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一般社団法人 社会構想デザイン機構

熊本の車社会は、道路では解けない — 公共交通の負のスパイラルと、立地から逆算する交通

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ヨコタナオヤ
約3分で読めます

半導体産業が集まる熊本都市圏で、渋滞が深刻になっている。熊本都市圏パーソントリップ調査によれば、車の分担率は64.4%から67.3%へ上がり、公共交通は5.9%から5.2%へ下がった。道路を増やしても渋滞は解けず、高速道路の無料化実験では交通量が約79%増えた。運転手不足から減便・利用減・不採算・撤退が循環する負のスパイラルを読み、道路の拡張ではなく居住立地と公共交通を逆算で結び直す論点を示す。

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ざっくり言うと

  1. 熊本都市圏では車の分担率が64.4%から67.3%へ上がり、公共交通の分担率は5.9%から5.2%へ下がった
  2. 道路を増やしても渋滞は解けず、高速道路の無料化実験では交通量が約79%増えて、使いやすさを上げれば需要も増えることが示された
  3. 公共交通は運転手不足から減便・利用減・不採算・撤退が循環する負のスパイラルに入り、車依存をさらに強めている
1運転手が足りなくなる
2便数を減らし、路線を廃止する
3使いにくくなり、利用者が減る
4採算が悪化する
5さらに便を減らし、撤退する
1に戻り、運転手不足がさらに進む(車依存が強まる)

熊本都市圏では車の分担率が64.4%から67.3%へ上がり、公共交通の分担率は5.9%から5.2%へ下がった。道路を増やしても渋滞は解けない。高速道路の無料化実験では料金を下げただけで交通量が約79%増えた。使いやすさを上げれば需要も増える。出口は、道路の拡張ではなく、居住立地と公共交通を逆算で結び直すことにある。

公共交通の負のスパイラル

何が起きているのか

半導体集積が進む熊本都市圏で渋滞が深刻化。車の分担率は64.4%から67.3%へ上がり、道路投資を続けても渋滞は減らない

半導体産業が集まる熊本都市圏で、渋滞が深刻になっている。FIRST-HAND Local が伝える現場でも、車に頼る暮らしが年々深まっている様子が語られる。熊本市などが実施した熊本都市圏パーソントリップ調査によれば、移動の手段として車を使う割合は64.4%から67.3%へ上がり、公共交通の分担率は5.9%から5.2%へ下がった。

対策は打たれている。熊本都市圏では、渋滞の緩和に向けて道路の整備が続けられてきた。それでも渋滞は減らない。現場では、道路を増やしても渋滞は減らない、という声が語られる。半導体工場の進出が、20年の周期を見込んで設計してきたインフラの想定を超える需要を、一気に生んだからだ。

背景と文脈

道路を広げて使いやすくするほど交通量も増え、公共交通は運転手不足から減便・利用減・不採算・撤退の負のスパイラルに入っている

道路を増やしても渋滞が減らないのは、熊本だけの話ではない。道路を広げて通りやすくすると、これまで運転を控えていた人まで車を使い始め、交通量そのものが増える。こうした動きは、需要を呼び込む向きに働く。たとえば国が行った高速道路の無料化実験では、料金という障壁を下げただけで、対象区間の交通量が実験前の1日8,600台から15,400台へ、約79%増えた。無料化は料金を、道路の拡張は所要時間を下げる。手立ては違うが、車の使いやすさを上げれば需要も増えるという点は同じだ。だとすれば道路の拡張も、渋滞を解くどころか、新たな交通を呼び込みかねない。

一方で、その受け皿になるはずの公共交通は痩せ細っている。運転手が足りなくなり、便を減らし、路線を廃止する。使いにくくなって利用者が減り、採算が悪化し、さらに便を減らす。この負のスパイラルが各地で回っている。バスの運転手は、2021年度の約11.6万人から2030年度に約9.3万人へ減り、約3.6万人が不足すると試算されている。運ぶ手が減れば、公共交通はさらに縮む。

構造を読む

全国に約2,500の交通空白がある。出口は道路拡張でなく、公共交通を軸に居住立地を逆算で設計し直すことにある

車がなければ暮らせない場所が広がるほど、公共交通は成り立たなくなる。国は、路線バスなどが届かない地域を「交通空白」と呼び、全国に約2,500の交通空白があると認めた。渋滞と交通空白は、車依存という同じ根から出た、表と裏である。

だとすれば、打つ手は道路をさらに広げることではない。使いやすさを上げれば需要が増える以上、道路の拡張は追いかけっこになる。必要なのは、公共交通が成り立つ形から居住の立地を逆算し、住まいと交通を結び直すことだ。その動きは始まっている。国交省によれば、コンパクトなまちづくりの立地適正化計画を作った527都市のうち、424自治体が地域公共交通計画も併せて策定し、住まいの立地と交通を一体で考え始めた。

車がなければ暮らせない場所に住まいを増やし続けるのか、それとも公共交通が成り立つ形から立地を設計し直すのか。分かれ道はそこにある。道路を増やすたびに車が増え、公共交通が痩せ、交通空白が広がる。この追いかけっこを止めるには、交通を後から足すのではなく、どこに人が住むかを交通から逆算する発想がいる。渋滞は、道路の足りなさではなく、暮らしと交通の設計のずれから生まれている。そのずれを正面から組み直せるかどうかに、地域の移動を守れるかがかかっている。

参考書籍

参考文献

熊本都市圏パーソントリップ調査(令和5年)熊本市 (2023). 熊本市

高速道路無料化社会実験の状況について国土交通省 (2010). 国土交通省

バス事業の現状と課題(国土交通省審議会提出資料)公益社団法人日本バス協会 (2023). 国土交通省 交通政策審議会

地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律案(交通空白の解消)国土交通省 (2026). 国土交通省

立地適正化計画と地域公共交通計画の連携状況国土交通省 (2023). 国土交通省

読んだ後に考えてみよう

  1. あなたの地域では、道路を増やすことと公共交通を維持することの、どちらに予算と設計の重心が置かれているか
  2. 車がなければ暮らせない場所に住まいを増やし続けることは、将来の交通と財政にどんな負担を残すか
  3. 居住の立地を、公共交通が成り立つ形から逆算して設計し直せるか

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