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「美術館は公費で賄え」— 文化庁予算GDP比0.02%の国で問われていること

ヨコタナオヤ(横田直也)約9分で読めます

「私たちの税金をちゃんと美術館のために使え」。Threadsに投稿された一文が映し出すのは、GDP比0.02%という文化庁予算の構造的な薄さである。指定管理者制度をめぐる指摘、国立美術館の中期目標、入館料の値上げ。美術館が「知の公共財」であり続けるための条件を、海外比較と制度分析から読む。

ざっくり言うと

  • 国の文化庁予算(当初予算)は名目GDPの約0.02%で、政府予算に占める文化支出の割合(2020年)は、文化庁が比べた6か国の中でアメリカに次いで低い
  • 第6期中期目標は、国立美術館の展示事業にかかる費用の65%以上を、2030年度までに自己収入で賄うよう求めている
  • 文化へのアクセスを権利として位置づける欧州と、残余予算として扱う日本の間に根本的な思想の差がある

何が起きているのか

文化庁予算は名目GDPの約0.02%で、政府予算に占める文化支出の割合(2020年)は比べた6か国でアメリカに次いで低い

Threadsに、ひとつの投稿があった。

「美術館は公費で賄え。私たちの税金をちゃんと美術館のために使え。」

短い。だが、この一文が突いているのは、日本の文化政策における構造的な問題の核心である。

文化庁予算の規模

の予算は令和7年度1,063億円、令和8年度1,073億円(前年度から9億円・0.9%増)。2024年度の名目GDPは642兆4,147億円で、令和8年度の文化庁予算はその約0.02%にあたる(計算値)。

この約0.02%は、文化庁の当初予算だけを名目GDPで割った値である。国際観光旅客税を財源とする事業は224億円が別途計上され、令和7年度には第1次補正予算として431億円が積まれた。地方自治体の文化支出は、文化庁の比較調査で4,700億円(平成30年度)である。

国の予算の中での重みは、でわかる。2020年の文化支出が政府予算に占める割合は、日本が0.11%、韓国が1.24%、フランスが0.92%だった。報告書は、日本は調べた6か国の中で文化支出額が最も少なく、政府予算に占める割合もアメリカに次いで低いとまとめている。ただし文化庁は、では、国によって文化行政の範囲が違い、為替の影響もあって単純な比較が難しいとして、各国の一覧を載せていない。

国名政府予算に占める割合
韓国1.24%
フランス0.92%
ドイツ0.36%
イギリス0.15%
日本0.11%
アメリカ0.04%
0.5%以上0.5%未満日本(0.11%)

※ 日本は文化庁予算に、観光庁に一括計上された国際観光旅客税財源の事業予算を合わせた額。英国と韓国は、該当する組織の予算のうち文化支出と考えられる費目を選んで合算している。ドイツは連邦の文化メディア国務大臣の予算で、2020年に政府予算が急増して割合が下がった(2019年は0.54%)。アメリカは6つの連邦機関の予算の合計。文化庁は2024年度の調査で、国によって文化行政の範囲が違い為替の影響もあるため単純な比較は難しいとして、各国の一覧を載せていない。

政府予算に占める文化支出の割合(2020年、%)。文化庁委託事業「令和2年度 諸外国における文化政策等の比較調査研究事業 報告書」(2021年3月)より

この数字が何を意味するのか。はとして運営されており、運営費交付金及び施設整備費補助金が収入の6割以上を占める状態にある。国からのは令和8年度に84.6億円で、物価高騰分への対応等を新たに行い、前年度から約3.2億円増えた。それでも国は、後で見るで自己収入の拡大を求めている。日本博物館協会の令和6年度調査でも、回答した2,200館余りの77.4%が「財政面で厳しい」に「あてはまる」または「まああてはまる」と答えた。

入館料の値上げ

2020年4月には東京国立博物館(東博)の常設展入館料が一般620円から1,000円へ引き上げられた。東博の常設展の料金は、1989年の消費税導入から段階的に上がり、この約30年間で3倍近くとなっている。「気軽に文化に触れる」という美術館の公共的機能が、入館料という経済的障壁によって制限されつつある。

2026年9月には、国立美術館が所蔵作品展の一般料金を5館で1,000円に改定すると発表した。この改定と中期目標の関係は、別のコラム(このサイトの記事)で扱っている。

