一般社団法人社会構想デザイン機構
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令和7年度「学生による地域活動報告会 in 文京区」参加レポート

2026年3月10日、文京区社会福祉協議会主催の「学生による地域活動報告会」にISVDが参加。16の学生団体が5分間ずつ活動を報告し、子ども食堂から災害復興支援まで多様な取り組みが共有された当日の模様を記録する。

令和7年度「学生による地域活動報告会 in 文京区」参加レポート

拓殖大学文京キャンパス外観

2026年3月10日、拓殖大学文京キャンパスにて「令和7年度 学生による地域活動報告会 in 文京区」が開催されました。主催は文京区社会福祉協議会です。文京区内の19大学に所属する学生団体が一堂に会し、地域活動の成果を共有するこのイベントに、ISVDも参加者として出席しました。

イベントチラシはこちら(PDF)からご覧いただけます。

イベント概要

本報告会は、文京区社会福祉協議会が主催する「学生支援担当者連絡会議」に参加する大学・専門学校の協力のもと開催されています。今年度は全16団体が登壇し、それぞれ5分間で活動内容を報告しました。前半は主に文京区を拠点とした活動、後半は文京区に限らず広域で活動を行う団体という構成です。

報告会終了後には、参加学生を対象としたグループワークも実施され、大学間交流の場としても機能していました。

イベントチラシ

開会挨拶

文京区社会福祉協議会事務局長の大川秀樹氏は、昨年の12団体から16団体へと参加が増えたことに触れ、「学生の皆さんの活動が大きな波となっていることを感じている」と述べました。また、本報告会だけでなく「ふみこむフェスタ」や「企業地域連携推進ネットワーク」など、学生・地域団体・企業をつなぐ複数の取り組みを紹介し、学生活動が社会全体のネットワークへと広がっていく可能性を示しました。

続いて、会場を提供した拓殖大学の長尾副センター長が登壇。「今の若い世代は107歳まで生きるというデータがある」という問いかけから始まり、超高齢社会における社会貢献活動の意味について語りました。

前半:文京区を拠点とした活動報告(8団体)

1. よりみちひろば(中央大学)

よりみちひろば発表の様子

2024年12月に設立された学生サークルです。「文京区の子どもたちにとって、学校と家庭以外の第三の安心できる居場所をつくる」という理念のもと、学習支援と子ども食堂を組み合わせた活動を展開しています。月に一度、大塚地域活動センターで学習イベントを開催し、午前は小学生向けにテーマ別の学習レクリエーション、午後は中学生向けの無料自習室を運営。メンバーは中央大学法学部生を中心に約105名が在籍しています。

2. つながる子育てプロジェクト(日本女子大学)

つながる子育てプロジェクト発表の様子

家政学部児童学科の7名で構成されたグループです。子どもが自然の変化や地域の魅力を感じられるイベントの企画・運営を行っています。10月に予定していた「秋のワクワク広場」は雨天で中止となりましたが、その経験を活かし、12月には目白台親子サロンでのクリスマス会と、大塚地域活動センターでの「作って遊ぼうクリスマス工房」を開催。後者には24組55名が参加しました。事前申込制の導入や室内開催への切り替えなど、実践を重ねながら改善を続けています。

3. 東洋大学点訳サークル

東洋大学点訳サークル発表の様子

2025年4月に設立されたサークルで、点字・点訳に関する啓発とアクセシビリティの向上を目指しています。メンバーの多くが初心者であることから、月2回の学習会で50音の書き方から学び始め、11月の学祭では点字のしおり販売や点字体験を実施するまでに成長しました。視覚障害に関する情報が集まるイベント「サイトワールド」への見学も行っています。最終目標は学祭パンフレットの点字版発行です。ボランティアの高齢化が進む点訳分野に、若い世代として参入する意義は大きいと感じました。

4. 安藤ゼミ(跡見学園女子大学)— AI雑紙分別アプリ「エコポン」

エコポン発表の様子

資源リサイクルや環境政策に取り組む安藤ゼミが開発した、AI雑紙分別支援アプリ「エコポン」の紹介です。通販梱包材の増加で紙資源の需要が高まる一方、デジタル化で古紙供給は減少しています。エコポンは、子どもたちがお菓子の箱などの「雑紙」を撮影し、AIに正しい分別を教えることでAIの精度が上がる仕組みです。キャラクターを育てる感覚で楽しみながら分別を学べます。公益財団法人古紙再生促進センターとも連携し、文京区のクールアースや川崎市の小学校でワークショップを実施しています。

5. 行こうよ!文京浴場 学生プロジェクト(拓殖大学・跡見学園女子大学)

行こうよ!文京浴場発表の様子

文京区内4つの銭湯(福の湯・白山浴場・大黒湯・豊川浴泉)と連携し、銭湯を拠点とした地域活性化に取り組むプロジェクトです。計22名の学生が企画・広報・連絡の3局体制で活動しています。2025年度は春の縁日(307名来場)、番台体験、拓殖大学オレンジフェスタ(約620名参加)、秋の縁日(455名来場)など多彩なイベントを実施。「また来ました」と声をかけてくれる地域の方が増え、継続の力を実感しているそうです。

