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一般社団法人 社会構想デザイン機構
論考・インサイト

給付付き税額控除の本格導入は令和11年度。前提になる公金受取口座の登録率は5割で、残りは受給意思の確認が要る

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ヨコタナオヤ(横田直也)
約7分で読めます

政府が令和8年8月5日、給付付き税額控除の制度導入の基本方針を閣議決定した。本格導入は令和11年度で、それまでの2年間は飲食料品の消費税率を1%にする経過措置を置く。執行は国と地方の分担で行われるが、実務の前提になる公金受取口座の登録率は現状5割程度である。給付の対象は勤労性の所得がある人で、対象外になる人の受け皿は本格導入までに結論を得るとされた。

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ざっくり言うと

  1. 基本方針は令和8年8月5日に閣議決定、本格導入は令和11年度である
  2. 経過措置として令和9年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を1%にする
  3. 実務の前提になる公金受取口座の登録率は現状5割程度である
令和8年8月5日
基本方針を閣議決定
中間とりまとめ(令和8年7月29日 社会保障国民会議)を踏まえたもの
令和9年4月1日から2年間
つなぎ。飲食料品の消費税率を1%に
あわせて消費税1%相当分の範囲内で先行して給付。全体として飲食料品の消費税を実質ゼロにする
令和11年度
本格導入
高所得の配偶者の把握と16〜18歳の被扶養者の情報を確保できる見込みが立つ年度
実務の前提になっている数字
公金受取口座の登録率 現状5割程度
口座が登録されていない分だけ、受給意思と口座情報の確認が残る

執行は国と地方の分担で行う。全国一律のほうが効率的なシステムの整備は国、住民とのやりとりは地方自治体が中心という方向で検討されている。

給付付き税額控除の日程。本格導入が令和11年度になるのは、必要な情報がまだ揃わないためである

何が起きているのか

基本方針の閣議決定と、国と地方の協議の開始

令和8年8月5日、政府が「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針を閣議決定した。令和8年7月29日の社会保障国民会議の中間とりまとめを踏まえたものである。

その5日後、国と地方の協議の場の初会合が開かれた。自治体側が事務の重さを指摘し、国が軽減策を示す形である。

この記事では、その事務が何なのかを閣議決定の文書から読む。

背景と文脈

誰が対象で、いくら出るのか。制度の設計が文書に書かれている

誰が対象になるか

制度の目的は2つある。中低所得の現役勤労者の負担を軽くして、所得に応じて手取りを増やすこと。もう1つが「年収の壁」などによる「働き控え」の緩和による就労促進である。

対象の条件はこうである。一定の勤労性の所得があり、一定の税・社会保険料負担がある者を対象とする。勤労性の所得には事業所得および給与所得に加え、近年の多様な働き方に鑑みて業務に係る雑所得も含め、個人事業者、フリーランスも対象とする

個人単位とし、単身者も対象とする。世帯ではなく1人ずつ見る設計である。

給付額は逓増して、定額になって、消える

金額の出し方も書かれている。就労促進の観点から、勤労性の所得が一定の水準に達するまで給付額を逓増させ、その後は定額とする。総所得が一定額を超える場合、公平性の観点から総所得に応じて逓減・消失させる

働くほど増える区間を作って、途中から平らにして、上のほうで消す形である。

こどもの加算もある。こどもを扶養している者については、18歳以下のこどもの人数に応じた加算を行う

一番下だけは、増えない

ただし、下の端に例外が置かれた。

非課税ライン以下の所得把握には執行上の課題があり、給付額を逓増させると誤支給につながる可能性があるため、定額とする

所得が把握できないから、働くほど増える仕組みを一番下の層には当てない。 就労を促す制度の中で、最も低い所得の区間だけが、その傾きから外れる。

金額の水準はまだ決まっていない

いくら出るかは、この文書に書かれていない。給付に係る閾値となる所得水準は、純負担率や純負担額の国際比較や諸外国の類似制度における対象者の所得の範囲等を参照しながら、恒久財源の確保と併せて検討するとされている。給付額のほうも同じ書き方である。

枠組みが先に決まり、金額は財源とセットで後から決まる。

構造を読む

令和11年度まで待つ理由は、必要な情報がまだ揃わないことである

令和11年度まで待つ理由が書かれている

本格導入がなぜ令和11年度なのか。文書に理由がある。

公平性などの観点から高所得の配偶者を把握するとともに、子育て世帯への支援の観点から16歳から18歳までの被扶養者の情報を把握するなど、追加的な情報確保の仕組みも必要となることから、必要な環境整備に取り組むことを前提として、その環境が整うことが見込まれる令和11年度に本格導入する

待っているのは予算でも法案でもなく、情報である。 誰の配偶者がいくら稼いでいるか、16歳から18歳の扶養家族が何人いるか。この2つを行政が確認できる仕組みが、いまは無い。

16歳から18歳が名指しされたのは、15歳以下には児童手当があり、その情報を行政が持っているためである。

つなぎの2年間は、持っている情報だけで回す

そのあいだの2年間は、こういう形になる。

令和9年4月1日から2年間、軽減税率の対象となっている飲食料品に係る消費税率を1%とする。あわせて、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲内で、現時点で公的機関が保有する所得情報を活用した給付を令和9年度に導入する。2つを合わせて、飲食料品の消費税を実質ゼロにする形である。

