一般社団法人社会構想デザイン機構
ISVD-LAB-001静かなまちプロジェクト — 都市騒音×感覚ストレスの可視化と政策提言
横田 直也
エッセイ·横田 直也

感覚過敏者は屋外でどれだけ消耗しているか — 世界初の研究空白

ウェアラブルデバイスによる都市環境研究と感覚過敏研究が完全に非交差。屋外移動中の感覚過敏者の生理的ストレスを測定した研究は世界に存在しない。この研究ギャップの発見と検証アプローチを整理する。

感覚過敏ミソフォニアウェアラブル生理的ストレス外出行動

このノートは 4つの研究仮説 のH1を掘り下げたものです。

気づいたこと

先行研究を網羅的にレビューする中で、1つの明確な空白が浮かび上がった。

ウェアラブルデバイスによる都市環境研究(GPS×心拍×加速度)と、感覚過敏・ミソフォニアの研究が、完全に交差していない。 (2026年2月時点のPubMed・Google Scholar・CiNii検索に基づく)

都市の音環境を扱う研究は、定点観測(固定マイク)か、室内実験(防音室での音提示)に偏っている。「歩いている人が、リアルタイムでどれだけストレスを受けているか」を測った研究は、一般市民向けですら少ない。感覚過敏者に特化したものは、世界的にゼロだ。

なぜこのギャップが存在するのか

3つの分野が互いに知らない。

  1. ウェアラブル都市研究者(情報工学・都市計画)は、感覚過敏・ミソフォニアの概念を知らない。研究対象は「一般市民の平均的反応」であり、外れ値を排除する傾向がある。
  2. 感覚過敏研究者(心理学・聴覚科学)は、室内実験のパラダイムで研究している。佐久間・松井らの日本の蓄積も、質問紙調査と室内音響測定が中心だ。
  3. 都市騒音政策の担当者は、dBの時間平均値しか見ない。「この道路は基準値以下だから問題ない」という判断に、個人の感覚特性は入らない。

この3つの領域が交差する地点に、静かなまちプロジェクトの研究価値がある。

仮説

感覚過敏・ミソフォニア傾向を持つ人は、都市の屋外移動中に一般市民と比較して有意に高い生理的ストレス反応(心拍変動・皮膚電気反応)を示し、それが外出頻度と経路選択を制約している。

検証アプローチ

  • 感覚過敏当事者と定型発達者の2群比較
  • 同一経路の歩行中にウェアラブルセンサーで生理データを記録
  • 同時に主観ストレスの5段階記録(ミソフォニア反応・光ストレスを分離)
  • 時間帯別(朝ラッシュ・昼・夕方・夜)×経路別のクロス分析

香港GEMA研究からの示唆

2020年の香港の研究(Geographic Ecological Momentary Assessment)は、GPS追跡+リアルタイム主観評価で都市騒音の不快感を調査した。手法としては近いが、対象は一般市民のみで、感覚過敏者の分析は含まれていない。この研究を感覚過敏者に応用することが、静かなまちプロジェクトのPhase 1の核となる。

この研究が示せること

もし仮説が支持されれば、「感覚過敏者は都市のデザイン不良を最初に感知するカナリアである」という主張にエビデンスが付く。個人の主観的苦しさが、生理データという客観的言語に変換される。政策立案者は「迷惑の問題」ではなく「健康の問題」として騒音を再定義できるようになる。

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