令和6年3月から7月にハローワークが把握した障害者の解雇は4,884人で、うち4,279人が就労継続支援A型事業所の利用者だった。令和6年8月末時点で再就職が決まったのは936人、B型事業所への移行が2,073人である。A型は雇用契約にもとづく働き方で最低賃金が適用され、B型は雇用契約がない。報酬の評価方法を変えた改定が、人をどちらへ動かしたのかを読む。
ざっくり言うと
- 令和6年3月から7月の解雇者4,884人のうち、4,279人が就労継続支援A型事業所の利用者だった
- 令和6年8月末時点で再就職が決定したのは936人、B型事業所への移行は2,073人である
- その936人のうち696人は、別のA型事業所への就職だった
- A型は雇用契約にもとづき最低賃金が適用される働き方で、B型に雇用契約はない。平均額は令和4年度で月83,552円と17,031円の4.9倍差である
令和6年3月から7月にハローワークが解雇届により把握した障害者の解雇者は4,884人で、うち4,279人がA型事業所の利用者だった。再就職936人とB型への移行2,073人を合わせると全体の7割程度を占める。「上記以外」は残りを差し引いた数で、内訳は資料に示されていない。
何が起きているのか
5か月で4,279人が解雇され、行き先は再就職より B型移行が2倍以上多かった
5か月で4,279人
社会保障審議会の障害者部会に令和6年11月に示された資料に、数字が並んでいる。
令和6年3月から7月までにハローワークが解雇届により把握した障害者の解雇者数は4,884人で、このうち4,279人が就労継続支援A型事業所の利用者だった。5か月間の数である。
月ごとに見ると山がある。全数は3月823人、4月1,013人、5月1,350人、6月872人、7月826人。うちA型事業所は3月698人、4月887人、5月1,241人、6月766人、7月687人。5月が最も多く、この月は解雇された障害者の91.9%がA型事業所の利用者だった。
令和6年度の報酬改定は4月に施行されている。
行き先は、再就職よりB型が2倍多い
その行き先が示されている。令和6年8月末時点で再就職が決定した者は936人、就労継続支援B型事業所への移行または移行予定の者は2,073人で、資料はこれらが全体の7割程度を占めると書いている。
残りは求職中949人、その他321人である。求職中949人のうち932人はハローワークで再就職支援を受けている。その他321人は、今後の意向が未定の者と再就職の希望がない者を含む。
再就職936人のうち696人は、別のA型事業所だった
この936人の中身が資料に書いてある。再就職936人のうち、A型事業所への就職は696人。
74.4%が、また別のA型事業所である。 A型の外へ出たのは936人から696人を引いた240人で、4,279人の5.6%にあたる。
この4,279人は、A型全体の解雇者数ではない
資料の注に定義が書いてある。
就労継続支援A型事業所の解雇者数は、各月内に10人以上の解雇届が提出された事業所における解雇者数に限る。なお、当該事業所のうち9割超は生産活動収支が赤字の事業所。
1か月に9人以下しか解雇届が出ていない事業所は、この数に入っていない。 4,279人はA型の解雇者数の下限であって、全部ではない。
同時に、この注は数えた事業所の性質も書いている。9割超が生産活動収支の赤字である。
規模も見ておく。A型事業所は4,472か所、利用者は87,262人である。
背景と文脈
報酬の評価に生産活動の収支が強く効く形へ改定された
A型とB型は、名前が似ているが立場が違う
就労継続支援A型は雇用契約を結ぶ。労働関係法令が適用され、最低賃金も適用される。事業所には条件が課されていて、資料はこう書いている。
指定就労継続支援A型事業者は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない。
つまり、事業で稼いだ額から経費を引いた残りで、賃金を払いきることが求められる。給付費で賃金を賄ってはならない、という趣旨である。
B型に雇用契約はない。受け取るのは賃金ではなく工賃で、最低賃金の適用もない。その代わり、利用の条件は緩く、体調に合わせた通い方ができる。
月額で4.9倍の差がある
金額が公表されている。令和4年度の平均賃金はA型事業所で月額83,552円、B型事業所の平均工賃は月額17,031円。4.9倍の差がある。
推移も出ている。A型の平均賃金は平成24年度の68,691円から令和5年度の86,752円へ、11年で18,061円上がった。B型は平成24年度の14,190円から令和4年度の17,031円まで、10年で2,841円である。
令和5年度のB型の数字は、この線の続きではない。 22,649円と出ているが、資料は対前年比の欄に数字を入れず「−」としている。理由も書いてある。
