農林水産省と林野庁が令和7年9月16日、外国法人等による農地取得と森林取得の令和6年調査結果を公表した。農地は175.3haで全国の農地面積の0.004%、うち外国法人と海外居住外国人による取得は0haだった。森林は382haで全国の私有林の0.003%、平成18年からの累計は10,396haで0.07%である。林野庁は取水や地下水の採取を目的とした開発の事例はこれまで報告がないと明記した。
ざっくり言うと
- 令和6年に外国法人等が取得した農地は175.3ha、全国の農地面積の0.004%である
- そのうち外国法人は0社0ha、海外居住外国人は0者0haだった
- 森林の取得は382haで私有林の0.003%、累計10,396haで0.07%である
農地法は取得した農地の全てを効率的に利用することを許可の要件にしており、投資目的の取得ができない。農林水産省は、そのため国内居住外国人によるものが大半になると説明している。
何が起きているのか
農地と森林の年次調査が同じ日に出た。どちらも1%に遠く届かない
令和7年9月16日、外国法人等による土地取得の年次調査が2本、同じ日に公表された。農地と森林である。
見出しに数字が置かれた。令和6年に外国法人等により取得された農地面積は175haで、年間取得面積全体(74,103ha、直近5年平均)の0.2%、全国の農地面積(427万ha)の0.004%。森林は382haで全国の私有林面積(1,431万ha)の0.003%、平成18年からの累計は10,396haで同0.07%である。
どちらも1%に遠く届かない。 ただし、この記事で扱うのは大きさではなく内訳である。
背景と文脈
農地175haの内訳。海外居住者と外国法人によるものはゼロである
海外に住む外国人と外国法人による農地取得はゼロ
農地の175.3haがどこから来ているかが、区分ごとに書かれた。
外国法人は0社・0ha、海外居住外国人は0者・0haである。
日本の外にいる主体による農地取得は、令和6年に1件もなかった。 平成29年からの公表値の累計でも1者・0.1haである。
175.3haのうち174haは日本に住んでいる人
では残りは何か。国内居住外国人が377者・95ha、その者が主要株主等または理事等となっている法人が32社・79ha。合わせて174haで、175.3haの99.3%にあたる。
残る1.3haは、外国法人または海外居住外国人が主要株主等となっている法人3社によるもの(茨城県行方市0.9ha、山梨県甲州市0.2ha、愛媛県西条市0.2ha、いずれも国籍等は中国)である。
農林水産省は理由も書いた
なぜこうなるかも、プレスリリースに書かれた。
「農地法では、取得する農地の全てを効率的に利用すること等の許可要件が設けられており、投資目的での農地取得はできないため、国内居住外国人によるものが大半です」。
制度が投資目的の取得を塞いだ。 農地を買うには、その全部を自分で耕す見込みを示して許可を得る必要がある。海外に住んだまま満たすのは難しい。
国籍の内訳も公表された
国内居住外国人377者の国籍等は、中国102人(27%)、韓国42人(11%)、ブラジル42人(11%)、米国27人(7%)、ベトナム24人(6%)、スリランカ15人(4%)、フランス11人(3%)、パキスタン10人(3%)、その他104人(28%、34か国・地域)である。
ブラジルとベトナムとスリランカが上位に並ぶ。 農業の現場で働いてきた人の分布に近い。 資本の動きというより、住んで働いている人が農地を持ったという形である。
構造を読む
語られ方と統計が食い違う。取水目的の開発は報告がない
森林のほうは、目的まで公表された
森林の調査は、取得の目的まで載せた。令和6年に居住地が海外にある外国法人または外国人と思われる者が取得した48件・171haの利用目的は、資産保有が大半で、ほかに太陽光発電施設、宅地造成、別荘建設、分譲住宅建設などがある。
そして、この一文が置かれた。
「なお、外国法人等が取得した森林において、取水や地下水の採取を目的とした開発等の事例はこれまで報告されておりません」。
水源林の買収という語られ方に対して、調査の側は「報告がない」と書いた。 平成22年から毎年続けてきた調査での話である。
取得はスキー場のまわりに集まっている
どこで買われたかを見ると、目的の説明がつく。居住地が海外にある外国法人・外国人による取得の累計415件・3,044haのうち、北海道が317件・2,211haである。
その中身はニセコ町120件・193ha、倶知安町98件・406ha、蘭越町30件・166ha、留寿都村17件・110haと続く。長野県では軽井沢町8件・13ha、白馬村7件・2haである。
スキーリゾートの地名が並ぶ。 山奥の水源地ではなく、値の付く不動産のまわりに集まった。
調査は届出を横から集めた数字である
数字の作られ方も見ておく。森林の調査が使うのは、森林法にもとづく届出情報(面積にかかわらず森林の土地の所有者となった場合)、国土利用計画法にもとづく届出情報(都市計画区域外は1ha以上)、不動産登記法にもとづく登記情報で、都道府県を通じて集めた。
農地のほうは農地法にもとづく許可書等を基に、市町村の農業委員会を通じた調査である。
どちらも、専用の登録簿があるわけではなく、別の目的で集まった届出を横から数えた。 届出のない取得や、国籍が分からない取得は、この数字に入らない。 調査の側も「思われる者」という表現を使った。
「外国資本」と「外国人」を分けないと読めない