第6期中期目標

さらに2026年度からの「第6期中期目標」が、状況を一変させようとしている。が定めたこの目標は、国立美術館とに対し、展示事業にかかる費用(展示に携わる学芸員の人件費や整備費を含む)のうち自己収入で賄う割合を、最終年度の2030年度に65%以上とするよう求めた。次の中期目標期間中には、この割合を100%にすることを目指すとしている。国立美術館の2024年度の実績は53%である。各館の割合が4年目(2029年度)に4割を下回っている等、社会的に求められている役割を十分に果たせていないと考えられる館は、再編の対象になる。は、再編は閉館を想定しておらず、各館の展示収入が4割未満になることだけですぐに再編の対象にするものではないと説明している。

2023年にはが運営費交付金の減少と光熱費高騰により標本管理が困難になり、クラウドファンディングで約9.2億円を約5万7千人から集めた。日経新聞は、当時の国内のクラウドファンディングで最高の支援額だったと報じている。国立機関が基本的な運営費を市民の寄付に頼らざるを得ない現実それ自体が、文化予算の構造的不足を象徴している。

背景と文脈

指定管理者制度の影響と、文化へのアクセスを権利とみる考え方

指定管理者制度がもたらしたもの

2003年に導入されたは、公共施設の管理運営を民間事業者に委託する仕組みである。によると、博物館・博物館類似施設の導入率は30.0%(令和3年10月現在)である。

同じ資料はこの制度のデメリットに、経費の節減が職員の労働条件に及ぶことと、研修や後継者を育てる機会を確保しにくくなることを挙げている。博物館のように継続して事業を行う施設では、管理者が変わると事業の質を保てなくなるおそれがあるとも書いている。調査研究の蓄積、地域との関係構築、コレクションの長期的な育成。いずれも短期の成果指標では測りにくい仕事である。

指定管理者制度そのものが悪いわけではない。問題は、美術館という「知の蓄積を使命とする機関」に、短期的な効率性を最優先とする評価軸を持ち込んだことにある。図書館と同様、美術館もまた、その価値が数年単位の入館者数や収支では測りきれない公共機関である。

海外の文化政策は何が違うのか

フランスの文化支出は、2020年に政府予算の0.92%で、日本の0.11%の約8倍だった(倍率は計算値)。だが割合の差以上に重要なのは、「文化へのアクセスは権利である」という思想が制度設計の基盤にあることだ。

フランスでは、が所管する41の国立美術館が、18歳未満を無料にしている。EU加盟国を含む欧州経済領域(EEA)に正規に住む18歳から25歳も、常設展は無料である。多くの国立美術館では、毎月第一日曜日も所蔵品の展示が無料になる。国立記念建造物センターが管理する記念建造物の無料は、1月から3月と11月から12月の第一日曜日だけである。の入館料は、2026年9月時点で、EEAの居住者が22ユーロ、それ以外の来館者が32ユーロである。居住地によって料金を分けるのは、日本の中期目標が求めると同じ仕組みだ。それでも、18歳未満と、26歳未満のEEA居住者は無料という原則は維持されている。

イギリスでは、、をはじめとする主要な国立美術館・博物館の常設展が無料である。文化・メディア・スポーツ省が所管する国立美術館・博物館の、すべての人を対象にした無料化は2001年12月に始まった。

ドイツでも、は18歳までの子どもと若者を無料にしている。ベルリン市内の約60館が参加していた無料開放日「ミュージアム・サンデー」は、2024年12月1日を最後に行われておらず、次の予定は決まっていない。

日本の国立美術館も、所蔵作品展は高校生以下と18歳未満、65歳以上を無料にしている。違いは、常設展を誰にでも無料にしている英国と、無料を18歳から25歳まで広げたフランスにある。

共通しているのは、文化へのアクセスを「消費者が対価を支払うサービス」ではなく、「市民が享受する権利」として位置づける思想的基盤の存在だ。

文化的権利という視座

が推進する世界人権宣言第27条は、「すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する」と定めている。文化へのアクセスは、贅沢品の消費ではなく、基本的人権の一部として国際的に認知されている。

日本においても、2017年に改正されたは、基本理念を定めた第2条第3項で、文化芸術を創造し享受することを「人々の生まれながらの権利」と書く。そのうえで、年齢、障害の有無、経済的な状況または居住する地域にかかわらず、等しく文化芸術を鑑賞し、参加し、創造できる環境の整備を求めている。法の理念としては、文化が一部の愛好家のものではなく、社会全体の公共財であるという認識が示されている。

