このノートは公共資産活用研究室(ISVD-LAB-005)の構造分析シリーズである。PFS普及率9%の構造分析(このサイトの記事)の続篇として、PFSの実施体制に用意されている「サービスを提供しない立ち位置」を、内閣府の共通的ガイドラインと最新の実施状況調査から読む。
何が起きているのか
PPP/PFIの議論でPFSが取り上げられるとき、話は自治体と受託事業者の2者に集中しやすい。行政が成果に対して払い、事業者が成果を出す。この2者で説明が閉じてしまう。
しかし内閣府の共通的ガイドラインは、PFS事業の実施体制を5者で定義している。
| 立ち位置 | 定義(ガイドラインの記述) |
|---|---|
| 委託者 | PFS事業を発注し、支払いを実施する地方公共団体等 |
| 受託者 | PFS事業の事業活動を実施する民間事業者 |
| 第三者評価機関 | 成果指標の測定、アウトカム評価のほか、事業活動の有効性等について、第三者の立場から評価する者 |
| 中間支援組織 | 地方公共団体等やサービス提供者等の事業関係者の間の調整や、案件形成を実施する者 |
| 資金提供者 | 事業活動に必要な資金を提供し、成果に応じたリスクを負担する者 |
後ろの3つは、いずれもサービスを提供しない。このうち第三者評価機関は、評価の独立性を確保する立場なので、事業の推進側には立てない。事業を前に進める側でサービスを提供しない椅子は、中間支援組織と資金提供者の2つである。
この2つの椅子の埋まり方には差がある。資金提供者が入る形はソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)と呼ばれ、件数が数えられている。内閣府の調査によれば、令和7年度末時点のPFS事業379件のうちSIB案件は19件で、実施件数全体の約5%にとどまる。
中間支援組織のほうは、件数が公表されていない。ガイドラインは役割を定義し、国内の先行事例ではコンサルティング会社等が担っていると解説しているが、何団体が関わっているかを示した集計は見当たらない。
背景と文脈
資金提供者の椅子とSIB
SIBは、受託者が金融機関等の資金提供者から資金を調達し、その償還等が自治体の支払額に応じて行われる仕組みである。ガイドラインは、この形の利点を3つ挙げている。
- 規模が大きい事業や、成果指標の改善状況をより大きな割合で支払いに反映する事業のように、リスクの大きな事業の実施が可能になる
- 財務基盤が弱い中小企業やNPO等、長期化しやすい事業期間中の運転資金の確保やリスク負担が難しい民間事業者も参画できる
- 資金提供者が入ることで、事業の採算性や計画性の検証に委託者・受託者以外の第三者の目が入り、事業に規律が生まれる
2つめが実務上いちばん効く。休眠預金やその他の助成では、財務基盤の弱さは審査で不利に働く。SIBは、その弱さを資金提供者が引き取る構造になっている。
ガイドラインが挙げる実施例は次の3件である。
| 事業 | 発注者 | 資金提供者 |
|---|---|---|
| 大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 | 八王子市 | 株式会社デジサーチアンドアドバタイジング、株式会社みずほ銀行、個人投資家、一般財団法人社会変革推進財団(各資金提供者は匿名組合に出資) |
| ずっと元気!プロジェクト | 豊田市 | Next Rise ソーシャル・インパクト・ファンド投資事業有限責任組合 |
| SIBによる非行少年への学習支援事業 | 法務省 | 株式会社日本政策投資銀行(信託受益権投資型)、株式会社三井住友銀行(変動金利型貸付)、株式会社CAMPFIRE(融資型クラウドファンディング) |
資金提供の形が1件ずつ違う。匿名組合出資、投資事業有限責任組合、信託受益権、貸付、融資型クラウドファンディング。同じ椅子でも、座り方が定型化していない。
同時に、この椅子にはコストがつく。ガイドラインは、金融機関等への手数料やSPCを設立する場合の諸費用など、追加的な費用がかかることに配慮したうえで案件形成を進める必要があると書いている。資金提供者を入れると、事業費以外の費用が増える。19件という数字は、この費用に見合う規模の事業が限られていることの反映でもある。