令和5年度は、令和6年度報酬改定にて平均工賃月額の計算方法が変更となったことにより、実績が大幅に増加している。
令和6年度の改定で、スコアの下限が10点から−65点になった
A型の基本報酬はスコアで決まる。令和6年度の報酬改定は、その評価項目を組み替えた。資料に改定前後の一覧がある。
| 評価指標 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 5〜80点 | 5〜90点 |
| 生産活動 | 5〜40点 | 【−20〜60点】 |
| 多様な働き方 | 0〜35点 | 0〜15点 |
| 支援力向上 | 0〜35点 | 0〜15点 |
| 地域連携活動 | 0〜10点 | 0〜10点 |
| 経営改善計画 | (なし) | 【−50〜0点】 |
| 利用者の知識及び能力向上 | (なし) | 0〜10点 |
生産活動の評価は、生産活動収支が賃金総額を上回った場合には加点、下回った場合には減点する形になった。経営改善計画に基づく取組を行っていない場合の減点項目も新設された。
満点はどちらも200点で変わらない。下限が変わった。 改定前は最低でも10点だったものが、改定後は−65点まで下がる。下限を押し下げている2項目は、どちらも金の話である。
一方で、多様な働き方と支援力向上はそれぞれ上限35点から15点へ下がった。利用者の働き方と職員の支援力を測る2項目が、合わせて40点分縮んだ。
生産活動を見る期間も伸びた。改定前は前年度と前々年度の2年、改定後は前々々年度を加えた3年で評価する。
スコアが報酬に効く幅は大きい。定員20人以下で人員配置7.5対1の場合、170点以上なら1日791単位、60点未満なら325単位である。2.4倍の開きがある。
半分の事業所が、そもそも基準を満たしていない
改定より前の状態も資料にある。令和5年3月末時点で、生産活動の収益が利用者の賃金総額を下回っている事業所は、経営状況を把握した3,715事業所のうち1,882事業所、50.7%。前年は3,512事業所のうち1,984事業所、56.5%だった。
この50.7%は指定事業所4,472か所に対する割合ではない。 経営状況を把握できたのは3,715か所で、残る757か所(16.9%)は把握されていない。
続いている事業所も多い。1,882事業所のうち1,507事業所、80.1%は前年も基準を満たしていなかった。経営改善計画書を出しているのは1,690事業所で、提出率は89.8%である。
4か月でA型は2,844人減り、B型は16,053人増えた
利用者数の推移が出ている。A型の利用者は令和6年3月の90,106人から令和6年7月の87,262人へ2,844人減った。B型は同じ期間に352,862人から368,915人へ16,053人増えた。
事業所数も同じ向きに動いた。A型は4,634か所から4,472か所へ162か所減り、B型は17,295か所から17,820か所へ525か所増えた。
A型の事業所数が減ったのは、平成27年3月から並べたこの図で初めてである。
ただし、B型の増加16,053人のうちA型からの移行2,073人は12.9%にあたる。B型の伸びの大半は、A型から来た人ではない。
構造を読む
経営を厳しく評価する設計が、雇用契約のない働き方への移動を生んだ
改定の意図は読み取れる
給付費に頼って賃金を払う事業所を減らし、生産活動で稼げる事業所を残す。A型が雇用の場である以上、事業として成立していることを求めるのは筋が通っている。50.7%が基準を満たしておらず、その80.1%が前年から続いていたのだから、放置してよい状態でもなかった。
問題は、成立しなかった事業所にいた人がどこへ行くかである。
測っている指標と、動いた立場が違う
数字はそれを示している。再就職936人に対して、B型への移行が2,073人。A型を出た人のうち、雇用契約のある働き方に移ったのは2割ほどで、雇用契約のない働き方へ移ったのが5割近い。
しかもその2割の中身は、74.4%が別のA型事業所である。A型の外の職場に移った240人は、4,279人の5.6%にとどまる。
これは、政策の目標から見ると逆を向いている。障害者の就労支援は、福祉的就労から一般就労へという方向で組み立てられてきた。A型はその中間に位置し、雇用契約を持ちながら支援を受ける段階として置かれている。そこから一般就労へ進むのが想定された流れである。
実際に起きたのは、その中間の段階が経営の評価で削られ、そこにいた人が下の段階へ移るという動きだった。
事業所を評価する指標と、利用者の立場を測る指標が別だからである。 生産活動収支は事業所の経営を測る。雇用契約の有無は利用者の立場を測る。改定は前者を強く評価したが、前者が悪化した結果として後者がどう動くかは、報酬の設計の中に入っていない。
同じ改定が、B型の平均工賃の計算方法も変えた
もうひとつ、同じ令和6年度の改定に含まれていた変更がある。