だが理念と現実の間には深い溝がある。GDP比0.02%という予算規模は、この理念を実現する意思があるのかという問いを突きつけている。

構造を読む

指定管理者制度や自己収入重視政策の問題点

冒頭のThreads投稿「美術館は公費で賄え」が求めているのは、単なる予算増額ではない。文化に対する公的責任のあり方そのものの転換である。

残余性、自己収入、専門性

第一の構造的問題は、文化予算の「残余性」にある 。日本の財政において、文化予算は常に「他のすべてが終わった後に配分される残余」として扱われてきた。社会保障、防衛、公共事業といった優先順位の高い支出項目が並ぶ中で、文化は「あれば望ましいが、なくても困らない」領域に位置づけられている。GDP比0.02%という数字は、この構造的な位置づけの帰結にほかならない。

第二の問題は、「自己収入」要求による公共性の侵食 。第6期中期目標が展示事業に求める自己収入65%以上という目標は、展示を入場料などの自己収入で回す事業に変える圧力である。中期目標は「各館における入場料の引き上げ及び二重価格の導入を本中期目標の期間中に実施するものとする」と書いている。国立美術館は2026年9月に所蔵作品展の料金改定(このサイトの記事)を発表した。文化庁は、収集・保管、教育普及、調査研究には国の予算を措置すると説明している。

入館料を引き上げて自己収入を増やすことは、一見すると健全な経営に見える。だがそれは同時に、経済的に余裕のない層(低所得世帯、大学生)を文化から排除するメカニズムとして機能する。所蔵作品展の無料の対象は続くが、対象に入らない人には値上げがそのまま負担だ。1,000円の入館料は、ある人にとっては「ちょっとした贅沢」であり、別の人にとっては「手が届かない世界」である。

第三の問題は、専門性の持続可能性である 。指定管理者制度の下で経費の節減が職員の労働条件に及べば、短期的にはコストは下がる。しかし中長期的には、美術館が蓄積してきた調査研究能力、作品の保存修復技術、地域文化の記録・継承といった「見えない資産」を毀損する。美術館の価値は、今日の入館者数ではなく、数十年にわたる知の蓄積と継承にある。その蓄積を支える人材の雇用が不安定になることの帰結は、まだ十分に可視化されていない。

フランスとイギリスの前提

フランスが政府予算の1%近くを文化に投じているのは、文化が「贅沢品」ではなく「社会の基盤」であるという合意があるからだ。イギリスが国立美術館を無料にしているのは、「文化へのアクセスに所得による差を設けない」という原則があるからだ。

日本に欠けているのは予算だけではない。文化を公共財として位置づける社会的合意それ自体が、まだ形成途上にある。

「美術館は公費で賄え」。この声は、その合意形成の出発点を示している。


関連コラム


この記事で使った統計の出典

  1. 1文化庁「令和8年度文化庁予算の概要」(2026年) 出典を開く
  2. 2内閣府「2024年度(令和6年度)国民経済計算 年次推計」(2025年12月) 出典を開く
  3. 3文化庁委託事業「令和2年度 諸外国における文化政策等の比較調査研究事業 報告書」(2021年3月) 出典を開く
  4. 4文部科学省「独立行政法人国立美術館が達成すべき業務運営に関する目標(中期目標)」(2026年2月) 出典を開く
  5. 5文化庁「国立映画アーカイブのクラウドファンディング実施に関する報道について」(2026年) 出典を開く
  6. 6日本博物館協会「令和6年度日本の博物館総合調査」速報版(2026年3月) 出典を開く
  7. 7美術手帖「東博など国立3博物館、入館料を値上げへ。「ランニング・コストも賄えない」」(2020年1月) 出典を開く
  8. 8美術手帖「過去30年で3倍に。国立博物館の値上げは是か非か」(2020年2月) 出典を開く
  9. 9独立行政法人国立美術館「独立行政法人国立美術館の所蔵作品展における観覧料金の改定について」(2026年9月) 出典を開く
  10. 10日経新聞「国立科学博物館に寄付9.2億円 クラウドファンディング」(2023年11月) 出典を開く
  11. 11文化庁「文化施設における指定管理者制度について」(文化審議会文化施設部会資料)(2025年3月) 出典を開く
  12. 12Ministère de la Culture「Les musées nationaux」(2026年) 出典を開く
  13. 13Ministère de la Culture「La gratuité des collections permanentes pour les moins de 26 ans dans les musées nationaux」(2026年) 出典を開く
  14. 14Centre des monuments nationaux「Conditions de gratuité」(2026年) 出典を開く
  15. 15Musée du Louvre「Visit」(2026年) 出典を開く
  16. 16英国政府(GOV.UK)「Ten years of free museums」(2011年11月) 出典を開く
  17. 17berlin.de「Museum Sunday」(2026年) 出典を開く