契約の前に座る中間支援組織
中間支援組織は、契約の当事者ではない。ガイドラインの解説は、国内の先行事例で中間支援組織として活動しているのはコンサルティング会社等で、自治体を支援する立場から案件形成を実施する場合が多い、と書いている。
役割の幅も明記されている。委託者に対して技術的な助言など伴走支援をする場合、成果評価の役割も担う場合など、事業によって様々である、とされている。
ここに1つ、読み飛ばせない点がある。同じ組織が案件形成と成果評価の両方を担い得ると書かれていることである。ガイドラインは別の箇所で、第三者評価機関について「評価の独立性を確保する上では設置が望ましい」としている。望ましいという書き方なので、設置は義務ではない。中間支援組織が評価も担う設計は、この文言の範囲に収まる。
構造を読む
2つの椅子は、次の3点で性格が違う。
| 中間支援組織 | 資金提供者 | |
|---|---|---|
| いつ座るか | 契約の前(案件形成の段階) | 契約の後(資金調達の段階) |
| 何を負うか | 負わない。報酬は役務の対価 | 成果に応じて償還が変わるリスクを負う |
| 数えられているか | 公表された集計は見当たらない | 19件として数えられている |
制度の関心は、いま資金提供者の椅子に向いている。令和8年3月に決定されたアクションプランは、寄附金やクラウドファンディングの活用など、多様な主体が資金提供者として関わる事業についてSIBの積極的な活用を促すと書いている。個人や企業・団体が資金提供者として入る道を広げる方向である。
一方で、中間支援組織の椅子については、アクションプランは自治体・民間事業者・金融機関・大学等・中間支援組織の連携と情報共有を促すネットワークの構築に触れているものの、担い手の数や質を測る指標は置かれていない。新プランの目標値は3つで、新たに開始された事業150件、新たに実施した団体75団体、新たに開始された先導的な事業3件である。いずれも委託者と事業の数であって、支援側の数ではない。
ここに、休眠預金のプログラム・オフィサー(このサイトの記事)と同じ形が現れる。制度は支援側の役割を定義し、そこに資源を流す設計まで作る。しかし、その役割を誰が何人担っているかは測らない。測られないものは、育っているかどうかを外から確かめられない。
残る問い
3つ残る。
第一に、中間支援組織が成果評価も担うとき、独立性はどう担保されるのか。ガイドラインは第三者評価機関の設置を「望ましい」としつつ、中間支援組織が評価の役割も担う場合があると書いている。この2つの記述が同じ事業で重なったとき、評価の独立性を確認する手立てが要る。
第二に、19件という数字をどう読むか。追加費用がかかる以上、小規模な事業でSIBを組む合理性は薄い。5%という比率は普及の遅れなのか、それとも適用範囲の反映なのか。事業規模別の内訳が公表されていないため、現時点では判定できない。
第三に、支援側の椅子を数える指標を置くべきか。置けば、支援の担い手が育っているかを制度の外から確かめられる。置かなければ、担い手の厚みは事例の積み上がりからしか推測できない。この判断は、支援側の椅子を見分ける三つの目印(このサイトの記事)で、休眠預金の枠と並べて扱う。
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関連ガイド
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この記事で使った統計の出典
- 1内閣府 国内におけるPFS事業の取組状況について(令和8年3月31日(令和7年度末時点)) 出典を開く
参考文献
成果連動型民間委託契約方式 共通的ガイドライン(令和6年2月改訂版) — 内閣府 (2024)
国内におけるPFS事業の取組状況について — 内閣府 (2026)
PFSの推進に関するアクションプラン(令和8年3月25日決定) — PFS関係府省庁連絡会議 (2026)