情報教育の見直し:教員の免許・研修・AIルールを読む
10月5日の審議まとめと、情報教育の実施日程・教員免許・研修・生成AIのルールについて
10月5日に次期学習指導要領の審議まとめが公表された。告示済みの新しい基準とは区別し、情報教育の日程、技術科教員9,649人の免許、研修とAI指針の計画を読む。

ざっくり言うと
- 10月5日に審議まとめが公表された。新しい基準の告示とは別の段階で、全面実施の想定は小学校2030年度、中学校2031年度である。
- 中学校技術の担当教員9,649人のうち、免許外教科担任と臨時免許状は合わせて2,406人。2028年度にゼロとする数字は目標で、実績ではない。
- 生成AIの線引きを示す2024年12月のガイドラインバージョン2.0は、基準ではなく参考資料である。国は2026年度中に改定する方針を示している。
記事の画像はAI生成のイメージであり、実際の人物や現場を撮影した写真ではない。
本稿は制度の一般的な情報をまとめたもので、個別の事案についての法律や個人情報の扱いに関する助言ではない。個別の判断が必要な場合は、教育委員会や専門家に確認する必要がある。
何が起きているのか
10月5日に審議まとめが公表された。小学校の情報の領域と中学校の情報・技術科の方向性は、新基準の告示とは区別する。
本稿は2026年11月4日時点の資料を基にしている。
文部科学省は2026年10月5日、中央教育審議会の教育課程部会によるを公表した。9月25日の第18回会議で示された「案」から、審議まとめへ進んでいる。学習指導要領は、学校で教える内容について国が定めた基準である。審議まとめには、小中学校の「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」へ改め、小学校に「情報の領域」、中学校に「情報・技術科」を置く方向性が記されている。
e-Govの公示(外部サイト、新しいタブで開きます)では、この審議まとめに関する任意の意見募集の締切を2026年11月5日23時59分(日本時間)としている。意見を受け付ける段階と、新しい基準を告示する段階は区別する。記事が掲載されていることは、締切後も意見を受け付けていることを意味しない。
審議まとめの公表と、新しい基準の告示は別の段階である。 10月8日の第19回については、関係団体からのヒアリングを議題とする。同日の改訂スケジュールは、中央教育審議会の答申を冬頃、改訂を年度末の予定としている。資料の掲載を、その後の答申や告示が済んだ証拠にはしない。
審議まとめと10月8日のスケジュールが示す全面実施は、小学校が2030年度、中学校が2031年度である。新教科・領域の先行実施は、小学校2028年度、中学校2029年度から段階的に進める方向で、具体の経過措置は今後検討する。高校は2032年度の入学生から順に進める想定だが、日程には変更の可能性があると注記されている。これらは告示済みの実施日程ではない。
いま学校が従う教育課程の基準は、2017年から2019年にかけて改訂された現行の学習指導要領である。生成AIについては文部科学省が2024年12月26日に出したガイドラインバージョン2.0があるが、これは基準ではない。ガイドライン自身が、学校現場での生成AIの利活用を支える参考資料と位置づけ、利用を一律に禁止も義務付けもしないと書いている。新しい教科が始まるまでに、教員の免許、研修、教材、利用のルールがどこまで整うのか。本稿は、国の資料に書かれた範囲でその準備を読む。
いま使われているもの
現行の基準と、国の参考資料
- 学習指導要領
- 2017〜19年改訂の現行版
- 生成AIガイドライン
- バージョン2.0(2024年12月)
- ガイドラインの性格
- 参考資料(一律禁止・義務付けではない)
審議方針と今後の予定
審議まとめと国の計画
- 審議まとめ
- 公表(10月5日)
- 答申・告示
- 今後の予定
- 小学校
- 先行2028・全面2030年度
- 中学校
- 先行2029・全面2031年度
- 高校
- 2032年度入学生から
- ガイドライン改定
- 2026年度中(方針)
審議方針の欄には、告示前の方針と今後の日程を示している。先行実施の中身を今後具体的に検討すると記し、高校の日程が変更される可能性にも言及している。
背景と文脈
審議まとめはAIを使う力と操作技能を区別する。生成AIの指針のバージョン2.0は基準ではなく参考資料だ。