訂正履歴

  1. — 題名、SNS用の画像の見出し、説明文の「文化予算」「文化に使う予算」を「文化庁予算」「文化庁の予算」に直しました。

    訂正前
    題名「文化予算GDP比0.02%の国で問われていること」/SNS用の画像の見出し「文化に使う予算は、国内総生産の0.02%」/説明文「GDP比0.02%という日本の文化予算の構造的な薄さ」
    訂正後
    題名「文化庁予算GDP比0.02%の国で問われていること」/SNS用の画像の見出し「文化庁の予算は、国内総生産の0.02%」/説明文「GDP比0.02%という文化庁予算の構造的な薄さ」

    誤った理由 約0.02%は文化庁の当初予算だけを名目GDPで割った値です。2026年9月25日に本文を直したとき、題名、SNS用の画像の見出し、説明文は直しておらず、国と地方を合わせた文化への支出の割合に読める書き方が残っていました。

  2. — 「背景と文脈」の見出しの下に出る要約を、節に書いてある中身に合わせて直しました。

    訂正前
    文化予算削減の歴史的経緯と社会的背景
    訂正後
    指定管理者制度の影響と、文化へのアクセスを権利とみる考え方

    誤った理由 この節は、指定管理者制度、海外の無料化の仕組み、文化的権利を扱っていて、予算が削られてきた経緯は書いていません。文化庁の予算も、令和7年度の1,063億円から令和8年度の1,073億円へ増えています。

  3. — 第6期中期目標の説明を原文に合わせ、65%が何の割合かの取り違えと、閉館と運営費交付金ゼロの記述を直しました。

    訂正前
    文化庁は国立美術館・博物館に対し、自己収入比率を最終年度までに65%以上とすることを要求/自己収入比率が40%を下回った時点で「社会的役割を果たせない」と判断し、閉館を含む再編の検討対象となる/究極的には自己収入比率100%(運営費交付金ゼロ)を目指す
    訂正後
    展示事業にかかる費用のうち自己収入で賄う割合を、2030年度に65%以上とし、次の中期目標期間中に100%とすることを目指す。4年目(2029年度)に4割を下回っている等、社会的に求められている役割を十分に果たせていないと考えられる館は再編の対象になる。文化庁は、再編は閉館を想定しておらず、各館の展示収入が4割未満になることだけですぐに再編の対象にするものではないと説明している

    誤った理由 65%は収入全体に占める自己収入の割合ではなく、展示事業にかかる費用に対する自己収入の割合でした。この目標を定めたのも、文化庁ではなく文部科学省です。中期目標の原文に閉館の記述はなく、文化庁も「再編」について「閉館」を想定していないと説明しています。65%と100%は展示事業だけで見た割合で、原文は運営費交付金の確保を「必要不可欠」としています。

  4. — 国際比較の図と本文を、文化庁の比較調査の数字に差し替えました。

    訂正前
    主要国の文化予算(対GDP比):フランス0.10%、韓国0.06%、ドイツ0.04%、イギリス0.03%、日本0.02%/フランスの約1/5、韓国の約1/3で、先進国の中で際立って低い/フランスの文化予算はGDP比約0.1%で日本の約5倍
    訂正後
    政府予算に占める文化支出の割合(2020年):韓国1.24%、フランス0.92%、ドイツ0.36%、イギリス0.15%、日本0.11%、アメリカ0.04%/日本は6か国の中でアメリカに次いで低い/フランスは日本の約8倍

    誤った理由 図の各国の対GDP比には出典がなく、文化庁の比較調査にも対GDP比の数字はありませんでした。文化庁が公表している政府予算に占める割合に差し替え、同じ調査に含まれるアメリカも加えました。日本の約0.02%は、名目GDPで割った計算値であることを明記しました。

  5. — 東京国立博物館の値上げの年、ルーヴル美術館とフランス・ドイツの無料制度、交付金、学芸員、文化芸術基本法、国立科学博物館についての記述を、出典に合わせて直しました。

