令和7年12月の一斉改選で、民生委員・児童委員の定数240,971人に対して委嘱されたのは220,880人だった。欠員は20,091人。充足率は91.7%で前回から2ポイント下がっている。定数は前回より424人増えており、減っているのは引き受ける人の側である。欠員は令和元年11,476人、令和4年15,191人、令和7年20,091人と2回の改選で8,615人増えた。充足率は沖縄県72.0%から富山県99.2%まで開いている。
ざっくり言うと
- 令和7年12月の一斉改選で、定数240,971人に対して委嘱は220,880人だった
- 欠員は20,091人で、令和元年11,476人・令和4年15,191人から2回の改選で8,615人増えた
- 充足率は91.7%で、前回の93.7%から2ポイント下がっている
令和7年12月の改選で委嘱された220,880人のうち、新任は69,207人で31.3%、再任は151,673人で68.7%だった。定数は3年前より424人増えており、減っているのは引き受ける人の側である。
何が起きているのか
定数はほぼ据え置かれ、引き受ける人だけが減って欠員が2万人を超えた
定数240,971人に対して委嘱220,880人
民生委員・児童委員は3年の任期で、満了のたびに全国一斉に改選される。厚生労働省が令和8年1月に公表した結果は、こうなっている。
定数240,971人に対し、委嘱されたのは220,880人。差し引き20,091人が欠員という計算になる。充足率は91.7%である。
定数は増え、引き受ける人が減った
前回と並べると、動いた側がはっきりする。令和4年12月の改選では定数240,547人に対して委嘱225,356人、充足率93.7%だった。
定数は424人増えている。委嘱は4,476人減っている。必要とされる数はむしろ増え、引き受ける人だけが減った。
欠員は2回の改選で11,476人から20,091人へ
その前の改選も見ておく。令和元年12月の改選では定数239,682人に対して委嘱228,206人だった。欠員は11,476人である。
| 改選 | 定数 | 委嘱 | 欠員 |
|---|---|---|---|
| 令和元年12月 | 239,682 | 228,206 | 11,476 |
| 令和4年12月 | 240,547 | 225,356 | 15,191 |
| 令和7年12月 | 240,971 | 220,880 | 20,091 |
2回の改選で、欠員は8,615人増えた。定数はどちらの改選でも増え、委嘱はどちらでも減っている。
背景と文脈
委嘱された人の7割近くが再任で、新しく入る人は3割にとどまる
委嘱された人の68.7%は再任である
委嘱された220,880人の内訳を見ると、支えている層が分かる。新任が69,207人で31.3%、再任が151,673人で68.7%である。
前回も似た構成だった。令和4年は新任72,070人で32.0%、再任153,286人で68.0%。新任の実数は2,863人減っている。
7割近くが、前の任期から続けている人である。新しく入る人は3割にとどまる。改選のたびに再任で埋めているという構図になる。
無報酬で、任期は3年である
民生委員は無給の非常勤特別職で、厚生労働大臣から委嘱される。担当区域の住民から相談を受け、必要な支援につなぐ。生活保護の申請、高齢者の見守り、子育ての相談。行政の窓口に来る前の段階を受け止める役割である。
制度の概要が資料に整理されている。特別職の地方公務員(都道府県)で、任期は3年、守秘義務があり、無報酬。活動費は地方交付税の積算に算定される。根拠法は民生委員法で、児童福祉法第16条により児童委員を兼務する。
委嘱までの経路も3段階ある。市町村民生委員推薦会が推薦し、都道府県知事等が推薦し、厚生労働大臣が委嘱する。地方社会福祉審議会が意見を述べる。
担当区域は都市部で220〜440世帯
1人が受け持つ範囲にも目安がある。担当区域は、都市部(東京23区・指定都市)で220〜440世帯、町村部で70〜200世帯。
欠員1人分は、都市部なら220世帯から440世帯、町村部なら70世帯から200世帯の区域にあたる。 実際にその区域が空白になるかどうかは、周りの委員がどう補うかによる。
活動の内容も並んでいる。相談・支援、調査・実態把握、行事・会議等への参加、地域福祉活動、定例会・研修等、証明事務、訪問。
定数はなり手が減っても自動では下がらない
定数の決め方には特徴がある。都道府県知事が市町村長の意見を聴いて、条例で定める。人口や世帯数を基準にした国の参酌基準があり、地域の実情に応じて調整される。なり手が減ったからといって、自動的に下がるものではない。
沖縄県は72.0%、富山県は99.2%
充足率は全国で91.7%だが、地域差が大きい。都道府県別の内訳が資料に載っている(指定都市と中核市を除いた数字である)。
最も低いのは沖縄県で、定数1,990人に対し委嘱1,432人、充足率72.0%。全国平均から20ポイント近く低い。
次に低いのは東京都の84.4%(定数10,311人・委嘱8,707人)、埼玉県87.1%、大阪府87.9%、青森県88.3%、千葉県88.4%と続く。
高いほうは富山県99.2%(定数1,703人・委嘱1,690人)、愛媛県98.8%、徳島県98.6%、長野県97.6%である。
充足率が90%を下回る県は9つ、95%以上の県は13ある(都道府県別の定数と委嘱数から本稿で数えた)。
