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一般社団法人 社会構想デザイン機構

特殊詐欺の被害額が1年で98%増え、検挙件数は横ばい — 件数は30代、金額は70代

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ヨコタナオヤ
約4分で読めます

警察庁が2026年5月に公表した確定値によると、令和7年の特殊詐欺の被害額は1,423.1億円で前年から98.0%増えた。ほぼ倍である。一方で検挙件数は6,575件、前年比マイナス0.0%で動いていない。さらに高齢者が被害に占める割合は51.3%へ14.0ポイント下がった。件数で見るか金額で見るかで対策の宛先が変わる構造を読む。

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ざっくり言うと

  1. 令和7年の特殊詐欺は認知27,832件(+32.3%)、被害額1,423.1億円(+98.0%)でいずれも大きく増えた
  2. 同じ年の検挙件数は6,575件で前年比マイナス0.0%、検挙人員も2,338人で+2.8%にとどまる
  3. 高齢者(65歳以上)が総認知件数に占める割合は51.3%で14.0ポイント下がったが、被害総額では59.2%を占める
被害額
+98.0%
1,423.1億円
認知件数
+32.3%
27,832件
検挙件数
-0.0%
6,575件
ニセ警察詐欺の年代別(同じ手口を件数と金額の両方で見る)
件数が多いのは若い年代
30代2,239件
20代1,718件
金額が大きいのは高齢の年代
70代274.6億円
60代256.3億円

特殊詐欺全体で、高齢者(65歳以上)の被害が法人被害を除いた総認知件数に占める割合は51.3%へ14.0ポイント下がった。ただし被害総額に占める割合は59.2%で、金額では依然として高齢者に偏る。件数で対策を測ると若年層の対策に寄り、金額で測ると高齢者の対策に寄る。どちらを基準に置くかで、配る先が変わる。

被害額はほぼ倍、検挙は横ばい。そして件数の多い年代と、金額の大きい年代が違う

何が起きているのか

被害額はほぼ倍の1,423.1億円。同じ年の検挙件数は6,575件で前年から動いていない

警察庁が2026年5月22日に公表した確定値で、令和7年の特殊詐欺の被害額は1,423.1億円となった。前年から704.3億円増えている。増加率は98.0%で、1年でほぼ倍になった。認知件数も27,832件で32.3%増えた。

同じ資料に、もうひとつの数字が並んでいる。検挙件数は6,575件、前年比マイナス0.0%。検挙人員は2,338人で2.8%増にとどまる。被害が倍になっても、捕まえた件数は動いていない。

伸びの中心はオレオレ詐欺だった。認知件数は14,489件で114.6%増、被害額は1,138.1億円で148.3%増。一方で預貯金詐欺は25.0%減、還付金詐欺は21.9%減、キャッシュカード詐欺盗は10.3%減と、これまで主流だった手口は減っている。全体が増えたのではなく、ひとつの手口が跳ねた。

背景と文脈

高齢者の割合が51.3%へ14.0ポイント低下。件数は若年層、金額は高齢者に偏る

この統計には、もうひとつ前提を崩す数字が入っている。高齢者の割合である。

特殊詐欺全体で、65歳以上の被害の認知件数は14,273件で、前年から3.9%増えた。数としては増えている。だが、法人被害を除いた総認知件数に占める割合は51.3%で、14.0ポイント下がった。高齢者の被害が減ったのではなく、それ以外が急に増えたということだ。

どこが増えたのかは、オレオレ詐欺の内訳に出ている。件数が最も多いのは80代以上で3,235件、次が70代で2,453件。ここまでは従来どおりだ。だがその次に来るのが30代の2,284件で、前年から329.3%増えている。20代は1,759件で361.7%増。20代と30代を合わせると、オレオレ詐欺の認知件数の27.9%を占め、割合は14.4ポイント上がった。

その中身を担っているのが、警察官を名乗って接触するニセ警察詐欺である。この手口の認知件数は30代の2,239件が最多で、次が20代の1,718件。若い年代に集中している。