審議まとめはAIを「操作の技能」と区別している
審議まとめの247ページは、自律的に作業を進めるや、機械を動かすフィジカルAIの広がりに触れる。そのうえで、子どもが検索エンジンなどを使い、すでに日常的にAIに触れていると書く。
同じページには懸念も書かれている。AIへの過度な依存や、学習の過程の省略(いわゆる認知的オフロード)が学習効果を下げ、深い学びにつながらないとの指摘を、審議まとめは記している。認知的オフロードは、考える作業を道具に預けてしまうことを指す。審議まとめはAIを使いこなす力を、単なる操作技能ではないものと位置づけ、新しい教科・領域で発達の段階に合わせて扱うとしている。
審議まとめの248ページによれば、AIがプログラムを書く時代でも、プログラミングを学ぶ必要がなくなるとはしていない。AIが出したコードには誤りが含まれうるので、確かめる力が要るという理由である。
他教科から授業時間を移す案
審議まとめは、新しい教科・領域に標準の授業時数を上乗せする例外を設ける方針を示す。上乗せの最大の目安は、小学校3・4年で各学年30コマ程度、中学校1・2年で各学年70コマ程度などと示されている。中学校の数字には、いまの技術分野の内容も含まれる。その分、審議まとめは小学校3年以上の他の教科の時数を一律で3〜4%程度減らすことになると見込む。35コマ以下の教科を減らさず、現行の標準の総授業時数を保つ。実数は引き続き精査するとしており、どの教科が何コマ減るかはまだ決まっていない。
いまの線引きはガイドラインバージョン2.0にある
生成AIのガイドラインには経緯がある。文部科学省は2023年7月に暫定的なガイドライン(ver1.0)を公表し、2024年7月に有識者、現職の教員、教育行政の関係者などによる検討会議を置いて、12月にバージョン2.0をまとめた。技術や学校の取組の状況に応じた改訂も想定している。ガイドラインは現行の学習指導要領について、AIの存在を前提として子どもの資質・能力を確実に育てることを目指していると説明しているので、「いまの学習指導要領はAIを扱っていない」とは言い切れない。審議まとめの新しさは、情報活用能力を育てる教科・領域を新たに置く点にある。
は、学校での生成AIの利用を一律に禁止するものでも、義務付けるものでもないと書いている。児童生徒が使う場合は教育委員会の方針に基づき、年齢制限などの条件を校長と担当の教師が確かめる。年齢の線は固定されておらず、提供者が定める最新の利用規約に従う。規約によっては保護者の同意が必要になる。
ほかにも具体的な線がある。プロンプト(AIへの指示文)に氏名や写真などの個人情報を入れさせない。小学生が直接使う場合は、発達の段階などを考慮し、利用の可否を特に注意して判断するよう求めている。小学校段階の例としては、教師が生成AIとの対話の内容を示す使い方も挙がっている。定期考査や小テストで使わせることや、教師が判断せずにAIの出力で評価することは、避けるべき使い方の例として挙がっている。
営利を目的としない学校の授業の過程では、により、必要な限度で、著作権者の利益を不当に害さない範囲なら、公表された著作物の複製や公衆送信などを許諾なく行える。授業のためにネットで送る場合は原則として学校の設置者が補償金を払う。ガイドラインによると、学校のホームページへの掲載や外部コンテストへの提出など、授業の目的を超える使い方には同条が適用されず、許諾なしで使える場合を定めたほかの規定にも当たらなければ許諾が要る。
ガイドラインは、生成AIの使い方が学校や教職員によって大きく違うことも認めている。そのうえで、一律に禁止したり義務付けたりする硬直的な運用は望ましくないとし、研修を行う役割を教育委員会に求める。費用にも触れており、提供者の規約が今後も無料や低額のままとは限らないので、保護者の経済的な負担に配慮するよう書いている。
審議まとめは、AIを使う際の要点を学習指導要領の改訂を待たずにガイドライン等で示すとしている。同じ資料には、2026年度中にガイドラインを改定する方針も記されている。11月4日に確認した文部科学省の案内では、引き続きバージョン2.0を掲載している。
構造を読む
研修内容の提供期限と実際の提供日は別。免許外教科担任・臨時免許状の2,406人とゼロ目標を分ける。
研修用の内容の提供期限と、先行実施の時期