    訂正前
    2025年4月には東京国立博物館の常設展入館料が620円から1,000円へ61%引き上げ/過去30年で約3倍/特別展は1,600〜2,000円/運営費交付金は年々減少傾向/20代の学芸員の年収は250〜300万円程度/学芸員の約70%が過重労働/ルーヴル美術館は2024年に入館料を22ユーロから30ユーロへ/約50の国立美術館と100以上の国立記念建造物が毎月第一日曜日に無料/ベルリンの国立美術館群では定期的な無料開放日/文化芸術が「社会的包摂」に寄与することを明記/56,584人から調達、日本のクラファン史上最高額
    訂正後
    2020年4月に一般620円から1,000円へ/1989年の消費税導入から約30年で3倍近く/特別展の記述は削除し、後段は「1,000円の入館料」に/収入の6割以上が運営費交付金と施設整備費補助金で、2026年度の交付金は約3.2億円増/学芸員の年収と過重労働の数字は削除/2026年9月時点でEEA居住者22ユーロ、それ以外32ユーロ/国立美術館は41、記念建造物の無料は1〜3月と11〜12月の第一日曜/ミュージアム・サンデーは2024年12月を最後に休止/第2条第3項の文言に合わせた/約5万7千人から、当時の国内最高額

    誤った理由 東京国立博物館の値上げは2020年でした。特別展の料金、学芸員の年収と過重労働の割合は、出典が見つかりませんでした。交付金が年々減っているという記述は、2026年度に増えたという文化庁の説明と合いません。ルーヴル美術館、フランスとドイツの無料制度は、それぞれの公式ページの記述に合わせました。文化芸術基本法の条文は「社会的包摂」という言葉を使っていません。国立科学博物館の人数と記録は、出典の日経新聞の記事に合わせました。参考文献の予算資料も、本文と同じ年度の資料に差し替えました。

  6. — 文化庁予算の約0.02%が何を数えた値か、国際比較の値がいつのものかを明記し、範囲の外にある支出を書き足しました。

    訂正前
    日本の文化予算はGDP比0.02%と先進国で際立って低い
    訂正後
    国の文化庁予算(当初予算)は名目GDPの約0.02%/国際観光旅客税を財源とする事業は224億円が別途計上され、令和7年度には第1次補正予算として431億円が積まれた/地方自治体の文化支出は4,700億円(平成30年度)/国際比較の値は2020年のもので、ドイツは2020年に政府予算が急増して割合が下がった(2019年は0.54%)

    誤った理由 約0.02%は文化庁の当初予算だけを名目GDPで割った値で、国と地方を合わせた文化への支出ではありません。国際観光旅客税を財源とする事業や補正予算は当初予算の外にあり、文化庁の比較調査は日本の地方自治体の文化支出を4,700億円としています。国際比較の値は2020年の値ですが、年が書かれていませんでした。

  7. — 出典のなかった、美術館の統廃合の増加、学芸員の非正規化、英国の無料化の原則についての記述を、出典のある内容に改めました。

    訂正前
    自治体財政の逼迫を背景に、美術館の統廃合や休館が増加している/コスト削減が最優先の評価基準となり、学芸員の非正規化が進行した/美術館の専門性を支える学芸員が、3年から5年の契約更新を繰り返す非正規職員として雇用される構造が常態化している/指定管理者制度による学芸員の非正規化は、短期的にはコスト削減に寄与する/「文化施設は税金で運営し、すべての市民に開放する」という原則が、2001年の無料化政策以来一貫している
    訂正後
    日本博物館協会の令和6年度調査で「財政面で厳しい」にあてはまると答えた館は、回答館の77.4%/文化庁の資料が、指定管理者制度のデメリットとして、経費の節減が職員の労働条件に波及すること、研修や後継者育成の機会が確保しにくくなることなどを挙げている/英国の、すべての人を対象にした無料化は2001年12月に始まった

    誤った理由 統廃合や休館が増えているという統計は見つかりませんでした。文部科学省の社会教育調査(令和3年度)では、博物館は過去最多の1,305館で、博物館類似施設も前回から増えて4,466館です。日本博物館協会の令和6年度調査は、非常勤職員が職員全体の約4分の1で、その増加には歯止めがかかっていると書いています。学芸員が3年から5年の契約更新を繰り返すことを示す資料も、見つかりませんでした。英国の原則は文言を出典で確かめられなかったため、確認できた無料化の開始時期の記述に改めました。