ところが、同じ手口を被害額で並べ替えると、順位がひっくり返る。最も多いのは70代の274.6億円、次いで60代の256.3億円である。件数の上位と金額の上位が、まったく別の年代になる。

構造を読む

件数と金額のどちらを基準にするかで、対策を配る先が変わってしまう

ここから読めることは二つある。

一つめは、被害の増え方と捕まえる力が切り離されているという点だ。被害額が98.0%増えるあいだ、検挙件数は0.0%しか動いていない。同じ資料のSNS型投資・ロマンス詐欺では、検挙件数が630件で140.5%増、検挙人員は397人で207.8%増と、はっきり伸びている。捜査の力が全体として頭打ちなのではなく、特殊詐欺という領域で伸びていない。実行役を入れ替えながら短期間で回す形が広がれば、1件あたりの捜査で届く範囲は狭くなる。件数を追うほど、被害の増加には追いつかなくなる。

二つめは、どの数字を基準にするかという問題である。同じ現象を件数で測るか金額で測るかで、対策を配る先が変わる。件数で測れば、若い世代への注意喚起が優先される。金額で測れば、高齢者の資産をどう止めるかが優先される。ニセ警察詐欺はその両方を同時に抱えている。件数の最多は30代、金額の最多は70代。どちらか一方の数字だけを見て資源を配ると、もう一方が抜ける。

厄介なのは、「特殊詐欺は高齢者を狙う犯罪だ」という前提が、対策の作りに入り込んでいることだ。金融機関の窓口での声かけ、地域の見守り、家族への注意喚起。いずれも、対面か電話で高齢者に接触する経路を想定している。だが30代が最多になった手口は、その経路を通らない。が起きる場所が、窓口からスマートフォンの画面へ移っている。

対策の設計としては、二つの層を分けたほうがよい。件数の層は、接触の経路そのものを塞ぐ側の話になる。警察を名乗る連絡が本物かどうかを、受け取った側が短時間で確かめられる手順を、年代を問わず配る。金額の層は、金銭が動く直前で止める側の話だ。高額の送金や引き出しに対する確認は、いま高齢者を想定して設計されているが、金額を基準にするなら年齢は関係がない。

統計をどの指標で切るかによって、見える問題が変わる。同じことは成果指標の設計(このサイトの記事)でも扱った。公的なデータを自分の判断に使う手順は公的統計を読むための実務(このサイトの記事)にまとめてある。被害額が倍になった年に検挙が動かなかったという事実は、来年の統計を待たずに読める。

この記事で使った統計の出典

  1. 1警察庁 令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)(令和8年5月22日) 出典を開く
  2. 2警察庁 令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)(令和7年) 出典を開く

参考書籍

参考文献

令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)警察庁 組織犯罪対策第二課・生活安全企画課 (2026). 警察庁 広報資料

令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について警察庁 組織犯罪対策第二課・生活安全企画課 (2025). 警察庁 広報資料

特殊詐欺の認知・検挙状況等について警察庁 (2026). 警察庁Webサイト 統計

特殊詐欺 発生状況警察庁 (2026). 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ

読んだ後に考えてみよう

  1. 被害が倍になっても検挙が動かないとき、増えているのは犯行の数か、それとも捕まえにくさか
  2. 件数で測るか金額で測るかで対策の宛先が変わるとき、両方を同時に満たす配り方はあるか
  3. 「高齢者を狙う犯罪」という前提でつくられた仕組みは、30代が最多になった手口を受け止められるか

この記事の用語

情報の非対称
取引をする二者のあいだで、持っている情報の量や質に差がある状態。売る側が毎日その取引をしていて、買う側が一生に数回しか経験しない場合に大きくなる。差が大きいほど、情報を多く持つ側が価格や条件を有利に決められる。詐欺や過大な見積もりは、この差を利用して成立する。

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