このノートは公共資産活用研究室(ISVD-LAB-005)の統合ノートである。休眠預金等活用制度とPFSという2つの制度を並べ、事業を自ら行わずに関わる立ち位置を、共通の目印で読む。個別の分析はPFSに用意されている二つの椅子(このサイトの記事)とプログラム・オフィサーが見えない制度(このサイトの記事)にある。
2つの制度に共通するもの
休眠預金等活用制度とPFSは、原資も所管も目的も違う。前者は国民の預金を原資に民間公益活動を支える仕組みで、後者は自治体が成果に応じて対価を払う契約方式である。
それでも、2つには同じ形がある。事業を自ら行わずに関わる立ち位置が、どちらの制度にも複数用意されている。
休眠預金では、資金分配団体が実行団体を選んで配り、活動支援団体が資金を伴わない支援だけを行い、プログラム・オフィサー(PO)が伴走支援を担う。PFSでは、中間支援組織が案件形成を担い、資金提供者が資金を出し、第三者評価機関が成果を評価する。
どれも支援側の椅子である。しかし、座ったときに何が起きるかは大きく違う。自団体がどこに座るかを決めるには、椅子を並べて比べる必要がある。
三つの目印
9つの椅子を、次の3点で並べた。
- 金が動くか。その椅子に座ると、誰から誰へ、何の名目で金が動くか
- リスクを負うか。成果が出なかったとき、自分の何が減るか
- 数えられているか。その椅子に座った団体や人の数を、制度の公表資料から引けるか
| 椅子 | 金が動くか | リスクを負うか | 数えられているか | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 休眠預金 | 資金分配団体 | ○ | △ | ○ | 公表あり |
| 休眠預金 | 実行団体 | ○ | ○ | ○ | 公表あり |
| 休眠預金 | 活動支援団体 | ○ | △ | ○ | 15団体 |
| 休眠預金 | 支援対象団体 | × | × | ○ | 50団体 |
| 休眠預金 | プログラム・オフィサー | ○ | × | × | 公表なし |
| PFS | 受託者 | ○ | ○ | ○ | 379件 |
| PFS | 資金提供者 | △ | ○ | ○ | 19件 |
| PFS | 中間支援組織 | ○ | × | × | 公表なし |
| PFS | 第三者評価機関 | ○ | × | × | 公表なし |
交差点で見えるもの
3列を突き合わせると、1つのことが出てくる。
数えられていない3つは、いずれもリスクを負わない椅子である。休眠預金のプログラム・オフィサー、PFSの中間支援組織、PFSの第三者評価機関。この3つには、公表資料から人数や件数を引ける経路がない。
逆向きも成り立つ。数えられている6つのうち、リスクを負わないのは支援対象団体だけである。支援対象団体は資金も伴わないので、そもそも金の側の説明責任が発生しない。それでも数えられているのは、活動支援団体が成果として報告する対象だからだと読める。
つまり制度は、リスクを負う者を数え、負わない者を数えていない。リスクが説明責任の単位になっているためだと考えられる。休眠預金の公募要領は、審査結果の情報公開について、原資が国民の資産であることに鑑み国民への説明責任を果たすためと書いたうえで、団体名・申請書類・選定過程・選定理由・助成額を並べている。公開の軸は、資金の流れとその判断に置かれている。
この設計自体に落ち度はない。公的な資金を扱う制度が、金の流れとその責任を追えるようにするのは筋が通っている。
問題は帰結のほうにある。
統合仮説
支援を本業にする組織は、この設計のもとで最も見えにくい位置に置かれる。
支援を本業にする組織は、多くの場合リスクを負わない。伴走支援の対価は役務の対価であり、成果が出なくても返す性質の金ではない。だから数えられない。数えられないので、その職能が育っているかどうかを、制度の外から確かめる手立てがない。
ここには順序の逆転がある。制度は支援側を育てようとしている。休眠預金は活動支援団体という枠を作り、POに専用の経費区分と研修義務まで置いた。PFSのアクションプランは、自治体・民間事業者・金融機関・大学等・中間支援組織の連携を促すネットワークの構築を掲げている。育てる設計はあるのに、育ったかを測る指標がない。
3年分を数えた活動支援団体の記事(このサイトの記事)では、採択11事業のすべてが「他団体を支えるプログラム」として出されていた。この枠は、支援を設計できる組織のための枠として機能している。だが、そこで育った担い手が何人いるのかは、どの資料にも出てこない。
使い方
自団体がどの椅子を狙うかを決めるとき、3つの目印は次のように働く。
| 問い | 目印 | 判断 |
|---|---|---|
| 事業の資金が要るのか | 金が動くか | 動かない椅子は、資金調達の手段にならない |
| 失敗したときに何を失うか | リスクを負うか | 負う椅子は、財務基盤の裏づけが要る |
| 実績として外に出せるか | 数えられているか | 数えられない椅子は、次の案件の説明材料にしにくい |
3つめが見落とされやすい。数えられない椅子に座った経験は、自分で記録しない限り残らない。制度の公表資料には出てこないので、次の提案で「実績」として示すには、自団体の側で事業名・期間・関与の範囲を記録しておく必要がある。
支援側に回るなら、制度が数えてくれない分を自分で数える。それがこの3つの目印から出てくる実務上の結論である。
残る問い
第一に、リスクを負わない椅子を数える指標は作れるか。AMEDは、独立行政法人等の情報公開に関する法律に基づく規則を置いたうえで、プログラムオフィサーの氏名・所属機関・役職を事業ごとのページに掲載している。個人の連絡先ではない水準なら、権利を損なわずに出せる範囲がある。人数と分野だけでも分かれば、職能の厚みを外から確かめられる。
第二に、中間支援組織が評価も担うとき、独立性はどう担保されるか。PFSの共通的ガイドラインは、第三者評価機関の設置を「望ましい」としつつ、中間支援組織が成果評価の役割も担う場合があると書いている。数えられていない2つの椅子が同じ組織で重なる設計は、この文言の範囲に収まってしまう。
第三に、この形は他の制度でも成り立つか。本稿で並べたのは2制度9椅子だけである。補助金、指定管理、Park-PFIなど、支援側の立ち位置を持つ制度は他にもある。同じ3つの目印で並べたとき、同じ形が出るかどうかは、次の検証対象になる。
関連する研究ノート
- PFSに用意されている二つの椅子(このサイトの記事)。サービスを提供せずに関わる立ち位置
- 測れないものに値段をつける(このサイトの記事)。WTPの組み立て方
- 重点3分野の外側にPFSは届いているか(このサイトの記事)。分野展開と新規実施団体
関連コラム・ガイド
- プログラム・オフィサーが見えない制度(このサイトの記事)。公開されるのは団体と金額で、人ではない
- 活動支援団体の三年分(このサイトの記事)。通った11事業の顔ぶれ
- 休眠預金に関わる5つの入口(このサイトの記事)。応募先で要件も規模も変わる
参考文献
2026年度 資金分配団体(助成)通常枠第1回 公募要領 — 一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA) (2026)
成果連動型民間委託契約方式 共通的ガイドライン(令和6年2月改訂版) — 内閣府 (2024)
国内におけるPFS事業の取組状況について — 内閣府 (2026)
休眠預金等活用制度について — 内閣府 (2026)
独立行政法人等情報公開法第22条に規定する情報 — 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) (2026)