  8. — 「自己収入」要求が公共性を侵食するという段落を、対象を展示に絞り、中期目標の入場料の記述を根拠に書き直しました。

    訂正前
    第6期中期目標が示す「自己収入比率65%以上、未達なら閉館再編」という方針は、美術館を事実上の収益事業体に変質させる圧力である/経済的に余裕のない層(低所得世帯、学生、高齢者、障害者)を文化から排除するメカニズムとして機能する
    訂正後
    第6期中期目標が展示事業に求める自己収入65%以上という目標は、展示を入場料などの自己収入で回す事業に変える圧力である。中期目標は入場料の引き上げと二重価格の導入を期間中に実施するとしており、文化庁は収集・保管、教育普及、調査研究には国の予算を措置すると説明している/経済的に余裕のない層(低所得世帯、大学生)を文化から排除するメカニズムとして機能する

    誤った理由 65%は展示事業だけの割合で、文化庁は収集・保管、教育普及、調査研究には国の予算を措置すると説明しているため、美術館全体を収益事業体に変える圧力とは書けません。一方、入場料の引き上げと二重価格の導入は中期目標の原文にあります。国立美術館の発表では、所蔵作品展の高校生以下、18歳未満、65歳以上、障がい者手帳を持つ人と付添者の無料は続くため、高齢者と障害者を排除される層に挙げた部分も直しました。

  9. — 海外との対比に、日本の国立美術館にも所蔵作品展の無料の対象があること、ルーヴル美術館の料金が居住地で分かれることを書き足しました。

    訂正前
    海外の無料の仕組みだけを挙げ、日本の国立美術館の無料の対象には触れていなかった
    訂正後
    日本の国立美術館も、所蔵作品展は高校生以下と18歳未満、65歳以上を無料にしている。違いは、常設展を誰にでも無料にしている英国と、無料を18歳から25歳まで広げたフランスにある/ルーヴル美術館の居住地で分ける料金は、日本の中期目標が求める二重価格と同じ仕組みである

    誤った理由 18歳未満の無料は日本の国立美術館にもあります。海外の仕組みだけを並べると、日本との差が実際より大きく見えるため、書き足しました。

  10. — 文化庁予算を公表値に改め、ルーヴル美術館の引き上げ率を落としました。

    訂正前
    文化庁の予算は約1,100億円/ルーヴル美術館は2024年に入館料を22ユーロから30ユーロへと38%引き上げた
    訂正後
    令和7年度1,063億円、令和8年度1,073億円(前年度から9億円・0.9%増)/引き上げ率は削除

    誤った理由 約1,100億円は公表値と違い、出典のPDFにも該当する数字がありませんでした。令和8年度予算の概要に差し替えています。ルーヴルの38%という引き上げ率は、公式サイトが料金をJavaScriptで描くため確認できず落としました。

読んだ後に考えてみよう

  1. 身近な美術館や博物館への入館料について、適正だと感じているだろうか。
  2. 自分が住む地域の文化施設は、その役割を十分に果たしているといえるだろうか。
  3. なぜ文化芸術分野への公的支援が他国と比べて少ないのか、その背景を考えてみたい。

この記事の用語

運営費交付金
国が独立行政法人に、業務の財源として交付する資金。根拠は独立行政法人通則法第46条で、政府は予算の範囲内で、業務の財源に充てるために必要な金額の全部または一部を交付できる。法人は、税金などで賄われる資金であることに留意し、適切かつ効率的に使うよう努めなければならない(同条第2項)。
指定管理者制度
地方自治法第244条の2に基づき、公の施設の管理を民間事業者やNPO等に委ねる制度。2003年の法改正で導入。管理運営の効率化とサービス向上が目的だが、指定期間の短さ(通常3〜5年)が長期投資を妨げる課題がある。
中期目標
独立行政法人通則法第29条に基づき、主務大臣が3年以上5年以下の期間で定め、中期目標管理法人に指示して公表する業務運営の目標。期間、国民に提供するサービスその他の業務の質の向上、業務運営の効率化、財務内容の改善などを定める。法人はこの目標に基づいて中期計画を作成し、主務大臣の認可を受ける(同法第30条)。
独立行政法人
国が直接行う必要はないものの、民間だけに任せると十分に実施されないおそれのある公共的な業務などを担う法人。独立行政法人通則法と、それぞれの設立法に基づいて設けられる。
二重価格
同じ施設やサービスに対し、国内の居住者と海外からの訪問者などで異なる料金を設けること。誰を対象に区別するか、料金差をどう定めるかが制度設計の論点となる。

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