一般社団法人社会構想デザイン機構

若年ボランティアはなぜ離れるのか — NPOが知るべき構造的要因と定着設計

ISVD編集部
約6分で読めます

若者のボランティア離脱は本人のモチベーション不足ではなく、受入側の構造的な設計不備に起因する場合が多いです。内閣府調査や先行研究の統計データと国内外の成功事例をもとに、NPOが実践できるオンボーディングと定着設計のフレームワークを提示します。

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ざっくり言うと

  1. ボランティア未参加の学生の57.5%が「参加したい」と回答しており、若者の無関心が原因ではない
  2. 離脱の主因は組織側の構造的設計不備 — オンボーディング不足、貢献実感の欠如、役割の固定化
  3. Z世代の「短期・単発」志向に対応した定着設計フレームワークをNPO向けに提示する

はじめに

若者のボランティア離脱は個人ではなく受入側の構造的問題

「若者がボランティアに来ない」。NPO関係者からこの声を聞かない日はない。だが、問題の本質は「若者の無関心」ではない。日本財団ボランティアセンターの全国学生1万人調査(2023年)によれば、ボランティア未参加の学生のうち 57.5%が参加を希望 している。関心はある。しかし参加できない、あるいは参加しても続かない。そこには構造的な要因が存在する。

本稿では、国内外の調査データと成功事例をもとに、若年ボランティアの離脱メカニズムを整理し、NPO運営者が実践可能な定着設計のフレームワークを提示する。


数字が示す現実

日本のボランティア参加率は世界最低水準で若年層が特に低い

令和3年(2021年)社会生活基本調査によると、日本のボランティア活動行動者率は全体で 17.8% にとどまる。2016年調査の26.0%から8.2ポイントの低下。年齢別にみると、25-29歳の行動者率は 10.1% で全年齢中最低である。Scientific Reports掲載の22カ国比較研究(2025年)では、日本のボランティア参加率は 9% と世界最低水準に位置づけられた。

COVID-19の影響は否定できないが、それだけでは説明がつかない。米国では2021年に23.2%まで落ち込んだ参加率が2023年には28.3%まで回復した。日本の回復は緩やかであり、構造的な課題がパンデミック以前から存在していたことを示唆している。


若者はなぜ参加するのか — 動機の構造

ボランティア参加の6つの動機機能を理論的に整理

ボランティア動機研究の標準的フレームワーク、Volunteer Functions Inventory(VFI)。定義される動機機能は6つ。

VFI 6機能

価値観(Values)顕著さ:
利他的・人道的価値の表現
理解(Understanding)顕著さ:
新しい学び・経験の獲得
キャリア(Career)顕著さ:
就職活動・スキル開発
社会的(Social)顕著さ:
人間関係・交流の機会
成長(Enhancement)顕著さ:
自己成長・自尊感情の向上
防衛(Protective)顕著さ:
罪悪感軽減・自己防衛

日本固有の参加経路

サービスラーニング
大学授業の一環としての地域貢献
ガクチカ
就活用の実績づくり(動機としては2.5%)
SNS経由
災害支援・社会課題への関心拡散
図: ボランティア動機の6機能(VFI)と日本固有の参加経路

日本の若者に特徴的なのは、Understanding(学び)Social(交流) の動機の強さである。日本財団調査によるトップ3は「さまざまな人との交流」(59.4%)、「人の役に立てた」(56.1%)、「新しい体験」(51.3%)。

一方、Career動機(就活のガクチカ)を主目的とする学生はわずか2.5%にとどまる。「ガクチカのために参加する若者ばかり」という認識は、データに照らすと正確ではない。


離脱の構造 — 個人要因と組織要因

離脱に影響する個人的要因と組織側要因を分析

内閣府「市民の社会貢献に関する実態調査」(2019年)が示す不参加・離脱理由の上位は、「時間がない」(51.4%)、「情報が不足」(34.1%)、「仕事を休めない」(28.3%)。いずれも個人側の障壁として語られがちな項目である。

構造的障壁(個人側)

活動する時間がない51.4%
情報が不足している34.1%
仕事を休めない28.3%
交通費等の費用負担27.4%
参加手続きが不明22.4%

組織的要因(NPO側)

オンボーディング不在
フィードバック欠如
貢献実感がない
階層的文化・役割固定
意思決定への不参加
図: ボランティア不参加・離脱の主要理由(内閣府 2019年 / 組織要因)

しかし、これらの「個人側の障壁」だけでは離脱の全容は見えない。組織側にも深刻な問題が潜む。日本NPOセンターの組織基盤強化フォーラム(2025年)やボランティア定着研究が指摘する 組織的離脱要因 を整理する。

  • オンボーディング不在: 初回参加時に目的・役割・期待値の説明がない
  • フィードバック欠如: 活動の成果が本人に伝わらず、貢献実感が持てない
  • 階層的文化: ベテランとの関係が固定化し、新参者が発言しにくい
  • 役割の固定化: 雑務ばかりで専門性を活かせない
  • 意思決定への不参加: ボランティアは「手足」として扱われ、共創者として関与できない

NPO代表者白書や環境NPO調査では、「人材の確保」(55%)と「人材の若返り」(47%)が上位課題として20年以上挙げられ続けてきた。問題は認識されている。それでも構造が変わらない。