つなぎの中身は本格導入と違う。配偶者の所得を勘案する一定の例外措置を設けず、18歳以下のこどもの人数に応じた加算に代えて15歳以下のこどもの人数に応じた加算を行う

16歳から18歳の子を持つ世帯は、つなぎの2年間は加算の対象外である。 情報が無いから、というのが理由である。

事務の中身は「意思と口座の確認」である

国と地方の協議で問題になっているのが何かも、文書に書かれている。

実施主体の負担軽減のため、国が前面に立って適切な支援や対策を講ずることとし、具体的には、過去の給付金事務において負担が大きかった対象者の受給意思や口座情報の確認、外部からの問合せ対応等への対応策を講ずる

給付を配る事務の重さは、金額の計算ではない。 誰に配るかが決まったあとで、その人が受け取る意思があるかを確かめ、振込先の口座を集めるところである。過去の給付金でここが詰まった。

前提になっている数字が5割である

その解き方として置かれたのが、公金受取口座である。

特に公金受取口座については、現状5割程度にとどまる登録率の向上を国として強力に推進し、本制度の受給に際してその利用を原則としていくとともに、口座情報の正確性の確保等の機能強化に継続的に取り組む

登録率5割。 口座が登録されていれば、意思の確認を省いて振り込める。登録されていなければ、従来どおり確認が残る。

つまり、 いま制度が乗ろうとしている土台は、半分しか敷かれていない。 令和9年度の先行導入までに残り半分がどこまで埋まるかで、自治体に残る事務量が変わる。

分担の線は「システムは国、窓口は地方」

役割分担の方向も書かれている。国か地方自治体かの二者択一ではなく、国と地方が協力して運営し、オールジャパンの事務負担を最小化していくという基本的な考え方の下、システム等の全国一律とした方が効率的なインフラの整備は国が対応することを基本とする一方、住民とのインターフェイスの部分は地方自治体を中心に対応する方向で検討を行う

システムは国、住民とのやりとりは地方。 そして先に見たとおり、事務の重さは住民とのやりとりの側にある。国が引き受けるのは、国によるコールセンターの設置や受給意思の確認負担の軽減策の検討である。

分担が固定されたわけでもない。国と地方の役割分担は変わり得るものと認識し、国と地方の間で制度導入後も継続的な検討を行うと書かれている。

対象から外れる人を、政府自身が課題に挙げた

この制度は勤労性の所得を要件にした。働いていない人は、原理的に入らない。

そのことを、文書は自分で書いている。

働いてはいるものの低収入の現役世代や就労意欲はあるものの病気や障害等で働けない方など、就労されている方・就労が困難な方のうち給付の対象外で支援が必要な方を丁寧に把握した上で、生活困窮者自立支援制度、障害者福祉など既存の制度での対応との関係を整理し、給付と相談・就労支援の一体的な実施を含め、必要な対応の在り方を財源とともに検討する。結論は本格導入までに得るとされた。

受け皿として名指しされたのが、生活困窮者自立支援制度である。

生活困窮の相談は10年で345.6万件、プランを作ったのは26.6%(このサイトの記事)で見たとおり、この制度は相談を受けても継続的な支援の計画を作るのが4件に1件で、効果が確認されている就労準備支援事業の利用はプラン作成の6.1%にとどまる。 そこへ、新しい給付制度から外れた人を送る設計である。

氷河期世代の正規雇用は5年で11万人増(このサイトの記事)でも、非労働力人口が36万人減るなかで無業者だけが3万人増えていた。 働ける人から順に制度が届き、届かない層が残る形は、ここでも同じである。

何を数えれば、次の判断ができるか

この制度で追える数字は、これから作られる。判断のために先に決めておくべきものが2つある。

1つは、 公金受取口座の登録率が、いつ、どの層で上がったか である。5割という全体の数字だけでは、確認事務が残る人がどこに集まっているかが分からない。高齢者に多いのか、住民票と実際の居所がずれている人に多いのかで、自治体の負担の形が変わる。

もう1つは、 対象外になった人の数 である。勤労性の所得の基準を下回った人が何人いて、そのうち何人が生活困窮者自立支援制度や障害者福祉につながったか。 これを数えないと、令和11年度に「結論を得る」と書かれた検討の材料が揃わない。

アウトカム指標の設計(このサイトの記事)で扱ったとおり、何を成果とするかは制度が動き出す前に決めておく必要がある。導入まで3年ある。

この記事で使った統計の出典

  1. 1内閣官房「「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針」(令和8年8月5日 閣議決定) 出典を開く

参考書籍

参考文献

「給付付き税額控除」の制度導入の基本方針(令和8年8月5日 閣議決定)内閣官房 (2026). 内閣官房

「飲食料品に係る消費税率の引下げ」及び「給付付き税額控除」(政府の基本方針)について内閣官房 (2026). 内閣官房

社会保障国民会議 給付付き税額控除等に関する実務者会議内閣官房 (2026). 内閣官房

読んだ後に考えてみよう

  1. 勤労性の所得を要件に置くと、誰が対象から外れるか
  2. 公金受取口座の登録率が5割であることは、実務のどこに効くか
  3. 本格導入までの2年間で、何が確認できるようになるのか

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