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一般社団法人 社会構想デザイン機構

重点3分野の外側にPFSは届いているか

ヨコタナオヤ
約6分で読めます

令和7年度末のPFS事業379件のうち、まちづくりは24件、就労支援は15件、環境は2件である。分野を広げる方針は2期続けて掲げられているが、広がり方は分野別手引きの有無と対応していない。前アクションプランの達成状況を見ると、増えたのは件数で、新しく始めた自治体は目標の半分に届いていない。

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このノートは公共資産活用研究室(ISVD-LAB-005)の構造分析シリーズである。PFSの分野展開について、令和7年度末の実施状況調査と令和8年3月に決定されたアクションプランの記述から、何が広がっていて何が広がっていないかを整理する。

何が起きているのか

内閣府は令和7年12月から令和8年2月にかけて全地方公共団体にアンケート調査を行い、回答率90.9%で結果をまとめた。それによれば、令和7年度末時点のPFS事業は379件で、前年度末から42件増えている。

分野別に見ると、政府が重点3分野としている医療・健康、介護、再犯防止に大きく寄っている。

介護
153分野別手引きあり
医療・健康
131分野別手引きあり
まちづくり
24分野別手引きあり
就労支援
15手引きなし
再犯防止
7分野別手引きあり
環境
2手引きなし
重点3分野
手引きの有無と件数は対応していない。再犯防止は手引きがあって7件、就労支援は手引きがなくて15件
本文に件数が記されているのは6分野で、合計332件。全体は379件で、差の47件の内訳は本文に書かれていない(図表にのみ掲載)
分野別のPFS事業件数(令和7年度末時点)と、府省庁が作成した分野別手引きの有無。内閣府の実施状況調査と共通的ガイドラインの記載から作成

本文に件数が書かれているのは6分野で、合計332件になる。全体は379件なので、差の47件がある。この内訳は本文に記載がなく、図表にしかない。分野の広がりを外から追おうとすると、この時点で一部が見えなくなる。

環境分野は2件で、報告書は「昨年度と変化がなかった」と明記している。まちづくり分野は24件で2件増えた。

背景と文脈

分野を広げる方針は2期続いている

令和8年3月25日にPFS関係府省庁連絡会議が決定したアクションプランは、令和8年度から10年度までの方針を定めている。重点3分野を中心に事例の蓄積を進めつつ、まちづくり、社会参加・社会的支援活動の促進、就労支援、環境等の多様な領域へ展開する、という書き方である。

まちづくり分野については、内閣府と国土交通省が、共通的ガイドラインを踏まえた手引きの充実や先導的な事例の紹介により導入を促すとされている。

分野別の手引きは、共通的ガイドラインの解説に3件が挙げられている。医療・健康及び介護分野(厚生労働省・経済産業省)、再犯防止分野(法務省)、まちづくり分野へのSIB導入(国土交通省)である。環境分野と就労支援分野の手引きは、この一覧にない

手引きの有無と件数は対応していない

手引きがあるから広がる、という説明は成り立たない。数字を並べると噛み合わないためである。

分野件数分野別手引き
介護153件あり
医療・健康131件あり
まちづくり24件あり
就労支援15件なし
再犯防止7件あり
環境2件なし

再犯防止は手引きがあって7件、就労支援は手引きがなくて15件である。手引きの有無を横に並べても、件数の順序は説明できない。

介護と医療・健康に集中している理由は、手引きよりも先行事例の厚みで説明するほうが自然である。ただし、その厚みがどこから来たのかを、公表資料だけから確定することはできない。

前アクションプランの達成状況

新しいアクションプランには、前アクションプラン(令和5年度から7年度)の達成状況が記されている。ここが分野展開を考えるうえでいちばん重要な箇所である。

指標目標実績(令和6年度末時点)
重点3分野のPFS事業案件数90件93件
重点3分野の新規実施団体数60団体28団体(約47%の達成率)

件数の目標は達成し、団体数の目標は半分に届かなかった。増えたのは事業の数であって、新しく始めた自治体の数ではない

先導的な事業についても記載がある。令和5年度に、環境分野で住民の省エネ行動の推進を図るモデル性の高い指標を設定した事業が1件実施された、というものである。環境分野の2件のうち1件が、この先導的な事業にあたると読める。

政府自身の懸念も書かれている。実施されている事業の内容を見ると、その半数以上が単年度契約の事業であり、複数年度であること自体が優れているわけではないものの、社会課題の解決に資する成果の発現には中長期の時間を要することが多い。そのため、単年度事業が多い現状からは、社会課題の解決までの道筋の仮説設定や分析・評価が尽くされた、いわば本質的なPFS事業が十分に普及していないことが懸念される、としている。

構造を読む

分野展開の議論は、たいてい「どの分野を次に開くか」という形で立てられる。しかし公表されている数字が示しているのは、別の軸である。

件数は増え、実施団体は増えにくい。同じ自治体が2件目、3件目を積む形で全体の数は伸びる。一方、初めて手を出す自治体は目標に届かない。前アクションプランの達成率の差は、そこを示している。

この構造で分野だけを広げると、何が起きるか。すでに経験のある自治体が、経験のある手法を別の分野に持ち込む。分野の欄は埋まるが、担い手の裾野は広がらない。環境分野の2件のうち1件が先導的な事業として国に選ばれている状況は、その分野に厚みがないことの裏返しでもある。

新しいアクションプランは、目標値の置き方を変えている。

指標目標値
新たに開始されたPFS事業の件数150件
新たにPFS事業を実施した団体数75団体
新たに開始された先導的なPFS事業の件数3件

3つとも「新たに」が付いている。前プランの「重点3分野の案件数」から、新規性を測る指標へ寄せた形である。加えて、先導的な事業には要件が明文化された。Type-Aは7要件で、アウトカム指標に応じた成果支払、複数年度事業、オープンサウンディングまたは公募、専門機関の助言・監修、厳密な評価デザイン、便益等の推定、5,000万円以上の事業規模である。Type-Bは前の4つに、モデル性の高い成果指標の設定を加えた5要件になる。

複数年度事業が要件に入っている点が効く。半数以上が単年度という現状に対して、要件の側から複数年度を求める設計である。

残る問い

第一に、47件の内訳が本文にない。分野別の広がりを外から追うには、図表を読むしかない。分野展開を政策目標に掲げる以上、分野別の件数は本文に書かれているほうが追いやすい。

第二に、環境分野の2件をどう読むか。前年から動いていないという事実だけがある。案件が形成されなかったのか、形成されたが成立しなかったのか、公表資料からは区別できない。

第三に、新規実施団体という指標が何を測るか。75団体という目標は前プランの60団体より高い。ただし前プランの実績は28団体だった。目標を上げたことと、達成の見込みは別の話である。この差をどう埋めるかは、アクションプランの本文には書かれていない。分野を広げる話と、初めての自治体を増やす話は、別々に設計されるべきだと考えられる。

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この記事で使った統計の出典

  1. 1内閣府 国内におけるPFS事業の取組状況について(令和8年3月31日(令和7年度末時点)) 出典を開く

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