6. 拓殖大学麗澤会ボランティア部

拓殖大学麗澤会ボランティア部発表の様子

茗荷谷キャンパス周辺の町会と連携し、地域行事の運営補助や地域清掃に取り組んでいます。学祭ではモビデン(模擬店)を出展し、利益の一部を能登半島などの被災地に寄付しています。日本財団ボランティアセンターのデータでは年1回以上ボランティアに参加する学生は約25%とされていますが、「拓殖大学のボランティア参加者をより増やす」ことをテーマに、子どもまつれクラブ、みんなのスポーツひろば、スマホカフェなど多様な地域交流ボランティアを展開しています。

7. 東洋学園大学 社会教育ゼミ

東洋学園大学社会教育ゼミ発表の様子

子ども服の譲渡会と地域の方々との学習会を中心に活動しています。スライドのタイトル「子ども服の譲渡会と地域の方々との学習会 —子育て支援と環境問題への取り組み—」が示す通り、子育て支援と環境問題を掛け合わせた視点で地域課題にアプローチしていました。

8. 学生団体 aile(東京科学大学)

学生団体 aile 発表の様子

障害のある若者への包括的な教育支援を行う学生団体です。「大学生と業種障がいのある方が主体的に交流することを目的に活動しています」という理念のもと、「学ぶこと」「人とつながること」を大切にした活動を展開しています。大学リソースを活用した障害者向けの体験型プログラムなどを企画していました。

後半:広域で活動する団体の報告(8団体)

9. 東京大学五月祭常任委員会

東京大学五月祭常任委員会発表の様子

東京大学の学園祭「五月祭」の企画運営を行う常任委員会です。スライドでは「地域協賛活動」として、お祭り前から地元企業・団体に広告を掲載いただき、その資金でお祭りの運営を支え、来場者と地域をつなぐ仕組みを紹介していました。未来への可能性として「大学の空間的余白」「学生の人的熱量」「全国インフラ性」の3つを挙げていたのが印象的でした。

10. OIKOS東大

OIKOS東大発表の様子

大学内に子ども・若者食堂「U-SPOT」を設置するプロジェクトです。ビジョンは「すべての子どもたちが明日を楽しみにできる社会」。大学という公共空間を活用し、地域の子どもたちに居場所と食事を提供する取り組みを進めています。

11. Vote at Chuo!!(中央大学)

Vote at Chuo!! 発表の様子

2015年設立の主権者教育サークルです。「若者が当たり前に考えて投票に行く文化を作る」という理念のもと、対話をキーワードに中高生向けの出前授業を実施しています。特に注力しているのが足立区での主権者教育授業で、2年間で20件、全体の8割が足立区での実施です。足立区は23区で投票率が30年間最下位という課題を抱えており、足立区選挙管理委員会の主権者教育推進員と協働して継続的に取り組んでいます。

発表で印象的だったのは「同質性の塊からの脱却」という問題意識です。中央大学法学部が中心のサークルですが、足立区の地元学生をボランティアとして募集し、高校卒業後に就職した若者も授業を手伝っているとのこと。2年間で40名の学生がボランティア登録。今後は文京区内でも活動を展開したいそうです。

12. NPO法人カーレットジャパン協会(東京学芸大学)

カーレットジャパン協会発表の様子

カーレットは2012年に文京区で生まれた卓上版カーリングです。性別・年齢・障害の有無に関わらず誰でも対等に楽しめる「共生社会型スポーツ」として普及しています。現在はシニア世代を中心に広まっていますが、若い世代にも広めたいと2025年度から学生が本格的に活動を開始。学生交流会の開催、秋のキッズフェスタでの体験会、笹谷小学校でのPTA福祉学習への参加など、多世代交流の活性化を目指しています。東京学芸大学にはインカレサークルとしてカーレットサークルも設立されました。

13. 日本女子大学 薬袋研究室 — 釜石・唐丹町 伝統文化継承プロジェクト

薬袋研究室発表の様子

岩手県釜石市唐丹町で、高齢者と子どもが交流する場を通じて地域行事の伝承に取り組んでいます。当初は釜石桜祭りの鉄砲組をテーマにする予定でしたが、「特定地区に偏る」という現地の声を受けて方針を転換。「三世代遊びマップ」の制作ワークショップを開催し、約50名が参加しました。高齢者は神社の境内や川で遊んでいた一方、子どもたちは震災後に整備された広場や公園で遊んでおり、世代間・震災前後での空間利用の変化が可視化されました。

東日本大震災以降、山谷地区の世帯数減少により2024年は鉄砲組が祭りに不参加となりました。大学内でのポスター展示を通じ、若い世代からの関心を広げて将来的な復活を目指しています。

14. まちづくり研究センターふじみ野(文京学院大学)