B型の平均工賃月額は、報酬体系に使われる数字である。その分母が変わった。
令和4年度までは前年度の「工賃支払対象者数」を分母に用いた計算方式により算出していたところ、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定において、障害特性等により利用日数が少ない方を受け入れる事業所へ配慮し、前年度の「一日当たりの平均利用者数」を分母に用いた新しい算定方式を導入することとした。
工賃を受け取る人の数より、1日あたりの平均利用者数のほうが少ない。分母が小さくなれば、1人あたりの金額は上がる。誰の受取額も変わっていなくても上がる。
厚生労働省はこの点を隠していない。折れ線を令和4年度で切り、令和5年度は離れた点として置き、対前年比を「−」にしている。それでも、A型の側を厳しく測り直した改定が、B型の側の数字を上向きに見せる計算に変えたことは、同じ年の同じ改定の中で起きている。
厚生労働省の対応
対応はとられている。A型事業所を廃止する際の留意点について都道府県等に周知徹底を依頼し、令和6年10月には指定権者と支給決定権者の連携、都道府県労働局・ハローワークとの情報共有の強化を依頼した。
雇用の側では離職予定者をハローワークの支援につなげる自治体との情報共有、個別の職業相談・職業紹介、一般就労に移行できる就労能力があると思われる者への求人のマッチング、雇用保険の集団受付、離職者向けの企業見学会と就職面接会を実施している。936人の再就職は、その結果でもある。
ただし、B型へ移った2,073人のほうが多い。
分かっていないこと
分かっているのは、解雇された人数と、8月末時点の行き先の内訳である。分かっていないことが三つある。
一つは、 4,279人に入っていない人の数 である。1か月に9人以下の解雇届しか出ていない事業所は数えられていない。
二つは、 移行した2,073人のその後 である。8月末時点の一断面で、B型で働き続けているのか、その後に一般就労へ進んだのかは分からない。
三つは、 移行によって受け取る額がどう変わったか である。平均で見れば4.9倍の差があるが、この2,073人の個々の額は公表されていない。
指標の選び方が結果を左右する構図はアウトカム指標の設計(このサイトの記事)で扱ったが、ここでは指標が測っていない側で変化が起きた。事業所の経営は改善に向かうかもしれない。そこで働いていた人の立場は、測られないまま動いた。
同じ改定が事業の形によって逆向きに効く例は訪問介護の倒産91件に対し、通所は45件で2割減った(このサイトの記事)でも見た。報酬の単位をどこに置くかで、残る事業と消える事業が決まる。
雇用の側の状況は障害者の実雇用率2.41%は14年連続で過去最高、それでも達成企業は46.0%(このサイトの記事)で見たとおりで、受け入れる側の企業も半数が法定雇用率に届いていない。
この記事で使った統計の出典
- 1厚生労働省 就労継続支援A型の状況について(社会保障審議会障害者部会 第143回 資料3)(令和6年11月14日) 出典を開く
- 2厚生労働省 就労継続支援A型の状況について(社会保障審議会障害者部会 第143回 資料3)(令和6年7月実績) 出典を開く
- 3厚生労働省 令和5年度工賃(賃金)の実績について(令和4年度) 出典を開く
- 4厚生労働省 令和5年度工賃(賃金)の実績について(平成24年度〜令和5年度) 出典を開く
- 5厚生労働省 令和5年度工賃(賃金)の実績について(平成24年度〜令和4年度) 出典を開く
- 6厚生労働省 就労継続支援A型の状況について(社会保障審議会障害者部会 第143回 資料3)(令和5年3月末時点) 出典を開く
- 7厚生労働省 就労継続支援A型の状況について(社会保障審議会障害者部会 第143回 資料3)(令和4年3月末時点) 出典を開く
- 8厚生労働省 就労継続支援A型の状況について(社会保障審議会障害者部会 第143回 資料3)(令和6年3月〜7月) 出典を開く
参考書籍
- 『介護格差』(外部サイト、新しいタブで開きます)(結城康博、岩波書店)。福祉サービスを受けられる人と受けられない人の間に何が起きているのかを、現場の実態から整理した一冊。報酬の設計が現場をどう動かすかを考えるのに使える。
参考文献
就労継続支援A型の状況について(社会保障審議会障害者部会 第143回 資料3) — 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課/職業安定局障害者雇用対策課 (2024). 厚生労働省
社会保障審議会(障害者部会) — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省
令和5年度工賃(賃金)の実績について — 厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部 (2025). 厚生労働省


