の分母は3,994,359.5人から4,193,772.0人へ5.0%増え、雇用障害者数は78,280.0人から81,287.5人へ3.8%増えた。分母のほうが速く増えたので、率は1.96%から1.94%へ下がった。
対象になる会社が3,228社増え、そのうち3,045社は100人未満だった
義務の対象になる会社の数も変わっている。企業数は117,239社から120,467社へ3,228社増えた。40.0〜100人未満の規模だけで64,840社から67,885社へ3,045社増えている。
増加分の94%が、いちばん小さい規模に入っている。 除外率が下がると差し引く人数が減り、基礎労働者数が増える。40人の線を越えると、それまで対象外だった会社が対象になる。
達成した割合は、規模の順には並ばない
規模別の実雇用率はきれいに並ぶが、達成企業の割合はそうならない。
法定雇用率を達成した企業の割合は40.0〜100人未満で44.7%、100〜300人未満で48.6%、300〜500人未満で40.3%、500〜1,000人未満で44.5%、1,000人以上で57.5%である。最も低いのは300〜500人未満の40.3%で、いちばん小さい規模より4.4ポイント低い。
前年と比べると、40.0〜100人未満は44.3%から44.7%、500〜1,000人未満は44.3%から44.5%、1,000人以上は54.7%から57.5%へ上がり、100〜300人未満は49.1%から48.6%、300〜500人未満は41.1%から40.3%へ下がった。実雇用率が下がった規模でも、達成した会社の割合は上がっている場合がある。
未達成の企業は二つの性質に分かれる
未達成は65,033社で、そのうち不足数が0.5人または1人の企業が41,631社、64.0%を占める。あと1人で届く企業が3分の2近くある。
同時に、障害者を1人も雇用していない企業が37,262社あり、未達成企業の57.3%である。この二つは重なっている。小さい企業では、1人がそのまま義務の全部にあたるからである。
構造を読む
小さな企業では1人の有無が達成と未達成を分ける
未達成企業の57.7%は、100人未満の会社である
未達成の内訳を規模で割ると、どこに集まっているかがはっきりする。
未達成企業65,033社の規模別内訳は、40.0〜100人未満が37,525社、100〜300人未満が19,060社、300〜500人未満が4,228社、500〜1,000人未満が2,687社、1,000人以上が1,533社。37,525社は全体の57.7%にあたる。
その37,525社の中身も偏っている。40.0〜100人未満の未達成企業のうち、不足数が0.5人または1人の企業は33,116社で88.3%。この規模では不足数が2人を超える企業は1社もない。
1人も雇っていない企業の90.5%も、同じ規模にいる
障害者の数が0人である企業は、40.0〜100人未満で33,710社、100〜300人未満で3,518社、300〜500人未満で29社、500〜1,000人未満で5社、1,000人以上で0社。
37,262社のうち33,710社、90.5%が100人未満の会社である。1,000人以上の規模には1社もない。
同じ規模階級で見ると、40.0〜100人未満の未達成企業37,525社のうち89.8%が0人雇用である。この規模で未達成であることは、ほぼそのまま1人も雇っていないことを意味する。
40人の会社にとって、2.5%は1人である
割合で定めた義務は、規模によって意味が変わる。
従業員40人の会社にとって、2.5%は1人である。1人雇えば達成、雇わなければ未達成になる。中間がない。従業員1,000人の会社なら25人で、24人でも26人でも運用の幅がある。人が辞めても翌月に補充すればよい。
規模が小さいほど、達成と未達成の距離が離散的になる。 未達成企業の64.0%が「あと1人」なのは、そこにいる企業の多くが小さいからだ。数字がそれを示している。
初めての1人と、2人目以降
初めての1人を雇うことには、2人目以降とは違う難しさがある。業務の切り出し、設備、相談の窓口、周囲の理解。それらを一度に用意する必要があり、しかも比較する社内事例がない。すでに雇っている企業が人数を増やすほうが、はるかに容易である。
実雇用率が1,000人以上規模だけで上がっているのは、この非対称の表れでもある。
631社に53,710.5人が集まっている
大きい企業が人数を増やす経路も数字に出ている。特例子会社の認定を受けている企業は631社で前年より17社増え、雇用されている障害者は53,710.5人、前年の50,290.5人から6.8%増えた。全体の伸びは4.0%だったので、それより速い。