まちづくりセンターふじみ野発表の様子

埼玉県ふじみ野市にかつて存在した陸軍造兵廠(火工廠)の歴史を掘り起こし、伝え続ける活動を行っています。発表日の3月10日はまさに東京大空襲の日であり、「戦争体験者の高齢化により、記憶を語り継ぐことは緊急の課題」という言葉が響きました。

7月と10月に展示会を開催し、当時の写真パネルや木銃、陶製手榴弾などを展示。街歩き企画では、かつて造兵廠があった場所(現在は市役所やマンション)を巡り、学生もガイド役を務めました。さらに、川越市と埼玉市の境を流れる瓶沼川での現地調査では、終戦時に廃棄された陶器製手榴弾に実際に触れる経験もしています。ふじみ野市内の小学校での出前授業も実施しました。

15. I KANRA ~甘楽町学生愛好会~(東洋大学)

I KANRA 発表の様子

群馬県甘楽町の地域おこし協力隊インターンを経験した大学生5名が、2025年に結成した団体です。「インターンだけで終わらせるのはもったいない。甘楽町の魅力を発信して恩返しがしたい」という動機から活動を開始しました。

2週間のインターン中には、農家へのインタビューで高齢化による担い手不足や収穫人手不足の問題を知り、3つの学童保育支援や夏祭りのお手伝いを通じて住民との交流を深めました。今後は甘楽町の特産品であるキウイの収穫体験や、文京区の地域イベントでの特産品販売など、「地域と地域をつなげる」活動を目指しています。

16. 青いビブス(東洋大学)— 能登半島復興支援

青いビブス発表の様子

2025年1月1日に設立された、能登半島への復興支援団体です。「東洋から能登へ、復興の輪を広げよう」をスローガンに、石川県能登半島での災害復興支援を行っています。

「関係人口」というキーワードを大切にしており、「観光以上の関わり——定期的にその土地に通い、地域の方たちと交流すること。皆様のお住まいの地域からそこの地域のことを思うこと。私たちと能登の皆様は隣人です」という代表の言葉が印象に残りました。

作業系支援(がれき撤去・家財の運び出し)に加え、仮設住宅での交流会や子ども支援(学童保育)にも携わっています。2026年1月には広報誌「トノート」を発行。「能登の魅力を知ってほしい、ぜひ能登に行ってもらいたい」という思いが活動の根底にあります。

交流タイム

交流タイムの様子

全団体の発表終了後、予定より早く進行が進んだため、臨時の交流タイムが設けられました。参加者同士が気になった団体に声をかけ、名刺交換や情報共有が行われていました。

報告会を通じて見えたテーマ

16団体の発表を通して、いくつかの横断的なテーマが浮かび上がりました。

超高齢社会と学生の地域参画

拓殖大学・長尾副センター長の「107歳まで生きる時代」という問いかけが象徴するように、多くの団体が高齢化する地域社会の中で学生が果たす役割を模索しています。点訳サークルのボランティア高齢化問題、甘楽町の農家の担い手不足、釜石の鉄砲組の存続危機——いずれも世代をつなぐ活動の必要性を示しています。

関係人口という新しいつながり方

青いビブスが掲げる「関係人口」は、移住でも観光でもない、第三のつながり方です。甘楽町のI KANRAも、インターン終了後に団体を結成して関わりを継続しています。「その場限りではない関係性」をどう築くかは、学生団体が地域と関わる上での共通課題と言えます。

共生社会型の活動設計

カーレットの「性別・年齢・障害の有無に関わらず」という理念、aileのインクルーシブ教育、Vote at Chuo!!の「同質性からの脱却」——形は異なりますが、いずれも多様な背景を持つ人々が対等に参加できる場づくりを志向しています。

循環・サステナビリティの実践

エコポンのAI雑紙分別、五月祭のサステナブル運営、文京浴場プロジェクトによる銭湯文化の再活性化——持続可能な社会への取り組みが、研究からイベント運営まで幅広く実践されていました。

おわりに

5分間という限られた持ち時間の中で、各団体が活動の核心を伝えようとする姿は印象的でした。地域課題は多様であり、それに向き合う学生たちのアプローチもまた多様です。子ども食堂、主権者教育、点訳、銭湯活性化、災害復興——一つひとつは小さな取り組みかもしれませんが、文京区内19大学という密度の高い教育環境がこれらの活動を支え、互いの知見を共有する場を生み出しています。

ISVDは、こうした社会貢献活動の構造的な支援に取り組む非営利団体として、学生団体の活動にも引き続き関心を寄せていきます。

会場入口の案内看板


イベント情報

項目内容
名称令和7年度 学生による地域活動報告会 in 文京区
日時2026年3月10日(火)14:00〜17:00
会場拓殖大学 文京キャンパス C館 教室
主催社会福祉法人 文京区社会福祉協議会
協力文京区学生支援担当者連絡会議 参加校
参考文京区社会福祉協議会 イベント案内
チラシイベントチラシ(PDF)
ISVD編集部

ISVD編集部

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