- 沖縄県72.0%定数1,990 / 委嘱1,432
- 東京都84.4%定数10,311 / 委嘱8,707
- 埼玉県87.1%
- 大阪府87.9%
- 青森県88.3%
- 千葉県88.4%
- (全国)91.7%90%未満は9県
- 長野県97.6%
- 徳島県98.6%
- 愛媛県98.8%
- 富山県99.2%定数1,703 / 委嘱1,690
指定都市の充足率が最も低い
区分で見ても差が出る。都道府県分(指定都市・中核市を除く)は155,987人の定数に対し委嘱143,281人で91.9%、指定都市は43,139人に対し38,798人で89.9%、中核市は41,845人に対し38,801人で92.7%。
3区分のなかで指定都市が最も低い。 個別では川崎市が定数1,930人に対し委嘱1,428人で74.0%と、20の指定都市で最も低い。熊本市84.3%、広島市86.8%、横浜市87.5%と続く。高いほうは京都市97.8%、浜松市97.0%である。
担当区域が220〜440世帯と最も広く設定されているのが、この都市部である。
構造を読む
定数があるから不足が数字に出る。定数のない担い手は減ったことしか見えない
定数があるから不足が数字になる
ここに、前日に扱った消防団との違いが出る。
消防団は入団37,757人に対して退団52,215人(このサイトの記事)で見たとおり、消防団員は令和7年に732,223人まで減った。消防団には条例定数があり、862,625人に対する欠員130,402人という形で不足が出る。
民生委員も同じである。定数があるから、同じ現象が「欠員20,091人」「充足率91.7%」という形で見える。
この違いは、対策の立てやすさに直結する。欠員という数字があれば、どの地域で何人足りないかが分かる。都道府県別・指定都市別・中核市別の結果も公表されている。沖縄県72.0%と富山県99.2%の差が見えるのは、定数があるからである。
定数のない担い手の不足が小さいわけではない。数字にならないだけである。
- 令和元年12月定数239,682 / 委嘱228,206↓ 欠員11,476人
- 令和4年12月定数240,547 / 委嘱225,356↓ 欠員15,191人
- 令和7年12月定数240,971 / 委嘱220,880欠員20,091人・充足率91.7%
定数はどちらの改選でも増え、委嘱はどちらでも減っている。2回で欠員は8,615人増えた。
再任68.7%という構成が意味すること
いま制度を支えているのは、継続している人である。この層が一斉に退く時期が来ると、欠員は一段と広がる。新任が3割にとどまる状態が続く限り、入れ替わりの波を吸収できない。
新任の実数も、令和4年の72,070人から69,207人へ2,863人減っている。再任の比率が保たれているのは、新任が増えたからではない。
誰が引き受けられるか
担い手を確保する難しさの中身も、消防団と重なる。地域に住み、日中も動ける人。定年後の世代がその役割を担ってきたが、就業期間が延び、家族のケアも担うようになった。会計年度任用職員のように短時間で有償の働き方が広がるなかで、無給で3年の任期を引き受ける形は、選ばれにくくなっている。
制度が用意されていることと届いていることを分けて数える必要があるのは制度からの排除と未受給(このサイトの記事)で扱ったが、民生委員はその「届ける側」にあたる。窓口に来られない人を見つける役割が2万人分空いているということは、届かない層がその分だけ広がるということである。
分かっていないこと
分かっているのは、定数と委嘱数、新任・再任の内訳、地域別の内訳である。分かっていないことが三つある。
一つは、 欠員が出ている区域で誰が代わりに動いているか である。周りの委員が兼務しているのか、区域が統合されたのか、この資料には書かれていない。
二つは、 なぜ沖縄県が72.0%なのか である。地域差の理由はこの資料の対象外である。
三つは、 推薦の段階でどれだけ落ちているか である。市町村民生委員推薦会が推薦し、都道府県知事等が推薦し、大臣が委嘱する。委嘱数は分かるが、そもそも推薦に至らなかった区域がどれだけあるかは公表されていない。
この記事で使った統計の出典
- 1厚生労働省 令和7年度民生委員・児童委員の一斉改選結果(令和7年12月1日改選) 出典を開く
- 2厚生労働省 令和4年度民生委員・児童委員の一斉改選結果について(令和4年12月1日改選) 出典を開く
- 3厚生労働省 民生委員・児童委員について(資料2)(令和7年12月1日現在) 出典を開く
- 4厚生労働省 令和7年度民生委員・児童委員の一斉改選結果 資料1(都道府県・指定都市・中核市別改選結果)(令和7年12月1日改選) 出典を開く
参考書籍
- 『人口減少社会のデザイン』(外部サイト、新しいタブで開きます)(広井良典、東洋経済新報社)。人口が減る前提で社会をどう組み直すかを、都市と地域の両面から論じた一冊。地域に人がいることを前提にした仕組みの限界を考えるのに使える。
参考文献
令和7年度民生委員・児童委員の一斉改選結果を公表します — 厚生労働省 社会・援護局地域福祉課 (2026). 厚生労働省
令和4年度民生委員・児童委員の一斉改選結果について — 厚生労働省 (2022). 厚生労働省
民生委員・児童委員について — 厚生労働省 (2026). 厚生労働省