631社で民間企業全体704,610.0人の7.6%を占めている。
中身も違う。特例子会社の内訳は身体障害者12,920.0人、知的障害者26,739.5人、精神障害者14,051.0人で、知的障害者が49.8%を占める。民間企業全体では23.0%である。
704,610.0人は、人数ではない
もうひとつ、この集計の読み方に関わる注意がある。
重度身体障害者と重度知的障害者は1人を2人として数える。だから704,610.0人は延べの数である。実人数は601,264人と別に書かれている。その差は103,346人ある。
過去最高が22年続いているのは延べの数であって、働いている人の数ではない。
令和8年7月に2.7%へ上がる
令和8年7月からは法定雇用率が2.7%になり、対象となる事業主の範囲も従業員37.5人以上に広がる。40人の会社に必要な人数は1人から1.08人になる。端数は切り捨てられるため、必要数は1人のまま変わらない。一方、37.5人から40人の企業が新たに義務の対象になる。目標を上げると、いま届いていない層の外側に、新しい未達成の層が加わる。
除外率の引き下げも同じ向きに効く。分母が増えれば率は下がり、対象になる会社は増える。
義務を課す側の数字にも、同じ注釈が付いている
もうひとつ見ておくべき数字がある。義務を課す側の実雇用率である。国は3.04%で前年より0.03ポイント低下、都道府県は3.03%で0.02ポイント低下、市町村は2.69%で0.06ポイント低下、教育委員会は2.31%で0.12ポイント低下している。教育委員会の法定雇用率は2.7%なので、届いていない。
この4つにも、民間の規模別と同じ注釈が付いている。 除外率の10ポイント引き下げによる低下を含む、と資料は書いている。公的機関の場合、除外職員ではなくなった医師や教育職員が一定割合を占める機関について除外率を設定し、段階的に引き下げている。教育委員会の下げ幅が最も大きいのは、この構造と重なる。
達成した機関の割合も動いた。都道府県教育委員会は47機関中14機関で29.8%、前年は22機関で46.8%だった。
次の集計で何を見るか
分かっているのは、雇用者数と実雇用率と達成割合、そして除外率が今年下がったことである。分かっていないことが二つある。
一つは、 実雇用率の低下のうち除外率の分がどれだけか である。資料は「影響による低下を含む」と書くだけで、分けた数字を出していない。分けなければ、現場で何が起きたのかは読めない。
もう一つは、 新たに対象になった3,045社がその後どうなったか である。この集計は6月1日時点の一断面で、対象になったばかりの会社が1年後に届いたかどうかは、次の集計を待つしかない。
制度が用意されていることと届いていることを分けて数える必要があるのは制度からの排除と未受給(このサイトの記事)で扱った構造と同じで、ここでは義務の側に同じことが起きている。総量は増えているのに、担い手の分布は変わっていない。
就労の場そのものの安定については、訪問介護の倒産91件に対し、通所は45件で2割減った(このサイトの記事)で見た報酬と事業規模の関係が、福祉の側でも同じように効く。
この記事で使った統計の出典
- 1厚生労働省 令和7年 障害者雇用状況の集計結果(令和7年6月1日現在) 出典を開く
- 2厚生労働省 令和7年 障害者雇用状況の集計結果(平成16年4月廃止) 出典を開く
- 3厚生労働省 令和7年 障害者雇用状況の集計結果(平成16年4月・平成22年7月・令和7年4月) 出典を開く
- 4厚生労働省 令和7年 障害者雇用状況の集計結果(令和8年7月) 出典を開く
参考書籍
- 『介護格差』(外部サイト、新しいタブで開きます)(結城康博、岩波書店)。福祉サービスを受けられる人と受けられない人の間に何が起きているのかを、現場の実態から整理した一冊。制度上の義務と現場の運用のずれを考えるのに使える。
参考文献
令和7年 障害者雇用状況の集計結果 — 厚生労働省 職業安定局障害者雇用対策課 (2025). 厚生労働省
令和7年 障害者雇用状況の集計結果(報道発表) — 厚生労働省 (2025). 厚生労働省
障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について — 厚生労働省 (2023). 厚生労働省
障害者雇用状況報告の集計結果について — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省