区分の言葉づかいも効いてくる。農地の調査は4区分で数えた。外国法人、海外居住外国人、それらが主要株主等の法人、国内居住外国人、そしてその者が主要株主等の法人である。
森林の調査も2区分に分かれる。居住地が海外にある外国法人・外国人による取得が171ha、国内の外資系企業と思われる者による取得が211ha。 累計では前者が3,044ha、後者が7,352haで、国内の外資系企業のほうが2倍以上多い。
国内の外資系企業とは、国外居住者もしくは外国法人による出資比率、または国外居住者の役員の比率が過半数を占める法人である。日本の法律で作られ、日本に事務所を置いた会社が含まれる。
「外国資本が買った」と言うとき、どの区分を指しているかで数字が3倍違う。
米国の割合を並べるときの注意
どちらのプレスリリースも、米国の数字を参考として置いた。米国における外国人等による森林の所有割合は5.0%、米国における外国法人等が所有する農地の割合は2.8%である。
農地のほうには、農林水産省が自分で注意書きを付けた。「同資料に基づくこの数値は、1年間の農地取得ではなく所有農地を対象としていること、外国法人等の定義が本調査と異なることに留意する必要」。
日本の0.004%は1年間に買われた分、米国の2.8%は現在持っている分である。 並べて比べられる数字ではない。森林のほうは日本側も累計0.07%なので性格は近いが、定義の差は残る。
数字が語られ方とずれる場所
ここまでの数字を並べると、語られ方と統計が3か所でずれる。
1つ目は 主体 である。農地では海外に住む主体による取得がゼロで、森林でも累計の7割は国内の外資系企業による。 「外から買いに来る」という像より、「日本の中にいる」主体の話である。
2つ目は 目的 である。森林の取得目的として最も多いのは資産保有で、取水や地下水採取を目的とした開発は報告がない。
3つ目は 場所 である。北海道の取得の大半はニセコ・倶知安・蘭越・留寿都に集まった。 リゾート開発の不動産市場である。
「政策が届かない層」の共通構造(このサイトの記事)で扱ったのは、制度と実態のずれだった。ここでのずれは向きが逆で、 不安の語られ方のほうが統計より大きい。
それでも数えることをやめない理由
割合が小さいことは、調査をやめてよい理由にならない。両省庁とも、同じ文で次を書いた。
安全保障上重要な施設の周辺等で外国法人等が取得した森林については、重要土地等調査法にもとづく調査等とも連携して対処するという一文である。
全体の割合と、特定の場所の1件は、別の問題である。 0.003%という数字は前者の答えであって、後者の答えではない。基地や原発の隣の1haがどうなっているかは、面積の比率では出てこない。
何を数えれば、次の判断ができるか
いまの調査で分かるのは、届出に現れた取得の件数と面積と目的である。分からないものが2つある。
1つは、 届出に現れない取得がどれだけあるか である。調査は「思われる者」を数えており、国籍が分からない取得は含まれない。取りこぼしの規模を測る仕組みは無い。
もう1つは、 取得したあと何が起きたか である。農地では累計74.61haのうち5.3haが第三者に売り渡された旨が注記されたが、森林では取得後の利用状況を追った公表がない。 買った時点は数えられていて、使われ方は数えられていない。
相続した土地を国が引き取る制度(このサイトの記事)で見たとおり、日本の土地は誰が持っているかの把握そのものが弱い。国籍を分けて数える前に、所有者を数える段で穴がある。
この記事で使った統計の出典
- 1農林水産省「令和6年に外国法人等により取得された農地は全国の農地面積の0.004%」(令和7年9月16日) 出典を開く
- 2林野庁「令和6年に外国法人等により取得された森林は全国の私有林の0.003%」(令和7年9月16日) 出典を開く
- 3農林水産省 令和6年 外国法人等による農地取得に関する調査(令和6年) 出典を開く
- 4農林水産省 令和6年 外国法人等による農地取得に関する調査(平成29年〜令和6年) 出典を開く
- 5林野庁 外国法人等による森林取得に関する調査(令和6年) 出典を開く
- 6林野庁 外国法人等による森林取得に関する調査(平成18年〜令和6年) 出典を開く
- 7林野庁 外国法人等による森林取得に関する調査(令和6年) 出典を開く
- 8林野庁 外国法人等による森林取得に関する調査(米国農務省の公表資料を基に算出)(令和7年9月16日) 出典を開く
- 9農林水産省 令和6年 外国法人等による農地取得に関する調査(米国農務省の公表資料を基に算出)(令和7年9月16日) 出典を開く
- 10農林水産省 令和6年 外国法人等による農地取得に関する調査(令和7年9月16日) 出典を開く
参考書籍
- 『人口減少時代の土地問題』(外部サイト、新しいタブで開きます)(吉原祥子、中央公論新社)。誰がどの土地を持っているかを日本の登記が把握しきれていない構造を、制度の側から追った本。今回の調査が届出の横から数えた数字である理由を考えるのに使える。
参考文献
令和6年に外国法人等により取得された農地は全国の農地面積の0.004% — 農林水産省 経営局農地政策課 (2025). 農林水産省
令和6年に外国法人等により取得された森林は全国の私有林の0.003% — 林野庁 (2025). 農林水産省
外国法人等による森林取得に関する調査について — 林野庁 (2025). 農林水産省
外国法人等による森林取得に関する調査 — 林野庁 (2026). 農林水産省
