ざっくり言うと
- 世話をしている家族が「いる」割合は小学6年生6.5%、中学2年生5.7%、高校2年生4.1%と下がり、大学3年生で6.2%に戻る
- 世話を必要とする家族は小学生できょうだいが71.0%を占めるが、大学生では母親が35.4%で最多になる
- 大学生が世話をする母親の状況は精神疾患が28.7%で最も高く、ケアの中身が質的に入れ替わっている
大学生で最も多い「母親」について、その状況は「精神疾患」が最も高く28.7%。きょうだいの世話は年月とともに終わるが、精神疾患の親のケアは終わらない。なお大学生の「いない」には「現在はいないが、過去にいた」が4.0%含まれる。また調査は、親が不在の間に幼いきょうだいの遊び相手をするケースも含むため数値を引き上げている可能性があると注記している。
何が起きているのか
割合は高2で下がり大学3年で戻る。同時に世話の相手がきょうだいから母親へ移る
こども家庭庁がまとめた資料に、学齢ごとの数字が並んでいる。世話をしている家族が「いる」と答えた割合は、小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生(全日制)で4.1%。学年が上がるにつれて下がっていく。
ところが、その次に大学3年生が来る。6.2%。高校2年生の4.1%から、また上がっている。しかも大学生については、「いない」と答えた中に「現在はいないが、過去にいた」人が4.0%含まれる。
数字が戻るとき、中身も変わっている。世話を必要とする家族として最も多く挙がるのは、小学生できょうだいが71.0%、中学生で61.8%、高校生で44.3%と下がり続ける。代わって大学生では母親が35.4%で最も多くなる。そして、その母親の状況として最も多く挙がるのが精神疾患で28.7%である。
同じ言葉で呼ばれている二つのものが、ここで入れ替わっている。
背景と文脈
終わるケアと終わらないケアが入れ替わる。本人は「特にない」と答え、問題として立たない
幼いきょうだいの世話は、時間が解決する。相手が育てば終わる。調査自身も、親が仕事で不在の間に幼いきょうだいの遊び相手をするといったケースが含まれ、数値を引き上げている可能性があると注記している。負担がないという意味ではないが、終わりの見える負担ではある。
精神疾患のある親のケアは、そうならない。相手が成長して自立するわけではない。むしろ本人が就職し、家を出るかどうかを決める時期に、ケアの必要は残り続ける。大学3年生という時期は、就職活動と重なる。どこで働くか、実家を離れられるかという判断に、家族のケアが直接効いてくる。
にもかかわらず、この層は見つけにくい。世話のためにやりたいけれどできていないことを尋ねた結果は、どの学齢でも「特にない」が最も多く、小学生63.9%、中学生58.0%、高校生52.1%、大学生51.9%と半数を超える。次に来るのが「自分の時間がとれない」である。本人にとって、それは家族の日常であって困りごとではない。
この構図は、2021年5月17日にまとまった関係府省のプロジェクトチーム報告がすでに書いている。ヤングケアラーは家庭内のデリケートな問題であることなどから表面化しにくい構造にあり、社会的認知度が低く、支援が必要な子どもがいても、子ども自身や周囲の大人が気付くことができない。同じ報告には、もうひとつ踏み込んだ記述がある。
ヤングケアラーに対する支援策、支援につなぐための窓口が明確でなく、また、福祉機関の専門職等から「介護力」と見なされ、サービスの利用調整が行われるケースあり
支援する側が、子どもを介護の担い手として計算に入れていた。制度の側が見落としていたのではなく、数えていたということである。
構造を読む
発見の仕組みは学校に置かれているが、質が変わるのは学校を離れる時期にあたる
いまの発見の仕組みは、学校に置かれている。ヤングケアラー支援の強化に係る法改正を受けて、こども家庭庁は2024年6月に自治体へ経緯と施行を通知した。学校は、毎日同じ子どもに会える場所として、発見の役割に向いている。
だが、ケアの質が変わるのは学校を離れる時期にあたる。高校2年生で4.1%まで下がった割合が大学3年生で6.2%に戻るということは、学齢期に把握されなかった層か、あるいは学齢期の後に始まった層が、そこにいるということだ。前者なら発見の網から漏れたことになるし、後者なら学校を経由する仕組みでは最初から届かない。どちらであっても、学校に置いた仕組みだけでは足りない。
しかも、この時期の判断は取り返しがつきにくい。就職先を選ぶ、進学をあきらめる、実家に残る。いずれも一度決めると、後から戻す費用が大きい。情報の非対称で言えば、本人は自分の状態が支援の対象になると知らず、支援する側は本人がどこにいるか知らない。両方が知らないまま、進路だけが決まっていく。
では、どこに手を置くか。三つある。
一つは、入口の言葉を変えることだ。「困っていることはありますか」と聞けば「特にない」が返る。「家族の世話で、平日にどれくらい時間を使っていますか」と事実を聞けば、答えは変わる。困りごととして立ち上がる前の段階を、事実の量として拾う。
二つめは、発見の場所を学校の外へ広げることである。大学の就職支援や学生相談、自治体の若者向け窓口、精神科医療の側。親を診ている医療機関は、その家に子どもがいることを知りうる立場にある。
三つめは、就労の側の設計だ。介護休業は主に高齢の親を想定して組み立てられている。20代前半で、精神疾患のある親を継続的に支えながら働き始める人を、いまの両立支援の枠組みは正面から想定していない。
制度が用意されていることと、それが届いていることを分けて数える必要があるのは、制度からの排除と未受給(このサイトの記事)で扱った構造と同じである。支援の入口をどう設計するかは、ステークホルダーの地図をつくる(このサイトの記事)の手順が使える。6.2%という数字は、下がった割合が戻ったのではなく、別のものが現れた数字として読むほうがよい。
この記事で使った統計の出典
- 1こども家庭庁 支援局虐待防止対策課 ヤングケアラー支援の現況 令和7年度(令和7年度) 出典を開く
参考書籍
- 『ちょっと気になる社会保障 V4』(外部サイト、新しいタブで開きます)(権丈善一、勁草書房)。社会保障が誰の負担で誰を支える仕組みなのかを、制度の設計思想から説明した入門書。家族が担ってきたケアを社会の側でどこまで引き受けるかという、本文で扱った問いの背景にあたる。
参考文献
ヤングケアラー支援の現況 令和7年度(参考資料6) — こども家庭庁 支援局虐待防止対策課 (2026). こども家庭庁
ヤングケアラー支援の強化に係る法改正の経緯・施行について — こども家庭庁 (2024). こども家庭庁
ヤングケアラーについて — こども家庭庁 (2026). こども家庭庁
ヤングケアラーの実態に関する調査研究 報告書 — 日本総合研究所 (2022). 令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業