と審議まとめは、2026年7月30日時点の「指導体制改善プラン」を載せている。国が条件の整備に責任を持つという立場で、研修用の内容を小学校は2027年度末、中学校は2028年度末までに作って提供し、担当するすべての教員への研修につなげるとする。授業動画を含む教材を開発して少なくとも年1回程度更新すること、複数の学校での指導や遠隔授業の実証、外部人材の活用も並ぶ。
計画が示す作成・提供の期限は、小学校で2027年度末、中学校で2028年度末であり、それぞれ先行実施が始まる年度の直前にあたる。ただし、期限は実際の提供日を示すものではない。教員が研修に使える期間を確かめるには、内容が確定する時期に加え、具体的な提供予定や実施記録が必要だ。本稿は前倒しの提供時期や、実際の遅延を確認したものではない。
中学校技術の担当教員と免許の内訳
同じ取りまとめ(案)の106ページは、2025年度に中学校の技術を担当した教員の免許の内訳を示す。
- 普通免許状7,243人
- 免許外教科担任1,863人
- 臨時免許状543人
※出典は情報・技術WG取りまとめ(案)106ページ。同じ資料の101ページは、免許外教科担任と臨時免許状の合計を2026年度1,604人、2027年度802人、2028年度0人に減らす目標を示す。図の数字は2025年度の実数で、目標値は図に含めていない。
免許外教科担任は、その教科の免許を持たない教員が担当する仕組みである。2025年度は1,863人、臨時免許状は543人で、合わせると2,406人になる。計画はこれを2028年度までにゼロにするとしている。オンラインの免許法認定講習には2026年度に656人が受講予定とあるが、修了した人数ではない。新しい教科に合わせた免許制度は検討中である。
この内訳は技術科の免許の区分を数えたもので、生成AIを教える力を測ったものではない。免許外教科担任の人数を「AIを教えられない教員の数」と読み替えることはできない。
中学校では、研修用の内容の作成・提供期限と、免許外教科担任と臨時免許状をゼロにする目標が、どちらも2028年度に置かれている。翌2029年度には先行実施が始まる。免許に関する目標年度と、研修用の内容の作成・提供期限が同じ年度に置かれている。
自己評価の割合と研修の受講割合は別の数字
は、公立学校で授業を担当する教員を対象にしている。ICT活用指導力の項目は、2018年にまとめたチェックリストの4つの大項目と16の小項目からなり、2025年度に授業を担当した教員が自分で4段階に答える。公表された数字は「できる」「ややできる」と答えた教員の割合を大項目ごとに平均した値で、人数を数えたものではない。16項目に生成AIだけを問う項目もない。
大項目ごとの割合は、教材研究や校務にICTを使う力が91.1%(前年度90.7%)だった。授業でICTを使って指導する力は83.4%(同82.2%)。児童生徒のICT活用を指導する力は84.0%(同83.1%)、情報活用の基盤となる知識や態度を指導する力は89.7%(同89.2%)だった。
研修の数字は、これとは別の問いに答えている。ICT活用指導力の各項目に関する研修を2025年度中に受けた教員の割合は全国71.0%で、前年度の73.5%を下回った。都道府県別では最高98.1%、最低53.2%で、前年度は最高95.8%、最低58.8%だった。複数の研修を受けた教員も1人と数え、2026年3月末までに受講する予定の教員も含めている。
自己評価の割合はわずかに上がり、研修の割合は下がった。二つは別の問いに対する数字なので、この並びから研修の効果や不足を読み取ることはできない。
同じ調査の2年前の数字は、教科書のデジタル化を扱った既存コラム(このサイトの記事)で取り上げている。年次が違うので、本稿の数字とは並べて比較の前提をそろえる必要がある。調査は都道府県の差の原因を示しておらず、本稿も原因を断定しない。
関連読書
『SCHOOL SHIFT あなたが未来の「教育」を体現する』(外部サイト、新しいタブで開きます)は学校組織と教師の学びを考える関連読書である。出版社の書誌・紹介・目次と公開された「はじめに」を確認したが、書籍本文全体は未読で、現在の審議や免許制度の根拠にはしない。リンクはAmazonアソシエイトの広告リンクである。
統計や公開資料の読み方は統計・公開データを読むガイド(このサイトの記事)も参照できる。
残る問い
免許制度、先行実施の中身、新版の指針は未定である。新教科が始まるまで、学校と教育委員会は何を準備できるか。