世代的価値観の変化 — エピソディック志向と「タイパ」

現代若者の短期志向と効率重視の価値観を解説

学術研究で確認されている大きなトレンドが、エピソディック・ボランティアリング(短期・単発型参加)への移行である。Z世代の約7割が年間100時間未満の活動にとどまる。長期コミットメントを前提とした従来のボランティア設計との根本的なミスマッチがここにある。

American Red Crossの調査(2025年)が特定したGen Zの動機構造「3C」も示唆に富む。Community Impact(93%)、Connections(85%)、Careers & Growth(79%)。目に見える地域への影響と、人とのつながりが最重視されている。

タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する世代にとって、「最低半年の参加」を前提条件とする組織は、そもそも選択肢に入らない。


成功事例に学ぶ定着設計

国内外の若年ボランティア定着に成功した事例を紹介

若者の定着に成功している組織には共通パターンがある。

NPOカタリバ は「ナナメの関係」(先生でも親でもない少し年上の先輩との対話)を核心に、大学生ボランティア自身が「教える側」として成長を実感できる設計を組み込んでいる。累計7,500人以上の学生ボランティアスタッフを擁する。

Code for Japan は「エリートメンバー型」から「誰でも参加できる場」へ転換し、Slackワークスペースに数千人が参加する低コスト参加障壁の設計を実現した。高校生が災害支援プロジェクトに自発的に参加する事例も生まれている。

プロボノ型組織(サービスグラント等)は、社会人の専門スキルと団体のニーズを明確にマッチングすることで、「貢献実感」を構造的に生み出している。

1接点設計
エピソディック参加の公式化
単発・短期枠を正規チャネルに
ハイブリッド/オンライン対応
バーチャル参加で活動時間↑
SNS・Web での情報発信
34.1%が「情報不足」と回答
2初期体験
オンボーディング設計
目的・役割・期待値を初回で明示
スキルベース・マッチング
カタリバ: ナナメの関係設計
友人同伴・交流設計
Code for Japan: Slack参加
3定着・深化
フィードバックの仕組み化
活動成果を定期共有
意思決定への参加
「手足」→「共創者」へ
インパクトの可視化
93%が地域影響を重視(Gen Z)
図: 若年ボランティア定着設計フレームワーク — 成功組織の共通パターン

NPOが今日から取り組める8つの施策

実践可能な具体的なボランティア定着施策を提示

  1. エピソディック参加の公式チャネル化 — 単発・短期枠を正規の参加ルートとして設ける。「最低半年」の条件を外す
  2. オンボーディングの設計 — 初回参加時に目的・役割・期待値を明示する。15分のオリエンテーション資料で十分である
  3. ハイブリッド/オンライン対応 — バーチャル参加者の平均活動時間(95時間)は対面のみ(64時間)より長い
  4. フィードバックの仕組み化 — 月次の活動報告メールでも効果がある。「あなたの活動でこう変わった」を伝える
  5. スキルベース・マッチング — 参加者の専門性や関心を事前にヒアリングし、役割を設計する
  6. ソーシャル・コネクション設計 — 友人同伴歓迎、活動後の交流時間確保。定期ボランティアの70%が「意味ある関係を築けた」
  7. 意思決定への参加 — 企画会議やふりかえりにボランティアを含める。「手足」から「共創者」への転換
  8. インパクトの可視化 — 数値とストーリーの両面で成果を伝える。Gen Zの93%がCommunity Impactを最重視

まとめ

構造的設計改善によるボランティア定着の重要性を総括

若年ボランティアの離脱は、若者の「無関心」や「意識の低さ」の問題ではない。57.5%が参加を希望しながら参加できない、あるいは参加しても続かない。この状況は受入側の構造的な設計不備に起因する。

エピソディック参加の受け入れ、オンボーディング設計、フィードバックの仕組み化。いずれも大規模な組織改革を必要としない。小さな設計変更の積み重ねが、若者にとって「また来たい」と思える場をつくる。

ボランティアのステークホルダーマップを描き、関係者の期待値を可視化することも有効である。また、複数団体で若者の定着課題に取り組む場合は、コレクティブインパクトの設計が参考になる。若者の価値観と団体の期待とのすれ違いについては、学生の価値観と採用のミスマッチも併せて参照されたい。


参考文献

令和3年社会生活基本調査総務省統計局. 総務省統計局

全国学生1万人アンケート 2023日本財団ボランティアセンター. 日本財団ボランティアセンター

Understanding who volunteers globallyScientific Reports. Nature / Scientific Reports

The Gen Z Volunteer Blueprint: How Nonprofits Can Recruit and InvestAmerican Red Cross / DoSomething Strategic. American Red Cross

市民の社会貢献に関する実態調査 2019内閣府. 内閣府 NPOホームページ

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読んだ後に考えてみよう

  1. あなたの団体では新しいボランティアに対してどのようなオンボーディングを実施しているだろうか。
  2. 自分自身がボランティア活動を始めた際、どのような不安や困りごとを抱えていたかを振り返ってみたい。
  3. なぜ若いボランティアが組織から離脱するのか、その理由として何が最も多いと感じるだろうか。
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