免許については、新しい教科に合わせた制度がまだ決まっていない。2028年度にゼロとする数字は、国の計画が全自治体の目標として示したものだ。制度が固まるまでの手当てとして、計画は複数の学校での指導や遠隔授業の実証、外部人材の活用を挙げている。どの手当てをどの地域が使えるのかは、計画の進み具合を見るまで分からない。教員を複数校で共有する場合、移動や準備の時間を誰が確保し、学校ごとの授業の相談を誰が担当するのか。免許保有者が増えたことと、授業を支える人と時間が足りていることは、分けて確かめる必要がある。
研修と教材は、先行実施の具体的な内容に合わせて調整する必要がある。研修用の内容の作成・提供期限は、小学校で2027年度末、中学校で2028年度末とされている。答申と告示の時期は研修内容の調整に関わるが、この期限だけで、教員が実際に使える教材を受け取る時期や準備に使える期間は決まらない。教材を年1回程度更新するという計画も、更新を受け持つ体制が続くかどうかで意味が変わってくる。
生成AIのルールは、新版のガイドラインが出るまでバージョン2.0のままである。児童生徒の年齢制限と保護者の同意の要否を提供者の規約で確かめ、個人情報を入力させず、授業で作ったものを外へ出す際の著作権の条件も確認する。教育委員会が利用の方針を決める点も変わらない。ガイドラインは一律の硬直的な運用を望ましくないとしているので、線引きの細部は教育委員会ごとに違いうる。新版が出るまで、そして新しい教科が始まるまでの間、この線引きを各学校が自分の端末と授業に置き換えられるか。その点が、新しい教科の中身と同じくらい問われる。
この記事で使った統計の出典
- 1次期学習指導要領等に向けた審議まとめ78ページ(2026年10月) 出典を開く
- 2情報・技術WG取りまとめ(案)106ページ(2025年度) 出典を開く
- 3情報・技術WG取りまとめ(案)106ページ(2026年7月23日時点) 出典を開く
- 4令和7年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)(令和8年3月1日現在)〔速報値〕23ページ(2026年3月1日時点) 出典を開く
- 5令和7年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)(令和8年3月1日現在)〔速報値〕28ページ(2026年3月1日時点) 出典を開く
参考文献
次期学習指導要領等に向けた審議まとめ — 中央教育審議会 教育課程部会 (2026). 文部科学省
情報・技術WG取りまとめ(案) — 情報・技術WG (2026). 文部科学省
初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0) — 文部科学省 初等中等教育局 (2024). 文部科学省
令和7年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)(令和8年3月1日現在)〔速報値〕 — 文部科学省 (2026). 文部科学省
教育課程部会 教育課程企画特別部会(第19回)の開催について — 文部科学省 (2026). 文部科学省
著作権法(第35条) — 日本国 (1970). e-Gov法令検索
学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ) — 教育課程企画特別部会 (2026). 文部科学省
次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(掲載ページ) — 文部科学省 (2026). 文部科学省
教育課程部会 教育課程企画特別部会(第19回)配付資料 — 文部科学省 (2026). 文部科学省
読んだ後に考えてみよう
- 先行実施の中身が決まる前に、学校と教育委員会が準備できることは何だろうか。
- 研修の受講割合とは別に、教員が生成AIを授業でどう扱えているかを確かめる方法はあるだろうか。
- 複数校で教員を共有する場合、移動・準備・授業の相談に必要な時間を誰が確保するのだろうか。
この記事の用語
- AIエージェント
- 利用者の指示に応じて、検索や資料作成などの作業を組み合わせて進めるAI。実行できる作業やアクセスできる資料は、利用する環境の仕様と設定による。
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